事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績およびキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。

 当社は、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。

(1)事業環境等に関するリスク

① 経営環境の変化について

 当社のビジネスは、企業を主要顧客としております。これまでは、顧客企業の積極的なIT投資を背景として、事業を拡大してまいりました。経営計画等において分析を行い、社会基盤、競争環境等の変化によりもたらされるリスクを想定し提供サービスを強化していくことで市場やお客様のニーズの変化に対応しております。しかしながら、今後、国内外の経済情勢や景気動向等の理由により、顧客企業のIT投資が減少するような場合には、新規顧客の開拓の低迷や既存顧客からの受注の減少等、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② クラウド市場の動向について

 当社が事業を展開するクラウド市場は急速な成長を続けております。当社ではクラウド市場の成長傾向は継続するものと見込んでおり、その中で一定のシェアを獲得するべく、商品や営業組織の拡充を図っております。しかしながら、国内外の経済情勢や景気動向等の理由により、予期しないクラウド業界の成長の鈍化が生じたような場合には、当社の新規契約数・商談数も影響を受ける可能性が生じるなど、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 市場及び顧客ニーズの把握について

 当社の属するクラウド業界における技術革新はめざましく、市場及び顧客のニーズも急激に変化するとともに多様化しております。当社では、マルチクラウドの強化、提供サービスの付加価値向上により、市場や顧客のニーズの変化に対応してまいります。しかしながら、変化を的確に把握し、それらに対応したサービスや技術を提供できない場合等には、競争力が低下するなど当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 技術革新への対応について

 クラウド市場では、日々新技術の開発及びそれに基づく新しいサービスの導入が頻繁に行われており、あわせて顧客のニーズも変化が激しくなっております。そのため、常に新しい技術要素に対して情報の収集、蓄積、分析及び習得に取り組んでいく必要があります。当社では、研究開発室、先端技術室を設置し、情報技術や開発技術の調査や研究を進めており、研究開発の推進や成果の展開にも注力し、技術革新への対応に努めております。しかしながら、技術革新において当社が予期しない急激な変化がありその対応が遅れた場合や、新技術に対応するために当初予定していなかったシステムへの投資が必要になった場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 競合について

 当社のクラウドインテグレーションサービス、Cariotサービスにおいては、大手・中小を問わず競合企業が存在しております。当社では、マルチクラウドの強化、社内教育体制の確立によるエンジニアの技術力の強化、サービス品質の向上等により、競争力の維持に努めております。現時点では当社のこれらのサービスの質はそれら競合に比して優位にあると判断していますが、競合他社の技術力の急激な向上や予期しないサービスの提供や類似サービスによる価格競争が激化するようなことが生じた場合には、クラウドインテグレーションサービスにおいて提案している営業案件の失注や、Cariotサービスで提供しているモビリティ業務最適化クラウド「Cariot」の既存契約の減少等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)事業内容等に関するリスク

① 株式会社セールスフォース・ジャパンに関するリスク

 当社は株式会社セールスフォース・ジャパンが提供するSalesforceを中心にAmazon Web Services(AWS)やHerokuなど複数のパブリッククラウドサービスを適材適所に活用するマルチクラウド・インテグレーターとして企業のDX支援サービスを拡大させ、売上高の持続的成長を実現してまいりました。当社は複数のパブリッククラウドサービスを取扱っておりますが、株式会社セールスフォース・ジャパンが提供するSalesforceプロダクトを活用した開発に一定程度依存しております。こうした現状を踏まえ、Amazon Web Services等の他のパブリッククラウドへの領域の拡大もあわせて展開し、マルチクラウドの強化を推進しております。

 現状では株式会社セールスフォース・ジャパンに日本からの撤退の予定はないものと認識しており、今後の契約関係も安定して継続する見込みであります。しかしながら、同社の経営戦略の変更により日本でのアプリケーションの提供が廃止・停止となった場合、同社アプリケーションの機能に障害が発生して当社サービスに影響が生じた場合、同社アプリケーションの競争優位性が失われた場合、アプリケーション利用料(当社のプラットフォーム仕入価格)の引上げを要求された場合、同社とのOEMパートナー契約の解除事由に抵触し契約解除された場合、米国Salesforce, Inc.の経営戦略に変更があるような場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 人材の確保について

