課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する記載は、本書提出日現在、当社グループが判断したものであります。

(1)経営方針

 当社は、設立時より「情報の価値を具現化する仕組みを提供する」を企業理念に掲げ、グループにおいてこれを共有し、経営判断の拠り所としております。当社は現在、この理念の下、金融・経済情報分野を中心に事業を展開しており、情報インフラを担う者として、国内での少子高齢化や老後資金問題、生産性人口の減少による企業の業務効率化問題等、様々な社会的課題の解決に貢献し得る存在であり、積極的に取り組む責務があると認識しています。また、当社の社名「株式会社ミンカブ・ジ・インフォノイド」の「インフォノイド」は“情報(Information)”と“執着する者(Noid)”の造語であり、“MINKABU THE INFONOID - Minkabuこそが情報に拘るものである”は、当社の成長ドライバーのスローガンそのものであります。

 当社グループは、コアアセットである、コンテンツを自動生成するAIエンジン、ユーザーの投稿や閲覧といったクラウドインプット、国内外の金融経済・企業情報等のビッグデータを基盤に“テクノロジーを活用した情報提供の仕組み”を、独自の技術で実現しメディア事業及びソリューション事業を展開しております。当社グループのコアアセットが生み出す情報の網羅性・正確性・速報性の強みは、業績面では収益の再現性、利益の効率性及び収益機会の拡張性をもたらし、当社はこうした強みを活かし、情報への拘りを追求してその価値を具現化し、金融・経済のみならず様々なテーマにおいて、直接的に又は間接的に最終顧客の活動に寄与し、テクノロジーを活用した新たな情報提供の在り方を実現することで、豊かな社会の構築に貢献してまいります。

 2019年3月の東京証券取引所マザーズ上場から当連結会計年度で3年が経過し、この間当社グループは売上、営業利益ともに高成長を実現してまいりました。今後当社グループは既存事業の継続成長を基盤としつつ、さらなる事業スコープ及びスケールの拡大による増収効果で成長スピードを加速していく方針であり、この実現に向け一定の利益率を確保しつつ、利益率上昇の超過分は成長加速に向け積極投資を行ってまいります。

 

(2)経営戦略等

 当社は、上記の経営方針及び成長加速戦略に基づき、主に金融・経済をテーマとする分野において、情報を必要とする全ての人が、意識的に、また無意識に当社サービスを利用する環境の構築を目指してまいります。

 メディア事業においては、資産形成の情報提供から啓発、運用・管理までを総合的にサポートする資産形成情報メディア「MINKABU(みんかぶ)」及び主に個別株式投資経験者層が利用する株式情報専門メディア「Kabutan(株探)」の既存メディアサービスの深掘による有料化や他社との協業を通じて、さらに細分化されたユーザーニーズに対応し、より幅広い資産形成層の獲得と各ユーザーの利用拡大を目指します。

 一方、ソリューション事業においては、情報系ソリューション商材の拡充やAI技術の汎用的展開等により顧客対象企業の多様化と顧客単価の上昇を、システム系ソリューションでは、情報系ソリューションの顧客基盤及び当社アセットを活用し主に金融機関のシステム投資の高度化並びに業務効率化を実現するシステムソリューションサービスの展開により収益基盤の拡大に取り組んでまいります。

 また、当連結会計年度において、ロボアドバイザー・エンジンを活用し、個人投資家の資産形成を支援するための金融サービス展開のための子会社「株式会社ミンカブアセットパートナーズ」を2021年9月1日に設立いたしました。現在、金融商品仲介業登録手続中であり、今後約900万人のアクティブユーザー層と金融機関を中心に400社超の顧客基盤を抱える当社グループならではの金融サービスの展開を目指します。

