事業等のリスク

2【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

[事業上リスク]

(1)  研究開発のリスク

当社は、保有する技術や経験をベースに医療のニーズに応える新規製品を開発していますが、他社が技術革新によって画期的な製品を発売したことにより、当社開発品が陳腐化し、開発を断念する可能性があります。

新規製品の開発着手時、及び開発ステージアップ時に、類似製品や競合他社の開発動向、知財情報、科学・技術の進歩などを分析して、当社開発製品の進捗を管理し、開発テーマの改廃を行います。

(2)  臨床性能試験、薬事承認及び保険収載のリスク

臨床検査薬は、薬事承認と公的健康保険適用を経て発売となります。特に、従来の検査項目とは異なる画期的な新規検査では、その性能(特異性と感度)を臨床性能試験にて証明して独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA;Pharmaceuticals and Medical Devices Agency)に薬事申請後に、承認取得、検体検査実施料としての診療報酬点数が付与されて、発売となります。期待した性能を臨床性能試験で証明できない場合、あるいはPMDAによる薬事承認が取得できない場合には製品の発売ができなくなります。更に、企業は、薬事承認の取得後に、診療報酬点数の保険適用希望書を厚生労働省に提出しますが、企業と厚生労働省と話し合いが長期に及び、診療報酬点数の付与が遅れる事態が生じます。この場合は発売時期が遅延することになります。

海外で販売するには、対象となる国・地域ごとの薬事規制や医療保険制度を遵守した過程を経て発売に至りますので、日本国内と同様の理由により発売が困難あるいは遅延する可能性があります。

海外における臨床性能試験や薬事承認については、海外子会社、海外提携企業との連携、あるいは現地の薬事コンサルタントを通じて、薬事規制情報の入手及び臨床性能試験実施上の助言・支援を得ながら薬事承認のリスクを低減化して、最短期間で薬事承認の取得を目指します。

(3)  薬事規制対応など

臨床検査薬は発売後も、国・地域の薬事規制を遵守して販売が継続されます。製品販売している国・地域において、薬事規制の改正や強化によって、製品仕様の変更、新たな資料の提出が必要なことがあります。その準備に多大なコストが必要な場合には、製品販売継続の可否を判断する状況が生じます。

その他の生物学的原料あるいは化学品に関する国・地域での規制により、製品の変更や改良が要求され、製品販売に支障が生じる場合があります。

海外の薬事規制や化学品に関する規制情報は、海外子会社、海外提携企業との連携、あるいは現地の薬事コンサルタントを通じて入手します。前期より、社内に専門部署を新設して、薬事規制や関連する法規制の情報入手、社内への情報発信と薬事・法規制対応を行っています。

(4)  発売製品の採用

当社臨床検査薬の多くは検査センターや医療機関検査室で使用されます。競合製品との差別化の程度や価格競争などにより採用が遅延あるいは不採用となる可能性があります。

製品開発の初期段階から、主要顧客に対しては、開発情報の共有とマーケティング活動を実施することにより、薬事承認・保険収載後直ちに、製品を採用して貰う活動をしています。

(5)  競合他社による類似製品の上市

ライフサイエンス業界の技術は日進月歩です。画期的な製品を発売しても、直ちに性能面、利便性、価格面で凌駕する競合品が上市される可能性があります。その場合は、急激に競争力を失って市場を奪われる可能性があります。

また、排他性の強い知的財産権を有した技術や製品でない限り、長期にわたり競争力を持って市場を席巻することは困難となっています。販売初期は競合力の高い製品でも、類以製品の発売、価格競争、販売力によって、競合力を喪失する場合があります。

新製品開発の着手段階では、測定対象物の用途に関する知的財産権の確保に努めています。あるいは、測定に必要な原材料(抗原や抗体)あるいはその製造方法を社内ノウハウとして蓄積することで、競合他社による類似品の開発を防ぐことに努めています。

(6)  企業合併・再編のリスク

同業あるいは異業種を問わず、合併や企業再編及び海外企業の日本国内への本格的進出によって、当社グループの市場優位性が脅かされる可能性があります。

他社による企業合併・再編によっても、当社グループの製品群の優位性を維持できるように、グローバルな科学技術の動向を注視しながら、社内技術革新に努め、社外からも優れた測定方法・機器を導入できる体制としています。

(7)  製品・技術等への依存(免疫血清学検査試薬、遺伝子検査試薬)

