事業の内容

3【事業の内容】

 当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社アイ・ピー・エス)と連結子会社6社(KEYSQUARE, INC.,Shinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporation,InfiniVAN, Inc.,CorporateONE, Inc.,ISMO Pte. Ltd.およびCarrier Domain, Inc.)により構成されており、「海外通信事業」、「フィリピン国内通信事業」、「国内通信事業」、「医療・美容事業」の4つのセグメントに分類されます。なお、当連結会計年度より報告セグメントの区分について、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおり、「在留フィリピン人関連事業」としていたセグメントの名称を重要性の観点から「その他」に変更しております。

 これまで当社は、在留フィリピン人を中心とした在留外国人に対して、多様な料金体系やチャネルで、国際電話サービスを提供してまいりましたが、市場では、電話の置換となる通話アプリ(注3)の発達やPDFによるファイル添付(FAXの置換)が普及する等、国内電話・国際電話ともに需要は激減しております。

 そうしたこともあり2012年、当社はフィリピンでの国際通信回線の再販の事業を始め、現在では日本国内での国際電話サービス事業(国内通信事業)から、海外での国際データ通信事業(海外通信事業)、フィリピン国内での通信事業(フィリピン国内通信事業)に事業の領域を広げております。

 また日本国内で在留フィリピン人向けに長年販売してきた化粧品を、フィリピンで広く販売するため、信頼性あるブランドを構築できるように、フィリピンに医療事業を行う子会社を設立し、美容外科・皮膚科のクリニックを開設いたしました。クリニック開設にあたっては、フィリピンは今後も若年層が増加することや、PC・スマホのような近視になる原因が広まり、近視矯正の需要の高まりが予期できたことから、近視矯正手術(レーシック)に特化した眼科も併設いたしました。現在は、近視矯正手術の件数が順調に伸びており、医療・美容部門の収益の大部分を眼科診療が生み出しております。

 

(注3) 通話アプリ

代表的なものとしては、Skype™(スカイプ)やLINE(ライン)等、主としてスマートフォン向けのアプリケーションで、IP電話の機能を提供するものです。音声をデータ化し、インターネットを経由して音声通話を実現するため、通話料は一般的に割安になります。

 

 

 以下は、各事業の説明になります。

表1 各事業に対応する関係会社一覧

報告セグメント

事業内容

概要

対応する関係会社

海外通信事業

フィリピンと北米・香港等とを結ぶ国際通信回線を、CATV事業者等のインターネット接続事業者に提供しております。

KEYSQUARE, INC.

ISMO Pte. Ltd.

Carrier Domain, Inc.

フィリピン国内通信事業

子会社であるInfiniVAN, Inc.がフィリピン国内で法人向けインターネット接続サービスを行っております。

InfiniVAN, Inc.

CorporateONE, Inc.

国内通信事業

・音声通信(電話サービス)の提供

国内外の固定/携帯電話事業者と相互接続協定を締結し、自社ネットワークを通じた音声通信サービスを提供しております。他の通信事業者向けの格安な通話サービスの提供や、クレジットカード会社向けの自動督促用音声装置と組み合わせた音声通話サービス等、大手通信事業者が提供しないサービスを提供しております。大手通信事業者の着信者払い通話サービスを大口で仕入れて小口で再販し、1秒単位で課金する秒課金サービスを提供しております。

・コールセンターシステムの販売

インドのDrishti社が開発したコールセンターシステム「AmeyoJ」のライセンスを仕入れ、日本国内のコールセンター事業者へ販売。

・データセンターサービス

東京都内にデータセンターを保有し、他の事業者のサーバーを預かるコロケーションサービス(注4)等を提供しております。

 

医療・美容事業

レーシック手術による近視矯正等の眼科、美容皮膚科等の科目で診療を行っております。

Shinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporation

その他

在留フィリピン人を中心とした在留外国人に対して海外送金サービスの顧客開拓・利用促進等を行っております。

KEYSQUARE, INC.

