当社は本年度、新長期経営計画Atelier2050、および、新中期経営計画Vista2027を開始いたしました。「未来のための、はじめてをつくる。」をコーポレートスローガンに据え、精密有機合成、機能性高分子設計、微粒子制御、生物評価、光制御の5つの従来のコア技術にさらに磨きをかけるとともに新たなコア技術の取得、新事業領域へ挑戦していきます。当社の研究活動は、物質科学研究所、材料科学研究所、生物科学研究所の3つの国内の研究所を中心に、韓国、台湾、中国のR&Dセンターで行っています。それぞれの研究所、R&Dセンターが連携し、既存事業拡大に向けた開発や新技術開発を進めております。
最近では、材料分野を中心に、機械学習、人工知能を用いたマテリアルズ・インフォマティクスの導入検討を進めており、研究開発の高速化と高度化を図っています。また、オープンイノベーションとして、特色ある企業とのアライアンスや大学との共同研究で外部機関との連携を強化、当社技術と融合をはかることで、新たな技術の創製を推進しております。
2021年度の研究進捗につきまして、化学品分野では、自社製品や技術をベースとして独自エポキシの半導体実装用途や高周波基板用途に展開しております。また、SDGsへ貢献可能な微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」は、優れた油脂分解力で食品工場の産業廃棄物削減に寄与しております。
機能性材料分野では、ディスプレイ材料、半導体材料、無機コロイドで既存製品の高品質・高性能グレードに向けた検討が、また、多様化する顧客ニーズに答えた将来の主要事業とすべく新規材料の研究開発が進展しております。ディスプレイ材料では光配向材のさらなる高性能化に加えて、有機ELやマイクロLED、フレキシブルデバイス用材料の開発、半導体材料では既存製品の高品質化とともに今後の世代で必要になる微細加工技術や実装技術の検討に注力、無機コロイドではシリカゾルの持つ強みを活かした研究を、それぞれ検討しております。
農業化学品分野では、当社オリジナルの殺虫剤原体フルキサメタミドを含有する製品において、野菜、茶、芝向けに続く、果樹用のフロアブルを開発中です。スマート農業関連では、ドローン散布への農業登録の拡大やAI病害虫雑草診断でスマートフォン用アプリケーションへの参加など、各種IT企業とスマート農業に向けた検討も進んでおります。
医薬品分野では、独自の核酸構造を利用した創薬基盤技術について、数社の製薬企業との共同研究の進捗に加え、国内外のアカデミアとの共同研究がスタートし、核酸創薬研究を広く展開しております。ペプチド医薬品原薬の供給に当たり、新たな製造技術SYNCSOL™を開発しました。これにより、高品質なペプチド製造が可能になります。本技術を活用し、希少疾病用医薬品など社会課題に向けたソリューション提案を通して事業の拡大を図ってまいります。
なお、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は
セグメント別の主な内訳は以下の通りであります。
(1) 化学品セグメント
化学品セグメントでは、成長分野の市場ニーズを見据え、自社製品・技術をベースとした新しいファインケミカルの創出、高機能化、用途拡大に取り組んでおります。機械物性と耐熱信頼性を両立する液状エポキシ「TEPIC®-VL」「TEPIC®-FL」を半導体実装用途に、低誘電正接エポキシ「FOLDI®」を高周波基板用途に展開しております。樹脂添加剤「スターファイン®」は金属基材との密着力を高めることができ、塗料、接着剤、樹脂成型品など採用シーンが拡がっております。
また、SDGsへ貢献可能な製品の市場開発も進めております。油脂分解力に優れる微生物製剤「ビーナス®オイルクリーン」の採用件数を増加させており、食品工場から出る産業廃棄物の削減を達成しております。
当セグメントに係る研究開発費は
(2) 機能性材料セグメント
機能性材料セグメントでは、船橋、袖ケ浦、富山の3拠点を有する材料科学研究所において、ディスプレイ材料、半導体材料、無機コロイドの研究開発、および将来の事業の柱となる新規材料の研究開発を実施しております。
ディスプレイ材料では、市場・顧客動向を的確に把握し、これまで培ってきた独自技術をもとに、高性能化、多様化に対応した材料開発に取り組んでおります。特に、IPS/FFS用光配向材では、各種用途での要求に応じ、さらなる高性能化を進めております。また、中国R&Dセンターの解析および評価技術の充実に向けた設備拡充により、拡大する中国市場での顧客対応力のさらなる強化を図っております。
半導体材料では、半導体デバイスの高集積化の進展に伴い、既存製品の高品質化を進めるとともに、次世代あるいは次々世代の微細加工技術、および実装技術に対応する材料の研究開発にも注力しております。また、このような新製品・新材料の創出に向け、各種コンソーシアムへの参加、産官学およびベンチャー企業との連携に取り組んでおります。
無機コロイドでは、シリカゾルの持つ機能を活かし、研磨、金属表面処理、ハードコート等への製品開発、市場開拓を展開しております。シリカゾル以外にもジルコニアやチタニアのゾルを開発し、スマートフォンやタブレット用の光学フィルムの屈折率調整や、眼鏡用のハードコートに使用されております。また近年はオイル&ガス分野での製品開発に取り組んでおり、米国のみならずアジア地域等への展開を図っております。
新規材料については、当社のコア技術を深化・発展させると同時に、社内外の共同研究を活用して、本格的な市場拡大が進んでいる有機ELや、ディスプレイの表示性能を向上させる材料、およびフレキシブルデバイス向けの材料など、次世代につながる材料の研究開発を進めております。