当社臨床検査薬の多くは化学発光酵素免疫測定法(MEBLUX)、酵素免疫測定法(MESACUP)、PCR-rSSO法:reverse sequence specific oligonucleotide(MEBGEN)を原理とした製品です。今後、技術革新もしくは破壊的イノベーションによって、検出性能(特異性と感度)、ハイスループット性(短時間多検体測定可)、自動化、簡便性、あるいは価格などの面で凌駕する測定システムが発売されるようになれば、日本国内市場で当社製品群は競争力を失う可能性があります。

米国、欧州、中国の科学技術動向を注視しながら、優れた測定方法・機器を導入できる体制としています。

(8)  知的財産権

当社はライフサイエンスの領域においてバイオテクノロジー基幹技術や最新技術を駆使して特長のある自己免疫疾患、がん等の臨床検査薬及び基礎研究用試薬の研究開発から、高品質な製品群を販売しています。ライフサイエンス業界は急速なスピードで技術革新や新規な知見が生まれています。当社も研究開発・製品開発の過程で、新規性・進歩性のある技術や製品について知的財産権を確保しています。しかしながら、特許審査の過程で特許性が認められず、十分な知的財産権が確保できない場合や、成立した特許権が無効審判により無効となることがあります。これらの場合は製品が上市できない、あるいは製品上市を断念する可能性があります。一方で、研究開発の初期段階から特許出願や特許権の調査(先行技術調査)や特定の技術を研究あるいは利用して製品化した際に起こりうる知的財産権侵害のリスクを調査(フリーダム・トゥ・オペレート調査)しておりますが、他社から特許権侵害訴訟を受け当社の技術や製品が先行特許を侵害する判決となった場合は、開発の断念、発売の中止、あるいは販売の差し止めを受けたり、損害賠償責任を負うことがあります。

新製品開発の着手段階では、測定対象物の用途に関する知的財産権の確保に努めています。弁理士事務所と特許戦略を協議した上で、特許出願しています。特許によって知的財産権の確保が困難な場合には、測定に必要な原材料(抗原や抗体)あるいはその製造方法を社内ノウハウとして蓄積することで、競合他社による類似品の開発を防ぐことに努めています。

(9)  海外導入商品

日本国内に販売拠点のない海外企業は、初期の段階では自社製品を日本国内のパートナーを頼って代理店販売を行います。しかしながら、日本国内での販売や商慣習を徐々に修得し製品売上が伸長してきた海外企業は自社販売に着手します。当社も海外からの製品を代理店販売していることから、このような代理店販売製品の売上が消滅する可能性があります。

海外企業と当社の協業関係を強化して、両社に利益があり、共存できる信頼関係を構築する努力をします。

(10) 為替変動

当社の一部製品には海外より輸入した原料を使用しています。また、海外から一部商品を輸入して国内販売しています。当社製商品の売上高のうち、約20%は海外販売によるものです。また海外グループ企業向けの外貨建て貸付金を保有していることから、為替レートの変動によっては売上や利益に影響を及ぼす場合があります。

為替市場動向を常時モニタリングするとともに、外貨建ての大口取引や為替ポジションを継続的に把握しながら、必要に応じてヘッジ等を行っています。

[運営上リスク]

(11) 製品・商品の品質リスク

  近年、当社は、患者さんの生命に関わる診断、治療方針、薬剤選択を決定する重要な臨床検査薬を製造販売しています。原材料を外部調達している製品群の場合、その供給が遅延した際には、納期遅延や失注の可能性があります。他社からの導入品の受け入れ検査結果が規格外になった場合、あるいは入荷が遅延した場合も、納期遅延や失注の可能性があります。

  前期より、製品の品質向上、安定供給、製造規模の向上を目指して、製造改革プロジェクトを発足しました。社外専門家の支援を得て、自動化、デジタル化に対応した計画を立案し、数年後には3つの目標を達成できる製造体制を構築します。

(12) プロダクト・ライアビリティ

  製品の使用方法や検査結果の解釈については、製造、薬事、品質保証、学術、営業の関連部署の協力の下で製品情報を提供しています。当社製品は、その検査結果が臨床医による診断もしくは医薬品選択を判断する補助情報となるため、製造物責任・生産物責任のリスクがあります。

