<事業の概況>
2020年来の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的蔓延という大きな環境変化に対して、製薬会社の使命である医薬品の安定供給を最優先課題として取組み、感染予防に細心の注意を払った生産・物流の維持や情報収集・提供活動などへの対応を行いました。これと並行し、2021-2025年中期経営計画の初年度として、新ビジョン「協和キリンは、イノベーションへの情熱と多様な個性が輝くチームの力で、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとして病気と向き合う人々に笑顔をもたらすLife-changingな価値の継続的な創出を実現します。」の実現に向け取組んでまいりました。
2020年に引き続きコロナ禍における世界の医療環境の変化や事業活動の制限はありましたが、Crysvita(日本製品名:クリースビータ)、Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)などのグローバル戦略品は着実な成長を続けております。次世代戦略品においては、開発が着実に進捗している免疫・アレルギー疾患領域のKHK4083を、より多くの患者さんに一日も早くお届けするために、本領域に実績のある米国アムジェン社との提携を決定しました。また、がん領域のME-401(一般名:zandelisib)においても、米国MEIファーマ社との共同開発が着実に進捗しております。
一方で、グローバル戦略品であるパーキンソン病治療薬のイストラデフィリン(日本製品名:ノウリアスト)は欧州での承認を得ることができませんでした。引き続き、今後の申請・承認を控えた品目においても、各国当局の判断について注視してまいります。また、自社や委託先での生産による安定供給体制の課題について適切に対応してまいります。
サステナブルな社会の実現への貢献と事業成長の両立に向けた取組みにおいては、患者さんを中心においた医療ニーズ対応の一環として疾患啓発活動に引き続き取組み、世界的な気候変動への対応として2021年11月には、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」による提言への賛同を表明しました。
(1)当期の財政状態の概況
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
資産 |
8,013 |
9,219 |
1,206 |
非流動資産 流動資産 |
3,588 4,425 |
4,036 5,182 |
448 757 |
負債 |
1,029 |
1,847 |
818 |
資本 |
6,984 |
7,372 |
388 |
親会社所有者帰属持分比率(%) |
87.2% |
80.0% |
△7.2% |
◎ 資産は、前連結会計年度末に比べ1,206億円増加し、9,219億円となりました。
・ 非流動資産は、販売権の減損や投資有価証券の売却による減少等がありましたが、協和キリン富士フイルムバイオロジクス(株)に対する社債が持分法で会計処理されなくなったことに伴う関係会社社債の増加や繰延税金資産の増加等により、前連結会計年度末に比べ448億円増加し、4,036億円となりました。
・ 流動資産は、売却目的で保有する資産(日立化成ダイアグノスティックス・システムズ(株)株式)の減少がありましたが、当該資産の売却による収入やKHK4083の共同開発・販売に関する契約に基づくアムジェン社からの契約一時金による収入等による現金及び現金同等物の増加に加え、棚卸資産の増加等もあり、前連結会計年度末に比べ757億円増加し、5,182億円となりました。
◎ 負債は、アムジェン社との契約締結に伴う契約負債の増加や、関係会社社債が持分法で会計処理されなくなったことに伴う協和キリン富士フイルムバイオロジクス(株)に対する持分法適用に伴う負債の計上等により、前連結会計年度末に比べ818億円増加し、1,847億円となりました。
◎ 資本は、配当金の支払いによる減少等がありましたが、親会社の所有者に帰属する当期利益の計上や為替影響による在外営業活動体の換算差額による増加等により、前連結会計年度末に比べ388億円増加し、7,372億円となりました。この結果、当連結会計年度末の親会社所有者帰属持分比率は、前連結会計年度末に比べて7.2ポイント減少し、80.0%となりました。
(2)当期の経営成績の概況
① 業績の概況
当社グループは、グローバルに事業を展開しておりますことから、国際会計基準(以下「IFRS」という。)を適用しておりますが、事業活動による経常的な収益性を示す段階利益として「コア営業利益」を採用しております。当該「コア営業利益」は、「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」及び「研究開発費」を控除し、「持分法による投資損益」を加えて算出しております。
