課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社グループは「一人でも多くの方に笑顔を取りもどしていただくために、優れた医薬品の提供を通じて患者さんのクオリティ・オブ・ライフの向上につとめる」を企業理念として、株主の皆様から負託された企業活動を行うにあたり、経営の基本方針として次の三つの方針を掲げております。この基本方針に則り、企業価値の最大化をはかり、ステークホルダーの信頼と期待に応えてまいります。

① 患者さんと医療関係者のニーズに即した、有用な医薬品の創製・提供につとめる。

② 医薬品企業としての社会的責任を自覚し、高い倫理観をもって企業活動を行い、社会から信頼される企業をめざす。

③ 社員がその仕事に歓びと誇りをもち、活力あふれる存在感のある企業をめざす。

 

(2) 経営環境

新型コロナウイルス感染症の世界的感染拡大は製薬業界にも大きな影響を及ぼしており、先行きが不透明な状況が続いております。さらに、近年、国内製薬業界を取り巻く環境も大きく変化し、かつてない厳しい時代を迎えております。国内医薬品事業におきましては、急速な高齢化社会の進行等によって国の医療財政が逼迫する中、ジェネリック医薬品使用促進策や薬価制度の抜本改革等の様々な医療費抑制策が実施され、製薬企業は生き残りをかけて、より一層効率性を高めながら画期的新薬を創出し続けていくことが求められております。

また、研究開発においては、難病や希少疾患等に対するアンメットメディカルニーズが高まり、創薬研究の対象は病因・病態の難解な疾患へとシフトし、革新的な新薬を創出することは年々難易度を増しており、研究開発に関する費用とリスクはますます増大しております。さらに、国内外の企業との開発品の導入や販売提携等の交渉についても競争が激化しており、その費用も高額化しております。

このような状況下において、私たちは、社員一人ひとりの成長によって組織力の最大化をはかるべく人材育成に注力するとともに、高い有効性と安全性を有し需要が見込める医薬品を効率よく創出・販売できる体制の構築、研究開発への積極的な投資を進めております。また、海外企業への導出による製品のグローバル展開を加速し、新たな成長機会の獲得をめざしております。

 

(3) 中期経営戦略

2019年を起点とする3か年の中期経営計画においては、その期間の業績だけにとらわれず、厳しい時代を乗り切るための「成長基盤の確立」を重要課題と位置付け、次の4点に重点的に取り組んでまいりました。

① 開発パイプラインの充実を最優先課題とし、可能な限りの経営資源を配分する。

② クレナフィンの海外展開、新製品の海外展開や適応拡大により、価値最大化をはかる。

③ 連結売上高945億円達成に向け、営業基盤の強化と効率化をはかり、生産性の向上をめざす。

④ 人材育成・人材教育により全社員の生産性を高め、存在感のある社員を育成するとともに、組織のスリム化・人員配置の適正化をはかる。

また、2021年度経営数値目標として、連結売上高945億円、連結営業利益250億円、連結ROE12.0%以上としておりましたが、新型コロナウイルス感染症拡大による医療機関への受診抑制及び想定以上の薬価改定、競合環境の変化等により連結売上高760億円、連結営業利益170億円、連結ROE7.0%という結果でありました。

 

 

2022 年を起点とする10か年の経営計画においては、製薬業界を取り巻く厳しい状況や、それに伴う当社の長期的課題を分析し、当社の 2031 年ビジョンとそのビジョンの実現に向けた戦略を掲げております。

≪2031年ビジョン≫

   1. 画期的新薬の迅速な創出・提供により健康寿命延伸に貢献し続ける企業 

   2. 皮膚科、整形外科領域を中心にグローバルに展開する創薬企業

ビジョンの実現に向けた戦略 ~3つのTransformation~≫

 (1)研究開発 Transformation

① 自社研究基盤の活用

② 新規診療領域への展開

③ 新たなモダリティへの挑戦

④ 研究開発への積極的投資

 (2)海外展開 Transformation

① 自社創薬と製品・開発品の導入による海外展開品の充実

② 海外自社展開(開発・販売)による製品の価値最大化

(3)経営基盤 Transformation

① プロフェッショナルとして変革を追求し続ける人材の育成及び就業環境整備

② データとデジタル技術を活用して変革し続ける企業風土の醸成

③ 患者さんファーストのための製品価値最大化及び高品質な医薬品の安定的な生産体制の構築

 

