当社グループでは、日医工グループリスク管理規程を定め、代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しております。リスク管理委員会では、リスク管理基本方針に基づき、当社グループを取り巻くリスクを、その発生度、影響度等から評価、識別し、経営に重大な影響を及ぼすリスクを特定しております。識別されたリスクへの対策の策定、その対策の検証、見直しを行うことにより、リスクが顕在化した際に当社グループ及び社会への損失を最小限に留めるべく取り組んでおります。
また、災害、事故等の緊急事態が発生した場合に備え、事業継続計画(BCP)を策定し、災害、事故等が発生した場合に、①従業員及びその家族の安全を確保し、人命の保護と負傷の回避を図る、②社屋・施設・設備等の事業資産の損害を最小限にとどめるようリスク回避、低減の方策を講じる、③製品の安定供給を確保するため、万一、被災し事業が中断しても早期復旧を図り事業を継続し、製品の在庫を確保、製品の納入を維持する方策、手段を構築する取組みを行っています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものが考えられます。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
a ジェネリック医薬品の特性と競争
当社グループは、医療用医薬品の製造及び販売を営んでおり、その中でも主としてジェネリック医薬品を扱っております。ジェネリック医薬品とは、最初に開発して発売された「先発医薬品」の特許が切れた後に発売される「後発医薬品」のことであります。「先発医薬品と同じ有効成分で、含量、投与経路、効能・効果、用法・用量が等しい医薬品」とも定義され、通常は先発医薬品の再審査期間及び物質特許期間が満了した後に発売されます。先発医薬品の特許満了と同時に、多くのジェネリック医薬品メーカーが市場に参入し、厳しい競争のなかで価格低下を招くことがあります。その結果、収益が低下して経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
b 医療制度の変更
厚生労働省は、国民医療費の抑制を目的として、これまでも数々の医療制度改革を実施してきており、今後もこの方針は継続されるものと考えられます。
医療用医薬品の製造・販売にあたりましては、開発、製造、流通及び患者投与の各段階において、種々の承認・許可制度及び監視制度が設けられております。これら医療制度においては、ジェネリック医薬品の普及推進につながる制度もありますが、制度変更の内容によっては、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
c 薬価基準改定
わが国の医療用医薬品は、国の定める薬価基準によって薬価が決められています。薬価は市場実勢価等を基に毎年薬価改定が実施され、多くの品目について薬価の引き下げが行われます。今後も毎年薬価改定が予定されており、薬価の引き下げ幅の大きさによっては、収益性の低下により経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
d 法的規制
当社グループは、医療用医薬品を製造・販売するにあたり「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「医薬品医療機器等法」という。)」等の薬事関連法規の規制を受けており、事業所所在の各都道府県の許可・登録・指定・免許及び届出を必要としております。かかる医薬品の製造販売事業の許認可に関して法令違反等があった場合には、監督官庁から業務の停止や許認可の取消し等の処分を受けることになります。これまでに当該許認可等が取消しとなる事由は発生しておりませんが、万一、発生した場合には、事業停止や許認可等の取消しとなる可能性があり、事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
e 先発医薬品メーカー、外資系メーカーの参入
ジェネリック医薬品市場の拡大傾向は今後も持続すると考えられます。これに伴い、日本国内の先発医薬品メーカーや、国際的な外資系製薬メーカーが日本のジェネリック医薬品市場に参入した場合、企業等が特許切れ前のオーソライズドジェネリックを先行販売した場合、ジェネリック医薬品業界はさらに熾烈な競争を強いられることになり、収益性が低下して、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
f 訴訟に係るリスク
ジェネリック医薬品の特性上、先発医薬品メーカーから特許訴訟を提起される場合があり、そのような事態になった場合は経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは、物質特許、製剤特許及び用途特許を中心とした産業財産権に関する徹底した調査を行い、また不正競争防止法も考慮した製品開発を心がけております。
