業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績」という。)の状況の概要は次の通りであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 財政状態の状況

 当事業年度末における財政状態は、総資産2,692,349千円(前事業年度比79.6%増)、負債合計は1,400,487千円(前事業年度比11.5%増)、純資産合計は1,291,861千円(前事業年度比431.6%増)となりました。

(流動資産)

 当事業年度末における流動資産は、前事業年度末より1,058,616千円増加し、2,425,202千円となりました。これは主に、現金及び預金が742,511千円増加したこと、また売掛金及び契約資産が250,012千円増加したこと等によるものであります。

(固定資産)

 当事業年度における固定資産は、前事業年度末より134,706千円増加し、267,146千円となりました。これは主に、本社移転に伴う有形固定資産の増加34,669千円、繰延税金資産の増加70,239千円によるものであります。

(流動負債)

 当事業年度末における流動負債は、前事業年度末より203,820千円増加し、766,858千円となりました。これは主に、外注費等に係る買掛金の増加81,967千円及びオフィス移転費用見積りを取崩した未払費用68,841千円の減少、未払金の増加38,057千円等によるものであります。

(固定負債)

 当事業年度末における固定負債は、前事業年度末より59,325千円減少し、633,629千円となりました。これは主に、長期借入金が58,125千円減少したこと等によるものであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産は、前事業年度末より1,048,828千円増加し、1,291,861千円となりました。これは主に、公募増資により、資本金及び資本準備金がそれぞれ382,761千円増加し、当期純利益266,398千円の計上により利益剰余金が増加したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当社は、コーポレートビジョンである「あるべき未来をクラウドでカタチにする」のもと、クラウド先端テクノロジーとデザインで企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するマルチクラウド・インテグレーターです。

 当事業年度におけるわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症に係る緊急事態宣言の解除以降、経済活動の回復が進展しました。一方で、オミクロン株の感染拡大懸念に加え、ウクライナ情勢による経済影響等、先行き不透明感が継続しております。

 当社が属するDX市場に関して、DXには様々定義がありますが、日本経済団体連合会によれば、単純な改善や自動化、効率化をもってDXとは言い難く、社会の根本的な変化に対して、新たな価値を創出するための改革がDXと定義されております(出典:日本経済団体連合会「Digital Transformation(DX)」2020年5月19日)。コスト削減を目的とした、紙からデジタルへの置き換えといった社内のアナログな業務やデータをデジタル化する「守りのDX」から、収益や顧客エンゲージメントの向上を目的とした、新しい顧客体験を創出する「攻めのDX」にシフトすることが求められています。「攻めのDX」のステップとして、顧客接点の変革、サービス商品の変革、最後にビジネスモデルの変革となり、達成難度も高く、これを実現すると企業の高い競争力が獲得でき、この「攻めのDX」こそがDXの本質と言えます。

 日本企業において、ビジネス変革等の「攻めのDX」の必要性を強く感じる割合が約9割となりますが、その背景にはデジタル技術の普及による自社の優位性や競争力が低下することの懸念があります。(出典:独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「デジタル・トランスフォーメンション推進人材の機能と役割のあり方に関する調査 (2019年5月17日)」)一方で、DXが成功した企業の割合はわずか6.6%(出典:アビームコンサルティング株式会社「日本企業にとってのDXの本質(2020年度)」)であり、DX推進の上位課題に「デジタル人材・スキルの不足」といった人や組織の課題(出典:総務省「令和3年版情報通信白書(2021年7月30日)」)が挙げられております。

 さらに、新型コロナウイルス感染症の流行拡大の影響により、各企業においてはリモートコミュニケーションを含めた業務のオンラインへのサービス転換や柔軟な労働環境への急速なシフト等の取り組みが加速しており、DXは喫緊の経営課題となっております。

 このような環境下、国内DX市場の規模は、2020年度の1兆3,821億円から2030年度には5兆1,957億円に拡大すると予測されております(出典:株式会社富士キメラ総研「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」)。また、DX実現を支える国内パブリッククラウドサービス市場は2021年~2026年にかけて18.8%の年平均成長率で推移し、2026年の市場規模は2021年比2.3倍の3兆7,586億円になることが予測されております(出典:IDC Japan株式会社「国内パブリッククラウドサービス市場予測、2022年~2026年」)。

 当社においては、「クラウドインテグレーションサービス」及び「Cariotサービス」の2つのサービスについて事業運営を行ってまいりました。なお、当社の事業はクラウドソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載は省略しております。

 

 会計方針の変更として、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」をご参照ください。

 

(クラウドインテグレーションサービス)

 旺盛なDX支援の引き合いを背景に、2022年3月度における大手企業の「月次契約顧客数(注1)」は35社(前年同期は27社。前四半期末は34社)、大手企業の「顧客当たりの月次平均売上高(ARPA)(注2)」は12.0百万円(前年同期は11.2百万円。前四半期末は12.3百万円)となりました。

