研究開発活動

 

5 【研究開発活動】

当社の研究開発体制は、既存事業に密着した6つの開発研究所(樹脂添加剤開発研究所、情報化学品開発研究所、電子材料開発研究所、機能化学品開発研究所、機能高分子開発研究所、食品開発研究所)、将来の柱となる新規事業の創出を担う2つのコーポレート研究所(ライフサイエンス材料研究所、環境・エネルギー材料研究所)、及びこれらを支援する研究企画部により構成されています。

国内の連結子会社である日本農薬㈱、㈱ADEKAクリーンエイド、ADEKAケミカルサプライ㈱、及びADEKA総合設備㈱でも、独自の研究開発を行っています。また、海外拠点においては、国内の研究所と連携しつつ研究開発のローカライゼーションを推進しています。

第160期(2021年度)の研究開発方針として、

① 持続可能な社会と人々の豊かなくらしに貢献する研究開発を心がける。

② 戦略製品を中心とした市場開発・新製品開発に注力し、更なる事業拡大へ繋げる。

③ 「エネルギー」「環境」「次世代ICT」「ライフサイエンス」などフロンティア領域での新規事業創出を推進する。

の3項目を掲げて研究開発活動を推進しました。当連結会計年度の研究開発費の総額は、14,520百万円です。

なお、新型コロナウイルス感染症による研究開発活動への影響は、本報告書提出日現在においてはほとんど顕在化していません。感染のさらなる拡大など今後の情勢変化が大きくなった場合は、適切に対策をしてまいります。

 

(1) 化学品事業

既存事業のさらなる拡大に向け、戦略製品を中心とした市場開発や新製品開発に注力しています。市場環境の変化やユーザーニーズを鋭敏に捉えて社内で共有することで、タイムリーな製品開発を推進しています。

主な成果は以下の通りです。

① 樹脂添加剤

電気自動車用のバッテリー周辺部材や家電の内部部品など金属代替を目的とした用途を中心に、ガラス繊維強化ポリプロピレン向けの難燃剤「FP-2500S」の採用が増加しました。

自動車や家電、日用品等のプラスチック製品に使用される環境対応型製品アデカシクロエイドは、昨年の上市以来、ユーザーでの評価件数が順調に増加しています。

 

② 情報・電子化学品

半導体向けでは、最先端DRAM向けの新規高誘電ALD成膜材料の採用が本格化しています。ロジック半導体向けの新規ALD材料もユーザーでの性能評価が進展しています。また、EUVを含む先端フォトレジスト向け光酸発生剤の採用が拡大しています。

 

③ 機能化学品

自動車向けでは、電気自動車のモーターなどに使われる電磁鋼板向けの水系樹脂や、高分子型エンジン油用摩擦調整剤を開発し顧客提案を進めています。

水系塗料や粘接着剤に用いられるアクリル樹脂エマルジョン用の反応性乳化剤「アデカリアソープ」は、地域や用途特性に合わせた処方提案を進め、海外大手メーカーでの実績が拡大しています。

船舶のSOx排出規制に対応する低硫黄燃料向けのスラッジ分散剤、潤滑性向上剤、低温流動性向上剤を開発し、4月開催のSEA JAPANに出展。徐々に採用が拡大しています。

 

子会社であるADEKAクリーンエイド㈱の業務用洗浄剤分野では、高濃縮タイプの食器洗浄機用固形洗浄剤に機能付加した新製品を開発・上市しました。この新製品は、取り扱いやすい非劇物で、アルミニウム材質にも使用できることに加え、従来は配合が困難であった塩素化剤の安定配合を可能としており、除菌・洗浄効果に優れていることが特長です。既に特許も出願済みです。

一方で食品工業用洗浄剤分野では、使用量の多いお客様がいることから、改正PRTR法で新たに対象となった物質を含んだ製品の代替検討を行い、一部製品を除いて新配合を確立しました。対象物質を含まないことで、お客様による対象物質の排出・移動量の把握や国への届け出が不要になります。今後は現場での性能確認試験を実施します。

 

子会社であるADEKAケミカルサプライ㈱の湿式伸線剤では、世界的な物流の停滞を受け、主力製品の原料に供給不安が生じています。そこで、供給安定化とコストダウンを目的に原料の複数購買化を進めています。他社との共同研究においては、試作品3品種を提出し、3月より試験を開始しました。また、潤滑性に関する機構のさらなる解明に向けた研究も行っています。

乾式伸線剤では、生産技術再構築として小型二軸押出機による生産の検討を開始しました。生産に必要なパラメーターの洗い出しを行っています。

粉末冶金用潤滑剤では、粉末冶金用鉄粉製造販売の世界大手と次世代製品の開発を目的とした共同開発契約の協議を進めています。締結後は、共同開発会議を行い、試作品3品種を紹介予定です。