一方当社グループは、特許権、意匠権、その他の知的財産権の取得により、自社技術、ノウハウの保護を図っております。しかし、第三者による当社グループの知的財産権侵害を完全に防止することができない可能性もあり、その場合、当社グループ製品が十分なる市場を確保できず、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また当社グループは、その経営判断、業務執行において会社の利益に反して他者の利益を侵害し、あるいは他者に損失を与えないよう、コンプライアンス体制の強化を図っております。しかしながら、当社グループの活動に関連して、法令違反に関する規制当局による法的手続きが開始された場合、あるいは訴訟が提起された場合には、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
g 海外展開
当社グループは、グローバルに製品の生産・販売活動を展開していますが、法的規制、政情不安や事業環境の不確実性などのカントリーリスクがあります。このようなリスクに直面した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
h 製品回収、販売中止
ジェネリック医薬品は、先発品でその有効性と安全性が一定期間にわたって確認された使用実績に加え、再審査を受けた後に発売されますので、基本的に未知の重篤な副作用が発生するリスクは極めて小さいものでありますが、万一、予期せぬ新たな副作用の発生や、製品に不純物が混入したり、製品の規格が承認基準を充たさないなど、製品の安全性や品質に懸念が生じた場合には、製品回収・販売中止を余儀なくされ、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
i 資本・業務提携に係るリスク
当社グループは、商品の販売、ジェネリック医薬品の共同開発の他、バイオシミラーの開発等に関し、他社との資本・業務提携を行っております。今後、何らかの事情により、提携関係が変更・解消になった場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
j 災害等による生産の停滞、遅延
当社グループは、富山県、愛知県、山形県、埼玉県、北海道、静岡県、岐阜県、米国・ノースカロライナ州、米国・ニューヨーク州及びカナダ・ケベック州に生産拠点を置いており、リスクの分散を図っておりますが、地震、津波、火災等の災害、技術上・規制上の問題等の発生により、生産拠点の操業が停止した場合、製品によりましては、その供給が停止し経営成績に影響を及ぼす可能性があります。また、重要な原材料につきまして、特定の取引先から供給されているものがありますため、災害をはじめ何らかの要因によりその仕入れが停止した場合、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
k 環境に関するリスク
当社グループは、大気、水質、騒音、振動、悪臭、土壌汚染、地盤沈下、廃棄物等の環境諸法令を遵守しております。しかし、関係法令の改正や環境汚染問題の発生などにより、環境改善に要する費用や周辺地域への補償が発生した場合、また新たな設備投資等の必要性が生じた場合には、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
l 研究開発に係るリスク
当社グループは、ジェネリック医薬品・バイオシミラーについて慎重かつ積極的に開発投資を行っております。特にバイオシミラーの開発は、ジェネリック医薬品の開発と比較してより多くの開発期間、開発費用が必要とされています。また、今後、何らかの事情により、開発遅延や開発費用の予期せぬ増加が発生した場合、開発費の減損損失計上等、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
m 棚卸資産の回収可能性に係るリスク
当社は、インフリキシマブBSの原薬を4,680百万円保有しております。当該原薬については、日本市場及び現在導出準備を進めている海外市場でのインフリキシマブBSの販売等により費消する見込みです。しかしながら、当該原薬を使用期限内に全て費消できない見込みとなった場合及び期末時点において見積もった正味実現売却可能価額が更に低くなることが見込まれる場合には、追加の評価損を計上する必要が生じ、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
n M&Aに係るリスク
2016年8月に子会社化した米国のSagent Pharmaceuticals, Inc. 及び、2021年2月に子会社化した日医工岐阜工場株式会社は、今後、当社グループの業績に大きく貢献するものと見込んでおります。しかしながら、事業環境の変化等により当初の想定を下回る場合、のれんの減損処理等が発生し、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
o 金融市況及び為替動向に係るリスク
当社グループは、取引先や金融機関等の株式を所有しており、取引市場における株価変動の影響を受けるほか、有利子負債等を有しており、金利変動の影響を受けます。また、当社グループは連結子会社を海外に有しており、当社連結財務諸表において海外連結子会社の外貨建ての財務諸表金額は日本円に換算されるため、為替相場変動の影響を受けます。これら金融市況および為替相場の変動は、経営成績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
