課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。

(1)経営の基本方針

当社は、「独創 公正 夢と情熱」を経営綱領のモットーとして掲げ、糖質科学の知見を活かした、独創的な医薬品等を継続して創製し、患者の方々に提供することを通じて、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献することを基本方針としています。これにより、医療を含む社会の持続的な発展に寄与するとともに、当社の持続的成長及び中長期的な企業価値向上を目指してまいります。また、製薬企業としての社会的使命及び責任を深く自覚し、高い倫理観のもと法令等の遵守を徹底するほか、コーポレート・ガバナンスの充実を図り、株主をはじめとするステークホルダーの皆さまとの信頼関係の強化に努めてまいります。

(2)目標とする経営指標

現在、次期中期経営計画の策定を進めており、本計画の公表に合わせ、目標とする経営指標についても速やかに開示いたします。次期中期経営計画の公表は、2022年秋頃を予定しています。

※詳細については、11ページの「(3)経営環境及び中長期的な経営戦略と対処すべき課題 ≪次期中期経営計画の方向性≫」をご参照ください。

(3)経営環境及び中長期的な経営戦略と対処すべき課題

≪経営環境≫

医薬品産業を取り巻く経営環境は、国内薬価制度の抜本改革をはじめとした医療費抑制策の進展や、治療選択肢の多様化等に伴う企業間競争の激化に加え、新薬開発の難易度が高まるなか研究開発コストが増大するなど、極めて厳しい状況が継続しています。このようななか、当社が再び成長軌道を描くためには、独創的な新薬を継続的に創製することが必須です。これと並行して、早期の収益改善にスピード感をもって取り組み、既存の枠組みにとらわれない変革を進めていきます。

≪直近の市場環境≫

当社の主力製品である関節機能改善剤の国内市場及び米国市場ともに、新型コロナウイルス感染症拡大による影響が一巡し、回復傾向にあります。一方で、国内市場は、高齢者人口の増加があるものの、外用薬や内服薬の処方拡大に加え、薬価引き下げの影響等により、金額ベースでの市場が縮小しています。米国市場においては、投与回数の少ない製品が選好される傾向が継続しており、単回投与製品のポテンシャルが高まるなか、複数回製品には厳しい環境となっています。

 

≪本中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)の概要≫

Ⅰ. 当社が目指す姿

「独創的な創薬により世界で存在価値のある企業」

糖質科学領域における知見を独自の技術に活用して、真に求められる独創的な新薬を創出し、それらをより広く、グローバルに提供することを通じて、世界の人々の健康で心豊かな生活に貢献する、存在価値のある企業を目指します。また、そのベースとして公正かつ誠実な企業活動を推進します。

 

Ⅱ. 基本理念/スローガン

① 当社の経営綱領(モットー)     :独創 公正 夢と情熱

② 当社のミッションステートメント :糖質科学で未来を創る

③ 本中期経営計画スローガン       :Innovative Thinking

革新的な思考をもって価値を創造する

 

Ⅲ. 重点施策

本中期経営計画は、当社が再び成長軌道を描くための収益基盤を強化する期間と位置づけ、次の重点施策に取り組みます。

① 新たな収益の柱となる新薬開発の加速

1) GAG*に関連する独自の基盤技術の強化・活用

当社が保有する独自の創薬技術を存分に活かし、創薬の可能性を高めます。

<当社が保有する主な技術>

a. 修飾・加工・生理活性による創薬

b. ドラッグデリバリーシステムへの応用

c. プラットフォーム技術活用・次世代GAG創薬アプローチ

2) オープンイノベーション戦略による独創的な創薬の加速

当社保有技術に加え、他社の保有する親和性の高い技術を積極的に取り入れ、シナジーの最大化を図り、新薬開発のプロジェクト数を拡充させるとともに、スピードアップを図ります。

3) グローバル展開を視野に入れた開発パイプラインの着実な進展

変形性関節症治療剤SI-613の承認申請・上市を達成させ、新たな基幹製品として早期に育て上げます。また、間質性膀胱炎治療剤SI-722、癒着防止材SI-449の臨床試験におけるステージアップを目指します。腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603につきましては、第Ⅲ相臨床試験追加試験のスピードアップに注力し、米国上市に向けて全力で取り組みます。

