業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績に関する説明

 当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」)の状況の概要は次の通りです。

 

①経営成績の分析

当社グループは、「出会いからイノベーションを生み出す」というミッションの下、「ビジネスインフラになる」というビジョンを掲げ、クラウドソフトウエアにテクノロジーと人力によってアナログ情報をデジタル化する仕組みを組み合わせた手法を軸に、人や企業との出会いをビジネスチャンスにつなげる、働き方を変えるDXサービスを提供しています。

 

具体的には、企業の営業活動や請求書業務、契約書業務等に対して、デジタルトランスフォーメーション(DX)を促進するサービスを展開しており、昨今の新型コロナウイルス感染症による働き方の変化やDXへの意識改革、SaaSビジネスへの関心の高まり等によって、DX市場は2030年に5兆1,957億円(2020年比3兆8,136億円増)(注1)、国内SaaS市場は2024年に1兆1,178億円(2019年比5,162億円増)(注2)の規模に達すると予想されています。当社が提供する営業DXサービス「Sansan」は、法人向け名刺管理サービス市場において83.1%のシェア(注3)を占めており、同市場は当社サービスの成長等につれて、2013年から2020年にかけて13倍に拡大しています。また、当社が提供するクラウド請求書受領サービス「Bill One」は、クラウド請求書受領サービス市場においてNo.1の売上高シェア(注4)を獲得しており、2021年度の同市場は、前連結会計年度と比べて226.0%増加しています。

 

当連結会計年度の経営成績は以下の通りです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度比

 

 

 

 

売上高

16,184

20,420

+26.2%

売上総利益

14,192

17,904

+26.2%

営業利益

736

631

△14.2%

経常利益

375

968

+158.3%

親会社株主に帰属する当期純利益

182

857

+369.7%

 

当連結会計年度においては、継続的な売上高の成長の実現に向け、人材採用をはじめとした営業体制の強化のほか、「Sansan」や「Bill One」、キャリアプロフィール「Eight」の機能拡充等に取り組みました。

また、2021年12月1日を効力発生日として、普通株式1株につき4株の割合をもって株式分割を行ったほか、2021年10月8日に公表の通り、新市場区分「プライム市場」の選択を株式会社東京証券取引所に申請し、2022年4月4日の新市場区分一斉移行後の当社の市場区分は、プライム市場となりました。

 

以上の結果、当連結会計年度における売上高は前連結会計年度比26.2%増、売上総利益は前連結会計年度比26.2%増、売上総利益率は前連結会計年度と同じ87.7%となり、コロナ禍における一定のマイナス影響を受けたものの、総じて堅調な実績となりました。一方で、営業利益は前連結会計年度比14.2%減となりましたが、これは、積極的な人材採用を進めたことで人件費が前連結会計年度比で2,013百万円増加したことに加え、マーケティング活動の強化によって広告宣伝費が前連結会計年度比で145百万円増加したこと等によるものであり、中長期的な売上高の成長実現に向けた戦略を推進した結果です。また、経常利益は前連結会計年度比158.3%増、親会社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度比369.7%増となりましたが、これは2021年7月19日公表の通り、投資有価証券売却益979百万円を営業外収益に計上したこと等によるものです。

 

(注)1.「2022 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望 市場編、ベンター戦略編」富士キメラ総研

2.「ソフトウェアビジネス新市場 2020年版」富士キメラ総研

3.「営業支援DXにおける名刺管理サービスの最新動向2022」(2021年12月 シード・プランニング調査)

 4. デロイト トーマツ ミック経済研究所「驚異的な成長が見込まれるクラウド請求書受領サービス市場の現状と将来」(ミックITリポート2022年7月号)

 

 

セグメント別の業績は以下の通りです。

なお、当連結会計年度より、各プロダクトへの資源配分を最適化し、プロダクト毎の成長促進を図る目的で経営管理体制の整備を行ったことから、従来の「Sansan事業」について、「Sansan」及び「Bill One」等の複数のプロダクトを含めた事業として「Sansan/Bill One事業」に変更しています。

 

(ⅰ)Sansan/Bill One事業

当事業セグメントには、営業DXサービス「Sansan」やクラウド請求書受領サービス「Bill One」等のサービスが属しています。

当連結会計年度におけるSansan/Bill One事業の成績は以下の通りです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度比

 

 

 

 

売上高(注5)

14,605

18,105

+24.0%

「Sansan」

14,519

17,214

+18.6%

「Sansan」ストック

13,811

16,349

+18.4%

「Sansan」その他

707

865

+22.3%

「Bill One」

84

826

+878.1%

その他

1

64

+4,414.0%

営業利益

5,278

5,725

+8.5%

 

 

 

 

「Sansan」

 

 

 