 

 第4四半期会計期間における大手企業の「四半期契約顧客数(注3)」は39社(前年同期は31社。前四半期は34社)、大手企業の「顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)(注4)」は24.7百万円(前年同期は20.8百万円。前四半期は23.2百万円)となり、大手企業の顧客数を増やしながらARPA上昇を実現し、クラウドインテグレーションサービスにおける大手企業の売上比率は89%に高まりました。

 

 取り組みとしては、従来からの強みであるIoT/MobilityやAIのサービスづくり、またコロナ禍においてはB2B向け/リアル店舗と連携するECサービス、企業オリジナルのオンラインビデオや顧客とつながるコミュニティサービスの開発といった「攻めのDX」を支援しました。

 

 特に、新たな強みとして注力しているAPI連携プラットフォームのMuleSoft導入支援について、複数の大手企業顧客における継続開発が業績貢献しました。また、当第4四半期会計期間においても、大手企業のMuleSoft導入支援の新規案件を複数獲得しており、翌事業年度以降の開発拡大を見込んでおります。なお、当社はMuleSoft導入支援に関する豊富な実績と高い技術力が評価され、最上位となるエキスパート(注5)認定を受けました。引き続き、あらゆるシステムをAPI連携でシームレスに繋げることでビジネス全体のDXを支援していきます。

 

 クラウドエンジニア等の専門職従業員数(注6)については、2022年3月末時点で118人(前年同期は99人、前四半期は112人)と増加しており、採用強化の各種施策により高成長を支える増員ペースに回復しました。引き続き、採用強化により、開発体制を増強していきます。

 

1.月次契約顧客数:再販案件を除いた月次の契約顧客数。再販案件とは当社が仕入れたライセンスを顧客に再販売するリセールにあたり、当社においては金額が僅少なため、当該顧客は除く

2.顧客当たりの月次平均売上高(ARPA): Average Revenue per Account の略(顧客当たりの平均売上高)で、再販案件を除いた顧客当たりの月次平均売上高。再販案件を除いた月次売上高÷月次契約顧客数により算出

3.四半期契約顧客数:再販案件を除いた四半期会計期間における契約顧客数。再販案件とは当社が仕入れたライセンスを顧客に再販売するリセールにあたり、当社においては金額が僅少なため、当該顧客は除く

4.顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA):Average Revenue per Account の略(顧客当たりの平均売上高)で、再販案件を除いた顧客当たりの四半期平均売上高。再販案件を除いた四半期売上高÷四半期契約顧客数により算出

5.エキスパート:Salesforce, Inc.が運営する公式なパートナープログラム制度において、業界・プロダクトに強みを持っていることを証明する最上位の認定がエキスパート。当該クラウドプロダクトにおけるリーダーとして、大規模で極めて複雑なプロジェクトに対応でき、高水準のカスタマーサクセスを実現する能力を有するパートナーとして認定される

6.事務職を除いたクラウドインテグレーションサービス部門のエンジニア、マネージャー等の専門職

 

(Cariotサービス)

 第4四半期会計期間における取り組みとして、オイル交換管理、アルコールチェック管理等コンプライアンス・車両管理機能を強化しました。また、マーケティングにおいては、他社との共催セミナー、新規顧客向けのサービス活用セミナーといったオンラインマーケティングに加えて、対面での展示会参加等、各種取り組みにより新規顧客の獲得が増加し、一定の成果を得ました。一方で、既存顧客向けのオンボーディング・サービス活用促進セミナーによるカスタマーサクセスを強化しておりますが、当第4四半期会計期間において、既存顧客の運用方針変更による規模縮小を受けた大口解約も発生しました。事業体制を強化するとともに、ターゲット領域へリソース配分しながら、着実な事業展開を図っていきます。

 

 これらの結果、当事業年度における当社の経営成績は、売上高3,642,443千円(前事業年度は2,559,616千円)、売上総利益1,608,512千円(前事業年度は1,084,817千円)、営業利益256,172千円(前事業年度は営業損失183,695千円)、経常利益240,529千円(前事業年度は経常損失186,282千円)、当期純利益266,398千円(前事業年度は当期純損失194,924千円)となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末より742,511千円増加し、1,639,068千円となりました。

 当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度末において営業活動により獲得した資金は161,478千円(前年同期は253,616千円の支出)となりました。主な増加要因は、税引前当期純利益239,971千円、主な減少要因は、売上債権の増加202,177千円、棚卸資産の増加37,751千円であります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度末において投資活動により支出した資金は101,287千円(前年同期は13,877千円の獲得)となりました。主な減少要因は、敷金の預入39,758千円、固定資産の取得による支出64,112千円であります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 当事業年度の財務活動により獲得した資金は682,320千円(前年同期は618,136千円の獲得)となりました。主な増加要因は、新株の発行による収入765,522千円、主な減少要因は、長期借入金の返済による支出72,330千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社の事業は、提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、当該記載を省略しております。

b.受注実績

 当社は、受注から販売までの期間が短いため、当該記載を省略しております。

c.販売実績

 当事業年度の販売実績をサービスごとに示すと、次のとおりであります。なお、当社は、クラウドソリューション事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

