課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において入手可能な情報に基づき当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針

当社グループは「クラウドで 世界をもっと はたらきやすく」のビジョンのもと、お客様の抱える課題や要望を正しく把握し、最大の強みであるクラウド基盤構築技術を活かし、顧客視点に立ったソリューションを提供することで、魅力的な就労環境の整備と生産性向上の実現に貢献していくことを経営の基本方針としております。

 

(2) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループは、「クラウドで、世界をもっと、はたらきやすく」のビジョンを実現すべく、常に変化する経営環境、市場動向に的確に対処しながら、企業価値の更なる向上に向けて事業展開を進めてまいります。加えて、社内開発のほか他社との協業・資本業務提携等により、次なる収益の柱となる新規事業を積極的に開発・育成してまいります。

 当社グループの属するクラウド市場は、複数のクラウドサービスを適材適所に使い分けるハイブリッド/マルチクラウドを利用してビジネスの強化を図るエンタープライズ分野の大規模ユーザーを中心に拡大し、本格的な普及期に入ったと認識しております。「技術の新規性」を訴求し「機能的価値」を提供して成長を実現した初期市場とは異なり、成長市場で持続的な成長を続けるためには環境の変化を見越した事業戦略の立案・実行力と持続的成長を支える経営基盤の強化が課題と認識しております。

 このような状況を踏まえ、次のような目標と課題を掲げて計画的かつ迅速に取組んでまいります。

 

(3) 目標とする経営指標

当社グループでは、企業価値向上のため、売上高、営業利益、当期純利益を重視し、その向上に努めてまいります。

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社グループの対処すべき課題としましては、既存事業の拡大、収益性の向上ならびに中長期的な成長に資する経営基盤の強化が重要であると認識しており、特に以下を重要課題として取り組んでおります。

 

① クラウドビジネスの強化・拡大

当社グループはいち早くパブリッククラウド(注1)市場に参入し、AWSにおいてはAPN(注2)プレミアコンサルティングパートナーの地位を継続して取得し、多数の新規顧客企業を獲得してまいりましたが、今後より一層クラウドの普及が進み、様々な分野に浸透していくことは確実な状況にあります。こうした中で、非クラウド市場において既存顧客企業を保有する大手企業のクラウド市場への参入も増えており、成熟市場で成長を持続するためには、既存顧客企業との長期にわたる関係構築と利用量(料)の増加によるストック型ビジネスの強化が課題と認識しております。多数の案件の中から『収益率』『収益規模』『潜在成長性』の三要素を満たす顧客企業に対しては、上流のビジネスコンサルティングから運用負荷の軽減や最適化のためのマネージドサービスの提供まで、一貫したサービス提供を積極的に行ってまいります。

② 優秀な人材の確保・育成

当社グループが属するクラウド業界は、特に技術者(エンジニア)の人材不足が深刻化しております。当社グループの提供するサービスは、特に技術者の技術力に依るところが大きく、今後も市場拡大が見込まれる中で当社グループが成長を持続していくためには、優秀な技術者を安定的に確保し続けることが重要な課題であると認識しております。 

そのため、当社グループでは、リモートワーク・時短勤務制度の導入など、ダイバーシティ(働き方の多様性)に対応した施策を積極的に推進し、ワークライフバランスの実現を率先的に図ることにより、次世代を担う優秀な人材の獲得に努めてまいります。また同時に、社員の能力開発・向上のための研修、AWS認定資格(注3)取得補助の実施など、従業員の能力を最大限に発揮させる仕組みを確立してまいります。
 

③ 自社クラウドサービスの機能向上によるMSPの強化

当社グループのAWS運用自動化サービス「Cloud Automator」は、顧客企業がクラウド導入パートナーを選定するにあたり当社グループを選択する、他社ベンダーとの差別化要因となっており、クラウドインテグレーション案件受注率向上に貢献していると認識しています。当社グループが今後も成長を持続していくためには他社ベンダーとの差別化が急務であり、サービスの優位性を高めるための機能強化・追加が必要不可欠であると認識しております。

