業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しているため、当事業年度における経営成績に関する説明に関しては、前事業年度と比較した前年同期比(%)の記載は省略しております。詳細は、「第4 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。

 

Ⅰ 経営成績等の状況の概要

(1)財政状態及び経営成績の状況

 当社は、「驚きを心に」をコンセプトとして、人々の生活が便利に楽しくなるように、AIを活用したサービスをBtoC及びBtoB領域で展開しております。当社が属するAI市場では、ディープラーニング等の機械学習関連アルゴリズムの高度化に加えて、機械学習に利用可能な計算機の能力向上やデータの増加により、更なる成長が続いております。

 当事業年度における我が国の経済状況は、依然として新型コロナウイルスの感染拡大により先行きが不透明な状況が続いているものの、世界経済の持ち直しやワクチン接種の進展を契機に、徐々に回復基調となりました。ただ、今後の先行きについては、引き続き新型コロナウイルスの影響が懸念されるほか、ロシア・ウクライナ情勢等による不透明感が見られる中で、国内外の経済状況や金融資本市場の動向等を注視する必要があると見込まれます。

 当社が所属する情報サービス業界においては、デジタル技術を活用し、業務プロセスやビジネスモデルの変革を行うDX(デジタルトランスフォーメーション)推進に関する需要拡大等が見られた1年となっており、今後も同様の傾向が続くものと考えております。

 このような環境のなか、当社のAI(BtoC)サービスにおいては、藤井聡太竜王の五冠達成に伴う将棋への注目度向上や、アプリ内でのオンライン将棋大会開催・機能追加等の効果により、AIによるサポート機能等を搭載したスマートフォンアプリ「将棋ウォーズ」が引き続き安定した収益を上げました。またAI(BtoB)サービスにおいては、当社のディープラーニング等の機械学習技術を集約したAIサービス「HEROZ Kishin」に関わる業務の標準化を続け、資本業務提携先をはじめとする様々な事業会社へ「HEROZ Kishin」の提供を行いました。当事業年度のAI(BtoB)サービスに関する売上は、エンターテインメント領域におけるゲーム終了や初期設定フィーの獲得遅延等の影響により、前事業年度と比較して減少となってはいるものの、将来的なAI導入を見据えたデータ分析に関するプロジェクトが新たに発生する等、当事業年度の後半にかけて徐々に回復に向かっております。そのほか、高度な機械学習アルゴリズム開発・プロダクト開発のための技術研究を引き続き強化したことや、機械学習用サーバ等設備の購入に伴う減価償却費・通信費の増加、体制変更に伴う採用強化による採用教育費の増加及び中長期的な成長戦略を実現するための先行投資等によって、売上原価、販売費及び一般管理費が増加しております。

 

 以上の結果、当事業年度の売上高は1,482,969千円となり、EBITDA(営業利益+減価償却費+敷金償却)188,857千円、営業利益34,786千円、経常利益87,790千円、当期純利益49,401千円となりました。

 なお、当社はAI関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の経営成績に関する記載は省略しております。

 当事業年度末における資産につきましては、主に流動資産において現金及び預金が1,893,879千円減少し、固定資産において投資有価証券が97,955千円、関係会社株式が1,995,548千円増加した結果、前事業年度末に比べて88,768千円増加し、6,635,384千円となりました。負債につきましては、主に未払法人税等が30,002千円減少し、契約負債(前事業年度は前受金)が39,317千円増加し、流動負債「その他」に含めている未払消費税等が28,244千円増加した結果、前事業年度末に比べて51,121千円増加し、194,626千円となりました。純資産につきましては、主に利益剰余金が33,529千円増加した結果、前事業年度末に比べて37,647千円増加し、6,440,758千円となりました。

 

(2)キャッシュ・フローの状況

 当事業年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、前事業年度末より1,893,879千円減少し、3,660,270千円となりました。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において営業活動の結果得られた資金は、198,146千円(前年同期は360,700千円の収入)であります。

 この主な要因は、税引前当期純利益の計上87,790千円、減価償却費152,729千円、法人税等の支払額50,291千円等によるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において投資活動の結果使用した資金は、2,092,027千円(前年同期は384,522千円の支出)であります。

