以下の記載事項のうち将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
《経営理念》信頼と限りなき挑戦
2018年に創業100周年を迎え、創業者である浅野総一郎の理念を踏まえ、当社の、現代の存在意義と将来に向けた夢
のある発展を追い求めるため、2013年の持株会社体制への移行を機にグループ経営理念を掲げました。
当社グループは、社会と人々に貢献することが使命と考えます。そのためには「継続ある事業基盤の確立」と「不朽
なる技術の進展」は不可欠であります。ステークホルダーからの信頼確保を第一に、研究開発体制の整備、M&Aや海外
進出を含む新規事業への積極的な展開を図りながら、新製品の開発と新規事業の開拓を行ってまいります。
社員一同、世界に信頼される「カーリットグループ」となるよう、飽くなき挑戦を日々積み重ねてまいります。
(2)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループでは2022年度を初年度とした新中期経営計画「Challenge2024」を策定しました。前中期経営計画「ワクワク21」では、「利益指向で事業の足場固めを積み重ね、新たな取り組みに向けて経営資源を投入する」ことを掲げ、諸施策を遂行してまいりましたが、米中貿易摩擦や新型コロナウイルス感染症の拡大等の外的要因と、事業の絞り込みが不十分で製品開発や新事業計画が変更となった等の内的要因により、数値目標に対し乖離が発生いたしました。
新中期経営計画「Challenge2024」では、前中期経営計画の振り返りを踏まえた経営方針として「事業ポートフォリオの最適化により企業価値の向上を目指す」を掲げ、その方針に沿った「成長事業の加速化」、「研究開発の拡充」、「既存事業の収益性改善」、「ESG経営の高度化」、「事業インフラの再構築」という5つの戦略を軸に具体的な施策を実行してまいります。
「成長事業の加速化」及び「研究開発の拡充」では、今後も活況が続くと予想できる半導体・電子機器・5G関連材料の需要と、EV化を起点に市場の拡大が見込める自動車関連需要の2つに焦点を当て、生産設備の新設や増強、国内外マーケットに向けた販売促進、当社コア技術の発展・応用の模索を進めてまいります。
「既存事業の収益性改善」では省エネ・省人化設備への更新や、事業ポートフォリオに基づいたリソースの適切な配分を進め、当社の利益を生み出す構造に改善してまいります。
また、当社グループは「社会が何を求めているか」、「社会の成長にどう寄与するか」といった社会課題を、事業活動を通じて解決することを使命とし、「モノづくり」を通じて「社会」と「会社」の持続性ある相互成長の関係を築き上げていくよう努めています。その実現のため、数ある社会的に影響のある項目について、ステークホルダーにとっての重要性、自社にとっての重要性、環境・社会にとっての重要性という3つの視点から4つのマテリアリティ(重要課題)を特定しております。
新中期経営計画「Challenge2024」に掲げる5つの戦略において「ESG経営の高度化」、「事業インフラの再構築」の2つの戦略では、気候変動対策、カーボンニュートラルへの挑戦、ステークホルダーとのコミュニケーション、財務戦略の明確化、DX推進といった具体的な施策を進めることで、マテリアリティに取組んでまいります。
これら5つの戦略を実行し、当社グループの社会貢献及びコーポレート・ガバナンスのさらなる充実を進めることで、「利益ある成長」と「ESG」を具現化し、社会に信頼される企業グループを目指してまいります。
足元の社会経済環境は、引き続き新型コロナウイルス感染症の収束の目途が立たない状況が続いております。人々の行動様式の変化に伴う需要の変化、5G・IoT・AI等の普及・浸透に伴う半導体関連の需要拡大と不足による各産業への影響、中国のコロナ政策の影響等、予断を許さない状況は継続しておりますが、世界経済は北米を中心としてコロナ禍を克服し、緩やかに回復に向かうと想定しております。
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う対策の立案・実施に当たっては、従業員とその家族、お取引先の皆さま、地域