 さらにこれまでの実績と経験を活かし、ノウハウ、開発、販売などのスコープの拡大を追求する事業譲受や企業買収も、経営戦略上の有効な手段と捉えております。

 こうした経営戦略のもと、当連結会計年度におきましては、2021年4月25日付で、メディア事業の旗艦サービスである「みんなの株式」について、みんかぶシリーズメディア7媒体を統合し、従前の投資情報メディアから、1億500万人の資産形成層(総務省統計局「人口推移」20代以上の合計値)に向けた資産形成情報メディア「MINKABU(みんかぶ)」へリブランドいたしました。このリブランドによるTAM(Total Addressable Market)の拡大に並行して、2021年8月28日に資産形成にかかるサービスの一角としてサブスクリプション型課金サービス「MINKABU ASSET PLANNER」(通称「アセプラ」)の提供を開始いたしました。もう一方の旗艦サービスである投資経験者向け株式情報専門メディア「Kabutan(株探)」につきましては、投資家のニーズが高い米国株情報を追加してサービスの深掘を推進いたしました。

 加えて2021年5月14日には、株式会社QUICK(以下、「QUICK」といいます。)及び株式会社日本経済新聞社(以下、「日本経済新聞社」といいます。)と資本業務提携契約を締結し、両社に対して総額約35億円の第三者割当増資を実施いたしました。当社とQUICKは2020年9月より業務提携関係にあり、更なる連携強化として、同社の親会社である日本経済新聞社も加わる形での第三者割当増資となり、幅広い協業を通じて日本国内における金融・経済情報のデファクトを構築する理念で一致し、その事業領域及び規模の拡大並びに事業効率の向上の実現に向けた取り組みを開始いたしました。当連結会計年度におきましては日本経済新聞社及びQUICKとの各種連携や外部マーケティング等を通じ、認知度の拡大を推進いたしました。なお、調達資金のうち25億円につきましては、引き続き資本提携等のための待機資金として充当する予定であります。

 

(3)経営環境

 金融・経済をテーマとする事業領域におきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の収束に向けた模索が続く一方、2022年5月の米国のFOMC(米連邦公開市場委員会)による利上げの決定や円安、ウクライナ危機等、不透明な状況が継続しております。当社の経営は株式等資本市場の動向に連動した直接的な影響を受けるモデルではないものの、引き続き市場の動向については注視していく必要があると認識しております。一方で、所謂「老後2,000万円問題」を機にした資産運用の必要性ついての社会全体の意識の高まりや米国株情報への需要増などの外部環境は当社事業環境には追い風の状況にあり、当社の強みである情報の品質面での参入障壁、ソリューション事業における独自性を発揮できるものと考えております。

 なお、これらの事業活動を支える労働力の確保に関しては、グループ全体を通じて新規採用の積極推進に加えて、グループ全社で導入しているテレワークについてもDX化の推進により一段の効率化と多様な労働環境の整備・提供を図るとともに内部体制をさらに強化してまいります。

 

 以上の経営環境を踏まえ、2023年3月期連結業績予想といたしましては、売上高は7,500百万円(2022年3月期比36.8%増)、営業利益は1,250百万円(同42.9%増)、経常利益は1,120百万円(同35.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は、翌年度5年間の税効果を繰延税金資産として見積る前提から750百万円(前期比7.8%増)を見込んでおります。また、営業利益に減価償却費、のれん償却額を加えた計画上のEBITDAは2,150百万円(同39.6%増)を見込んでおります。なお、メディア事業のトラフィックの継続的な成長やソリューション事業の既存商材の拡販の継続や新商材の投入タイミング、人員採用計画及び一部の季節性を鑑み、2023年3月期におきましても前期同様に下期偏重の業績を計画しております。

 

 なお、当社では、経営上の目標の達成状況を判断するための指標として売上高の他、EBITDA(営業利益+減価償却費+のれん償却額)を重視しております。EBITDAは、ソフトウエアを中心とした成長投資に係る減価償却費やM&A等によるのれん償却額を除いた収益力を示すものであり、当社の事業形態や経営戦略に則した実質的な収益力を測る有効な指標と考えております。また各事業セグメントにおいて業績動向を測る主な指標(KPI:Key Performance Indicator)として、メディア事業では当社が運営するウェブサイトを利用する月間ユニークユーザー数と訪問ユーザー数を、ソリューション事業ではMRR、ARPU(Monthly Recurring Revenue、Average Revenue Per User)を参照しております。