 

(注4) コロケーションサービス

主に通信事業者の局舎内で、通信機器等を設置する場所を提供することをいう。

 

(1)海外通信事業

 海外通信事業ではフィリピンを主たる事業地域として、主に同国のケーブルテレビ事業者(以下「CATV事業者」という。)に海底ケーブルを用いた国際データ通信回線を提供しております。

 フィリピンでは、スマートフォンやOTT(注5)が普及し、CATV事業者の有料視聴者数が伸び悩んでおります。このため、同国のCATV事業者には、日本と同様に、インターネットサービスプロバイダー(注6)事業を収益の柱としている事業者も多くなっております。一方でフィリピンにおける通信環境は、通信事業者の統合が進み、事実上大手2事業者によるマーケットの寡占状態となっており(出典:総務省「世界情報通信事情:フィリピン編(2016年)」)、国内回線・国際回線とも通信速度や通信料金が諸外国と比べて高い劣悪な環境にあり、CATV事業者も競争力あるサービスの提供に苦慮しております。

 こうした状況の中で、当社は、創業以来携わってきた国際電話サービスにおいて、フィリピンの通信事業者との広く取引関係があったことから、同国におけるインターネット回線の質的な向上も企図して、同国でのデータ通信事業への参入を行うことといたしました。

 現在当社は、海外通信事業においてフィリピンとシンガポール・香港・米国・日本を結ぶ国際通信回線の使用権を、大口の帯域でフィリピン国内外の通信事業者より取得若しくは賃借し、子会社のKEYSQURE, INC. を介して、CATV事業者が取得できる小口容量に分割して、譲渡若しくは転貸を行っております。こうした国際通信回線を調達する方法としては、海底ケーブルの権利を有する大手通信事業者から、期間が10年から15年程度のIRU(注7)を取得(使用権料の一括払い)、若しくは期間1年のリースで調達しております。そして帯域を分割して、同一の期間や支払いタームでCATV事業者に対して提供しております。また、IRUにて使用権を取得した海底ケーブルの一部(City-to-City Cable System、以下「C2C回線」という。)については、未使用状態のダークファイバーに当社グループにて機械装置等を設置し、国際通信の帯域を組成して、IRUや短期リースにて提供しております。

 なお、IRUは伝統的には、実質的な所有権を取得したものとして扱われてきたことから、海底ケーブル等の運用や保守にかかる費用がO&M費用として権利者から課金され、当社もCATV事業者に対して課金しております。

 フィリピンでは、同国内区間を含む国際通信回線を提供するには、フィリピン共和国法7925号(RA,7925号)に基づき、同国の通信事業ライセンスを有する通信事業者と提携することが必要となります。従いまして、当社では、国際回線部分を他の通信事業者より借り受けるほか、同国での事業遂行に係る適法性を確保するため、同国の通信事業ライセンスを有する Philippine Telegraph & Telephone Corporation(以下、「PT&T社」という。)との間で、相互接続の合意を内容とする業務提携契約(Cooperation Agreement)を締結し、同社のライセンスの下に事業展開を行っております。また2017年には、子会社InfiniVAN, Inc.が国家通信委員会よりCPCN(注8)を付与され、PT&T社だけではなく、同社とも協働して通信サービスを提供しており、さらに安定した海外通信の事業基盤を確保しております。また、C2C回線においても、InfiniVAN, Inc.がフィリピン領土内の回線を提供することで、当社は国際・国内回線をセットにして提供することが可能になっております。

 また、フィリピン国内の通信回線については、当社が海底ケーブルの陸揚局からマニラ首都圏までの回線を手配して、PT&T社等を通じて提供し、さらにマニラ首都圏の回線は、CATV事業者等が、PT&T社を始めとする、フィリピン国内の通信事業者と個別に契約して確保しております。

 当社が国際通信回線をCATV事業者等に提供する契約形態には、主に、通信事業者から取得した回線の長期使用権を販売するIRU契約並びにそれに付随する保守運用の契約(O&M)、若しくは当社が主として短期で賃借した回線の転貸の2種があります。IRU契約では、当社が海底ケーブルの権利を有する通信事業者等からIRUで取得した回線(15年程度の期間)を、残存期間の範囲で長期のIRUとしてCATV事業者に販売しております。このほか、回線の保守運用費用として毎年一定額をCATV事業者等に負担頂いております。また、短期の転貸は、1年ないし2年程度の期間で、当社が賃借した回線を転貸するもので、契約期間中の転貸収入を得ております。

 

(注5) OTT

「Over The Top」の略称。インターネット回線を通じて、メッセージや音声、動画コンテンツ等を提供するサービス、あるいはそれを提供する通信事業者以外の企業のこと。代表例として、NetflixやHulu等があります。

 

(注6) インターネットサービスプロバイダー

インターネットを利用するユーザーに対して、ユーザーのコンピューターをインターネットへ接続するための手段をサービスとして提供する事業者。(ISPと略す場合もあります。)

 