また、クラウドコンピューティングの進展によって、企業は複雑化していくシステム開発への迅速な対応と、多岐にわたるシステム運用業務の運用品質・効率改善とコスト削減を同時並行的に高めていく必要に迫られています。これを解決する手段のひとつとしてMSPに注目が集まっています。当社グループではAWS運用自動化サービス「Cloud Automator」の提供によって徹底した運用自動化を実現しておりますが、継続的なサービス品質の強化が必要不可欠であると認識しております。

そのため、市場環境や技術動向の変化に俊敏に対応し、顧客ニーズに迅速に対応するための機能強化、またそれが実現可能な開発体制の強化を図ってまいります。

④ 事業展開のグローバル化

当社グループでは日本国内において継続的な事業拡大を図っておりますが、中長期的な視点での事業展開を見据えた更なる業容の拡大を図るにあたり、日本国内のみならずアジア太平洋(APAC)、北米市場をにらんだグローバル市場への進出が重要になると考えており、海外のベンチャーキャピタルが運営するファンドへの投資などを通じて、海外マーケットにおける情報収集と当社グループの提供するサービスの認知度向上のための活動を開始しております。

⑤ 事業ポートフォリオの拡大

当社グループは、クラウド専業インテグレーターとして、クラウド基盤に関するコンサルティング、基盤構築、運用支援サービスを提供しておりますが、AWSがインフラプロバイダーから本格的なアプリケーションスタック(注4)を提供する企業に進化していることに伴い、当社グループもIaaS(注5)だけでなく、プラットフォームサービス(注6)の拡充を図っていく必要があると考えております。また、今後クラウドファーストの潮流が一層鮮明化するに伴いより一層多様化・複雑化する顧客ニーズを的確に把握し、顧客ニーズを満たす適切な商品・サービスを提供し続けていくことや、連結子会社である株式会社G-genが展開するGoogle Cloud事業との連携によるマルチクラウドへの対応の必要があると認識しております。

そのため、ビッグデータ、AIなど、将来的に成長が期待される事業分野におけるクラウド導入コンサルティングサービスや導入支援サービス等、提供サービスのポートフォリオを強化していく方針であります。具体的には、AWSが提供するサービスを活用し、サーバーレス開発、仮想デスクトップサービス、ボイスアプリケーションやAIコールセンター等の開発及びコンサルティング・導入支援サービスを開始しております。
 また、既存の事業を成長させる領域やグローバルへの拡大展開及び、既存事業の延長線上にはない新しいビジネスやアイディアの実現なども、M&Aや投資といった多様な戦略的手法を通じてチャレンジすることで、更なる成長を追求いたします。

⑥ パートナー企業との協業推進及びM&Aによる成長の加速

当社グループは、2013年9月に株式会社テラスカイと資本・業務提携を行い、同社と合弁で設立した「株式会社スカイ365」においてMSP(マネージドサービスプロバイダー)における障害監視等の基本的な定型業務を委託しております。

また、2018年7月に株式会社エヌ・ティ・ティ・データ及びエヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社と、2020年2月に株式会社モンスター・ラボと、2021年3月にウイングアーク1st株式会社と資本業務提携を開始しております。株式会社エヌ・ティ・ティ・データとは、当社グループ単独では獲得が困難な金融・公共案件等の大型案件の獲得を、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社とは、同社が提供する各種ネットワークサービスと当社グループのクラウドサービスの組み合わせによる市場開拓を、株式会社モンスター・ラボとは、同社が得意とするデジタルプロダクト/アプリケーション領域における補完的協業によるデジタルトランスフォーメーション推進を、ウイングアーク1st株式会社とは、当社グループの保有するクラウドインフラに係る幅広い技術と同社の保有するクラウドサービスの提供に係る技術の連携を推進し、両社顧客のデジタルトランスフォーメーション推進を目的としております。

