業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

文中の将来に関する事項は、当期末現在において当社グループが判断したものです。

 

(1)事業の概況

○ 当社グループは2021年4月よりスタートした中期経営計画「EWAY Future & Beyond」に基づき、「患者様とそのご家族」から「患者様と生活者の皆様」に視点を拡大し、人々の健康憂慮解消に向けたソリューションをお届けすべく、他産業との協業によるエコシステムの構築をめざしています。

○ ニューロロジー領域では、抗アミロイドβプロトフィブリル抗体レカネマブ(一般名)について、2022年5月に、米国における生物製剤ライセンスの段階的申請を完了し、同年内の迅速承認取得を追求しています。早期アルツハイマー病(AD)を対象としたClarity AD(フェーズⅢ試験)については、2022年秋に主要評価項目の結果取得をめざしています。プレクリニカル(無症状期)ADを対象としたAHEAD 3-45(フェーズⅢ試験)についても順調に患者様の登録が進んでいます。また、不眠症治療剤「デエビゴ」(英名「Dayvigo」)については発売国の拡大、抗てんかん剤「フィコンパ」(英名「Fycompa」)については新適応の追加が進展しています。さらに、中国において、京東健康との協業により、認知症を対象としたワンストップオンライン健康プラットフォームを構築し、中国全土での高質な医薬品・医療サービスの提供をめざしています。

○ オンコロジー領域では、抗がん剤「レンビマ」と、米メルク社の抗PD-1抗体ペムブロリズマブ(一般名)との併用による腎細胞がん、子宮内膜がんに係る適応が日本・米国・欧州・アジア等で承認され、患者様貢献が拡大した結果、「レンビマ」の売上収益は1,923億円と前期から大きく成長しました。また、当社が創製した抗体薬物複合体「MORAb-202」(開発品コード)について、BMS社とグローバルな独占的戦略的提携契約を締結し、共同開発を行っています。

 

(2)経営成績の状況

○ 当期(2021年4月1日~2022年3月31日)の連結業績は、次のとおりです。

(単位:億円、%)

 

2020年度

2021年度

前期比

売上収益

6,459

7,562

117.1

売上原価

1,613

1,748

108.4

売上総利益

4,846

5,814

120.0

販売費及び一般管理費

2,816

3,664

130.1

研究開発費

1,503

1,717

114.2

その他の収益

15

146

1009.8

営業利益

515

537

104.3

税引前当期利益

523

545

104.1

当期利益

423

457

108.1

親会社の所有者に帰属する当期利益

419

480

114.3

当期包括利益

709

908

128.1

基本的1株当たり当期利益

146円34銭

167円27銭

114.3

 

○ 売上収益は、「レンビマ」をはじめとするグローバルブランドが引き続き伸長したことに加え、「MORAb-202」に関するBMS社との戦略的提携による契約一時金496億円の受領および米メルク社からの販売マイルストンペイメントの増加(当期692億円、前期207億円)などにより、大幅な増収となりました。

○ グローバルブランドの売上収益は、「レンビマ」が1,923億円(前期比143.6%)、抗がん剤「ハラヴェン」が394億円(同104.8%)、「フィコンパ」が319億円(同119.2%)、「デエビゴ」が164億円(前期は31億円)となりました。

○ 売上原価は、AD治療剤「Aduhelm」(一般名:アデュカヌマブ)について、事業環境等の変化を踏まえた需要予測の見直しに伴う販売権の減損損失を計上したことなどにより増加しましたが、ライセンス供与による収益の増加や製品ミックスの改善により、売上原価率は低下しました。

○ 販売費及び一般管理費は、「レンビマ」の売上収益拡大に伴う米メルク社への折半利益の支払いや「Aduhelm」の上市関連費用が増加したことに加え、「Aduhelm」の需要予測の見直しに伴う費用を計上したことにより、大幅に増加しました。

○ 研究開発費は、米メルク社から受領した「レンビマ」の開発マイルストンペイメントを戻入として計上するなど、パートナーシップモデルの活用による費用抑制を進めた一方で、当社子会社であるEAファーマ株式会社(東京都、以下 EAファーマ)における開発パイプラインの見直しに加え、レカネマブおよび「レンビマ」などへの積極的な資源投入により、大幅に増加しました。