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
売上収益 |
3,184 |
3,522 |
339 |
10.6% |
コア営業利益 |
600 |
657 |
57 |
9.6% |
税引前利益 |
523 |
601 |
78 |
14.9% |
親会社の所有者に帰属する当期利益 |
470 |
523 |
53 |
11.3% |
<期中 平均為替レート>
通貨 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
米ドル(USD/円) |
107円 |
109円 |
2円 |
英ポンド(GBP/円) |
137円 |
150円 |
13円 |
人民元(CNY/円) |
15.5円 |
16.9円 |
1.4円 |
当連結会計年度の売上収益は3,522億円(前期比10.6%増)、コア営業利益は657億円(同9.6%増)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は523億円(同11.3%増)となりました。
◎ 売上収益は、日本は減収となったものの、北米及びEMEAにおいてグローバル戦略品が順調に伸長した結果、増収となりました。なお、売上収益に係る為替の増収影響は90億円となりました。
◎ コア営業利益は、販売費及び一般管理費や研究開発費が増加したものの、海外売上収益の増収による売上総利益の増加に加え、持分法による投資損益が増加したことにより、増益となりました。なお、コア営業利益に係る為替の増益影響は25億円となりました。
◎ 親会社の所有者に帰属する当期利益は、法人所得税費用が増加したものの、コア営業利益の増益に加え、その他の費用が減少したため、増益となりました。
② 地域統括会社別の売上収益
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
日本 |
1,599 |
1,569 |
△31 |
△1.9% |
北米 |
599 |
788 |
189 |
31.4% |
EMEA |
484 |
561 |
77 |
16.0% |
アジア/オセアニア |
259 |
284 |
25 |
9.6% |
その他 |
242 |
321 |
79 |
32.6% |
売上収益合計 |
3,184 |
3,522 |
339 |
10.6% |
(注)1.One Kyowa Kirin 体制(日本・北米・EMEA・アジア/オセアニアの4つの「地域」とグローバル・スペシャリティファーマとして必要な「機能」を軸とするグローバルマネジメント体制)における地域統括会社(連結)の製商品の売上収益を基礎として区分しております。
2.EMEAは、ヨーロッパ、中東及びアフリカ等であります。
3.その他は、技術収入及び受託製造収入等であります。
<主要製品の売上収益(日本)>
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」 |
252 |
223 |
△29 |
△11.4% |
ジーラスタ |
267 |
294 |
27 |
10.0% |
ノウリアスト |
94 |
87 |
△7 |
△7.5% |
クリースビータ |
38 |
72 |
34 |
89.7% |
(参考)アサコール・ミニリンメルト ・デスモプレシン |
19 |
- |
△19 |
△100.0% |
◎ 日本の売上収益は、FGF23関連疾患治療剤クリースビータ等の新製品群が伸長したものの、2020年4月及び2021年4月に実施された薬価基準引下げの影響があったことに加え、一部製品の共同販売等終了の影響により、前連結会計年度に比べ減少しました。
・腎性貧血治療剤ダルベポエチン アルファ注シリンジ「KKF」は、競合品の浸透の影響を受け、売上収益が減少しました。
・発熱性好中球減少症発症抑制剤ジーラスタは、堅調に売上収益を伸ばしました。
・パーキンソン病治療剤ノウリアストは競合品の浸透の影響をうけ、売上収益が減少しました。
・FGF23関連疾患治療剤クリースビータは、2019年の発売以来、順調に市場浸透しております。
・潰瘍性大腸炎治療剤アサコールは2020年3月31日をもって、中枢性尿崩症用剤ミニリンメルト及びデスモプレシンは2020年4月27日をもって、それぞれ当社による販売を終了したことにより、売上収益が減少しました。
<主要製品の売上収益(海外)>
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
Crysvita |
544 |
783 |
239 |
44.0% |
Poteligeo |
115 |
153 |
37 |
32.5% |
Nourianz |
26 |
45 |
19 |
74.1% |
Abstral |
102 |
85 |
△16 |
△16.1% |
Regpara |
83 |
74 |
△9 |
△11.1% |
