事業等のリスク

 

2 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、当社グループの財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは以下のとおりです。ただし、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のあるリスクは、これらに限定されるものではありません。

当社グループは、リスク管理委員会を設置し、リスクの洗い出しや評価、対策の策定、対策状況のチェックなどを定期的に行うとともに、以下に記載する各リスクへの対応策を実施していますが、リスクが顕在化する確率および顕在化した場合の影響を完全に抑制できるわけではありません。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1) 自然災害の発生

当社グループは、国内外に生産・営業拠点を有し、当該拠点が地震、台風、豪雨、竜巻、突風、洪水、津波、高潮などの自然災害に被災した場合、建屋・設備の損壊、操業・事業活動の停止といった被害が発生する可能性があります。

特に、東海地震、東南海地震または南海地震が発生した場合、主要な生産拠点である当社の名古屋工場をはじめ、東海地方、近畿地方および四国地方の周辺に存在する当社グループの生産・営業拠点で大きな損害が発生する可能性があります。また、首都直下地震が発生した場合、当社の本店をはじめ、関東地方の周辺に存在する当社グループの生産・営業拠点で大きな損害が発生する可能性があります。

各拠点では、耐震工事の実施、地震・火災を想定した定期防災訓練、火災・風水害に備えた保険加入といった対策を講じています。

 

(2) 事故の発生

当社グループの主な事業は化学製品の製造であり、国内外の工場では設備トラブルやヒューマンエラーなどによって、火災、爆発、化学物質の漏えいといった事故が発生し、建屋・設備の損壊、操業・事業活動の停止、被災者・地域への賠償などが発生する可能性があります。

各工場では、緊急時自動停止装置の設置、設備の新設・変更時に保安防災等を審議する防災会議の実施、定期的な防災訓練および事故に備えた保険加入といった対策を講じています。

 

(3) 市場ニーズの変化、競争激化

当社グループの事業は5つのセグメントで構成され、産業の基礎素材となる汎用化学製品から一般消費者向けの最終製品まで幅広い製品群を有し、景気の変動に影響され難いバランスのよい事業構造を築いています。一方、広範な産業および地域に製品を供給しているため、世界的または地域的な需給環境の変動、代替素材の登場、供給先の購買方針の変更、競合他社の販売価格等によって、当社グループの製品の販売数量および販売価格が大幅に変動する可能性があります。

特に、基幹化学品事業を中心とした汎用化学製品は、性質・性能面において他社製品との差別化が困難なものが多く、激化する価格競争の環境下においては、同等の製品をより低価格で販売可能な競合他社に対して、当社グループが優位性を維持できなくなる可能性があります。

一方、ポリマー・オリゴマー事業、接着材料事業、高機能無機材料事業を中心とした高付加価値製品は、当社グループが注力するモビリティやエレクトロニクスといった分野・顧客の需要動向によって、販売数量および販売価格が大幅に変動する可能性があります。

なお、当社グループは、中期経営計画「Stage up for the Future」で「高付加価値製品事業の拡大」を基本方針の一つに掲げ、高付加価値製品比率(売上高比)を、2019年実績の41.9%から2022年には47%へ上昇させることを目標にしています。

 

(4) 法令違反および税制・法制度改革、規制緩和・強化、貿易制限等

当社グループは日本国内だけでなく、アメリカ、中国、台湾、香港、シンガポール、タイ、韓国に生産・営業拠点を有するとともに、グローバルな販売・調達活動を行っています。したがって、日本の独占禁止法、不正競争防止法、下請法、金融商品取引法、外為法、輸出取引規制、労働法、税法、化学物質関連規制等および関連する諸外国・地域の各種法令等の違反、解釈変更、当局との見解相違などが生じることにより、操業・事業活動の停止、刑事罰・課徴金、訴訟等が発生する可能性があります。

また、こうした法令等は、制度改革、規制緩和・強化、貿易制限によって変更され、対応費用の発生や違反リスクの増加を招く可能性があります。

当社グループは、化学物資関連規制に対しては特に重視し、本店および製造拠点の環境保安・品質保証部門等が連携して違反を防止する体制を整えています。また、他の法令等についても、「第4 [提出会社の情報] 4 [コーポレート・ガバナンスの状況等] (1) [コーポレート・ガバナンスの概要]」に記載のコンプライアンス委員会によって、当社グループ全体のコンプライアンスの実践状況を監督・調査しています。

 

(5) 固定資産の減損

当社グループは、主に化学製品の製造のため、土地や機械装置をはじめ多額の固定資産を保有しています。また、持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のため、積極的な設備投資を行うとともに、第三者との間で合弁事業、戦略的提携、事業買収等を行うことがあります。中期経営計画「Stage up for the Future」では、2020年から2022年の3年間累計で440億円の設備投資を行うことを目標にしています。

こうした設備投資等は、採算を十分に精査したうえで意思決定しますが、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下、市場価格の下落、シナジー効果の減少等によって、減損損失が発生する可能性があります。

 

(6) 製造物責任、リコール、品質不良等

当社グループが製造・販売する製品の欠陥・品質不良に起因して、顧客および第三者に対して損害を与えた場合、損害賠償やリコールに要する費用などが発生するとともに、当該製品の販売が減少する可能性があります。

当社グループは、顧客要求事項および適用される法令・規制要求事項を満たした製品を供給すべく、各製造拠点で品質検査を実施し、要求事項に適応できる体制を整備しております。また、生産物賠償責任保険への加入によって、損害が発生した場合の影響を抑える対策を講じています。