○ その他の収益は、抗てんかん剤「Zonegran」の欧州、中東、ロシア、オーストラリアにおける権利の譲渡により、大幅に増加しました。

○ 以上の結果、営業利益ならびに当期利益は増益となりました。

 

[セグメントの状況]

(各セグメントの売上収益は外部顧客に対するものです)

 当社グループは、セグメントを医薬品事業とその他事業に区分しており、医薬品事業を構成する日本、アメリカス(北米)、中国、EMEA(欧州、中東、アフリカ、ロシア、オセアニア)、アジア・ラテンアメリカ(韓国、台湾、香港、インド、アセアン、中南米等)、一般用医薬品等(日本)の6つの事業セグメントを報告セグメントとしています。

 

<日本医薬品事業>

○ 売上収益は2,140億円(前期比92.3%)、セグメント利益は612億円(同73.0%)となりました。ファイザー社と共同販促を展開している疼痛治療剤「リリカ」のジェネリック品上市や2020年12月の抗がん剤「トレアキシン」の提携契約満了による販売移管のほか、薬価改定の影響などにより、減収減益となりました。

○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「デエビゴ」が127億円(前期は20億円)、アルツハイマー型認知症治療剤「アリセプト」は69億円(前期比74.1%)となりました。不眠症治療剤「ルネスタ」が69億円(同49.2%)、「リリカ」の共同販促収入は57億円(同26.6%)となった一方、「フィコンパ」は54億円(同105.2%)となりました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が103億円(同84.9%)、「ハラヴェン」は83億円(同98.3%)となりました。ヒト型抗ヒトTNFαモノクローナル抗体「ヒュミラ」は506億円(同97.5%)となりました。

○ 2021年5月、抗がん剤「レミトロ」を新発売しました。

○ 2021年8月、抗がん剤「タズベリク」を新発売しました。

 

<アメリカス医薬品事業>

○ 売上収益は1,720億円(前期比120.5%)、セグメント利益は792億円(同122.5%)となりました。

○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」は146億円(前期比119.4%)と伸長しました。抗てんかん剤「Banzel」は70億円(同36.9%)となりました。オンコロジー領域では、「レンビマ」が1,165億円(同143.8%)、「ハラヴェン」が143億円(同113.5%)と伸長しました。なお、2021年7月、プロトンポンプ阻害剤「アシフェックス」の米国における権利の譲渡に伴い、一時金を売上収益に計上しました。

 

<中国医薬品事業>

○ 売上収益は1,064億円(前期比125.1%)、セグメント利益は554億円(同137.3%)となりました。

○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が国家保険償還医薬品リストに収載されたことによりアクセスが拡大し、350億円(前期比189.6%)と大幅に伸長しました。末梢性神経障害治療剤「メチコバール」は政府集中購買制度の対象となり販売価格が低下した影響で125億円(同71.4%)となりました。肝臓疾患用剤・アレルギー用薬「強力ネオミノファーゲンシー/グリチロン錠」は95億円(同94.1%)となり、プロトンポンプ阻害剤「パリエット」は89億円(同132.5%)と大幅に伸長しました。なお、2021年9月、代謝性強心剤「ノイキノン」の中国における権利の譲渡に伴い、一時金を売上収益に計上しました。

 

<EMEA医薬品事業>

○ 売上収益は593億円(前期比107.4%)、セグメント利益は「Zonegran」の権利の譲渡の影響により409億円(同159.3%)となりました。

○ 品目別売上収益については、ニューロロジー領域で、「Fycompa」が92億円(前期比121.1%)と成長しました。オンコロジー領域では、「レンビマ/Kisplyx」が218億円(同137.6%)、「ハラヴェン」は128億円(同103.8%)と成長しました。

○ 2021年9月、オーストラリアにおいて、「Dayvigo」を新発売しました。

 

<アジア・ラテンアメリカ医薬品事業>

○ 売上収益は506億円(前期比110.3%)、セグメント利益は208億円(同111.6%)となりました。

○ 品目別売上収益については、「レンビマ」が88億円(前期比135.4%)と大幅に成長しました。「アリセプト」は119億円(同110.1%)、「ヒュミラ」は75億円(同88.1%)となりました。