更に、2021年8月には、連結子会社である株式会社G-genによるGoogle Cloud事業の拡大を加速させる目的のため、グローバルにGoogle Cloud事業を展開する韓国のBespin Global Inc.との合弁契約を締結いたしました。今後も、Google Cloud事業の拡大のため、Bespin Global Inc.との良好な関係を築いてまいります。

また、2020年6月8日開催の取締役会において、M&A及び資本業務提携に関わる費用等を資金使途とした第三者割当による行使価額修正条項付第5回新株予約権(以下「本新株予約権」という。)の発行を決議し、2020年6月25日に本新株予約権の発行価額の総額の払込が完了し、2020年9月2日をもって本新株予約権の行使が全て完了し、5,156,837千円の資金を調達いたしました。

今後も、必要に応じて経営資源とノウハウを補完し合えるパートナーとの協業を図り、また、既存事業の強化と新たな事業軸を創出することを目的とするM&Aを積極的に検討・実施してまいります。常に変化する市場環境と多様化する顧客ニーズにスピード感を持って的確に対処しながら企業価値の更なる向上に向けて事業展開を進めてまいります。

⑦ パートナーエコシステム(注7)構築

当社グループは、AWSのパートナープログラムであるAWSパートナーネットワーク(APN)に加盟して、国内パブリッククラウド市場において高いシェアを有するAWSと強固なリレーションを構築しております。AWSと「パートナーエコシステム」を構築することでAWSから技術・ビジネス・販売及びマーケティング面における様々な支援を得ることが可能となり、相互に成長が加速する好循環を目指しております。今後も双方にメリットのある取組みを進め、強固なエコシステムの構築を目指してまいります。

また、連結子会社G-genによるGoogleとの強固なパートナーエコシステムの構築についても同様です。

 

(注1) パブリッククラウドとは、ソフトウェア、データベース、サーバー及びストレージ等をインターネットなどのネットワークを通じてサービスの形式で必要に応じて利用する方式のことを意味し、「IaaS」「PaaS」「SaaS」の大きく3つの種別に分類されます。

(注2) APNとは、AWS Partner Network の略称であります。AWSパートナー企業のビジネス、技術、マーケティング、市場開拓等における活動を支援・促進するためのさまざまなサポートを提供する制度であります。AWSの活用を支援する「コンサルティングパートナー」と、AWSを使ったソフトウェア・サービスを提供する「テクノロジーパートナー」の2つに大分されます。APNコンサルティングパートナーは、AWSに関する営業体制を保有し、AWSを活用したシステムインテグレーションやアプリケーション開発能力をAmazon Web Services, Inc.に認定されたパートナーの総称であり、営業・技術力、導入実績、貢献度等に応じて「レジスタード」「スタンダード」「アドバンスド」「プレミア」の4階層が存在します。最上位のプレミアコンサルティングパートナーは、APNコンサルティングパートナーの中でも最も優れた実績を残したパートナーとして位置づけられております。

(注3) AWS認定資格とは、AWS(Amazon Web Services)上でアプリケーション開発やオペレーションが行えるだけの技術的な専門知識を持っていることを認定する資格であります。

(注4) アプリケーションスタックとは、AWSのサービス提供範囲が、従来から提供しているインフラ層(インターネット経由でハードウェアやICTインフラをサービスとして提供)にとどまらず、インフラ層と相互運用性のある上層のプラットフォーム層(インターネット経由でOSやミドルウェア等のプラットフォームをサービスとして提供)に至るまで、サービスラインアップを拡充していることを意味しています。

(注5) IaaS とは、Infrastructure-as-a-Serviceの略称であります。インターネットを経由して、CPUやメモリなどのハードウェア、サーバーやネットワークなどのITインフラを提供するサービスであります。

(注6) プラットフォームサービスとは、商品やサービス・情報を集めた「場」を提供することで利用客を増やし、市場での優位性を確立するビジネスモデルであります。

(注7) パートナーエコシステムとは、さまざまなパートナー制度を提供することによって戦略的な事業拡大を図る仕組みであります。

 

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