 当社の事業推進は、従業員(エンジニア)の技術力によるところが大きく、コンピューターを用いた情報処理を学んだエンジニアを安定的に確保することが重要と認識しております。当社は継続的に従業員の採用及び教育を行っており、マルチクラウド開発、IoTやAI等のクラウド先端テクノロジー開発、サービス企画の立案から要件定義、開発、リリースまでのワンストップ開発等の魅力による採用優位性の構築や社内各種制度および教育制度の充実等に加え、従業員の生の声やエンジニアによる技術ブログを定期的に社外に発信することで、労働市場へ魅力を発信する等、多数の施策を実施しておりますが、従業員の採用及び教育が計画通りに進まないような場合や人材流出が進むような場合には、サービスの円滑な提供及び積極的な受注活動が阻害され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

③ 外注先の確保について

 当社は、必要に応じてシステムの設計、構築等について協力会社・パートナーに外注しており、定期的なミーティングの実施による状況把握、関係構築を図ることで当社にとって優良なパートナー・外注先の確保に努めております。現状では、有力な協力会社と長期的かつ安定的な取引関係を保っておりますが、協力会社において技術力及び技術者数が確保できない場合及び外注コストが高騰した場合には、サービスの円滑な提供及び積極的な受注活動が阻害され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④ システムトラブルについて

 当社のサービスは、クラウド上で提供されるサービスであるという特性上、インターネットを経由して行われます。当社では、安定的なサービス提供のためセキュリティ対策の強化や社内体制の整備、定期的なバックアップ、稼働状況の監視等の対策をおこなっておりますが、アクセス数の急激な増加に伴う負荷の増加や自然災害及び人為災害、テロ、戦争などによる予期しえないトラブルが発生し、大規模なシステム障害が起こるような場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 重大な不具合について

 当社のサービスは、開発計画から本番リリースに至るまでの開発プロセスが定められております。厳しい品質チェックを行った上で納品及び本番リリースしておりますが、顧客へ提供後に重大な不具合(バグ等)が生じ、補修等追加コストの発生や信用の失墜、損害賠償責任が発生した場合、当社の事業活動及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。

⑥ 不採算プロジェクトの発生について

 当社のクラウドインテグレーションサービスは、各プロジェクトについて想定される難度及び工数に基づき見積りを作成し、適正な利益率を確保した上で、プロジェクトを受注しております。顧客企業の要求する仕様や想定される工数に乖離が生じないよう、要員管理・進捗管理・予算管理をおこなっておりますが、予期し得ない不具合の発生等により、開発工数が大幅に増加し、不採算プロジェクトが発生するような場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 売上計上時期の期ずれについて

 当社のクラウドインテグレーションサービスのうち検収基準により売上を計上しているプロジェクトにおいては、受注したプロジェクトの規模や内容が予想と大きく乖離し納入時期が変更となって売上・収益の計上が翌四半期あるいは翌事業年度に期ずれする場合があります。期ずれした金額の大きさによっては各四半期あるいは事業年度における当社の経営成績に変動が生じる可能性があります。

 また、当社のクラウドインテグレーションサービスにおいては、3月決算企業の各四半期末である3月、6月、9月、12月に検収が行われることが多く、特に顧客の決算期末が集中する3月には多くなる傾向があり、下期に利益が多くなる傾向があります。当社では、新規契約や既存顧客からの追加契約の販売推進等により利益の平準化を図っておりますが、新規契約や既存顧客からの追加契約の受注が減少した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)組織体制等に関するリスク

① 情報管理体制について

 当社では、業務に関連して多数の顧客企業の情報資産を取り扱うことになるため、顧客企業から提供される個人情報その他の情報資産を保有することとなる場合があります。当社では、そのような情報資産を慎重に取り扱うべく、情報セキュリティ基本方針を策定し、役員及び従業員に対して情報セキュリティに関する定期的な教育研修を実施し、スキルのみならず意識を向上させることにも努めるなど、情報管理体制の強化施策を実行しております。しかしながら、何らかの理由により重要な情報資産が外部に漏洩するような事象が生じた場合には、当社の社会的信用の失墜、損害賠償責任の発生等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 特定の人物への依存について

 当社の代表取締役CEOである黒川幸治は、当社の創業者かつ創業以来の最高経営責任者であり、当社の事業展開における事業戦略策定や、業界における人脈の活用等、重要な役割を果たしております。当社は、経営管理体制の強化、経営幹部の育成等を図ることにより、同氏への過度な依存の脱却に努めており、各事業部内での適切な業務分掌、権限の委譲を行い、経営人材の育成を進めておりますが、現時点においては、未だに同氏に対する依存度は高いと考えております。今後、何らかの理由により同氏の当社業務遂行が困難になる場合には、当社の事業展開等に影響を及ぼす可能性があります。