 

(7) 情報漏えい

当社グループは、経営上、営業上および技術上の重要な情報ならびに従業員等の個人情報を保有しています。取引先関係者や従業員等が故意または過失によって当該情報を漏えいさせた場合、または、悪意を持った第三者が当社グループの情報管理サーバー等に侵入して情報を不正に取得した場合、経営上、営業上および技術上の優位性の低下、情報の漏えいによる制裁・賠償金および当該情報の奪還に要する費用発生といった損害が発生する可能性があります。

当社グループは、重要な情報を共有する取引先関係者とは秘密保持契約を締結し、従業員には教育によって管理意識や取扱いルールの浸透を図ることで、情報漏えいの発生を防止しています。また、コンピュータウイルスへの対策など、情報セキュリティ対策の継続的な改善を行っています。

 

(8) 原燃料・資材等の高騰、原油・ナフサ価格の変動

原燃料・資材等の高騰は、当社グループの製造コストの上昇につながります。特に、原油・ナフサ価格の高騰は、基幹化学品事業のアクリルモノマー製品をはじめとした製造コストの上昇の要因となり、当該変動を反映した販売価格の是正および合理化が十分に実施できなかった場合、当社グループの利益を圧迫する可能性があります。

一方、原油・ナフサ価格の下落は、当社グループの販売価格が低下する要因になるとともに、棚卸資産にかかる評価損失を発生させる可能性があります。

原油・ナフサ価格に連動した適正な製造コストおよび販売価格となるように、国内の取引先を中心に価格フォーミュラを取り決めていますが、価格が乱高下する場面や海外の競争市場では、こうした対策が機能しない可能性もあります。

 

(9) 感染症・伝染病

隔離・行動制限が必要な感染症・伝染病が広範囲に流行した場合、経済活動の全般的な停滞に加え、当社グループの販売先や調達先の事業活動および物流が中断されることで、当社グループの操業・事業活動も制限される可能性があります。また、当社グループの従業員に感染が拡大した場合、操業が一時的に停止する可能性があります。

2021年12月現在において、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大が継続しています。当社グループは、消毒液等の感染予防品の設置や新型コロナウイルスに関する行動指針の策定によって感染拡大を防止するとともに、テレワークが可能な環境を整えることで安全かつ継続的な操業・事業活動ができる体制を構築しています。

 

(10)原燃料供給の停止、サプライチェーンの切断

当社グループは、コストダウンと調達の安定性のバランスを念頭において事業を行っていますが、調達先の事故、生産停止、倒産などの事情によって、製造に不可欠な原燃料が調達できない場合、当社グループの操業が停止する可能性があります。

複数購買の実施および調達先との継続的なコミュニケーション等を図り、安定的な供給体制の構築に努めています。

 

(11)環境汚染、サスティナビリティの要請

当社グループは、環境保全にかかる法令を遵守するとともに、二酸化炭素排出量の削減目標公表や環境負荷物質の自主管理値設定による管理徹底など、環境に配慮した事業活動を行っていますが、化学工場である以上、土壌・大気・水質等に関する汚染が発見され、生産活動の中断や補償費用が発生する可能性があります。また、SDGsやESG投資に代表されるように、持続的な社会発展のため、エネルギー多消費型産業である化学事業においても、二酸化炭素のさらなる排出量削減をはじめとした社会的な要求に応えることが強く求められています。

当社グループは、社長を議長とする「サスティナビリティ推進会議」を中心として、温室効果ガス排出量、エネルギー使用量、廃棄物および環境負荷物資の削減にいっそう取り組んでいきます。特に、温室効果ガス排出量削減に関しては、2021年に削減目標を従来から引き上げ、「2030年に2013年比50%削減(205千トン)」、「2050年にカーボンニュートラル(実質ゼロ)」を目標としたロードマップを作成しています。また、サプライチェーンを含めた3つの区分(Scope1-3)での温室効果ガス排出量を算定し、TCFDガイダンスに沿ったシナリオ分析により、気候変動が当社の事業に及ぼすリスクと機会を把握し、今後の対応について明確にしています。

 

(12)為替の変動

当社グループは、海外からも原材料を輸入するとともに、日本国内で製造した製品を海外に輸出していますが、原材料の輸入高は製品の輸出高を上回っています。したがって、外国通貨に対して円安が進行した場合、全体として費用が増加することになります。ただし、円安が進行する場合、一般的に日本国内の輸出産業は国際競争力が高まり、当社グループが販売する製品の需要も喚起されやすくなります。

また、中期経営計画「Stage up for the Future」では、積極的な海外展開を推進することにより、海外売上高比率を2019年の15.6%から2022年に20%超にすることを目指しており、計画の進捗によっては、リスクの内容は変化する可能性があります。

リスクへの対応策として、輸出や海外関係会社からの配当によって獲得した外国通貨を輸入による支払いにあてるよう資金計画を組むといった対策を講じています。

 

(13)株式相場の変動

当社は、取引関係の維持強化、業務提携の構築等の観点から当社の中長期的な企業価値の向上に資すると判断した場合、当該取引先の株式を取得・保有します。このうち市場性のある上場株式については、株式相場の変動によって大幅な損失が生じる可能性があります。

当社は、毎年定期的に、当該株式について、当該取引先との総合的な関係の維持強化および保有による便益やリスクが資本コストに見合っているかを総合的に勘案し、その保有効果等について検証したうえで、取締役会で報告を行っています。中長期的な企業価値の向上に資すると認められない株式は売却を進めています。

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