業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状況、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は、次のとおりであります。

 

① 財政状況及び経営成績の状況

 当連結会計年度におきましては、新型コロナウイルス感染症の影響により、依然として厳しい状況にありながらも、緊急事態宣言の解除やワクチン接種の進展から、国内外の経済活動に持ち直しの動きが見られたものの、当期の後半にかけては新たな変異株による感染の急拡大により、先行き不透明な状況が続いております。新型コロナウイルス感染症の影響をきっかけに、人々の新しい生活様式、リモートワークを前提とした新しい働き方への変化など、社会の変化が急速に進んでおり、通信回線を介してのコミュニケーションの重要性がさらに増大しています。社会を支える生活基盤としての通信回線の整備・拡充は、日本・フィリピンを始め世界中において急務となっております。また、世界経済においては、米国の政策金利引き上げによって急激な円安が進行し、ウクライナ侵攻によるエネルギー・資源価格の上昇に伴いインフレが加速するなど、今後の動向や影響についての予測は困難な状況が続いております。フィリピンにおいても、ウクライナ侵攻でインフレ圧力は一段と高まってはおりますが、フィリピン中央銀行総裁は、「国内経済の安定的な回復が引き続き最優先事項」として、政策金利を維持する意向を示しております。

 当社グループでは、2020年と2021年それぞれにフィリピンとシンガポール・香港を結ぶ海底ケーブル(City-to-City Cable System、以下「C2C回線」)の一部及び各国の陸上回線から成る国際通信ネットワーク(以下「国際通信ネットワーク」)を取得して、キャリアズキャリア(通信事業者のための卸売業者)としてのポジションも確立し、拡大する通信需要に応えると共に、新たな通信回線の取得による国際通信ネットワークの拡充に努めています。

 日本においては、通信トラフィック需要が増加しているコールセンター事業者向けを中心に、顧客毎に最適化したサービスの提供を拡大しています。

 マニラ首都圏地域においてクリニックを運営している「SLACC」では、新型コロナウイルス感染症が蔓延している状況において、お客様が安心して受診できるように徹底した感染予防対策に努めており、来院者数が回復してきています。

 

 以上の結果、当連結会計年度における売上高は10,728百万円(前期比12.7%増)、営業利益は2,456百万円(同27.8%増)となりました。円安に伴い為替差益431百万円を計上したことから、経常利益は2,897百万円(同32.4%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は1,888百万円(同27.0%増)となりました。

 なお、当社グループは当連結会計年度の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

 セグメント別の業績は次のとおりであります。

 

(海外通信事業)

 当期における海外通信事業は、引き続き当社グループが保有する国際通信ネットワークの販売を強化し、マニラ首都圏以外のCATV事業者への提供を行うなど、ストック型ビジネスの拡大を図りました。また、2021年11月にフィリピン・香港間を結ぶC2C回線の使用権をIRU契約にて追加取得し、2021年12月にはキャリアズキャリア案件として、大手通信事業者への提供を開始いたしました。その結果、提供容量などが飛躍的に増加したものの、入金ベースにて売上を計上する案件が前期に比べ減少したことから減収になっております。

当期の海外通信事業の売上高は3,684百万円(前期比13.5%減)、セグメント利益は1,011百万円(同15.8%減)となりました。

 

 

(フィリピン国内通信事業)

 当期におけるフィリピン国内通信事業では、InfiniVAN, Inc.がミンダナオ島などのマニラ首都圏以外の地域での通信網の建設などを進めました。また、2021年12月にはフィリピン国内海底ケーブルをフィリピンの通信事業者と共同建設することを決定するなどフィリピン国内の基幹回線網の敷設を着実に進めております。

当期は引き続き新型コロナウイルス感染症対策のため、依然として多くの企業が在宅勤務を継続したことにより、InfiniVAN, Inc.の収益の柱であるマニラ首都圏での法人向けインターネット接続サービスの新規獲得が低調に推移しました。

 なお、3月21日の改正公共サービス法の成立に伴い、外資による通信分野への投資や進出などが予想されますが、当社グループはこれを新たな収益の機会と捉え、InfiniVAN, Inc.が敷設する中継回線網やフィリピン国内海底ケーブルシステムなどによりフィリピン国内の基幹回線網を充実させ、事業の拡大を図ってまいります。

 当期は、2021年12月には通信機器の販売を行ったこともあり、売上高は1,784百万円(前期比113.2%増)と増収になりましたが、先行投資などによりセグメント利益は224百万円(同10.9%減)となりました。

 

 

(国内通信事業)