また、2026年度経営数値目標として、連結売上高800億円、連結営業利益180億円、連結ROE8.0%以上、2031年度経営数値目標として、連結売上高1,000億円、連結営業利益285億円、連結ROE10.0%以上をめざしてまいります。

 

当連結会計年度は、開発パイプラインの充実に向けて国内バイオベンチャー企業アーサム㈱を2021年12月に買収いたしました。同社は、形成外科領域における開発品「ART-001」(対象疾患:難治性脈管奇形)及び皮膚科領域の開発品「ART-648」(同:水疱性類天疱瘡)を有しており、本買収により開発パイプラインの強化に加え、アーサム㈱の有するドラッグリポジショニングに関わる技術と経験を当社が保有する既存化合物に適用する等のシナジー効果を実現し、当社の研究開発能力の更なる向上をはかってまいります。その他の開発パイプラインといたしましては、希少疾病用医薬品に指定されております熱傷焼痂除去剤「KMW-1」の製造販売承認申請がなされるとともに、アタマジラミ症治療剤「イベルメクチン0.5%外用剤(KAR)」がフェーズⅢ、掌蹠多汗症治療剤「BBI-4000」がフェーズⅠにそれぞれステージアップいたしました。また、がん免疫療法剤「KP-483」がフェーズⅠ、ニューマブ・セラピューティクス社と共同開発しておりますアトピー性皮膚炎を対象にした新規多重特異性抗体医薬候補物質「NM26-2198」がフェーズⅠ準備中に新たにステージアップいたしました。主力品でありますクレナフィンにつきましては、アルミラル社と欧州における独占的ライセンス実施許諾及び供給契約を締結いたしました。また、生産性の向上をめざし、営業基盤の強化、人材育成・人材教育の促進、組織のスリム化・人員配置の適正化等に取り組んでおります。

 

(4) 会社の対処すべき課題

当社グループが企業価値の最大化をめざし、社会から信頼される企業であり続けるため、対処すべき当面の課題は、次のとおりであります。

① 研究開発及び導出入活動への重点投資

当社の成長には新薬の継続的な上市が不可欠である一方、新薬創出の難易度の高まりによる研究開発費用の増加や導出入活動の競争激化による投資金額の増大が見込まれます。このような状況の下、資源投入の集中と研究開発の効率化をめざし、資本効率や投資体力を勘案した資源投入、3領域(免疫系・神経系・感染症)を柱とした研究開発テーマへの集中投資、国内外の企業・研究機関との共同研究や戦略的提携等を積極的に進めることにより、開発パイプラインの充実をはかってまいります。また、現地企業への導出を中心とした海外展開や適応拡大にも積極的に取り組んでまいります。

 

② 営業基盤の強化

営業面では、皮膚科領域、整形外科領域等の当社が強みを持つ領域でのプレゼンスをより一層高め、各領域における製品価値の最大化をはかってまいります。また、製品特性と領域に沿った人員配置・組織づくりを進め、積極的にICT(情報通信技術)を活用し、医療現場のニーズの変化や制度の変更に柔軟に対応した付加価値の高い情報を提供してまいります。

③ 人材育成

人材は企業経営の根幹にかかわるものであり、社員一人ひとりの成長が当社の持続的成長につながると考えております。人を活かすマネジメントを推進することにより全社員の生産性を高め、次世代のリーダーやグローバルで成果を出せる人材の育成を行ってまいります。また、新たな働き方に対して柔軟に対応し、全社員が持てる力を十分に発揮できるよう、働く環境の整備を進めてまいります。

 

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