 

(4)優先的に対処すべき事業上、財務上の課題

今後当社グループが成長を遂げていくための優先的に対処すべき事業上、財務上の課題及びこれらへの対処方針は以下のとおりであります。

① 提供サービスの品質の維持向上

 当社グループが提供するサービスは、その大半がインターネットを利用したサービスであるため、システムの安定稼働や、ユーザーがいつでもどこでもストレス無く利用できる環境の提供、ユーザー情報を含む各種情報資産の適切な管理、提供コンテンツの速報性や網羅性並びに正確性等、サービスの品質の維持・向上は不可欠と認識しております。係る課題に対処するため、技術革新等に対応するシステム開発等への投資及び技術者等育成のための投資を継続的に行い、テクノロジーの発展を追求するとともに、情報管理の品質の維持向上のための投資も並行し、リスク管理の品質の維持向上を図ってまいります。

 

② 収益基盤の強化・拡大

 当社グループの売上高は、メディア事業及びソリューション事業のいずれも堅調に推移しているものと考えておりますが、さらなる収益基盤の強化・拡大による成長加速を今後の経営戦略と位置付けております。そのため、メディア事業では、広告宣伝の活用や外部パートナーとの協業促進による収益機会の創造、課金サービスの認知度拡大等による課金ユーザー数の拡大とこれに伴う課金収益の増大を、ソリューション事業では、金融機関向けには従前の情報系ソリューションに加えシステム系ソリューションの提供を開始するとともに個人投資家の資産形成を支援するための金融サービス展開の準備等、金融市場の健全な発展を促すとともに、当社事業におけるスケールとスコープの双方を拡大し市場環境等の影響を受けにくい、収益基盤の強化を図ってまいります。

 

③ 経営資源の最適配分と効率的運用

 当社グループは、事業の拡大に則した組織体制と人員確保を進めると同時に、限られた経営資源を有効に活用すべく、業務執行の組織横断的連携と集中管理体制を構築しております。結果、組織運営の秩序が乱れた場合には、事業運営に影響が生じる可能性があり、限られた経営資源をもって各種事業リスクにどのように対処していくかが課題と認識しております。係る課題に対処するため、経営資源の最適配分及び効率的な組織運用を目的とした各社及びグループ共通規程の整備、並びにその周知徹底を継続的に行ってまいります。

 

④ 人材の確保及び育成

 当社グループは、自律的な成長のためには、当社の理念に共感し高い意欲を持つとともに自律的成長が可能な優秀な人材の採用及び確保、並びにその育成は重要であると認識しております。そのため、多様な働き方の整備や福利厚生・社内教育体制の充実等、従業員が高いモチベーションを持って働くことのできる環境の整備を継続して推進してまいります。

 

⑤ ガバナンス及び内部管理体制の強化

 当社グループは、持続的成長を遂げるためには、事業執行とガバナンスのバランス、並びに経営上のリスクを適切に把握しコントロールするための内部管理体制の強化が重要であると認識しております。そのため、社外取締役や監査等委員への報告体制の強化、監査等委員会と内部監査室並びに会計監査人による実効性ある三様監査を推進するとともに、グループ役職員向けコンプライアンス研修の実施等を通じた個々人への意識づけ並びに内部監査室による定期的監査を継続的に実施してまいります。

 

⑥ ESGへの取組の強化

 当社グループは、持続的成長を遂げるためには、ESGへの継続的取り組み及び強化は経営課題であると認識しております。そのため、サステナビリティ委員会を設置し、ESGを含むサステナビリティ経営に対する基本方針、施策の決定等を行うこととしております。環境に対しては、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)による提言への賛同を表明するとともに、カーボンオフセット制度を活用するなどの取組みを実施しており、ESGに係るこうした取り組みを強化してまいります。

 

 

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