文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1)会社の経営の基本方針
当社グループは創業以来、人と企業を結ぶ総合人材サービスを提供しており、人材をテーマに社会に貢献すべく事業を展開しております。今後も「人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献する」企業として成長を続けてまいります。
当社グループの事業については、「第1 企業の概況 3 事業の内容」に記載のとおりでありますが、これら各事業において、顧客企業や求職者等の市場ニーズに迅速に対応すべく事業の強化・営業体制の整備等を図りつつ、さらにグループ内での情報共有や連携による相乗効果を通じて経営効率の向上に邁進してまいります。
(2)目標とする経営指標
当社グループは事業規模の拡大を目指しつつ、独自の営業網や転職希望登録者の獲得ノウハウ等、グループ内の事業資産の有効活用により、収益力重視の体制を構築していく方針です。国内外におけるコロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻、資源価格の高騰等により、依然として景気の先行きは不透明な状況ではありますが、引き続き事業規模の拡大及び収益力向上に取り組むことで、安定的な成長と堅実な財務体質を構築し、中長期的に売上高経常利益率及び自己資本当期純利益率(ROE)の向上を目指してまいります。
(3)中長期的な会社の経営戦略
当社グループは、総合人材サービス・情報サービス企業としての業容拡大に向けて、主力事業である人材サービス事業の一層の強化を図るとともに、その他の各事業についても中長期的な成長を目指してまいります。
また、各事業において新たなサービス領域の開拓や新商品・サービス・ビジネスモデルの開発に取り組み、市場ニーズの変化に迅速に対応できるよう営業体制の整備を図っていくとともに、事業間での連携を強めることで相乗効果を発揮してまいります。
さらに、海外事業の推進に向けて海外各社と国内事業との連携を強化し、国際間の転職支援(クロスボーダーリクルートメント®)市場の開拓を進めることで、世界中でHR(ヒューマンリソース)サービスを展開する「世界の人事部®」構想の実現を目指してまいります。
(4)経営環境
足元では、新型コロナウイルスの感染拡大がワクチン接種の進捗や治療薬の開発・普及により、徐々に収束に向かうことが期待されますが、その時期については依然として不透明な状況です。また、ウクライナを巡る不安定な国際情勢や、エネルギー価格及び原材料価格の上昇等の景気下押しリスクも存在していることから、景気の先行きについては引き続き慎重な見方が必要であると予想されます。
雇用情勢につきましては、既にコロナ禍においても、アフターコロナを見据えて競争力を高めるために専門性の高い人材や即戦力の人材をはじめとして採用を強化する動きが見られましたが、こうした動きは今後も幅広い分野で続くと考えられます。また、コロナ禍による規制の影響を受けやすい飲食・販売・サービス業等の業界においても、新型コロナウイルス感染拡大防止に関する規制の解除等に伴って採用ニーズは回復してきております。これらに加え、少子高齢化に伴う構造的な人手不足も依然として解消されていないことから、国内の採用ニーズは今後更なる改善が予想されます。
(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
当社グループは「関わった人全てをハッピーに」という経営理念に基づき、「人材・情報ビジネスを通じて社会に貢献する」を事業理念として、既存事業におけるリニューアルや新サービスを提案するとともに、注力する特定の分野においては投資を継続し、深耕することで当該マーケットでのNo.1を目指してまいります。また、グローバルHR(ヒューマンリソース)ビジネスの展開として、海外進出先で人材採用や人事労務課題に直面する日系企業が増える一方、日本国内でも少子高齢化に伴う構造的な人手不足が予想される中、国内外各企業の人材採用をはじめとする様々な人事課題の解決に貢献する「世界の人事部®」構想の実現を目指して、積極的に展開してまいります。
さらには、これらの事業を推進するための人材採用及び育成やM&Aにも注力していくことで、当社グループの成長性を高めてまいります。
事業別の課題は次のとおりであります。
(人材サービス事業)
①人材紹介
人材紹介におきましては、建設・土木や電機・機械、製薬等の特定領域における専門性の高い職種の人材紹介、医療機関や介護施設等を対象とした看護師紹介ともに、転職希望登録者獲得をはじめとする競合他社との競争激化が続いております。こうした状況に対し、運営サイトの機能強化及びコンテンツ拡充によるユーザビリティや満足度向上に加え、効果的なプロモーションの実施により、各種サイトのブランド力向上や転職希望登録者の獲得を促進してまいります。また、既存領域におけるサービスエリア拡大や新規領域の開拓、顧客企業との関係性向上等を通じて競争優位性を高めるとともに、人材採用及び育成強化による若手社員の早期戦力化を図ることで組織全体の競争力を高めてまいります。
②人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等
