課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社は、「The Support Tech Company」として「テクノロジーでサポートを新しく。」というミッションのもと、大手コンタクトセンター向けチャットサポートシステムを中心としたコミュニケーションプラットフォームの開発を行っております。

 

(2) 当社の強み

当社SaaSプロダクトは、下記に記載の強みから、金融、メーカー、運輸、情報通信、自治体など様々な業種、業態の大企業・先進プレーヤーで導入されております。

① 大規模コンタクトセンターのオペレーションを効率化するテクノロジー

当社のSaaSプロダクトの開発プロセスにおいて、リリース前の段階から、当社製品のユーザーの大企業が機能性や仕様の検討に参画しております。メーカー、金融機関、BPO企業、システムインテグレータなど様々な業種の先進的な大企業から、コンタクトセンターのオペレーション視点での意見を取り入れることにより、大規模コンタクトセンターに最適な仕様を開発することが可能となります。具体的には、モニタリング・統計・レポーティング機能、管理者・スーパーバイザー支援機能、在宅オペレーション機能などがあります。

また、当社におきましては、コンタクトセンターのオペレーションを効率化するオペレーション支援AI「ムーア(MooA)」を独自開発しております。オペレーション支援AI「ムーア(MooA)」は、ユーザー企業の対話ログや操作ログを学習し、オペレータや管理者向けの様々な支援機能を担う、自社開発の独自アルゴリズムと、既存の外部オープンソースや外部AIを組み合わせたサポートテクノロジーのコアとなるAI技術です。問い合わせ内容を分析して、チャットのやり取りに意図せず入り込んだ個人情報を自動で摘出する「自動個人情報抽出機能」、チャット利用者の感情スコアを算出して管理者・オペレータに向けて表示する「感情分析機能」などが搭載されております。

 

② システムとコンサルティングの両輪で顧客の成功まで支援するカスタマーサクセス

当社では、SaaSプロダクトの提供にとどまらず、初期導入サポート(初期診断支援・目標値設定・プロジェクト設計等)、カスタマイズ開発、オペレータ及び管理者向けトレーニング、コンサルティング、KPI分析サポート、AI教師データ作成、PDCA支援などのサービスを提供しております。コンタクトセンターの運営ノウハウを熟知したメンバーによって、企業ニーズをKPIにより可視化し、ROIの実現に向けた施策等をアドバイスしております。また、顧客企業からのリクエストに応じ、当社SaaSプロダクトと他システムとの連携機能の開発や複雑な自動応答の開発などをカスタマイズして提供しております。企業のニーズを理解し、様々なシステムとの連携に対応する事が可能です。顧客ニーズを機敏に実現できるチームを有していることは当社の差別化要素の一つであると考えております。このように、検討段階から運用後のすべての期間において幅広いサービスを提供することにより、顧客の成功を支援してまいります。

 

③ 業種・地域の垣根を越えた顧客企業へのアクセスを実現する商流網

当社は当社SaaSプロダクト及びサービスを顧客企業に提供しておりますが、直販営業に加えて、当社からパートナーにサービスを卸し、ユーザー企業に再販する販売代理店との協業を行っております。具体的には、株式会社ベルシステム24、りらいあコミュニケーションズ株式会社、株式会社TMJなどのコンタクトセンターのオペレーションを担うBPO企業、アイテック阪急阪神株式会社、NECネッツエスアイ株式会社、株式会社日立システムズ、岩崎通信機株式会社などのコンタクトセンターのシステム構築を担うシステムインテグレータ企業、そして株式会社PKSHA Communication、株式会社エーアイスクエア、株式会社サイシード、株式会社Studio OusiaなどのAI・ツール提供企業と、40社を超える企業と販売代理店契約を締結しております。