 

(2) 食品事業

食品ロス削減や労働力不足、健康志向、持続可能な原料調達など、社会課題への対応をはじめ、食品産業の構造変化や働き方の多様化、消費行動の変化などに伴う課題を捉え、ニーズに即した新製品開発を行っています。

 

2021年度新製品は、「おいしさとやさしさで貢献します~世の中の変化と課題に対応~」をテーマに、以下を中心とした7製品をラインナップしました。なお、2020年度新製品に引き続き、原料にパーム油を配合する製品にあっては、持続可能なパーム油(RSPO認証油)を使用しています。また、全ての新製品が低トランス脂肪酸対応品です。

① 加工油脂

パンの経時的な品質低下を抑制することで消費期限を延長し、食品ロス削減に貢献する製パン用練込油脂『マーベラス』シリーズのアイテム拡充を図りました。冷凍・冷蔵で販売されるパンに向けて電子レンジで加熱した際の品質低下を抑制する「マーベラスSL」を、リテールベーカリーに向けて焼き立てパンのおいしさを保持する「マーベラスアソシエ」を上市しました。加えて、プラントミルクとして人気のアーモンドミルク風味のファットスプレッド「ソルクリーム(アーモンドミルク)」を上市しました。

 

② 加工食品

冷凍・解凍後もおいしさを保持できるフローズンチルド製品向けホイップクリームの拡充アイテムとして、濃厚なガナッシュ風味を付与した「ガナッシュホイップFC」を上市しました。また、労働力不足への対応の一助となるよう、湯煎焼きをせず、直焼きでもスフレ製品が簡便に作れる機能性練込用素材「リスエール」を上市しました。

“おいしさ”はもちろん、社会の変化に応じて浮上する様々な社会課題の解決に貢献する“やさしさ”を兼ね備えた商品がご好評をいただいています。

 

(3) ライフサイエンス事業

連結子会社である日本農薬㈱では、持続的な新規剤創出を目指してパイプラインの早期拡充に取り組むとともに、既存剤の維持・拡大を目指し全社的な連携による戦略的な研究開発を推進しています。

当期における主な成果は以下の通りです。

当連結会計年度より新規汎用性殺虫剤(開発コード:NNI-2101)の国内開発を開始しました。本剤は、チョウ目およびコウチュウ目害虫など幅広い殺虫スペクトルを示し、浸透移行性にも優れ、既存剤抵抗性害虫に対しても高い効果を示すことから、汎用性に優れた新規有効成分です。そのため様々な対象害虫や処理方法での委託試験を実施予定であり、利便性の高い害虫防除資材となるように国内開発を進めてまいります。

日本およびインドで農薬登録を取得した新規水稲用殺虫剤ベンズピリモキサン(商品名「オーケストラ」)は、製品ラインアップの強化を進めています。インドでは2022年より販売開始予定であり、水稲栽培の盛んなアジア広域で本剤ビジネスの最大化を図ります。

新規汎用性殺菌剤ピラジフルミド(商品名「パレード」)は、新規処理分野(セル苗灌注処理)での開発に加え、多くの作物で登録を取得して幅広い場面で使用可能となりました。また、グローバルな開発も展開中であり、米国(カリフォルニア州含む)、カナダ、メキシコ、コロンビア、ベトナムで登録を申請し、米国では2022年内に果樹、ナッツ、芝での登録認可を見込んでいます。

 

(4) 新規事業の推進

「エネルギー」「環境」「次世代ICT」「ライフサイエンス」などフロンティア領域において、組織の壁を越えた技術を融合し、ADEKAグループの強みを活かした新規事業創出を推進しています。将来ニーズと時間軸を意識し、組織の壁を越えた技術の融合とオープンイノベーションにより、早期事業化に向けて取り組んでいます。

 

① ライフサイエンス

臓器修復など、多用途への展開を検討している脱細胞化ウシ心のう膜は、国内外の医療関係者へのヒアリング調査を実施するとともに、医療機器としての認証取得に向けた試験やサプライチェーンの構築に取り組んでいます。

② 環境・エネルギー

次世代二次電池用途では、グラフェンのサンプル配布に向けて、三重工場に設置したパイロット設備において溶剤分散液グレードの試作を開始しました。一方で、水系分散液の開発にも着手しています。硫黄変性ポリアクリロニトリル「SPAN」は、硫黄含量を高めたグレードを開発し、複数のユーザーで性能評価が開始しています。

 

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