*GAG:グリコサミノグリカン。複合糖質の構成成分のひとつ(ヒアルロン酸やコンドロイチン硫酸等)。

② 製品の市場拡大による収益基盤強化

1) 国内ヘルニコアの育薬

適正使用と安全性確保に向けた情報提供活動や市販後の安全性情報集積を最優先に進めつつ、関連学会と連携しながら当局と合意のうえで、使用可能となる医師・施設を段階的に拡げ、着実な市場浸透に努めます。また、疾患啓発活動により、患者の方々の腰椎椎間板ヘルニアに対する認知度向上を促進します。

2) 既存製品・開発品の多国展開の加速

既存製品及び開発品の新規市場開拓を急ぎ、製品価値を最大化させることで、中長期的な収益基盤の強化を図ります。また、導出地域の医療ニーズに合わせた製品改良や用途開発にも積極的に取り組みます。

3) 遺伝子組換え技術を活かしたエンドトキシン測定用試薬の世界展開

当社グループのLAL事業の海外展開を担う子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インクにおいて、今後の普及が予想される遺伝子組換えエンドトキシン測定用試薬の世界展開を図り、新たな収益基盤の確保につなげます。

③ 生産性向上のための改革

1) 各種コストの徹底的な低減

製造原価につきましては、既に立ち上げているプロジェクトにより、調達コストの見直しや生産最適化・効率化をさらに進め、製品の収益性確保につなげます。

販管費につきましては、業務効率の向上と予断をもたないコスト削減を徹底するとともに、継続的な創薬活動を推進するために、優先度を見極めた研究開発費の効率的活用に取り組みます。

2) 収益モデルの多角化

これまでのビジネスモデルにとらわれず、新たな収益を生み出すためのスキームを精力的に検討していきます。

3) リソースの価値最大化に向けた組織づくり

事業環境の変化に柔軟に対応し、新しい価値を創造できる人材の育成と、個々のポテンシャルを最大限発揮できる組織改革を進めます。

 

≪本中期経営計画(2020年3月期~2022年3月期)の総括≫

本中期経営計画の主な進捗及び課題は以下のとおりです。

1つ目の重点施策である「新たな収益の柱となる新薬開発の加速」では、2021年5月の関節機能改善剤ジョイクル(国内SI-613)の発売に加え、間質性膀胱炎治療剤SI-722の米国第Ⅰ/Ⅱ相試験の被験者組み入れ完了(2021年1月)及び癒着防止材SI-449のピボタル試験へのステージアップ(2020年5月)を達成し、開発パイプラインの着実な進展を図ることができました。

今後の事業成長の鍵となる、米国で第Ⅲ相臨床試験の追加試験を実施している腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603につきましては、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により計画に遅延が生じていましたが、2022年3月に被験者組み入れが完了し、1年間の経過観察段階に移行しました。2022年1月にカナダに新設した子会社セイカガク ノース アメリカ コーポレーションとの連携を通じて、同剤の早期かつ着実な承認申請、承認取得を目指します。

研究段階におきましては、GAGに関する独自の基盤技術を活かした新たな疾患領域へのアプローチや創薬モダリティの開発などに取り組むとともに、アカデミア等との積極的なオープンイノベーション戦略を推進することで、創薬の可能性を高め、事業領域のさらなる拡充に向けた活動が進捗しました。

なお、ジョイクルにつきましては、添付文書の「重大な副作用」の項にてショック、アナフィラキシーに係る注意喚起を行っていましたが、本剤の投与後にショック、アナフィラキシーの発現が複数報告されたことから、医療関係者の方々にさらなる周知を実施するために、2021年6月1日に安全性速報(ブルーレター)を発出しました。引き続き、販売提携先である小野薬品工業株式会社と連携し、安全性情報の積極的な収集及び提供に努めています。患者の皆さまにジョイクルをより安全にお使いいただくために、これらに加え原因究明に向けた取り組みにも尽力してまいります。

2つ目の「製品の市場拡大による収益基盤強化」では、既存製品・開発品の多国展開の加速において、2021年8月に台湾で雅節一針劑型関節内注射剤(ハイリンク)を発売し、単回投与の関節機能改善剤の新規導出を達成しました。なお、変形性関節症治療剤SI-613につきましては、エーザイ株式会社と中国における共同開発及び販売提携に関する契約(2020年4月)、韓国における販売提携契約(2020年9月)の締結に至りましたが、国内でのジョイクル発売後のショック、アナフィラキシー発現に関する原因究明を優先させ、その動向を見極めながら今後の開発方針を検討することとしています。

