業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 

① 財政状態の状況

a.資産

 当事業年度末における資産合計は3,992,960千円となり、前事業年度末に比べ979,408千円増加いたしました。これは主に、投資有価証券が44,144千円減少したものの、現金及び預金が880,087千円、繰延税金資産が145,101千円増加したことによるものです。

b.負債

 当事業年度末における負債合計は2,785,081千円となり、前事業年度末に比べ732,476千円増加いたしました。これは主に、前受収益が547,845千円、未払金が163,446千円増加したことによるものです。

c.純資産

 当事業年度末における純資産合計は1,207,879千円となり、前事業年度末に比べ246,932千円増加いたしました。これは主に、収益認識に関する会計基準等の適用に伴う期首調整により繰越利益剰余金が80,170千円減少したものの、資本金が58,990千円、資本準備金が58,990千円増加し、また、当期純利益の計上210,066千円があったことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 当社は、「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」というパーパスのもと、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指しています。その実現のため、「人材情報を一元化したデータプラットフォームを築く」というビジョンを掲げ、企業の人材情報をクラウド上で一元管理し、データ活用のプラットフォームとなるタレントマネジメントシステム『カオナビ』を提供しております。

 生産年齢人口の減少を背景に、生産性の向上、多様な働き方への対応、人材の定着や離職防止、採用の強化など、企業はさまざまな人事課題を抱えています。その解決に向けて、タレントマネジメントシステムの導入ニーズは高まっており、その市場は今後さらなる拡大が見込まれております。

 このような環境の中、当社は継続的な売上高成長の実現に向け、積極的な人材採用や育成をはじめとした組織体制の強化、顧客体験価値の向上に向けたプロダクトのアップデート、サービス認知度向上を加速するためのマーケティング活動などに注力してまいりました。さらに、導入顧客のタレントマネジメントの成功確率をより高めるため、学習プログラムや顧客同士で活きた事例を学び合うコミュニティ等を体系的に提供する「カオナビキャンパス」を開始するなど、既存顧客に対するカスタマーサクセスにも注力して取り組んでまいりました。

 この結果、当事業年度末におけるARR(注1)は前事業年度末比36.0%増の4,912百万円、『カオナビ』の利用企業数は同21.2%増の2,497社、ARPU(注2)は同12.2%増の164千円となりました。また、解約率(注3)の直近12ヶ月平均は0.56%(同0.16ポイント減)となり、低い水準を維持しております。

 以上の結果、当事業年度の経営成績は売上高4,496,344千円(前事業年度比32.2%増)、営業利益174,089千円(前事業年度は営業損失11,040千円)、経常利益163,530千円(前事業年度は経常損失16,148千円)、当期純利益は、繰延税金資産を145,101千円計上したこと等により210,066千円(前事業年度は当期純損失130,748千円)となりました。

 また、当社の事業はタレントマネジメントシステム『カオナビ』の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は省略しております。

 なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当事業年度の期首から適用しております。詳細については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 会計方針の変更」をご参照ください。

 

(注)1.ARR

Annual Recurring Revenueの略で、四半期末のMRR(Monthly Recurring Revenueの略で月額利用料の合計)を12倍して算出しています。なお、MRRは管理会計上の数値です。

2.ARPU

Average Revenue Per Userの略で、四半期末のMRRを利用企業数で除して計算しています。

3.解約率

MRRの解約率を示しており、当月の解約により減少したMRRを前月末のMRRで除して計算しています。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ880,087千円増加し、2,835,157千円となりました。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動による資金の増加は979,238千円となりました。これは主に、税引前当期純利益の計上120,408千円、前受収益の増加額459,658千円、未払金の増加額162,166千円等の資金の増加があったことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動による資金の減少は30,936千円となりました。これは主に、敷金の差入による支出19,851千円、有形固定資産の取得による支出10,804千円等の資金の減少があったことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動による資金の減少は68,215千円となりました。これは主に、株式の発行による収入59,185千円による資金の増加があったものの、長期借入金の返済による支出127,164千円等の資金の減少があったことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社は、生産活動を行っておりませんので、該当事項はありません。

 

b.受注実績

当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、受注状況の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

販売実績は、次のとおりであります。

当事業年度

(自  2021年4月1日

 至  2022年3月31日)

金額(千円)

前年同期比(%)