また、エヌ・ティ・ティ・コムウェア株式会社、富士通株式会社、トランス・コスモス株式会社へは当社商品をOEM供給しており、当該企業(又は関連会社)のブランドにてエンドユーザーへサービスを提供しております。この3つの商流を構築することにより、当社だけではアクセスが容易ではない、金融、メーカー、官公庁・自治体などの様々な業界、また様々な地域のお客様にサービスが提供できるようになります。また、大規模コンタクトセンターと関係性を構築しているBPO企業、システムインテグレータ企業、AI・ツール企業それぞれの業界トップ企業とのセールスパートナー網を構築することにより、顧客企業の各意思決定部門へ的確にアプローチすることが可能となります。特に、BPO企業においてはシェアトップ上位10社(注1)中、9社が当社セールスパートナーとなっております。

 

(注1)BPO企業のシェアトップ上位10社は、「矢野経済研究所 コールセンター市場総覧2021」の「広義のテレマーケティング市場 主要企業売上高推移・予測」におけるシェア上位10社。

 

(3) 目標とする経営指標

当社は、売上高の継続的かつ累積的な増加を実現するために、当社のSaaSサービスから生み出されるサブスクリプション型のリカーリングレベニュー(経常的に得られる当社製品の利用料)を重視した経営を行っております。契約ドメイン数、顧客当たりのリカーリングレベニュー及び解約率を重要な指標とし、中長期の売上高及び利益の成長を実現し、継続的な企業価値の向上を目指します。

 

(4) 経営環境

当社のSaaSソリューション事業はCRMソリューション市場に属しています。2022年度のCRMソリューション市場は8,967億円となっており、今後もゆるやかに拡大基調が続くものと考えられており、2026年度までの年平均成長率は8.5%と予測されています(デロイト トーマツ ミック経済研究所株式会社マーテック市場の現状と展望2022年度版 クラウド型CRM市場編(URL:https://mic-r.co.jp/mr/02490/))。

一方で、国内におけるオペレータ対応のチャットサポートを利用したことがある消費者の比率は6%であり、アメリカ合衆国47%、イギリス55%など欧米諸国と比較して低位となっています(出所:Microsoft 「 2017 STATE OF GLOBAL CUSTOMER SERVICEREPORT 」 WHICH OF THE FOLLOWING CUSTOMER SERVICECHANNELS HAVE YOU USED?)。こうした状況からも、チャットサポートの拡大余地の大きさが見て取れ、当社の成長余地も大きいものと考えております。

また、広義には当社のビジネスはコンタクトセンター向けBPOサービス市場を対象としておりますが、当該コンタクトセンター向けのBPOサービス市場においては、オペレータの採用難、局地的な風水害への対応、電話やメール離れによる旧来の問い合わせチャネル利用率の低下などの課題があります。また、今回のコロナ禍により、全国レベルでのBCP対応、店舗や対面窓口業務をコンタクトセンターで引き受ける必要性、3密の職場改善の必要性など、新たな課題が浮き彫りになりました。2022年度のコンタクトセンター向けのBPOサービス市場の市場規模は1兆992億円ほどに成長する見込みであり(矢野経済研究所 コールセンター市場総覧2021)、チャットボット及びチャットサポートの導入によるコンタクトセンターのDX化により、オペレーションの効率化が図られ、今後、同市場の一部がコンタクトセンター向けCRMソリューション市場に取り込まれていくものと考えております。

さらに、チャット等のテキストのみならず音声対応(電話対応)においても応対の自動化が進んでいくと考えられております。音声(電話・AIスピーカー)をインターフェースとしたAIボットはこの先数年後から急速に発達していくと考えられており、電話システムのクラウド化と、音声認識技術の発達が音声領域におけるAI活用の場を拡大していくものと考えおります。

 