 この主な要因は、関係会社株式の取得による支出1,995,548千円があったこと等によるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度において財務活動の結果得られた資金は、1千円(前年同期は15,252千円の収入)であります。

 これは、新株予約権の発行による収入1千円があったことによります。

 

(3)生産、受注及び販売の実績

① 生産実績

 生産に該当する事項がありませんので、生産実績に関する記載はしておりません。

 

② 受注実績

 提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

 

③ 販売実績

 当事業年度の販売実績は次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自 2021年5月1日

至 2022年4月30日)

金額(千円)

前年同期比(%)

AI関連事業

1,482,969

合計

1,482,969

 (注)1.当社の事業セグメントは、AI関連事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載はしておりません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2020年5月1日

至 2021年4月30日)

当事業年度

(自 2021年5月1日

至 2022年4月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Apple Inc.

485,230

31.2

516,944

34.9

Google Inc.

325,570

20.9

328,472

22.1

 

Ⅱ 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

(1)重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債および収益・費用の報告金額および開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りとは異なる場合があります。

 繰延税金資産については、将来事業年度の課税所得を合理的に見積り、回収可能性を判断した上で繰延税金資産を計上しています。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う影響については、依然として国内外の経済活動への影響は懸念されるところではあるものの、当社の事業活動は正常化しており、現時点においては重要な影響はないものと判断して会計上の見積りを行っております。ただし、同ウイルスによる影響は不確実性が高く、今後の感染拡大状況によっては、翌事業年度において、当該将来事業年度の課税所得の見積り及び繰延税金資産の計上額が変動する可能性があります。

 貸倒引当金、賞与引当金の計上基準については、「第5 経理の状況 1(1)財務諸表 注記事項(重要な会計方針)」の記載のとおり計上を行っております。いずれも過去の実績に基づき算定しており、会計上の見積りの重要性は低く、当社の経営成績等に与える影響は軽微であると判断しております。

 固定資産の減損については、減損の兆候の把握、減損損失の認識及び測定に当たって慎重に検討しております。将来の市況や業績等が悪化した場合には、減損損失が発生する可能性があります。

 当社が保有する市場価格のない有価証券の評価については、出資先の財政状態及び経営成績等を把握し、実質価額が帳簿価額と比較して著しく下落した場合には、回復可能性を検討したうえで相当の減額を行うこととしております。なお、出資先の業績悪化等により、帳簿価額の回復可能性が見込まれない場合には、減損処理を行う可能性があります。

 また、当社が保有する市場価格のある有価証券の評価については、市場価格の下落状況や出資先の財政状態及び経営成績等を把握し、市場価格が著しく下落した場合には、回復可能性を検討したうえで相当の減額を行うこととしております。なお、出資先の業績悪化等により、市場価格が著しく下落し回復可能性が見込まれない場合には、減損処理を行う可能性があります。

 持分法を適用した場合の投資の金額については、関連会社株式(バリオセキュア株式会社株式)の取得により発生したのれん相当額が含まれており、当該株式価値の評価やのれん相当額の効果の及ぶ期間の決定は同社の事業計画等をもとに実施しております。取得時における株式価値の評価及び上記期間の前提となる将来の事業計画等に対して実績が著しく下回った場合には、のれん相当額の減損処理に伴い持分法を適用した場合の投資の金額及び投資利益の金額に影響を与える可能性があります。

 

(2)財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 ①財政状態の分析

 財政状態に関する分析は、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (1)財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりです。

 

 ②経営成績の分析

a 売上高

 当事業年度の売上高は、1,482,969千円となりました。AI(BtoC)サービスでは、藤井聡太竜王の五冠達成  に伴う将棋への注目度向上や、アプリ内でのオンライン将棋大会開催・機能追加等の効果により、スマートフォン向けアプリ「将棋ウォーズ」において安定的な成長が続いております。AI(BtoB)サービスでは、エンターテインメント領域におけるゲーム終了や初期設定フィーの獲得遅延等の影響により、前事業年度と比較して売上高が減少となってはいるものの、将来的なAI導入を見据えたデータ分析に関するプロジェクトが新たに発生する等、当事業年度の後半にかけて徐々に回復しました。