4,496,344

132.2

(注)1.当社の事業はタレントマネジメントシステム『カオナビ』の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しております。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

 

① 重要な会計方針、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要としております。経営者は、これらの見積りについて、過去の実績等を勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性が存在するため、これらの見積りとは異なる場合があります。特に、繰延税金資産の回収可能性については重要な会計上の見積りが必要となります。当該見積り及び仮定の不確実性の内容やその変動により経営成績等に生じる影響などは、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載しております。

また、当社の財務諸表で採用する重要な会計方針については、「第5 経理の状況 1 財務諸表等(1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」に記載しております。

 

② 経営成績の分析

a.売上高

 当事業年度における売上高は4,496,344千円(前事業年度比1,094,065千円の増加)となりました。これは主に、顧客獲得プロセスの見直しや組織体制の強化のための人材採用、既存顧客に対するカスタマーサクセスに注力した結果、タレントマネジメントシステム事業が順調に成長したことによるものであります。なお、当事業年度末の『カオナビ』の利用企業社数は2,497社であり、前事業年度末比で436社増加しております。

b.売上原価、売上総利益

 当事業年度における売上原価は1,201,341千円(前事業年度比260,198千円の増加)となりました。これは主に、労務費及び外注費の増加によるものであります。この結果、売上総利益は3,295,003千円(前事業年度比833,867千円の増加)となりました。なお、当事業年度の売上総利益率は73.3%(前事業年度は72.3%)となりました。

c.販売費及び一般管理費、営業損益

 当事業年度における販売費及び一般管理費は3,120,915千円(前事業年度比648,739千円の増加)となりました。これは主に、人員拡大に伴い給与の支払いが増加したことによるものであります。この結果、営業利益は174,089千円(前事業年度は営業損失11,040千円)となりました。なお、当事業年度末の従業員数は229名であり、前事業年度末比で45名増加しております。

d.経常損益

 当事業年度において営業外収益が274千円、営業外費用が10,833千円発生しております。この結果、経常利益は163,530千円(前事業年度は経常損失16,148千円)となりました。

e.当期純損益

 当事業年度において、法人税等が89,658千円の減少となりました。これは、法人税、住民税及び事業税が55,442千円発生している一方で、繰延税金資産の計上による法人税等調整額が145,101千円減少したことによるものです。この結果、当期純利益は210,066千円(前事業年度は当期純損失130,748千円)となりました。

 

③ 財政状態の分析

 当事業年度における財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」をご参照ください。

 

④ 経営成績に重要な影響を与える要因について

新型コロナウイルス感染症に関しまして、社会経済活動の停滞に伴う受注減少や解約増加により、売上高成長が鈍化する等、短期的に経営成績へ影響を及ぼす可能性がありますが、柔軟にコストコントロールを行うことで、安定的な事業・財務運営に取り組む方針であります。

その他、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤ キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社の運転資金需要のうち主なものは、人件費、広告宣伝費、外注費等の営業費用であります。

運転資金は自己資金を基本としており、投資資金は自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としております。なお、当事業年度末における借入金残高は454,545千円となっております。また、当事業年度末の現金及び現金同等物は2,835,157千円であり、流動性を確保しております。

当事業年度におけるキャッシュ・フローの状況の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」をご参照ください。

 

⑥ 経営戦略の現状と見通し

経営戦略の現状と見通しについては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

 

⑦ 経営者の問題意識と今後の方針

当社は、「“はたらく”にテクノロジーを実装し、個の力から社会の仕様を変える」というパーパスのもと、テクノロジーによって一人ひとりの個性や才能を理解することで、個人のキャリア形成や働き方が多様化される社会の実現を目指して事業を展開しております。

これは、日本の産業構造や人口構造が変わりつつある中、多様な働き方への対応、人材の定着や離職防止、採用の強化など、企業が抱えている様々な人事課題の解決のために、『カオナビ』を活用することで、企業における人材情報をクラウド上に一元化させ、個の力や個性をきちんと引き出すマネジメントに貢献することにより、企業の働き方やマネジメントのあり方をより良いものに変えていきたいと考えております。

当社がこのパーパスの下、長期的な競争力を維持し持続的な成長を図るためには、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載の様々な課題に対して、経営者は常に事業環境の変化に関する情報の入手及び分析を行い、最善の経営方針を立案していくことが必要であると認識しております。

 

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