契約件数

7,744件

8,488件

+9.6%

契約当たり月次ストック売上高

162千円

170千円

+4.9%

直近12か月平均月次解約率(注6)

0.63%

0.62%

△0.01pt

「Bill One」

 

 

 

MRR(注7)

20

117

+479.7%

有料契約件数

239件

853件

+256.9%

有料契約当たり月次売上高

84千円

137千円

+63.1%

直近12か月平均月次解約率(注6)

0.49%

 

(注)5. 外部顧客への売上高及びセグメント間の内部売上高または振替高の合計値

6. 各サービスの既存契約の月額課金額に占める、解約に伴い減少した月額課金額の割合

7. Monthly Recurring Revenue(月次固定収入)

 

a.「Sansan」

「Sansan」の契約件数及び契約当たり月次ストック売上高のさらなる拡大に向け、クラウド名刺管理サービス「Sansan」を「営業を強くするデータベース」をコンセプトに、営業DXサービス「Sansan」へ刷新しました。具体的には、2023年6月からの利用開始に向け、「Sansan」上で100万件以上の企業情報が閲覧できる企業データベースのほか、名刺だけではなくメール署名等の接点情報を蓄積し可視化できる機能の開発に取り組みました。これらの接点情報と企業データベースを組み合わせることで、接点のない企業の情報も含めた利用企業ならではのデータベースを「Sansan」上に構築することができるようになります。新型コロナウイルス感染症の影響によって新規契約の獲得に一定のマイナス影響が生じたものの、営業体制の強化等が奏功し、中堅・大企業の新規契約獲得が進んだ結果、「Sansan」の契約件数は前連結会計年度末比9.6%増、契約当たり月次ストック売上高は前連結会計年度比4.9%増となりました。また、直近12か月平均の月次解約率は、既存顧客の利用拡大に対する継続的な取り組みを行った結果、前連結会計年度比0.01ポイント減の0.62%となり、低水準を維持しました。

この結果、「Sansan」売上高は前連結会計年度比18.6%増、うち、固定収入であるストック売上高は前連結会計年度比18.4%増、その他売上高は前連結会計年度比22.3%増となりました。

 

b.「Bill One」

「Bill One」の高成長継続に向け、人材採用をはじめとした営業体制の強化や機能拡充等に取り組んだ結果、中堅・大企業の新規契約獲得が進み、有料契約件数は前連結会計年度末比256.9%増、有料契約当たり月次売上高は前連結会計年度比63.1%増となりました。

この結果、「Bill One」売上高は前連結会計年度比878.1%増となりました。また、2022年5月におけるMRRは前年同月比479.7%増、ARR(注8)は1,407百万円となり、目標としていたARR10億円を大幅に上回りました。

 

(注)8. Annual Recurring Revenue(年間固定収入)

 

c. その他

既存サービスで培った強みや知見、ノウハウ等を活かして、クラウド契約業務サービス「Contract One」等の立ち上げに注力しました。

この結果、その他売上高は前連結会計年度比4,414.0%増となりました。

 

以上の結果、Sansan/Bill One事業の売上高は前連結会計年度比24.0%増となりました。セグメント利益は、主には「Bill One」のさらなる成長実現のための投資を強化したことから、前連結会計年度比8.5%増となりました。

 

(ⅱ)Eight事業

当事業セグメントには、キャリアプロフィール「Eight」のほか、ログミー株式会社が提供する書き起こしメディアのサービスが属しています。

当連結会計年度におけるEight事業の成績は以下の通りです。

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結会計年度比

 

 

 

 

売上高(注5)

1,582

2,213

+39.9%

BtoCサービス

296

286

△3.6%

BtoBサービス

1,286

1,927

+49.9%

営業利益

△754

△386

 

 

 

 

「Eight」

 

 

 

「Eight」ユーザー数(注9)

292万人

310万人

+18万人

「Eight Team」契約件数

2,253件

2,819件

+25.1%

 

(注)9.アプリをダウンロード後、自身の名刺をプロフィールに登録した認証ユーザー数

 

2022年4月に、名刺アプリであった「Eight」を「名刺管理に、転職に」をコンセプトとしたプロダクトへ刷新しました。具体的には、「Eight」上にキャリア形成に役立つ情報を集約したキャリアタブの機能を搭載することで、ユーザーが効率的に情報取得することができるようにしました。

 

a. BtoCサービス

サービスの機能拡充等に取り組んだ結果、「Eight」ユーザー数は前連結会計年度末比18万人増の310万人となりましたが、BtoCサービス売上高は前連結会計年度比3.6%減となりました。

 

b. BtoBサービス

2022年5月には当連結会計年度で2回目となる大型ビジネスイベント「Climbers」を開催する等、各種BtoBサービスのマネタイズ強化に取り組んだ結果、BtoBサービス売上高は前連結会計年度比49.9%増となりました。また、「Eight Team」の契約件数は前連結会計年度末比25.1%増となりました。