 

b 売上原価、売上総利益、販売費及び一般管理費、営業利益

 当社の売上原価及び販売費及び一般管理費については、人材関連費用、機械学習用サーバ等設備の減価償却費・通信費、AI(BtoC)サービスに係る課金決済手数料、支払手数料及び高度な機械学習アルゴリズム開発・プロダクト開発のための研究開発費が主な内容となります。

 人材関連費用については、体制変更に伴う採用強化により前期を大きく上回りました。また、機械学習用サーバへの設備投資に伴い減価償却費・通信費が増加しておりますが、いずれも当社の中長期的な成長に資するものであると考えております。また、自社プロダクト開発への注力に伴い、研究開発費も増加しております。

 これらの結果、当事業年度における売上原価は923,981千円となり、当事業年度の売上総利益は558,988千円となりました。また、当事業年度における販売費及び一般管理費は524,201千円となり、当事業年度の営業利益は34,786千円となりました。

 

 

c 営業外収益、営業外費用、経常利益、特別損益

 営業外収益及び費用については、バリオセキュア株式会社からの受取配当金が主な内容となります。その他、当社が出資する投資事業組合に関する運用益や、出資分配金等が発生しておりますが、特別損益は発生しておりません。

 これらの結果、当事業年度の経常利益・税引前当期純利益はともに87,790千円となりました。

 

 上記a~cの結果を受け、当事業年度の当期純利益は49,401千円となりました。なお、法人税等調整額を含む法人税等合計は38,389千円であります。

 

(3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容

 キャッシュ・フローの分析・検討内容については、「Ⅰ 経営成績等の状況の概要 (2)キャッシュ・フローの状況」に記載の通りです。

 

(4)経営成績に重要な影響を与える要因について

 「2 事業等のリスク」に記載した通り、事業内容、事業運営・組織体制等、様々なリスク要因が経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。そのため、当社は常に市場動向や業界動向を注視しつつ、優秀な人材の確保と適切な教育を実施するとともに、事業運営体制の強化と整備を進めることで、経営成績に重要な影響を与えるリスク要因に適切な対応を図ってまいります。

 

(5)経営戦略の現状と見通し

 当社を取り巻く経済環境は、新型コロナウイルスの感染拡大による影響が引き続き懸念されるほか、ロシア・ウ

クライナ情勢等による不透明感が見られる中で金融資本市場の混乱等も懸念されるところではあるものの、その一

方で情報サービス業界においては、新型コロナウイルスの感染拡大を契機とした、デジタル技術を活用した業務プ

ロセス・ビジネスモデル変革(DX:デジタルトランスフォーメーション)の需要拡大が引き続き見込まれるものと

認識しております。

 当社が手掛けるAIは日進月歩の高度な技術であり、サービス提供できる人材を有する会社数は限定的となっておりますが、当社では本分野の最先端の知見を有する者が多数所属しております。当社は、将棋AI研究で培った最先端の機械学習ノウハウを蓄積した「HEROZ Kishin」をAI(BtoB)サービスとして拡販しております。今後の方針としても引き続き、自社の強みが生き、かつ今後の拡大が見込まれるAI関連市場に経営資源を投入していく所存であり、上記サービスの成長のため、主に人材採用強化や広告宣伝強化の面において、積極的に投資を進めてまいりま

す。

 具体的には、①AIを活用したBtoC領域で引き続き安定的な収益を伸ばす、②「HEROZ Kishin」によるAIサービスをBtoB領域で伸ばす、③パートナーシップ戦略、④知財戦略、⑤人材採用の5点に注力することで競争優位性を保ち、持続的な成長を目指します。

 

(6)資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。運転資金や自社サーバ購入等を目的とした資金需要は自己資金によることを基本としておりますが、必要に応じて多様な調達手段を検討してまいります。このような方針の元、2019年12月24日に公募増資により調達した資金について、新規人材の採用関連費用、機械学習用サーバ等への設備投資、同サーバ費用等の通信費、オフィス増床の為の敷金及び費用、当社事業に応用可能な周辺技術を有する企業等への投融資、運転資金等にその一部を充当しております。また残額については、2022年6月10日に開示しております「資金使途の変更に関するお知らせ」にて記載の通り、当社事業に応用可能な周辺技術を有する企業等への投融資資金に充当し、当社の中長期的な成長戦略の実現を目指してまいります。

 なお、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は3,660,270千円となっており、有利子負債の残高はありません。

 

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