(注7) IRU

「Indefeasible Right of Use」の略称で、当事者間の合意がない限り破棄又は終了させることのできない長期的・安定的な通信回線使用権のこと。当社は、主に15年間のIRU契約を締結して国際通信回線使用権を仕入れ、販売しております。

 

(注8) CPCN

「Certificate of Public Convenience and Necessity」の略称で、フィリピンにおける通信事業者の適格。

 

表2 海外通信事業のサービス内容

 

対象

内容

国際通信回線使用権

フィリピンのCATV事業者等、エンドユーザーに対してインターネット接続サービスを提供している事業者で長期的な利用を計画されているお客様

当社が、お客様に対して、フィリピンと海外(主に香港・北米)を結ぶ国際通信回線を使用する権利を提供、又はリースすることによって、当社が対価を得ることを目的としております。

O&M

上記使用権を有するお客様

O&M(Operation and Maintenance)は、通信回線の保守運用サービスに係る費用であり、お客様は、当社に対して毎年使用権の価額の一定の割合に相当するサービス料を支払うこととなっております。

リース

フィリピンのCATV事業者等、エンドユーザーに対してISPサービスを提供している事業者で短期的な利用を想定しているお客様

当社が、お客様に対して、フィリピンと海外(主に香港・北米)を結ぶ国際通信回線をリースすることによって、当社が対価を得ることを目的としております。

 

(2)フィリピン国内通信事業

 フィリピン国内通信事業では、連結子会社であるInfiniVAN, Inc.が、主にマニラ首都圏地域において法人向けにインターネットサービスプロバイダー事業を展開しております。同社は、2017年11月10日にNTC(National Telecommunications Commission、国家通信委員会)よりルソン島における通信事業者適格(CPCN)のPAを取得して、2017年11月22日に、フィリピン政府当局(BOI:Board of Investments、投資委員会)より期限付法人税免除の許可を取得し、同月より事業を開始しております。また、2018年9月11日には、ビサヤ・ミンダナオ地域におけるCPCNのPAを取得して、フィリピン全土での通信事業が可能となりました。

 また、同社は、マニラ首都圏内の高架鉄道や経済集積地(CBD)等に光ファイバーを敷設し、CATV事業者等に提供することで、フィリピンの通信インフラの高度化・高速化に寄与する事業を行っております。さらに、ミンダナオ島でのバックボーンとなる光ファイバー回線の敷設を進めております。

 

表3 フィリピン国内通信事業のサービス内容

 

対象

内容

法人向けインターネット接続サービス

一定の通信の品質を求める法人

法人向けに提供している最低の帯域を保証したインターネット接続サービスです。

フィリピン国内回線リース

フィリピン国内の通信・放送事業者

自社で敷設した光ファイバーのような通信設備をフィリピン国内の通信・放送事業者に対して賃貸すること。鉄道施設内の回線・ミンダナオ島等に敷設したCATVと拠点となる都市を結んだ回線を含みます。

 

(3)国内通信事業

 国内電話事業では、日本国内で、電話サービスを中心とした通信サービスを提供するとともに、電話サービスの大口ユーザーでもあるコールセンター事業者向けに、コールセンターシステムを提供しております。

 当社は設立して間もなく、電気通信事業の自由化が進む中で、国際電話事業を展開する国際デジタル通信株式会社(現ソフトバンク株式会社)の国際電話サービスの代理店となり、主として在留外国人を対象にして国際電話サービスを提供する代理店として活動しておりました。

 1990年代後半になり、市場において、個人向け国際電話サービスがプリペイドカード(注9)を通じて提供されるようになると、国内外の電気通信事業者の電話サービスを再販(注10)目的で仕入れて、プリペイドカードを発行して国際電話サービスを提供いたしました。

 しかし、再販では、需要が拡大してきた携帯電話発信の国際電話サービスにおいて、業界慣行により、携帯電話会社と相互接続している大手国際電話会社に比べて、仕入れのコストに数倍の差があったため、同一の条件で仕入れることができるように国内通信事業者との相互接続を実現する方策を模索しておりました。そうした中で、2002年に旧カナダ国営電話会社テレグローブ社が経営破綻し、その日本法人であった株式会社テレグローブ・ジャパン(旧第1種電気通信事業者)が日本での事業を撤退することとなり、当社はこれを買収し(2002年株式会社アドベントに改称、2005年当社に吸収)、第1種通信事業者として事業を展開することが可能となりました。そして同社を通じて東日本電信電話株式会社や株式会社NTTドコモ等の国内の固定・携帯電話事業者と相互接続することで、他の大手電話事業者と同様の条件で、国内・国際電話サービスを提供できるようになりました。現在当社は、電気通信事業法により登録電気通信事業者として位置付けられ、株式会社テレグローブ・ジャパンが整備したネットワークを発展させて自社ネットワークを利用した国内・国際電話サービスの提供のほか、他の電気通信事業者によるサービスの再販も行っております。