 

以上の結果、Eight事業の売上高は前連結会計年度比39.9%増、セグメント損失は前連結会計年度と比較して367百万円縮小しました。

 

 

②財政状態の分析

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前連結

会計年度末比

 

 

 

 

資産合計

24,310

26,292

1,982

負債合計

11,725

14,199

2,473

純資産合計

12,584

12,093

△491

負債純資産合計

24,310

26,292

1,982

 

(資産)

 当連結会計年度末における総資産は26,292百万円となり、前連結会計年度末に比べ、1,982百万円増加しました。これは主に、現金及び預金の増加3,043百万円及び売掛金の増加185百万円、投資有価証券の売却による減少2,082百万円によるものです。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債合計は14,199百万円となり、前連結会計年度末に比べ、2,473百万円増加しました。これは主に長期借入金の新規借入による増加1,668百万円及び顧客企業から契約期間分の料金を一括で受領すること等による前受金の増加1,479百万円、1年内返済予定の長期借入金の減少608百万円、短期借入金の減少200百万円及び繰延税金負債の減少571百万円によるものです。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産額は12,093百万円となり、前連結会計年度末に比べ、491百万円減少しました。これは主に、投資有価証券の期末評価に伴うその他有価証券評価差額金の減少1,536百万円、新株予約権の行使による資本金の増加113百万円及び親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加857百万円によるものです。

 

③キャッシュ・フローの分析

 

 

 

(単位:百万円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

 

 

 

 

営業活動によるキャッシュ・フロー

3,011

3,123

111

投資活動によるキャッシュ・フロー

△551

△1,014

△463

財務活動によるキャッシュ・フロー

△2,902

909

3,811

現金及び現金同等物の期末残高

12,223

15,245

3,021

 

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は15,245百万円となり、前連結会計年度末に比べ3,021百万円増加(前年同期比24.7%増)しました。当該増加には資金に係る為替変動による影響3百万円が含まれています。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次の通りです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は3,123百万円(前年同期は3,011百万円の収入)となりました。主な資金増加要因は、税金等調整前当期純利益の計上908百万円、非現金支出となる減価償却費の計上768百万円、持分法による投資損失の計上609百万円並びに前受金の増加1,479百万円等であり、主な資金減少要因は、投資有価証券売却益979百万円の計上、売上債権の増加183百万円等によるものです。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は1,014百万円(前年同期は551百万円の支出)となりました。これは主に投資有価証券の取得による支出2,555百万円、関係会社株式の取得による支出500百万円、無形固定資産の取得による支出453百万円及び有形固定資産の取得による支出468百万円等の支出、投資有価証券の売却による収入3,224百万円等の収入によるものです。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果得られた資金は909百万円(前年同期は2,902百万円の支出)となりました。これは主に長期借入金の借入による収入3,250百万円及び株式の発行による収入209百万円等の収入、短期借入金の純減少200百万円及び長期借入金の返済による支出2,190百万円等の支出によるものです。

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社グループは、提供するサービスについて生産に該当する事項がないため、生産実績に関する記載はしていません。

 

b.受注実績

 当社グループは、受注から役務提供の開始までの期間が短いため、受注実績に関する記載は省略しています。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の外部顧客への販売実績をセグメント毎に示すと、次の通りです。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2021年6月 1日

至 2022年5月31日)

前年同期比(%)

Sansan/Bill One事業

(百万円)

18,104

+24.0%

Eight事業

(百万円)

2,204

+39.6%

合計

(百万円)

20,309

+25.5%

(注)主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合については、総販売実績に対する割合が10%以上の相手先がいないため記載を省略しています。

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次の通りです。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。

①重要な会計方針及び見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成に当たって、重要となる会計方針については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載しています。

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載の通りです。なお、新型コロナウィルス感染症の影響については、今後の広がり方や収束時期等を正確に予測することは困難な状況にありますが、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う経済への影響が2022年5月末まで続くとの仮定の下、繰延税金資産の回収可能性等の会計上の見積りを行っています。

 

②当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1)経営成績等の状況の概要」に含めて記載しています。

 

③資本の財源及び資金の流動性

当社グループは、認知度の向上及びユーザー数の拡大をすべく、積極的に広告宣伝活動を実施しました。今後も広告宣伝投資を継続して実施する方針です。当社グループの資金需要の一定割合は広告宣伝投資であり、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としています。なお、これらの資金調達方法の優先順位等に特段方針はなく、資金需要の額や使途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。

 

④経営成績に重要な影響を与える要因について

 経営成績に重要な影響を与える要因については、「2 事業等のリスク」をご参照ください。

 

⑤経営者の問題意識と今後の方針に関して

経営者の問題意識と今後の方針については、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」をご参照ください。

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