事業の名称

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

前年同期比(%)

クラウドソリューション事業(千円)

3,642,443

-

 (注)1.製品・サービス間の取引はありません。

2.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

3.「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しており、2022年3月期に係る各数値については、当該会計基準等を適用した後の数値となっており、対前期増減率は記載しておりません。

 

 

相手先

前事業年度

(自 2020年4月1日

至 2021年3月31日)

当事業年度

(自 2021年4月1日

至 2022年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

株式会社小松製作所

527,121

20.6

133,242

3.7

株式会社リクルート

320,987

12.5

274,740

7.5

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りに関しては、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積りによる不確実性のため、これらの見積りと異なる可能性があります。

 当社の財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針は「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

 財政状態の分析につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要」に記載しております。

 

b.経営成績の分析

(売上高)

 当事業年度における売上高は、前事業年度に比べ1,082,827千円増加し3,642,443千円(前事業年度は2,559,616千円)となりました。これは主に、旺盛なDX支援の引き合いを背景に、クラウドインテグレーションサービスによる売上高が増加したことによるものであります。

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度における売上原価は、前事業年度に比べ559,131千円増加し2,033,930千円(前事業年度比37.9%増)となりました。これは主に、クラウドインテグレーションサービスにおいて、旺盛に引き合いに応える供給体制を構築したことから労務費及びパートナーへの外注費が増加したことに伴う結果によるものであります。売上原価は増加したものの、売上増に伴うものであることから、売上総利益は前事業年度に比べ523,695千円増加し1,608,512千円(前事業年度比48.3%増)となりました。

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度における販売費及び一般管理費は、前事業年度に比べ83,827千円増加し1,352,340千円(前事業年度比6.6%増)となりました。これは、組織拡大に伴うクラウドインテグレーションサービスにおける人員の増加、管理部門の体制強化、業績賞与等により、主に、賞与が86,044千円増加したこと等によるものであります。

 以上の結果、営業利益は256,172千円(前事業年度は営業損失183,695千円)となりました。

(営業外損益、経常利益)

 当事業年度における営業外収益は、前事業年度に比べ1,172千円減少し80千円(前事業年度比93.5%減)となりました。これは主に、消費税差額が1,201千円減少したことによるものであります。また、営業外費用は、前事業年度に比べ11,883千円増加し15,724千円(前事業年度比309.4%増)となりました。これは主に、上場関連費用が11,291千円増加したことによるものであります。

 以上の結果、経常利益は240,529千円(前事業年度は経常損失186,282千円)となりました。

(特別損失、当期純利益)

 当事業年度における特別損失は557千円となりました。これは、本社移転に伴う固定資産除却損557千円であります。

 当事業年度における法人税等合計は、税効果会計に基づく法人税等調整額の計上により前事業年度に比べ26,956千円減少し26,426千円となりました。

 以上の結果、当期純利益は266,398千円(前事業年度は当期純損失194,924千円)となりました。

 

c.キャッシュ・フローの分析

 各キャッシュ・フローの分析については、「3(1)経営成績等の状況の概要③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

d.資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金需要のうち主なものは、クラウドインテグレーションサービスにおける労務費及び外注費、販売費及び一般管理費等の営業費用によるものであります。また、投資を目的とした資金需要は、Cariotサービス及び受注管理システムに係るソフトウエア開発費用及び本社オフィス移転に伴う内装工事費用等の設備投資等によるものであります。

 なお、当社の資金の源泉は主に借入とエクイティファイナンス等によるものであります。

 

e.経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載の通り、クラウドインテグレーションサービスにおける売上総利益率、四半期契約顧客数及び顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)を重要な経営指標と位置づけ、各経営課題に取り組んでおります。売上総利益率、四半期契約顧客数及び顧客当たりの四半期平均売上高(ARPA)につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)当社の強みと特徴 ② 優良な顧客基盤を有する収益性の高いクラウドインテグレーションサービス」に記載の通りです。

 

f.経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社は「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」及び「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、事業内容や外部環境、事業体制等、様々なリスク要因が当社の経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識しております。

 

g.経営者の問題認識と今後の方針について

 クラウド先端テクノロジーとデザインで企業のDXを支援することで、あらゆるヒト、モノがデジタルでつながる社会において、デジタルに最適化された新しい顧客体験をカタチにし、顧客中心型のビジネス変革を支援していきます。

 当社が今後更なる成長を遂げるために、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載している課題に対処することが重要であると認識しております。

 

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