研究開発活動

5【研究開発活動】

本年度は2020年度に向けた中期経営計画に従い、体外診断用医薬品の開発を主眼に活動致しました。

当連結会計年度における グループ全体の研究開発活動の金額は、 954 百万円 あります。前連結会計年度における研究開発活動の金額(12億68百万円)と比較すると3億13百万円の減少となっております。これは、当連結会計年度より研究開発費として処理していた研究開発関連業務の経費区分を見直し、一般管理費区分に変更したことによるものです。

なお、前連結会計年度の期首に当該見直しが行われたと仮定して算定した前連結会計年度におけるグループ全体の研究開発活動の金額は、10億86百万円であります。

研究開発の主な進展は以下のとおりです。

(1)臨床検査薬事業

1)免疫・血清学検査試薬

 ①自己免疫疾患検査試薬

ⅰ) 難病指定のリン脂質抗体症候群の検査試薬である抗β2GPI抗体測定試薬をCLEIA法により開発しました。当検査試薬は当社で従来から発売しているMESACUP TM カルジオリピン テストと併せ、総合的なリン脂質抗体症候群検査試薬として製造承認申請を進めています。

ⅱ) 2018年度に引き続き、各疾患分野のKOLである臨床医の先生方との協力のもと、筋炎、造血障害、潰瘍性大腸炎などに対する複数の新規検査試薬を開発しています。

 ②企業向けマテリアル

ⅰ) 2018年度後半から進めてきた中国市場向けCLEIA法の自己抗体検査試薬の開発が目下の最大テーマとなっています。本年度は第1段階として14項目の開発に着手し、概ね順調な開発状況で2020年度中の開発終了を目指しています。

   また、これらの検査試薬開発に係る製品用及び品質検定用の標準物質の開発において当社の持つ抗体開発技術も大きく貢献しています。

ⅱ)  2019年度にロシュ・ダイアグノスティックス株式会社への国内向け供給を始めた血液凝固検査試薬「t システム ヘキサメイト P-FDP hs」の海外展開に向けたデータ取りを進めています。更に海外市場によりマッチした同検査試薬後継品の開発も進んでいます。

 

2)遺伝子検査試薬

 遺伝子検査試薬は免疫・血清学検査試薬に続く第2の柱として製品群を開発しています。

①がん関連検査試

当期は次世代シークエンサー(NGS)を用いた「がん遺伝子パネル検査」が保険適用され、NGSを用いたパネル検査の市場ニーズが高まっています。当社におきましてもがん研究のKOLの協力の下、現在の主力製品である「MEBGEN TM RASKET-Bキット」の後継製品の早期上市を目指し、試薬コンセプトからの開発に着手しました。

②感染症検査試薬関連

ⅰ)  2020年に入り全世界でパンデミックを引き起こした新型コロナウイルス「SARS-CoV-2」のリアルタイムPCR法による研究用試薬「FLUOROSEARCH Novel Coronavirus (SARS-CoV-2) Detection Kit」を緊急開発し、2020年3月27日に発売しました。本試薬は国立感染症研究所において、同研究所法と100%の一致率との評価を獲得しており、国内の感染拡大抑止に大きく貢献するものと期待されます。引き続き臨床検査薬としての認可申請の準備を進めております。

ⅱ)  その他の感染症領域では寄生性原生動物(以下:原虫)の検出、鑑別用の複数の遺伝子検査試薬の開発を進めています。原虫により引き起こされる疾患は多岐にわたり、近年は再び増加の傾向を見せているため今後の市場拡大を見込んでいます。さらに感染症検査試薬などではベッドサイドでの迅速検査系の要望も強いため、他社と共同で超高速リアルタイムPCR系などのプラットフォームの検討も進めています。

 

(2)LSTR事業(テトラマー試薬)

本年度はより事業性の高いテーマに開発力を集中させるべく大幅なテーマの見直しを行い、その中からT細胞受容体テトラマー(以下:TCRテトラマー)の革新的な製造技術が生まれました。

 T細胞受容体(TCR)は免疫系のT細胞が攻撃すべき細胞を見分ける際に機能する分子で、TCRテトラマーにより免疫系の攻撃対象である細胞を選択的に検出することが出来ます。現状で十分な性能を有する競合品は見当たらないため、今後は癌などの免疫治療の領域での世界的な需要が見込まれます。

 

(3)抗体/タンパク質作製技術

抗体や遺伝子組み換えタンパク質の作製技術は当社の基幹技術で、臨床検査薬の性能を左右する重要な要素です。

前出の通り、中国市場向け自己抗体検査試薬の開発や生産活動にはこれまで当社で培ってきた抗体作製技術が大きく寄与しています。検査試薬の製品化には製品用標準抗体や品質管理用抗体としての患者検体の確保が必須ですが、現在残念ながらこれらを社外から調達することは非常に困難となっています。

そのような状況下、当社ではこれらの検体(抗体)に代わる抗体の作製技術を確立し、外部調達に頼らない原料調達に成功しています。

今後は更なる設備投資を行い、材料抗体やタンパク質の作製方法の効率化を精力的に進めます。

 

(4) JSRグループの研究開発機能の集約による開発力の向上

2019年度に当社は開発機能のおよそ半分を、従来の伊那研究所から茨城県のJSRつくば研究所に移転しました。

JSRつくば研究所にはJSRのライフサイエンス関連の開発チームがあり、検査薬の基材である磁性粒子やラテックス粒子などの高い開発能力を有しています。今回の移転は基材から測定系までの一貫した発想により検査試薬の開発を可能にするものと言え、今後の成果が期待されます。

 

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