社会等のステークホルダーの安全を最優先としております。その上で、政府の方針や行動計画等に則り対応方針を決定
し、社会活動等の維持に向け感染リスク軽減策を講じ、適切な事業継続を図っております。
また、2022年2月のロシア・ウクライナ情勢の悪化を発端とし、世界的な資源サプライチェーン、エネルギー政策等に大きな変動リスクが発生しております。当社グループでは当情勢を受けた資源価格の高止まり、欧州中心に景気が下振れし、金融市場がリスクオフするメインリスクシナリオを想定し、当社グループに与える影響と対策について、グループリスクマネジメント委員会、及び取締役会での議論を重ねております。これらの施策の推進により社会経済環境の変化に対し、迅速かつ適切な対応をとってまいります。
これらの社会背景、経済環境を踏まえ2023年3月期の連結業績予想を以下の通りとし、2022年5月13日付の「2022年3月期決算短信」にて開示いたしました。
(%表示は、通期は対前期、四半期は対前年同四半期増減率)
|
売上高 |
営業利益 |
経常利益 |
親会社株主に帰属 する当期純利益 |
1株当たり 当期純利益 |
||||
|
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
百万円 |
% |
円 銭 |
第2四半期(累計) |
17,000 |
6.2 |
700 |
△32.7 |
800 |
△29.7 |
550 |
△46.1 |
23.10 |
通期 |
35,000 |
3.3 |
2,500 |
△0.3 |
2,700 |
△1.6 |
1,900 |
△18.7 |
79.90 |
新型コロナウイルス感染症、ロシア・ウクライナ情勢の影響は現時点で可能な限り見込んでおりますが、今後の動向につきましては、引き続き当社グループの事業への影響を慎重に見極め、今後修正の必要が生じた場合は速やかに開示いたします。
(3)気候変動への対応(TCFDへの取り組み)
①気候関連に対する基本姿勢
企業活動を継続していく上で、健全な地球環境は不可欠であり、気候変動への対応は当社が取り組むべき重要な経営課題の一つと位置付けています。
当社は、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)に賛同し、署名を行いました。その提言に則り、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)やWWF(世界自然保護基金)などの情報を基に、世界の平均気温を産業革命以前と比べ、このまま対策を講じず4℃上昇する「4℃シナリオ」と、2℃に抑制するための施策としての「2℃シナリオ」について、リスク・機会の側面から分析を開始しました。
持続可能な社会の実現を標榜した中期経営計画「Challenge2024」の中で、指標をより具体化するなど、今後も引き続き、分析の精度向上による更新や検討範囲の拡張を進めるとともに、分析結果を経営・事業戦略へ具体的に反映させることに努め、経営のレジリエンス(強靭性)の向上につなげてまいります。
②TCFD提言による開示推奨項目
当社は、TCFD提言において推奨される、以下の4つのテーマに関して、気候変動関連情報を開示してまいります。
a.ガバナンス
気候変動をはじめとする社会課題の解決に向けた企業への要請が急速に高まりを見せ、ESGを経営に反映させることの重要性が増しています。
当社グループにおきましても、サステナビリティ(ESG要素を含む中長期的な持続可能性)の実現に向け、成長を図りつつ社会価値の創造を追究することが不可欠と考え、以下のとおりの推進体制により、推進施策を講じています。
当社は代表取締役社長を委員長、取締役・執行役員の全員と社外監査役を委員とする、取締役会の監督の下でのサステナビリティ委員会を設置し、活動を推進しています。
本委員会において、気候変動対策をはじめ、サステナビリティに関する方針・戦略・計画・施策の検討・立案、グループ各社の課題の抽出と強化・改善に向けた方策の明確化等の審議を行っています。事務局は広報・サステナビリティ推進部が担い、審議された内容は適宜グループ経営戦略会議・経営会議・取締役会に報告されます。取締役会においてサステナビリティ課題への積極的・能動的な議論を推進します。