 当期における国内通信事業は、当社が日本国内で販売代理権を有するインドのDrishti-soft Solutions Pvt.Ltd.が開発したコールセンターシステム「AmeyoJ」に、大手電気通信事業者が提供している着信課金サービス(フリーダイヤル)を大量に仕入れて、コールセンター事業者向けに秒単位で販売する秒課金サービスを組み合わせたコールセンター向けソリューションの販売が順調に増加いたしました。また、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、コロナワクチンコールセンター向けの通信トラフィックや在宅勤務によるWeb会議などにより、通信トラフィックが増加し、収益が拡大しております。

 この結果、売上高は3,988百万円(前期比7.3%増)となり、セグメント利益は819百万円(同99.4%増)と大幅な増益となりました。

 

(医療・美容事業)

 当期における医療・美容事業においては、前年度に引き続き、フィリピンでも新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響を受けておりますが、レーシック手術などを行うSLACCでは、徹底した感染予防対策による安全な運営を確立し、昨年開設したBonifacio Global Cityの第3院を中心に来院者数が好調に推移し、過去最大のレーシック手術件数となりました。また、2021年11月には、画像診断など日本が得意とする技術を導入した高品質の人間ドック/健診センターを運営する子会社を、2022年に設立することを決定し、2023年第1四半期の開業に向け準備を進めております。

 この結果、売上高は1,244百万円(前期比99.5%増)、セグメント利益は419百万円(同223.4%増)となりました。

 

(その他)

 海外送金事業者の提供する在留外国人向け国際送金サービスの利用促進が主力サービスです。

 売上高は26百万円(前期比65.1%減)、セグメント利益は19百万円の損失(前期は73百万円の損失)となりました。

 

 

 また、財政状態は次のとおりであります。

(資産の状況)

 当連結会計年度末の流動資産は12,023百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,357百万円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が2,152百万円、リース投資資産が1,013百万円、売掛金が977百万円それぞれ増加したことによるものです。

 また、有形固定資産は3,776百万円となり前連結会計年度末に比べ1,265百万円増加いたしました。これは主に、建設仮勘定が1,269百万円増加したことによるものです。無形固定資産は1,721百万円となり、前連結会計年度末に比べ891百万円増加いたしました。これは主に、通信回線使用権が843百万円増加したことによるものです。この結果、資産合計は18,420百万円となり、前連結会計年度末に比べ6,658百万円増加いたしました。

 

(負債の状況)

 当連結会計年度末の流動負債は7,865百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,503百万円増加いたしました。これは主に、短期借入金が1,344百万円、未払金が1,254百万円、繰延延払利益が978百万円それぞれ増加したことによるものです。

 また、固定負債は1,418百万円となり前連結会計年度末に比べ226百万円減少いたしました。これは主に、長期借入金が227百万円減少したことによるものです。

 この結果、負債合計は9,283百万円となり、前連結会計年度に比べ4,276百万円増加いたしました。

 

(純資産の状況)

 当連結会計年度末の純資産は9,136百万円となり、前連結会計年度末に比べ2,381百万円増加いたしました。これは主に、非支配株主持分が397百万円増加し、親会社株主に帰属する当期純利益1,888百万円の計上により利益剰余金が同額増加したことによるものであります。

 この結果、自己資本比率は39.7%(前連結会計年度末は45.1%)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、5,778百万円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況は次のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動において獲得した資金は3,580百万円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益が2,906百万円に対し、未払金が1,196百万円、繰延延払利益が978百万円それぞれ増加した一方、リース投資資産が940百万円、売上債権が874百万円それぞれ増加したことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動において使用した資金は2,658百万円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出1,647百万円、無形固定資産の取得による支出885百万円によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動において獲得した資金は1,067百万円となりました。これは、長期借入金の返済による支出644百万円があった一方、短期借入れの増加1,344百万円、長期借入れによる収入400百万円があったことによるものであります。

 

③ 生産、受注及び販売の状況

a.生産実績

 当社グループは生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.仕入実績

 当社の国内通信事業及び海外通信事業においては、提供するサービスの性質上、有形の物品ではなく無形の資産(通信回線の使用権)に対しての支払が原価の大部分を占めておりますため、これらを仕入と見做します。

 当連結会計年度における仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

仕入高(百万円)

前年同期比(%)

海外通信事業

2,229

85.9

フィリピン国内通信事業

973

723.1

国内通信事業

2,478

98.2

医療・美容事業

439

249.4

その他

合計

6,121

112.5

(注)1.セグメント間取引は相殺消去しております。

2.金額は、仕入価格によっております。

 

c.受注実績

 当社グループは受注生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

d.販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

販売高(百万円)

前年同期比(%)

海外通信事業

3,684

86.5

フィリピン国内通信事業

1,784

213.2

国内通信事業

3,988

107.3

医療・美容事業

1,244

199.5

その他

26

34.9

合計

10,728

112.7

(注)1.セグメント間取引は相殺消去しております。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

販売高

(百万円)

割合(%)

販売高

(百万円)

割合(%)

株式会社NTTドコモ

1,119

11.8

1,104

10.3

Sky Cable Corporation

2,110

22.2

Globe Telecom, Inc.