◎ 北米の売上収益は、グローバル戦略品が順調に伸長し、前連結会計年度を上回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)は、2018年の発売以来、順調に売上収益を伸ばしております。2020年6月には腫瘍性骨軟化症(TIO)の適応追加の承認を取得しました。
・抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)は、堅調に売上収益を伸ばしました。
・パーキンソン病治療剤Nourianz(日本製品名:ノウリアスト)は、2019年10月に発売し、売上収益を伸ばしております。
◎ EMEAの売上収益は、グローバル戦略品が順調に伸長し、前連結会計年度を上回りました。
・X染色体連鎖性低リン血症治療剤Crysvita(日本製品名:クリースビータ)が、2018年の発売以来、上市国を拡大しながら順調に売上収益を伸ばしております。2020年9月には青少年及び成人への適応拡大の販売承認を取得しました。
・2020年6月にドイツにおいて抗悪性腫瘍剤Poteligeo(日本製品名:ポテリジオ)の販売を開始し、上市国を拡大しながら順調に市場浸透しております。
・癌疼痛治療剤Abstral(日本製品名:アブストラル)は、後発医薬品の浸透の影響や出荷調整等により、売上収益が前連結会計年度を下回りました。
◎ アジア/オセアニアの売上収益は、前連結会計年度を上回りました。
・二次性副甲状腺機能亢進症治療剤Regpara(日本製品名:レグパラ)は、中国において、10月から政府集中購買制度*¹の対象となった影響で売上収益が減少しました。
*¹ 中国で医療費削減を目的に2018年に導入された医薬品調達プログラム(VBP; Volume-Based Procurement)。入札により2-5社程度の企業だけに供給が委託される一方、価格は大幅に下落します。
◎ その他の売上収益は、技術収入の増加により、前連結会計年度を上回りました。
・アストラゼネカ社からのベンラリズマブに関する売上ロイヤルティの増加に加え、ヒト型抗OX40モノクローナル抗体KHK4083の自己免疫疾患であるアトピー性皮膚炎等を対象とした共同開発・販売に関する契約をアムジェン社と締結したこと、抗LIGHTヒト型モノクローナル抗体に関する全ての適応症及び全世界での開発、製造及び販売の権利をアーヴィ ジェノミック メディシン社に許諾する契約を締結したことに伴い技術収入が増加しました。
③ コア営業利益
◎ コア営業利益は、グローバル戦略品の価値最大化と競争力あるグローバルビジネス基盤の早期確立に向けて販売費及び一般管理費及び研究開発費が増加したもの、グローバル戦略品を中心とした海外の売上収益の増加に伴う売上総利益の増加に加え、持分法による投資損益の増加により、前連結会計年度に比べ増益となりました。
(3)当期のキャッシュ・フローの概況
「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析 ③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析」に記載のとおりであります。
(4)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
医薬 |
148,755 |
84.9 |
合計 |
148,755 |
84.9 |
(注)1.金額は販売価格によっております。
2.当社グループ内において原材料等として使用する中間製品については、その取引額が僅少であるため相殺消去等の調整は行っておりません。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
② 受注実績
当社グループは、主として販売計画に基づいた生産を行っております。一部の製品で受注生産を行っておりますが、受注高及び受注残高の金額に重要性はないため、記載を省略しております。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
金額(百万円) |
前期比(%) |
医薬 |
352,246 |
110.6 |
合計 |
352,246 |
110.6 |
(注)1.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
アルフレッサ(株) |
40,219 |
12.6 |
35,457 |
10.1 |
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
(5) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2021年12月31日現在)において当社グループが判断したものであります。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、IFRSに基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 2.作成の基礎 (5) 会計上の判断、見積り及び仮定」に記載のとおりであります。