  前項に記載しましたように、製造改革プロジェクトによって、数年後には、製品の品質向上を達成できるように計画しています。同時に、品質マネージメント体制も強化していきます。

(13) 情報セキュリティ・システム

  当社は、IT環境や基幹システムの改善、デジタルマーケティングの活用などデジタル化技術を導入しています。業務効率と利便性の恩恵に服する対価としてセキュリティの強化に努めることが課題です。JSR株式会社からの助言、支援を得て、情報セキュリティ・システムを強化していきます。

(14) 人財の確保

  当社が優先的に対処すべき事業上の課題と考える中国市場への展開強化のためには、薬事規制・臨床開発の能力と経験を有する人財を採用していく必要があります。デジタル化・IT化への対応においては、これまで当社が採用経験のない人財を採用しています。このような人財の採用が遅延した場合は、上記課題の解決が遅延する可能性があります。

  中国の提携企業や現地の薬事コンサルタントを通じて人財確保に努めるなど、これまでにない枠組みで採用遅延リスクに対応していきます。デジタル化・IT化への対応は、国内の人財に限定せず、幅広い人財を確保することを考えます。

[気候変動・自然災害リスク]

(15) 気候変動・自然災害による製品・商品供給のリスク

  地震、風水害、感染症蔓延などによって、製造(長野県伊那市)、製品・商品の受発注(名古屋本社)、配送センター(千葉県印西市)の機能が著しく低下した場合には、製品や商品の顧客への供給に支障が生じる可能性があります。

  当社では、総務部が中心となって事業継続計画を策定し、毎年訓練を実施しています。また内部統制委員会(全体会議を四半期ごとに開催)において、各リスクを評価し、その低減に努めています。直近では、新型コロナウイルスの感染リスクに対して、従業員の安全と健康を守る措置を講じるとともに、長期的な企業活動が制約されることを想定し事業継続の戦略と計画を立案しております。

 

[カントリーリスク]

(16) 中国事業のリスク

  当社は、北京、上海、広州に所在する販売拠点(北京博尓邁生物技術有限公司:MBLB)、杭州にある製造拠点(恩碧楽(杭州)生物科技有限公司:MBLH)を起点として、及び中国企業との提携によって、中国市場への展開を強化していきます。薬事規制、知的財産権、輸出入、出入国管理、税制、一般法務など当社事業に関連する法令の改正、及び西洋諸国との政治、経済に関する地域・国家間の摩擦が発生した場合には、中国市場の展開に支障を生じる可能性があります。

  会社運営上のリスク(生産、販売、財務・金融・為替、雇用・労働など)及び安全上のリスク(社会・民衆動向、新興・再興感染症、情報管理など)に対するリスクマネージメントを行っています。

(17) 海外規制のリスク

  諸外国によって制定された国家間あるいは多国間の規制が当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。欧州連合(EU)が定めた個人情報保護に関する規則「一般データ保護規則(General Data Protection Regulation)」、米中貿易協議で取り決められた規制や関税などが該当します。

  当該規制は、事前に現地の海外子会社・関連会社、海外提携企業、あるいはコンサルタントを通じて入手します。必要ならば、国内外の弁護士事務所の助言を得て、規制内容の理解、当社事業に及ぼすリスク情報を理解した上でリスクへの対策を講じます。

[戦略リスク]

(18) 事業戦略のリスク

当社グループは、中期的な事業戦略として、国内市場堅持、海外事業拡大及び新規事業創出を掲げています。その達成のために、高品質な製品供給体制の基盤を構築すべく、革新的な診断技術や製品の創出、製造及び品質管理体制の盤石化、薬事臨床体制の強化に努めています。

国内市場堅持については、(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)、(12)、(15)の単独あるいは複合的なリスクによって、事業拡大が遅延となる可能性があります。

海外事業拡大については、(1)、(2)、(3)、(5)、(6)、(8)、(10)、(11)、(12)、(14)、(15)、(16)、(17)、(18)の単独あるいは複合的なリスクによって、事業拡大が遅延あるいは中断となる可能性があります。

新規事業創出については、(1)、(2)、(3)、(5)、(6)、(8)、(10)、(11)、(12)、(15)、(16)の単独あるいは複合的なリスクによって、事業拡大が遅延あるいは中断となる可能性があります。

いずれのリスクが発生する恐れがある場合、発生した際には、上述した対応策を講じて、当社の事業が継続できるように、対策を尽くします。

 

 

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