 

 当社は、国内電話サービス・国際電話サービスを、主に①在留外国人、②MVNO事業者、③コールセンター事業者に提供しております。具体的な事業は以下のとおりです。

① の在留外国人向けサービスは、国内から海外向けの国際音声通話サービスの提供のほか、国際電話事業者向けに国内の音声通話サービスを提供しております。

② のMVNO事業者向けサービスにおいては、通常携帯電話事業者が料金を決めるところ、MVNO事業者が決めることができるサービスを、当社では提供しております。複数の事業者をまたがる通話サービスの場合、業界慣習では、携帯電話事業者が決定するのが原則ですが、例外的に国際通信事業者若しくは着信課金サービス提供事業者は携帯電話事業者に比べて優先的に決定できることになっております。当社は国際電話・着信課金のサービスを組み合わせることで、エンドユーザーの利用料金を、携帯電話会社ではなく、MVNO事業者が定めることができるサービスを提供しております。

③ のコールセンター事業者向けサービスとして、大手通信事業者が提供する着信課金サービスを、10円ごと、3分ごとといった伝統的な料金体系ではなく、コールセンター事業者に対して、秒単位で課金するサービスを提供しております(秒課金サービス)。また、あわせてコールセンター業務の世界的な集積地と言えるマニラで、広く採用されているコールセンターシステムを、日本国内のコールセンター事業者向けに開発して販売しております。

 

 上記のほかにも在フィリピン日系企業向けの専用線サービス等も提供しております。

 

(注9) プリペイドカード

システムに電話をかけて暗証番号を入力すると、システムが残高を認識し、一定時間の国際通話ができるカードです。

 

(注10) 再販

他の電気通信事業者から、営利目的で、他のユーザーが利用することを前提に、サービスの提供を受けること。

 

表4 国内通信事業におけるプロダクト・サービスの内容

種類

対象

内容

国際電話サービス

個人・国際電気通信事業者

国内にある電話端末と海外の電話端末を起点・終点とし、当社の交換機を経て接続する電話サービスです。

国内電話サービス

個人・国内電気通信事業者・法人

国内にある電話端末を起点・終点とし、当社の交換機を経て接続する電話サービス。

また、当社の交換機を経由させずに、国内の電話端末を起点・終点とする電話サービスも含みます(秒課金サービス)。

コールセンターシステム

法人

コールセンターを運営する為に必要な顧客データベース・録音システム、顧客管理システム等が一体となったシステム。1席単位で、一括又は定期的に利用料を課金します。

その他

法人

日本-フィリピン間専用回線サービスや当社深川データセンターのコロケーションサービス等です。

 

(4)医療・美容事業

 医療・美容事業は、2010年当時、当社が日本国内で通信販売を行っていたフィリピン人向け化粧品の販売をフィリピンでも展開することを企図し事業を開始したものです。事業開始にあたっては、化粧品の販売拠点として現地に美容クリニックを設立することとして、本邦の品川美容外科と共同で事業を行うこととし、品川美容外科と関連を有するシンガポール法人“I SUPPORT PTE. LTD.”と合弁で、“Shinagawa Lasik & Aesthetics Center Corporation”(以下「SLACC」という。)をフィリピンに設立しました。同社は、現在、品川美容外科などを運営している医療法人社団翔友会理事長との合弁会社となっており、美容皮膚科、近視矯正手術に特化したクリニックを、マニラ首都圏地域に3院運営しております。SLACCがこのクリニックの経営を担当し、翔友会グループが医療技術の提供や医師のトレーニングを担当しています。

 現在運営しているクリニックでは、近視矯正手術として機器を用いたレーシックによる施術を中心に運営しております。施術は自由診療によるものであり、施術の機器が本邦と比較して相対的に高額であること等から、平均単価は本邦よりも高い水準で推移しております。

 

(5)その他

 その他の事業として、本邦における在留許可を有するフィリピン人を中心とした外国人向けに、顧客開拓・利用促進事業を行っており、現在は海外送金事業者への顧客獲得、利用促進を行っております。

 

 

 

[事業系統図]

 事業系統図は、以下のとおりであります。

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