当セグメントに係る研究開発費は
(3) 農業化学品セグメント
当社が独自に創薬開発した殺虫剤原体「フルキサメタミド」を含有する製品は、日本において野菜および茶向けの「グレーシア®乳剤」、芝用の殺虫剤「イザナミ®フロアブル」に続いて、果樹用のフロアブルも現在開発中です。海外では、2018年に韓国で発売以降、2020年にサウジアラビア、2021年にアラブ首長国連邦、インドネシア及びイランの3カ国で、そして2022年2月にはインドで登録されるなど、製品の販売国は着実に拡大しています。その他東南アジア諸国並びに中東アフリカ地域での評価や登録申請も順次進めており、さらなる販売エリアの拡大、拡販を目指します。
抵抗性、難防除雑草防除に優れる水稲用除草剤、NC-653(原体名:ジメスルファゼット)は国内開発に加えて、韓国での開発を継続、米国では適用性・市場性を確認すべく性能評価を開始しました。グローバルな展開が期待される新規水稲用除草剤化合物NC-656についても、2019年度からアジアを中心に評価・開発を進めております。
水稲用除草剤「アルテア®(原体名:メタゾスルフロン)」は、高性能な混合剤「ディオーレ®」および「流星®」を一発処理剤第3世代製品として開発、2021年より販売を開始しました。2022年はラインナップを充実させ、販売を本格化します。海外においては、2021年度に本格上市した台湾では、抵抗性カヤツリグサを対象として、販売は順調に推移しています。中国では、新剤型となる水和剤の登録を2021年12月に取得し初出荷を達成致しました。2022年2月には水稲面積が400万ヘクタールを超えるバングラデシュで登録を取得し、2022年後半の販売開始を目指します。更にインドでは近く登録申請予定、東南アジア諸国ならびに中東地域では評価試験を継続します。
非選択性茎葉処理除草剤「ラウンドアップ®マックスロード」は、ULV5(Ultra Low Volume 5Litter)散布技術の開発を進め、「ラウンドノズル®ULV5セット 動力用」「ラウンドノズル®ULV5セット バッテリー・人力用」「ラウンドノズル®ULV5ブームスプレーヤー用」を販売しております。
その他海外開発では、殺菌剤「ライメイ®」、除草剤「タルガ®」及び除草剤「パーミット®」等の製品の登録について、インドやタイに加えアゼルバイジャン、そしてペルーで認可されました。また、スマート農業関連では、ドローン用散布への農薬登録拡大を進めるとともに、AI病害虫雑草診断「レイミ―*」にも参加しており、各種IT企業とスマート農業への参画も検討しています。
当社発明化合物フルララネルを含む、MSD Animal Health社(またはMerck Animal Health社)の製品は外部寄生虫ノミ・マダニ防除用のイヌ・ネコ用経口投与錠剤(ブランド名:Bravecto®**)を中心に日本を含め世界100か国で販売しており、近年では内部寄生虫薬とのネコ用混剤「Bravecto® PLUS」や8週齢以上の子犬向けの「Bravecto® 1-Month Chews」等ペット向け製品ラインアップを充実させています。家畜であるニワトリのワクモ(吸血ダニの一種)防除用飲水添加剤「Exzolt®**」は欧州、南米、アジア、アフリカ、中東、更に日本でも「エグゾルト®**」として承認され、登録国数は70か国を超えました(2022年4月現在)。
当セグメントに係る研究開発費は
*レイミ―:日本農薬株式会社発表のスマートフォン用アプリケーション。当社は他2社と共に参加。
**ブラベクト ® 、Bravecto ® 、Exzolt ® ならびにエクゾルト ® は、Intervet International B.V.ならびにIntervet
Inc.の登録商標です。
(4) 医薬品セグメント
「NTC-801」(不整脈治療薬)については、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)による革新的医療シーズ実用化研究事業に採択され、共同研究先である大阪大学において遺伝性徐脈性不整脈を対象とした医師主導治験を完了しました。本治験結果をもとに、引き続き提携先を検討してまいります。
モジュラス㈱との低分子医薬品に関する戦略的業務提携において、モジュラス㈱の開発化合物について当社の原薬開発・製造技術およびノウハウを提供し、協働してその開発を推進しています。今後、共同で製薬企業に導出を目指します。
当社独自の核酸構造を用いた創薬基盤技術につきましては、製薬企業数社との共同研究が順調に進捗しており、2019年の研究開始から複数のプロジェクトにおいて開発候補化合物の選定ステージに到達しております。2021年度、新たに製薬企業との共同創薬を開始した他、国内外のアカデミアと新規標的遺伝子に対する共同研究を開始し、当社技術を活用する核酸創薬の提携先を拡大しています。ルクサナバイオテク㈱との核酸医薬品開発協業につきましては、希少疾患に対する創薬プロジェクトが順調に進捗すると共に、高い安全性と幅広い疾患領域において有効性を示す核酸医薬品を効率的に創製するプラットフォームの構築に取り組んでおります。また、ルクサナバイオテク㈱の保有する修飾核酸群(XNA)について創薬研究利用に関するライセンス許諾を受けるなど、その提携の範囲を拡げています。
安価で高品質なペプチド医薬品の製造技術SYNCSOL™の実用化を目的としてペプチド医薬品原薬の安定的な供給体制の確立に着手しました。本技術をペプチスター㈱との協業に活かしていくとともに、顧客の抱える課題を解決することで事業の拡大を図ってまいります。
当セグメントに係る研究開発費は
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