② 当期の財政状態及び経営成績の分析
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 当期の財政状態の概況、(2) 当期の経営成績の概況」に記載のとおりであります。
◎ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
2021-2025年中期経営計画の財務指標の最終年度である2025年度の経営目標及び当連結会計年度の実績は、以下のとおりであります。
|
2025年度 経営目標 |
当連結会計年度 実績 |
|
ROE |
10%以上 |
7.3% |
当期利益÷期首期末平均資本 |
売上収益成長率(CAGR) |
10%以上 |
10.6% |
2020年度を基準年度とした 年平均成長率 |
研究開発費率 |
18~20%を 目処に積極投資 |
16.4% |
研究開発費÷売上収益 |
コア営業利益率 |
25%以上 |
18.6% |
コア営業利益÷売上収益 |
配当性向(注) |
40%を目処に 継続増配 |
43.2% 5期連続の増配 |
|
(注)コアEPS(経常的な収益性を示す指標として、「当期利益」から「その他の収益」及び「その他の費用」並びにこれらに係る「法人所得税費用」を控除した「コア当期利益」を期中平均株式数で除して算定)に対する配当性向を記載しております。
当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、「成長性」「イノベーション創出能力」「収益性」の3つを持続的に高めていくことにより「中長期的なROEの向上」と「継続増配」を実現し、グローバル・スペシャリティファーマとしての安定した収益構造の確立と持続的な成長を目指しております。その目標達成状況を判断するための客観的な指標として、「ROE」「売上収益成長率」「研究開発費率」「コア営業利益率」「配当性向」の5つの財務指標を掲げております。
2021年度は、Crysvitaを中心とするグローバル戦略品がトップライン成長を牽引し、売上収益は3,522億円と前連結会計年度に比べ339億円増加しました(売上収益成長率10.6%)。販売費及び一般管理費は1,456億円と前連結会計年度に比べ190億円増加し、研究開発費は577億円(研究開発費率16.4%)と前連結会計年度に比べ54億円増加しましたが、コア営業利益は657億円(コア営業利益率18.6%)と前連結会計年度に比べ57億円、当期利益は523億円と前連結会計年度に比べ53億円それぞれ増加し、増収増益となりました。ROEも7.3%(前連結会計年度は6.8%)に改善しました。
なお、当期末の剰余金の配当につきまして、1株につき23円とすることを取締役会で決議しました。2022年3月25日開催予定の第99回定時株主総会で承認されますと、中間配当金23円を加えた年間配当金は、前連結会計年度に比べ2円増配の年間46円(配当性向43.2%)と、5期連続の増配となる予定であります。
③ キャッシュ・フローの状況、資本の財源及び資金の流動性についての分析
◎ 当期のキャッシュ・フローの概況
(単位:億円)
|
前連結会計年度 |
当連結会計年度 |
増減 |
増減率 % |
営業活動によるキャッシュ・フロー |
395 |
865 |
470 |
119.1% |
投資活動によるキャッシュ・フロー |
2,526 |
△114 |
△2,639 |
- |
財務活動によるキャッシュ・フロー |
△260 |
△284 |
△24 |
9.4% |
現金及び現金同等物の期首残高 |
208 |
2,870 |
2,663 |
- |
現金及び現金同等物の期末残高 |
2,870 |
3,351 |
481 |
16.7% |
◎ 当連結会計年度における現金及び現金同等物の期末残高は、前連結会計年度末の2,870億円に比べ481億円増加し、3,351億円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は、次のとおりであります。
◎ 営業活動によるキャッシュ・フローは、865億円の収入(前連結会計年度は395億円の収入)となりました。主な収入要因は、税引前利益601億円、減価償却費及び償却費195億円に加えて、KHK4083の共同開発・販売に関する契約に基づくアムジェン社からの400百万ドルの契約一時金の入金を含む契約負債の増減額388億円等であります。一方、主な支出要因は、法人所得税の支払額148億円等であります。
◎ 投資活動によるキャッシュ・フローは、114億円の支出(前連結会計年度は2,526億円の収入)となりました。主な支出要因は、無形資産の取得による支出132億円、有形固定資産の取得による支出65億円等であります。一方、収入要因は、持分法で会計処理されている投資の売却による収入51億円、投資有価証券の売却による収入19億円であります。