LAL事業につきましては、2021年4月に海外子会社アソシエーツ オブ ケープ コッド インクから遺伝子組換えエンドトキシン測定用試薬であるパイロスマート ネクストジェンを発売しました。2021年5月には当社による国内販売を開始しており、今後、グローバル展開を進めていきます。

国内ヘルニコアの育薬については、引き続き適正使用と安全性確保に向けた情報集積及び提供を継続するとともに、関連学会と連携し、さらなるエビデンスの創出に努めています。また、2019年11月より日本脊椎脊髄病学会指導医による非常勤施設での使用が可能となり、ご使用いただける施設が増加しました。

3つ目に挙げた「生産性向上のための改革」では、収益モデルの多角化の一環として2020年3月にカナダのダルトン ケミカル ラボラトリーズ インクを子会社化したことで、新たに医薬品受託製造事業が当社グループの事業領域に加わりました。当社が外部委託していた化学合成品の内製化や医薬品原薬及び当社製品の一部製造移管を順次進め、生産最適化・効率化を図っています。

また、新型コロナウイルス感染症拡大をはじめとした事業環境の変化に柔軟に対応するために、在宅勤務制度を含む人事諸制度の新設やIT環境の整備などを進めました。各種コストの低減につきましては、調達コストや販売関連費用の見直しが進展した一方、抜本的なコスト構造の改善においては一部の課題を残す結果となりました。

本中期経営計画期間は、新型コロナウイルス感染症拡大という不測の事態に見舞われたことから、国内外の市場停滞や研究開発活動の遅延などの影響を受けましたが、前述のとおり、3つの重点施策において一定の成果を上げるとともに、本計画策定時に公表したすべての数値目標についても達成することができました。この3ヵ年において、一部の課題を残しましたが、「当社が再び成長軌道を描くための収益基盤を強化する期間」として次期中期経営計画につながる基盤を整備することができたと考えています。

 

本中期経営計画の最終年度である2022年3月期の数値目標及び実績は、以下のとおりです。

 

2022年3月期実績

2022年3月期目標

新表示区分※2

旧表示区分

売上高

348億円

312億円

283億円

経常利益

53.9億円

53.9億円

45億円

SKK EBITDA※1

55.4億円

55.4億円

50億円

海外売上高比率

(ロイヤリティー除く)

56.6%

56.6%

50.0%

<前提条件>

① LAL事業を含めた海外売上高の拡大で国内薬価改定の影響をカバー

② 減損処理により減価償却費が減少

③ 研究開発費は対売上高比率 25~30%

④ 各種受取ロイヤリティーを営業外収益として織り込む

⑤ 為替レート:対米ドル105円

※1 SKK EBITDAは、営業利益に減価償却費、受取ロイヤリティーを加えた当社独自の利益指標です(下記※2により、2022年3月期からは営業利益に減価償却費を加えて算出)。

※2 2022年3月期の期首より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用するとともに、ロイヤリティーの表示区分を営業外収益から売上高に変更しています。

≪次期中期経営計画の方向性≫

製薬企業を取り巻く事業環境は、引き続き厳しさを増すことが予想され、今後の当社を支える収益基盤のさらなる強化が必要であると認識しています。次期中期経営計画期間では、当社のコア事業である医薬品事業において、腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の米国における確実な上市と早期の販売立ち上げを最優先課題とします。加えてジョイクルをより安全にご使用いただくための対策にも鋭意取り組んでまいります。また、LAL事業や医薬品受託製造事業の拡大、既存製品・開発品の海外展開の加速を継続していきます。これらに注力するとともに、着実に利益を生み出すためにコスト削減や収益構造の見直し等を検討していく方向です。

成長の源泉である研究開発においては、癒着防止材SI-449をはじめとした各開発パイプラインを進展させるとともに、新規領域や新規モダリティへの参入、オープンイノベーションの積極的な活用により、基盤技術を活かした事業領域の拡充を図ってまいります。

さらに、生命関連企業としての社会的使命及び責任を深く自覚した高い企業倫理のもと、サステナビリティ推進の重要課題であるマテリアリティを基軸とした事業活動を展開することで、社会とともに持続的に発展することを目指します。

なお、2023年3月期より始まる次期中期経営計画及び数値目標につきましては、現在取り組んでいるジョイクルの安全性に関する対策の進捗や米国における腰椎椎間板ヘルニア治療剤SI-6603の動向により、経営計画や将来的な業績予測が大きく変動することを鑑み、2022年5月時点での公表を見送ることといたしました。次期中期経営計画の公表は、2022年秋頃を予定しています。

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