1,303

12.2

前連結会計年度のGlobe Telecom, Inc.及び当連結会計年度のSky Cable Corporationに対する販売実績は、当該販売実績の総販売実績に対する割合が100分の10未満のため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

 

1)経営成績の分析

(売上高)

 当連結会計年度における売上高は、10,728百万円(前年同期比12.7%増)となりました。これは主に、海外通信事業の売上高3,684百万円(前年同期比13.5%減)、並びに国内通信事業の売上高3,988百万円(前年同期比7.3%増)によるものであります。

 

(営業利益)

 上記の結果、営業利益は2,456百万円(前年同期比27.8%増)となりました。これは主に、海外通信事業のセグメント利益が1,011百万円(前年同期比15.8%減)、並びに国内通信事業のセグメント利益が819百万円(前年同期比99.4%増)となったことによるものであります。

 

(経常利益)

 営業外収益として受取利息及び配当金を25百万円、為替差益を431百万円、営業外費用として支払利息を14百万円、計上したこと等により、経常利益は2,897百万円(前年同期比32.4%増)となりました。

 

(親会社株主に帰属する当期純利益)

 法人税、住民税及び事業税として837百万円、非支配株主に帰属する当期純利益として238百万円を計上したこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は1,888百万円(前年同期比27.0%増)となりました。

 なお、セグメントの概況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概況 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 

 

2)財政状態の分析

 財政状態の状況につきましては、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概況 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載しております。

 国内通信事業が、コールセンター向けの電話サービスについて、競合事業者からの顧客獲得が進んだことや同サービスの認知度の向上により、大きな投資を伴わない形で、収益が拡大しております。

 一方回線の敷設が必要な、フィリピン国内通信事業は、地方での回線敷設も増え、社内の多くのリソースを割く必要が出てきました。売上は、1,784百万円、セグメント利益は224百万円となりました。

 これまで設備投資は、InfiniVAN社の現地資本に対する増資と手許資金で行ってまいりましたが、今後は、長期借入金を中心とした調達をすることを計画しております。

 

3)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 当連結会計年度末(投資活動によるキャッシュ・フロー)における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は5,778百万円となり、投資活動において使用した資金は2,658百万円となりました。

 これは主に、有形固定資産の取得による支出1,647百万円、無形固定資産の取得による支出885百万円によるものであります。

 当社グループは、今回取得した国際海底ケーブルを利用する通信トラフィックをフィリピン各地で獲得するため、今後も、フィリピン国内の通信回線設備の構築等の投資が必要となります。当社グループによる回線構築にあたっては、他の事業者と共用できるように事前に他の事業者と調整する等、当社グループの負担額を抑えることに努めておりますが、当面の間は、投資の需要が大きいことが見込まれます。投資に振り向ける資金の調達は、営業キャッシュ・フロー、銀行からの長期借入金を充てることを想定しております。手許資金については、今後少なくなることが見込まれますが、銀行からの当座貸越枠の設定・拡大等を通じて対応していく計画です。

 フィリピン国内の都市間中継回線・マニラ首都圏地域の設備投資が落ち着き、収益が安定したときは、手許資金を積極的に株主に還元していくことを予定しております。

 

① 重要な会計方針及び見積り

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するに当たり重要となる会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載されているとおりであります。

 当社グループは、過去の実績や取引の状況に照らして、合理的と考えられる見積り及び判断を行い、その結果を資産、負債の帳簿価額及び収益、費用の全般に反映して連結財務諸表を作成しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 財政状態及び経営成績に関する以下の分析が行われております。なお、本項に記載した予想、見込み、見通し、方針等の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来に関する事項には、不確実性があるため、将来生じる実際の結果と大きく異なる可能性があります。

 

② 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載しております。

 

③ 経営者の問題認識と今後の方針について

 当社グループが今後も持続的に成長していくためには、経営者は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」及び「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載の様々な課題に対応していくことが必要であると認識しております。それらの課題に対応するために、経営者は常に外部環境の構造や変化に関する情報の入手及び分析を行い、現在及び将来における事業環境を確認し、その間の課題を認識すると同時に最適な解決策を実施していく方針であります。

 

(3)資金調達と資金の流動性についての分析

 当社グループの資金調達は、金融機関からの借入による間接調達と資本市場からの調達による直接調達で構成されております。

 長期運転資金及び設備投資資金については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー、金融機関からの長期借入やリース、及び株式発行による直接調達を基本としております。

 短期資金需要については、営業活動により得られたキャッシュ・フロー及び当座貸越契約の融資枠の利用を含めた金融機関からの短期借入を基本としております。

 なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務を含む有利子負債の残高は3,050百万円、現金及び現金同等物の残高は5,778百万円となりました。

 

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