(5) 中長期的な成長戦略

① 既存事業ドメインでの顧客単価向上及び顧客数の拡大

当社は、安定的な収益の確保及び持続的な成長を目指すために、SaaSサービスから経常的に生み出されるサブスクリプション型のリカーリングレベニューを継続的に成長させていくことを基本方針としております。その達成状況を判断する上で、ARR(注1)、サブスクリプション売上高(注2)、サブスクリプション売上高比率、契約数、契約あたりの平均MRR(注5)、解約率(注6)を重要な指標としております。当該収益を継続的に成長させていくために、既存の契約あたりの平均MRRの向上及び契約数の拡大を図っていきます。具体的な方策としては、金融機関や各業界を代表する大企業をターゲットに、コンタクトセンターが抱える課題に対するコンサルティングおよび最適なソリューションの提供を通じて、顧客の問い合わせ対応でのノンボイス(チャットをはじめとしたテキストベースのコミュニケーション)対応比率の上昇をサポートし、各業界においてベストプラクティスとなる大型のシンボリック案件の創出を図ります。大型案件の獲得による平均MRRの向上に加えて、シンボリック案件に追随する同業他社、他業界に対する横展開により契約数の拡大を目指します。その実現に向けて、インサイドセールス及びフィールドセールスの人員増強による当社の営業体制の拡充、既存代理店の販売力向上サポート及び新規代理店の開拓による代理店商流の強化、カスタマーサクセス活動の強化によるチャーン抑止など、営業およびサービス提供体制の強化を図ります。

 

 

ARR(注1)の推移

 

2021年8月期

2022年8月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

ARR(千円)

490,933

526,741

580,420

629,791

671,979

712,187

715,943

772,556

うち直販

(千円)

145,800

179,343

201,695

232,470

257,401

277,806

287,704

319,848

うち代理店(千円)

174,738

192,981

207,171

222,490

238,373

242,773

240,040

262,760

うちOEM
(千円)

170,395

154,417

171,553

174,832

176,204

191,606

188,197

189,947

 

(注1)ARR: Annual Recurring Revenueの略語であり、毎年経常的に得られる当社製品の月額利用料の合計額。四半期末月のMRR(毎月経常的に得られる当社製品の月額利用料の合計額)を12倍することにより算出。

 

サブスクリプション売上高(注2)の推移

 

2020年8月期

2021年8月期

2022年8月期

サブスクリプション売上高(千円)

364,379

543,969

702,133

売上高全体に占める割合(%)

38

44

45

 

(注2)経常的に得られる当社製品の利用料の12ヵ月間の合計額。

 

サブスクリプション型のリカーリングレベニューに関わる契約数(注3)及び契約あたりの平均MRR(注4、注5)の推移

 

2021年8月期

2022年8月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

契約数

163

184

209

233

249

264

266

272

契約当たりのMRR

(千円)

164

169

163

163

166

164

165

178

 

(注3)OEMを除く。

(注4)MRR: Monthly Recurring Revenueの略語であり、毎月経常的に得られる当社製品の月額利用料の合計額。

(注5)OEMを除く。四半期末月のMRRを契約数で除することにより算出。

 

直近12ヵ月平均解約率(注6)の推移

 

2021年8月期

2022年8月期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

解約率(%)

1.23

1.16

1.02

0.99

0.75

0.97

1.00

1.15

 

(注6)OEMを除く。「当月の解約による減少したMRR÷前月末のMRR」の12ヵ月平均。

 

② コンタクトセンターにおけるセキュリティ課題を解決する機能開発

企業のお客さま窓口やコンタクトセンターにおいて、本人確認を伴う問い合わせ業務が多くを占めおります。特に、生命保険会社・侵害保険会社の問い合わせにおいては、9割以上が本人確認を必要とする問い合わせになっております。(コールセンタージャパン編集部「コールセンター白書2020」のデータを元に算出)一方で、企業のセキュリティポリシーにより個人情報の取扱いが、電話、対面、書面のみに限られるケースがあり、チャットサポートのシステム導入の障害となっております。当社では、コールセンターの運営会社が個人情報を安心・安全に取り扱えるよう、セキュリティ課題を解決するサポート支援ツール群「セキュリティ スイート(Security Suite)」を開発・提供していく方針です。第一弾として、2021年10月にセキュリティ・コミュニケーション機能「セキュア パス(Secure Path)」を開発し、提供を開始いたしました。Secure Pathを利用することにより、WebやLINEでのチャットサポートにおいて、オペレータが顧客の個人情報を安全に受け取り、本人確認や個人情報に基づいた個別対応を行うことができます。Secure Pathを利用した個人情報の取得・管理においては、クレジットカード情報の取扱いに際して求められる厳密なセキュリティ基準であるPCI DSSを遵守した基準のもとで安全に取り扱われます。今後は、「自動本人確認」や「eKYC連携」などの新たなセキュア機能の開発を計画しております。