○ 2021年6月、香港において、「Dayvigo」を新発売しました。

○ 2021年7月、タイにおいて、胆汁酸トランスポーター阻害剤「Goofice」を新発売しました。

○ 2021年11月、ベトナムにおいて、「ハラヴェン」を新発売しました。

 

<一般用医薬品等事業>

○ 売上収益は238億円(前期比94.7%)、セグメント利益は47億円(同92.7%)となりました。

○ チョコラBBグループの売上収益は143億円(前期比106.4%)と拡大しましたが、「イータック抗菌化スプレーα」などのイータックグループの売上収益が減少しました。

 

(3)財政状態の状況

○ 資産合計は、1兆2,393億円(前期末より1,509億円増)となりました。BMS社との戦略的提携に伴う契約一時金および研究開発償還金の受領、ならびに米メルク社からの販売マイルストンペイメントの受領に伴い現金及び現金同等物が増加しました。また、米メルク社からの販売マイルストンペイメントの計上により、営業債権及びその他の債権が増加しました。

○ 負債合計は、4,678億円(前期末より1,057億円増)となりました。バイオジェン社および米メルク社に対する未払費用が増加しました。また、BMS社からの研究開発償還金を預り金として計上したことにより、その他の金融負債が増加しました。

○ 資本合計は、7,715億円(前期末より452億円増)となりました。円安の進行に伴い在外営業活動体の換算差額が増加しました。

○ 以上の結果、親会社所有者帰属持分比率は60.4%(前期末より4.0ポイント減)となりました。

 

(4)キャッシュ・フローの状況

○ 営業活動によるキャッシュ・フローは、1,176億円の収入(前期より445億円の収入増)となりました。収入増の主な要因は、BMS社との戦略的提携に伴う契約一時金および研究開発償還金の受領によるものです。

○ 投資活動によるキャッシュ・フローは、288億円の支出(前期より72億円の支出減)となりました。研究設備および製造設備の増強を進め、設備投資に係る支出が発生した一方で、「Zonegran」の権利の譲渡に伴い有形固定資産・無形資産の売却による収入が発生しました。

○ 財務活動によるキャッシュ・フローは、490億円の支出(前期より69億円の支出減)となりました。主に配当金の支払いによるものです。

○ 以上の結果、現金及び現金同等物の残高は3,096億円(前期末より609億円増)、営業活動によるキャッシュ・フローから資本的支出等を差し引いたフリー・キャッシュ・フローは887億円の収入となり、配当額を大幅に上回るキャッシュを創出しました。

 

(5)生産、受注および販売の実績

① 生産実績

(a) 生産実績

当期における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本医薬品事業

143,953

94.8

アメリカス医薬品事業

203,125

90.1

中国医薬品事業

105,474

118.1

EMEA医薬品事業(注2)

82,912

127.3

アジア・ラテンアメリカ医薬品事業(注2)

48,782

128.6

一般用医薬品等

9,148

99.0

報告セグメント計

593,394

102.5

その他事業

2,161

78.9

合計

595,555

102.4

(注1) 金額は販売見込価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。

(注2) 前期より生産実績が増加した理由は、主に抗がん剤「レンビマ」の販売の増加に伴うものです。

 

(b) 商品仕入実績

当期における商品仕入実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本医薬品事業

48,921

90.9

アメリカス医薬品事業

21

148.3

中国医薬品事業

2,622

117.7

アジア・ラテンアメリカ医薬品事業

6,879

95.6

一般用医薬品等

5,255

74.1

報告セグメント計

63,699

87.5

その他事業

296

114.1

合計

63,994

87.6

(注1) 金額は仕入価格により算出し、セグメント間の取引については相殺消去しています。

(注2) 当期においてEMEA医薬品事業の商品仕入実績はありませんでした。

 

② 受注実績

当社グループは販売計画に基づいた生産を行っているため、該当事項はありません。

 

③ 販売実績

当期における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりです。

セグメントの名称

金額(百万円)

前期比(%)

日本医薬品事業

214,046

92.3

アメリカス医薬品事業(注2)

172,016

120.5

中国医薬品事業(注2)

106,420

125.1

EMEA医薬品事業

59,339

107.4

アジア・ラテンアメリカ医薬品事業

50,632

110.3

一般用医薬品等

23,829

94.7

報告セグメント計

626,281

106.9

その他事業(注3)