p 情報管理に係るリスク
当社グループは、各種情報システムを使用しているため、システムへの不正アクセスやサイバー攻撃を受けた場合は、システムの停止や秘密情報が社外に漏洩する可能性があります。これらが社外に漏洩した場合には、損害賠償、行政処分、社会的信用の毀損等により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
q 外部業務委託に係るリスク
当社グループは、グループ外企業との間で、様々な業務に関し外部業務委託を行っております。外部業務委託先において、業務遂行上の問題が生じ、商品・サービスの提供等に支障をきたす場合、顧客情報等の重要な情報が漏えいする等の事故、違法行為、不正行為、不祥事等が発生した場合等には、事業活動や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
r 新型コロナウイルス感染症に係るリスク
当社グループは、新型コロナウイルス感染症への取り組みとして、在宅勤務、時差出勤、各部署の執務場所分散等の実施、加えて、富山本社、富山第一工場、岐阜工場において職域接種を実施する等、感染拡大防止策を行ってまいりました。しかしながら、当社グループ役職員に感染者が発生した場合、一部事業の停止など、円滑な事業活動を行うことが困難となり、経営成績や事業展開に影響を及ぼす可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症の世界的感染の長期化・拡大により、原材料・外注製品の調達や、患者様の受診抑制による売上への影響等により、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
s 物価上昇に係るリスク
ロシア・ウクライナ情勢による供給制約や円安、インフレによる物価上昇が続いております。燃料費・輸送費の増加や原材料価格の高騰等により、その上昇幅によっては、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
t 継続企業の前提に関する重要事象等
当社グループでは2021年4月以降、富山第一工場でのFMEA(注)等での厳しい品質チェック等を行いながら、順次、生産・出荷を再開してはおりますが、同工場ではいまだ一部の製造予定品目については出荷再開には至っておりません。加えて、薬価改定による薬価引き下げや製造委託先での生産・出荷停止などに起因して製品売上が減少しております。このような状況を改善すべく当社グループの主力工場であります富山第一工場での製造品について、適正な生産体制・規模適正化を目的とし、製造再開に時間を要する製品の識別、同種同効成分製剤への統合、改善措置を図る製品の整理などの施策を実施しており、その結果、今後廃棄となる可能性が高いと見込まれる原材料、仕掛品等について評価損を計上いたしました。更にこれまで進めてきた開発投資の見直しとそれに伴う海外子会社ののれんの減損及び国内収益状況減退に伴う国内固定資産の減損処理を行ったこと等から、当連結会計年度において110,051百万円の営業損失及び104,984百万円の親会社の所有者に帰属する当期損失を計上いたしました。
以上のことから、多額の営業損失及び親会社の所有者に帰属する当期損失の発生となっており、継続企業の前提に重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在しております。
このような中、当社グループでは2022年5月13日に事業再生ADR手続の正式申込をし、同日付で受理され、2022年5月26日の第1回債権者会議にて、全てのお取引金融機関様から、一時停止通知について同意を得るとともに、メインバンクである株式会社三井住友銀行にて設定いただいた融資枠の実行についてご承認をいただいておりますことから、現時点にて必要な資金面の手当てがなされております。今後も当該事業再生ADR手続の中でスポンサー選定に関する協議を関係各社と継続してまいります。
これらの状況に鑑み、継続企業の前提に関する重要な疑義を解消すべく取り組んでいる当社の対応策は、現時点において実施途上にあり、今後の事業進捗や上記金融機関・関係各社等との協議、資金調達の状況等によっては、当社の資金繰りに重要な影響を及ぼす可能性があることから、継続企業の前提に関する重要な不確実性が存在するものと認識しております。
なお、詳細に関しましては、後記「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 連結財務諸表注記 1.継続企業の前提に関する事項」及び、「第5 経理の状況 2 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 継続企業の前提に関する事項」に記載のとおりです。
(注)FMEA(Failure Mode and Effect Analysis)とは「欠陥モード影響解析」と呼ばれ、製品及びプロセスの持っているリスクを、主に製品設計段階及びプロセス設計段階で評価し、そのリスクを可能な限り排除又は軽減するための技法です。ICHQ9でもリスク評価の方法として推奨されており、製薬企業でのリスクアセスメントで広範囲に利用されております。
お知らせ