人材派遣・紹介予定派遣・業務請負等におきましては、注力分野である看護師及び保育士等の医療福祉分野の人材ニーズが高い水準で推移する中、新たな派遣希望登録者の獲得や面談数の確保が課題となっております。こうした状況に対し、看護師紹介事業との連携による派遣サービスの浸透に加え、医療福祉分野を対象とした「メディケアキャリア」、保育士を対象とした「ほいとも」といった運営サイトのプロモーション強化や情報量の充実等により派遣希望登録者獲得を促進し、面談数の確保に繋げてまいります。さらに、人材ニーズが高止まりする売り手市場が続く中、人材育成の強化によりコンサルティングの質向上を図り、派遣希望者や派遣先施設等からの信頼を高めることで、継続的な派遣利用に繋げてまいります。
(リクルーティング事業)
リクルーティング事業におきましては、当社取り扱いメディアにおける競合激化に加え、アグリゲーション型(特定の情報を複数のWebサイトから収集する検索エンジン型)や成果報酬型の求人広告サービスの台頭、人材紹介等、人材採用手法の多様化に伴い、求人広告の取り扱いに関する競争環境は厳しさを増しております。こうした状況に対し、当社内に蓄積されたデータベースを活用し、顧客企業の採用成功に向けて最適な採用プロセスを提案してまいります。この採用プロセスにて必要となる求人広告の提案に加え、採用戦略の構築や企業ブランディングの企画提案、それに伴うツールの制作、採用スタッフの育成等、求人広告以外のサービスを強化することで、総合的に顧客企業の採用課題の解決を支援してまいります。さらに、これらの取り組みを推進するための人材採用及び育成強化にも取り組み、事業全体の拡大を図ってまいります。
(情報出版事業)
情報出版事業におきましては、Web広告の浸透に伴い、販促及び求人いずれの領域においても紙メディアからWebメディアへの広告手法のシフトは続いていることから、情報誌への広告出稿は減少していくことが予想されます。こうした状況に対し、メディアサービスにおいては顧客の販促及び採用課題解決に向け、紙メディアとWebメディアを連動させたサービス提案や拡販に取り組むことで競合他社との差別化を図るとともに、新たなWebサービスの開発にも取り組み、メディアサービスの業績を下支えしてまいります。一方で、ポスティングサービスにおける新規顧客開拓強化、コンシェルジュ(対面相談サービス)の営業体制やプロモーション強化等を通じて業績拡大に努め、生活情報誌をはじめとするメディアサービス中心の売上構成からの改善を図ってまいります。
(IT・ネット関連事業)
IT・ネット関連事業におきましては、テレワークの普及やHRテックの活用、女性や高齢者の活躍促進等を背景に、人事労務に関する課題は多様化、複雑化が進む中、人事・労務に関する情報ポータルサイト「日本の人事部」の重要性はさらに増すと考えております。こうした状況に対し、人事労務課題解決のための掲載情報の質向上及び情報量の拡大、マッチングの促進等により、「日本の人事部」の利用価値や満足度を高め、さらなるユーザー拡大及びブランド浸透を図ってまいります。
システム開発及びラーニング分野では、企業のDX推進等によりITエンジニアの市場価値や採用ニーズが高まる中、システム開発に携わるエンジニアや実務経験を持つ研修講師の獲得及び定着、さらに業績拡大に向けた他社との差別化が課題となっております。こうした状況に対し、入社後の育成を前提としたポテンシャル採用を含むエンジニアの採用強化やビジネスパートナーの活用等に加え、システム開発においてはDX分野における得意領域を拡大することで、エンジニアの成長や働きがいを促し、定着を図るとともに業績拡大にも繋げてまいります。また、ラーニング分野では今後研修ニーズの拡大が予想されるDX関連の研修開発を進め、春の研修繁忙期以外の業績向上を図ってまいります。
(海外事業)
海外事業におきましては、ゼロコロナ政策を行う中国を除く各国ではコロナ禍に対する規制が徐々に緩和され、経済活動も正常化に向かいつつあります。しかしながら、新型コロナウイルスの感染再拡大、それに伴う国際間の移動制限への懸念は依然として残っており、現地日系企業の採用ニーズも、即戦力となる現地在住の人材へのニーズが中心となっております。こうした状況に対し、運営サイトのコンテンツ充実やユーザビリティ向上、SNSの活用、セミナー開催、人事労務関連情報の配信、Webプロモーション等を通じて、現地在住の転職希望登録者の獲得に取り組んでおります。その一方、コロナ禍の収束に伴う国際間移動の正常化及び各国における海外人材の採用ニーズ回復局面を見据えて、米国・英国・メキシコ・日本の4カ国間の連携強化を進め、国際間の転職支援(クロスボーダーリクルートメント®)の再開に向けて事業基盤を固めてまいります。
なお、中国においては、新型コロナウイルス感染拡大を受け、ゼロコロナ政策によるロックダウンが行われ、経済活動の停滞、景況悪化により雇用情勢は厳しい状況が続いております。こうした状況に対し、ロックダウン解除後の景気回復局面を見据え、人材紹介については登録者獲得に向けた運営サイトのリニューアル、人事労務コンサルティングについては既存顧客への営業強化やサービス内容の拡充、さらにそれらを推進する人材の採用及び育成に取り組んでまいります。
さらに、当社グローバル事業本部が中心となりこれら海外子会社の営業支援を行うとともに、海外各社が連携して人材サービスを展開できるビジネスモデルの構築を進めることで、グループビジョンである「世界の人事部®」構想の実現を目指してまいります。
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