129,945

217.0

合計

756,226

117.1

(注1) セグメント間の取引については相殺消去しています。

(注2) 前期より販売実績が増加した理由は、主に抗がん剤「レンビマ」が増加したことによるものです。

(注3) 前期より販売実績が増加した理由は、「MORAb-202」に関するBMS社との戦略的提携による契約一時金の受領および米メルク社からの販売マイルストンペイメントの増加によるものです。

(注4) 主な相手先別の販売実績については、前期・当期とも総販売実績に対する割合が100分の10以上の相手先がないため、記載を省略しています。

 

(6)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

① 重要な会計方針及び見積り

連結財務諸表作成にあたり、必要と思われる見積りは合理的な基準に基づいて実施しています。重要な会計方針及び見積りの詳細については、「第5  経理の状況  1  連結財務諸表等  (1)連結財務諸表  連結財務諸表注記  3. 重要な会計方針、 4. 重要な会計上の見積り及び判断」に記載のとおりです。

 

② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

「3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)事業の概況、(2)経営成績の状況、 (3)財政状態の状況、(4)キャッシュ・フローの状況」に記載しています。

 

③ 資本の財源及び資金の流動性に係る情報

当社グループは、資金調達手段について、「手元現金」、次に「負債による資金調達(デット)」、最後に「株式の新規発行による資金調達(エクイティ)」とするペッキング・オーダー理論にもとづく優先順位付けをしております。原則として、手元現金の活用および負債が優先であり、既存株主の価値を毀損する可能性があるエクイティによる資金調達は最終手段として考えています。

そのため、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)管理による運転資本のコントロール、投資有価証券を含む資産売却などによるバランスシートマネジメントを継続的かつグローバルに推進することで資産効率を高め、最適資本構成にもとづく最適配当政策と積極的な成長投資の両立を可能としています。

2021年度において、株主還元については、健全なバランスシートを維持していることから、1株当たり年間配当金を前年と同額の160円としました。成長投資については、将来の成長のための川島工園・筑波研究所の設備・施設への投資継続などを積極的に実施しました。2022年度においても積極的な成長投資を継続する計画で、資本的支出は500億円を見込み、手元資金を充当する予定です。

資金の流動性については、現時点では概ね月商の3倍を適正な運転資金の水準と考えています。2021年度末における現金及び現金同等物残高は3,096億円であり、十分な流動性を確保しています。さらに、当座借越・コミットメントラインなどの流動性補完により、流動性を一層強化しています。また、手元資金の効率的な活用を企図して、日本国内・EMEA域内におけるキャッシュ・マネジメント・システム(CMS)に加え、グローバル・キャッシュ・マネジメント・システム(GCMS)を導入しています。

2021年度末時点での実質的なキャッシュ残高である有利子負債控除後のネットキャッシュは2,391億円と、実質無借金を維持しています。引き続き、「ネットキャッシュの維持」を主要な財務規律として重視するとともに、Net DERを±0.3レベルにコントロールすることで財務の健全性を維持します。

 

④ 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

当社グループは、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等(2)経営環境、経営方針・経営戦略、ならびに優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題等 ③目標とする経営指標」に記載のとおり、中長期での数値目標は設定していません。その代わり、年次事業計画を精緻に策定し、経営指標として平均ROEを掲げ、2021年度から2024年度は平均ROE10%、2025年度は15%以上を目安としています。

2021年度業績予想(売上収益:6,810億円、営業利益:580億円、親会社の所有者に帰属する当期利益:445億円ROE:6.7%、2020年度有価証券報告書提出日時点)との比較では、売上収益は7,562億円(業績予想対比111.0%)、営業利益は537億円(同92.8%)、親会社の所有者に帰属する当期利益は480億円(同107.8%)、ROE6.6%(同99.1%)となりました。

売上収益は、「レンビマ」の伸長や「MORAb-202」に関するBMS社との戦略的提携契約による契約一時金の受領などの影響により、業績予想を上回りました。一方営業利益は、事業環境等の変化を踏まえた需要予測の見直しに伴い「Aduhelm」に係る販売権についての減損損失を売上原価に計上したほか、「Aduhelm」の需要予測の見直しに伴う費用を販売費及び一般管理費に計上したことなどにより、業績予想を下回りました。なお、2017年度から2021年度までの直近5年間の平均ROEは10.1%と目安となる10%を上回りました。

 

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