③ 内部管理体制の構築について

 当社は、今後の事業拡大に対応するため、内部管理体制をさらに強化する必要があると認識しております。今後は人材採用及び育成を行うこと等により内部管理体制の強化を図っていく方針であります。しかしながら、事業の拡大ペースに応じた内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社の事業活動及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

④ 知的財産権の侵害におけるリスクについて

 当社は、会社名及び提供しているサービスの名称について商標登録申請をしております。また、第三者の知的財産権の侵害の可能性については、事前調査を行い対応しております。常に注意を払い、従業員への教育を通じて意識向上に努めております。しかしながら、万が一、当社が第三者の知的財産を侵害した場合、当社への損害賠償請求やロイヤルティの支払い要求、使用差し止め請求等が発生し、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)その他リスク

① Cariotサービスの継続投資について

  Cariotサービスは新規サービスと位置付けており、全社損益のバランスを考慮しながら今後も投資を継続して行っていく方針です。Cariotサービスは開始以来赤字が続いており、当社の想定通りにサービス展開が進まなかった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

② 新型コロナウイルス感染症について

  新型コロナウイルス感染症について、当社では、取引先及び従業員とその家族の安全確保と感染拡大の防止を最優先とし、リモートワークによるサービス提供を継続する取り組みを進めております。しかしながら、当社、委託先または取引先の感染者の発生、政府当局の今後の方策によっては、サービスの持続的な提供に影響を与える可能性があります。また今後、経済活動の低迷等による市況の変化によっては、当社のビジネス領域における市場動向に変化を及ぼし、当社の事業に影響を及ぼす可能性があります。

③ 過年度の経営成績および税務上の繰越欠損金について

 当社は、第12期から第14期及び第16期において、経常損失及び当期純損失を計上しております。また、2022年3月31日現在において税務上の繰越欠損金が321,992千円存在しております。繰越欠損金は、一般的に将来の課税所得から控除することが可能であり、将来の税額を減額することができますが、今後の税制改正の内容によっては、納税負担額を軽減できない可能性もあります。また、繰越欠損金が解消された場合、通常の税率に基づく法人税等が発生し、当社の経営成績及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。

④ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化

 当社では、当社の役員及び従業員等に対するインセンティブを目的とし、新株予約権を付与しており、本書提出日現在における発行済株式総数(2,921,800株)に対する潜在株式数(337,000株)の割合は11.5%となっております。これらの新株予約権が行使された場合には、当社の株式が発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。なお、提出日現在の発行済株式総数及び潜在株式数については、2022年6月1日からこの有価証券報告書提出日までの新株予約権の行使により発行された株式数は含まれておりません。

⑤ 配当政策について

 当社は、将来の事業展開と財務体質強化のために必要な内部留保の確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。株主への利益配分については、経営の最重要課題のひとつと位置付けておりますが、現在は内部留保の充実に注力する方針であります。内部留保資金につきましては、優秀な人材の採用等の資金や、今後予想される経営環境の変化に対応するための資金として、有効に活用していく方針であります。

 将来的には、財政状態及び経営成績を勘案しながら株主への利益配分を検討いたしますが、配当実施の可能性及びその実施時期については、現時点において未定であります。

⑥ 事業関連の法令について

 当社が運営する事業では、「電気通信事業法」、「下請法」といった法規制の対象となっております。当社はこれらの法規制を遵守した運営を行ってきており、今後も社内教育や体制の構築等を行っていく予定であります。しかしながら、今後新たに法改正が行われ、当社が運営する事業が規制の対象となる等の制約を受ける場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑦ 訴訟等について

 当社は、法令及び契約等の遵守のため、コンプライアンス規程を定めてコンプライアンス体制の充実に努めており、法令違反となるような行為を防止するための内部管理体制を構築するとともに、取引先や従業員、その他の第三者との関係において訴訟リスクの低減に注力しております。現時点では訴訟事件は発生しておりません。しかしながら、今後事業活動を行うなかで、取引先や従業員、その他の第三者との間で予期せぬトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性があります。かかる訴訟の内容及び結果によっては、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

⑧ 資金使途について

 2021年12月に実施した公募増資による資金の使途については、事業拡大のための人材採用費及び人件費、教育体制の強化に関する費用、サービスの付加価値向上を目的とした研究開発、財務基盤強化を企図した借入金返済に充当する予定であります。しかしながら、経営環境の急激な変化により上記の資金使途が想定どおりの成果をあげられない可能性があります。

 

 

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