 

③ 行政サービス、カスタマーエクスペリエンス領域での新規事業への拡大

当社は、上記の通りCRMソリューション市場を主たるマーケットとしておりますが、当社のSaaSサービスはカスタマーサポート領域のみではなく、行政サービスやセールス&マーケティングでの利用も進んでおります。2022年9月には自治体向けビジネスを行うメンバーを既存のセールスチームから独立させ、GovTech事業として事業化しております。行政サービスにおける自治体と市民のコミュニケーションを円滑にするソリューションを中心に既存のSaaSプロダクトに加えて、自治体向けに特化した新機能の開発・提供を予定しています。またこれまでの事業を通じて培った顧客接点の知見を元に、セールス&マーケティングを含むカスタマーエクスペリエンス領域での新規事業の立ち上げを検討いたします。

 

(6) 事業上及び財務上の対処すべき課題

① 新技術への対応、開発体制の強化

当社は、最先端のAIテクノロジーに対応した新しいサービスを開発することが、事業展開上重要な要素であると認識しており、新しいテクノロジーに対応できる開発体制を構築することが経営の重要な課題であると認識しております。そのため、最新テクノロジーの把握、エンジニアスタッフの教育、R&D(研究開発)専門の組織の強化など、技術習得活動、開発活動を強化してまいります。

 

② 認知度及びブランド力の向上

当社のSaaSサービスについては、導入企業から一定の評価を受けておりますが、認知度の向上及びブランド力の強化は重要な経営課題であると認識しております。顧客ニーズへの対応、サービスの強化に努める一方、営業活動、広告宣伝活動を積極的に展開し、認知度向上に取り組んでまいります。

 

③ カスタマーサクセスの実現について

当社の主力サービスである「モビエージェント(MOBI AGENT)」は、コンタクトセンター等の運営をサポートするチャットサポートシステムですが、AIの強み、人の強みを活かすことでコンタクトセンターの応対効率の改善、オペレータのストレス軽減を行い、効率的な運営を実現することが可能です。

当社サービス導入後も継続的に利用していただくためには、当社サービスを利用することによって顧客自身に成功体験、付加価値を提供できることが重要であると考えております。そのため、組織内にカスタマーサクセス実現を目的とした担当者を設置し、全社的に実現体制の構築、取り組み方の共有を行うなどを行ってまいりましたが、引き続き体制強化に取り組んでまいります。

 

④ コーポレート・ガバナンス体制の強化

当社が継続的な成長を維持するためには、事業拡大だけではなく、コーポレート・ガバナンス体制の強化と内部管理体制、コンプライアンス体制を強化することが重要であると認識しております。そのため経営の公平性、透明性、健全性を確保すべく、社外取締役、監査役監査体制、内部監査、会計監査及び内部統制システムの整備等によりその強化を図ってまいります。

 

⑤ 人材の確保、育成について

当社の展開しているSaaSサービスは、自社開発を行っており、優秀な人材による開発体制が構築できておりますが、今後事業規模を更に拡大していくためには、優秀な人材の獲得と育成が必要であります。特に技術力のあるエンジニアについては、採用が困難であります。そのため、人事専任者を設置して採用を強化するとともに、評価制度、社内キャリアパス制度を構築することや教育研修を充実していくことで人材の育成に努め、更なる経営体制の強化に努めてまいります。

 

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