◎ 財務活動によるキャッシュ・フローは、284億円の支出(前連結会計年度は260億円の支出)となりました。主な支出要因は、配当金の支払額242億円等であります。
◎ 資本政策の基本的な方針
当社グループは、2021-2025年中期経営計画において、日本発のグローバル・スペシャリティファーマとしての持続的成長と企業価値最大化に向けて、「成長性」、「イノベーション創出能力」、「収益性」の3つを高めることにより、「ROEの中長期的な向上」と「継続的な増配」を目指しております。
このための経営資源の配分、株主還元、資金調達についての方針は、以下のとおりであります。
・経営資源の配分についての方針
2025年以降の持続的成長と企業価値最大化に向けた成長投資(R&D投資、戦略投資、設備投資)を最優先に考えております。
R&D投資では、Life-changingな価値を持つ新薬を継続的に創出することを目指します。研究開発活動への資源投入としては、次世代戦略品を中心とするパイプラインの価値最大化を目指した開発投資に注力するとともに、多様なモダリティを駆使して画期的新薬を生みだす技術プラットフォームの構築など長期的なイノベーションに向けた研究投資も積極的に行います。2021-2025年中期経営計画においては、売上収益の18~20%を目処に継続的かつ積極的に研究開発費を投入し、イノベーション創出能力をさらに高めていく方針であります。
2021年度は、売上収益の16.4%にあたる577億円のR&D投資を実行しました。主な内容は、次世代戦略品であるME-401、RTA402、KHK7791等の後期開発費用であります。また、KHK4083については、2021年6月にアムジェン社との共同開発・販売に関する契約を締結し、開発活動の加速化と可能性の拡大を目指しております。
戦略投資では、中長期的なグローバルパイプラインの拡充や、グローバル戦略品とのシナジー創出、Only-one valueの創出機会の拡大を図ることにより、さらなる持続的成長の加速を目指します。オープンイノベーションを積極活用した創薬技術などの外部イノベーションの取り込みやパイプラインの獲得を目的として、戦略的なパートナリング活動(導入・提携等)やM&Aなどの外部資源の活用にも積極的に取組む方針であります。
2021年度は、戦略投資として日本におけるIlofotase Alfaの独占的開発・販売権を獲得するライセンス契約をAMファーマ社と締結し、契約一時金2,000万ユーロを支出しました。また、ADC(抗体薬物複合体)創製技術に関するライセンス契約をシナフィックス社と締結し、契約一時金を支出しました。さらに、最先端の創薬技術情報やプロダクト情報へいち早くアクセスする手段を増やすため、複数のVCファンドへの出資を継続的に行っております。
設備投資では、特に、安全で高品質な医薬品をグローバルに安定供給するための強固な品質保証・生産体制の確立に注力し、グローバル戦略品の価値最大化に向けた競争力ある事業基盤を整備します。また、戦略的なIT・デジタル活用基盤の構築・整備や、グローバルガバナンス及びリスクマネジメント機能の強化に向けた投資により、グローバル・スペシャリティファーマとしての持続的な成長を支えるグローバルな事業基盤の早期確立を目指します。
2021年度は、145億円の設備投資(無形資産、長期前払費用を含む)を実行しました。主な内容は、グローバル戦略品の安定供給生産体制の構築・強化のための投資や、グローバルERP構築やグローバル品質管理システム構築などのIT・デジタル投資であります。
これらの投資案件や開発プロジェクトの事業性評価においては、資本コスト(WACC)を反映したハードルレート(地域別)を用いた正味現在価値(NPV)と期待現在価値(EPV)を主たる定量的な基準としております。投資の判断においても、資本コストを上回るリターンの創出による中長期的な企業価値向上への寄与を重視しております。
・株主還元についての方針
株主還元については、2021-2025年中期経営計画で掲げたコアEPSに対する配当性向40%を目処とし、中長期的な利益成長に応じた安定的かつ持続的な配当水準の向上(継続的な増配)を目指していきます。この方針に基づき、2021年度は、2020年度より2円増配の46円(配当性向43.2%)の配当を実施する予定であります。また、2022年度の配当については48円(配当性向47.9%)と、6期連続の増配を予定しております。自己株式の取得については、株価状況等を勘案したうえで機動的に検討します。
・資金調達についての方針
引き続きネットキャッシュポジションの維持を原則としますが、手元資金に加えて、戦略的な大型投資案件に備えた借入余力と機動的な資金調達手段(CP(コマーシャル・ペーパー)、コミットメントライン)も確保し、十分な財務柔軟性を維持します。
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