b.戦略
当社は、TCFD提言に則りIPCC(気候変動に関する政府間パネル)やWWF(世界自然保護基金)などの情報をもとに、世界の平均気温を産業革命以前と比べ、このまま対策を講じず4℃上昇する「4℃シナリオ」と、2℃に抑制するための施策としての「2℃シナリオ」について、リスク・機会の側面から分析を開始しました。
2020年度は、日本カーリット㈱・ジェーシーボトリング㈱・㈱シリコンテクノロジーの主要3社におけるインパクト、影響のイメージの洗い出しを行いました。財務インパクトについては現在算定・精査中で、可能となった時点で速やかに開示します。持続可能な社会の実現を標榜した中期経営計画「Challenge2024」のなかで、CO2排出量の削減等の指標をより具体化すること、検討範囲の拡張を進めることなどの充足策を推進します。分析にあたってのシナリオとその結果につきましては、随時精度を向上させ、当社ホームページの掲出情報を更新してまいります。
気候変動は、当社の事業へのリスクである一方で、製品・サービスの提供価値および企業価値を高める機会につながると認識しています。「経営理念《信頼と限りなき挑戦》の下、モノづくりやサービスの提供を通じて社会課題の解決に貢献し、持続可能な社会の実現を目指します」という当社のサステナビリティ基本方針に基づき、脱炭素化や気候変動の抑制に向けた製品・サービスの提供、新規事業創出などを促進してまいります。
気候変動によるリスク・機会は時代とともに変化するものと認識し、分析・評価の精度の向上を図り、優先度の高い主要インパクトの特定と対応策の検討を実施します。その結果は、取締役会が監督し、適切に経営・事業戦略へ具体的に反映させることに努め、経営のレジリエンス(強靭性)の向上につなげます。
c.リスク管理
自然災害・感染症の発生等により、経済環境に大きな影響を及ぼす可能性があり、また生産設備や人的資源への損害の発生、顧客の需要動向に大きな変化が起こる可能性があり、これらが当社の業績および財務状況に大きな影響を及ぼす重要なリスク要因の一つであると認識しています。
リスク管理をより一層強化し、適切な策を講じるために、従前より、経済環境への大きな影響については経営戦略室が、人的被害の大きな影響については人事部と総務部が、リスク管理を行ってまいりました。新たに、生産活動や品質へのリスク管理の強化を図ることを目的に、2021年度より生産・品質統括部を設置しました。
また合わせ、代表取締役社長を委員長とするグループリスクマネジメント委員会を設置し、気候変動を含む総合的なリスク管理体制を構築しました。
グループ各社から集約されたリスク情報がタイムリーに経営陣に報告され、グループ全体におけるリスクの漏れのない検出、対策への優先順位付け、経営判断を滞りなく実行できるよう、今後も一層注力します。
d.指標と目標
気候変動による地球温暖化の影響で、集中豪雨、熱波・干ばつなどの異常気象が発生し、洪水や渇水など自然環境に大きな被害をもたらしています。当社グループは、特に水資源等豊かな自然の恵みの上に成り立っていることから、気候変動は解決すべき重要な社会課題の一つと認識しています。
COP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)にあたり、日本はGHG(温室効果ガス)の排出削減目標を提出しました。当社もこれに沿って2030年度までに2013年度対比(Scope1,2)で46%削減し、2050年までに実質ゼロとする目標を設定しました。削減に向けた積極的な取り組みを推進します。
気候変動を緩和させるべく、省エネルギー対策や再生可能エネルギーの活用などを促進し、2050年までにカーボンニュートラルの実現に向け、温室効果ガスの排出量削減に積極的に取り組んでいきます。また、エネルギー使用量・CO2排出量データの開示範囲の向上に努めていきます。
具体的な数値目標とその実現に向けた省エネルギー対策、再生可能エネルギーの活用促進施策につきましては現在精査中で、開示が可能となった時点で速やかに当社ホームページ上に掲出します。
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