事業等のリスク

2【事業等のリスク】

 

第一三共グループでは、組織の目的・目標の達成を阻害する可能性を有し、かつ事前に想定し得る要因をリスクとして特定し、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応(保有、低減、回避、移転)を行うとともに、リスクが顕在化した際の人・社会・企業への影響を最小限に留めるべく、リスクマネジメントを推進しております。具体的には、企業活動に潜在するリスクへの適切な対応を定めるリスクマネジメント体制を構築するとともに、事業に影響を与えかねない災害等が万が一起こった場合においても事業の継続を可能とするための事業継続計画(BCP)や、想定以上のリスクが顕在化した際の損失を最小とするクライシスマネジメント体制を整えております。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大については、事業へ及ぼす影響について評価し、感染拡大防止、事業継続の2つの観点から必要な対策を実施いたしました。現在は感染状況をモニタリングしつつ、感染拡大防止対策を継続しております。

 

(1) リスクマネジメント

当社グループのリスクマネジメントの推進にあたっては、最高財務責任者(CFO)がリスクマネジメント推進責任者として当社グループ全体のリスクマネジメントを統括し、事業計画策定・実行の年次サイクルに合わせたリスクマネジメント体制を運営しております。

各ユニットにおいてはユニットの責任者が、組織の目的・目標の達成に向け、リスクの抽出、対応策の策定・実行、組織内でのリスクマネジメントに関わる情報提供・教育・啓発等自律的にリスクマネジメントを推進しております。

リスクマネジメント事務局では、各ユニットから抽出されたリスクについて、影響度と発生可能性の観点からリスクアセスメントを実施し、企業経営に重大な影響が想定されると評価したリスク項目を、毎年、経営会議及び取締役会において重大リスクとして特定いたします(下図「当社グループにおけるリスクレベル分類の概念図」参照)。さらに特定した重大リスクごとに担当責任者が任命され、関係組織と連携の上、リスク対応策を実行しております。その進捗状況は、年2回のリスクモニタリングを通じて確認され、必要に応じた是正・改善がなされます。重大リスク顕在化の予兆が確認された際は、速やかにリスクマネジメント推進責任者に情報が集約され、CEOに報告される体制としております。

 

 

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(2) 事業継続計画(BCP)

当社グループは、事業継続へ影響を及ぼす4つの脅威(自然災害、設備事故、新型インフルエンザ・感染症、システム稼働停止)を対象に事業継続計画(BCP)を定め、有事の際の速やかな業務復旧、並びに医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。

 

① サプライチェーンにおけるBCP施策

当社グループでは、東日本大震災での経験を踏まえ、2012年にBCPを刷新し、以降も行政の防災計画改定や社会的要請に基づき、優先して供給する品目や各製造拠点の防災計画を見直す等、脅威が顕在化した際に、より適切に対応できるよう、また、製造や物流の複雑化やグローバル化に耐えうるよう、継続的な改善に努めています。 優先して供給する品目については、多くの患者さんに使用されている薬剤、緊急性のある薬剤、代替品のない薬剤の観点から設定するとともに定期的に見直しを行い、脅威が顕在化した際、必要となる医薬品を継続的かつ適切に供給できる体制を確保しています。BCP施策としては、設備や物流・在庫・要員、情報といった必要な経営資源に対し、予防策の実施、多様性の確保、支援策の確保、代替策の確保の4つの視点からそれぞれ対策を行っています。

 

② 新型インフルエンザ行動計画

当社グループでは、新型インフルエンザウイルスの世界的な大流行(パンデミック)に備え、従業員及びその家族の安全を確保し、医薬品の供給を継続することを目的とした「新型インフルエンザ行動計画」を2009年より策定しております。また、当社は、新型インフルエンザ等対策特別措置法において指定公共機関に指定されており、国や地方の行政機関が行う対策に協力する責務があります。医薬品の供給継続により、医療体制の維持に貢献することで、社会的責任を果たして参ります。

この新型インフルエンザ行動計画では、発生・流行時にも継続が必要な業務を定めるとともに、各業務における発生段階に応じた行動計画を策定しております。今般の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の発生においては、本計画に準じた弾力的な対応を図っており、そこから得られる知見をもとに、さらに実効性を高めた行動計画へと見直しを行って参ります。

 

(3) クライシスマネジメント

当社グループのグローバルクライシスマネジメントポリシーでは、企業活動に潜在するリスクのうち、顕在化し緊急な対応が必要な事象、発生可能性が極めて高くなった事象を総称して「クライシス」と定義しており、その発生による損失の最小化を図ることを目的に、クライシスマネジメントに関わる基本的事項を定めております。基本方針として、「クライシス発生時は、第一三共グループの社員及び関係者の生命や地域社会の安全を確保する、生命関連企業の一員としての責任を全うすることを基本に、迅速かつ確実にクライシスマネジメントを展開し、人・社会・企業への影響を最小限に止め、事業の継続や早期復旧を図るべく努力する」ことを定めております。

当社グループでは、クライシスの種類(災害・事故、事件<テロを含む>・不祥事・法令違反、情報管理に関する問題、製品に関する問題)やクライシスの影響度合いに応じて、機動的な対応を可能とする体制を構築しております(下図「クライシス発生時の初期対応」参照)。報告基準や報告ルートを明確に定め、クライシスマネジメント責任者(CEO又はCEOが指名した者)、クライシス初期対応責任者(総務・調達部長)を設置し、グローバルに影響が大きく、全社対応の必要性があるクライシスについては、リスクマネジメント推進責任者(CFO)とも当該情報を共有し、迅速かつ的確な初期対応により、事態の拡大防止と早期収束に努めて参ります。また、クライシス収束後は、事後分析により、再発の防止や対応の改善を図って参ります。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対しても、CEOをトップとした「COVID-19緊急対策本部」を中心にさまざまな部所との継続的な連携を通じ、社員の安全はもとより医薬品の安定供給に支障のない対応を図っております。

 

 

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(4) 重大リスクとして認識している事項

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、次のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループ(当社及び連結会社)が判断したものであり、既知若しくは未知のリスク、不確実性又はその他の要因により、実際の結果とは乖離する可能性があります。

 

① 研究開発・他社とのアライアンス等に関するリスク

・リスク

新薬候補品の研究開発には、多額の費用と長い年月が必要ですが、その間に期待された有用性が確認できず研究開発を中止する可能性があります。また、臨床試験で良好な結果が得られても承認審査基準の変更等により承認が得られなくなる可能性があります。さらに、第三者との研究開発に係る提携に関して契約の条件変更・終了等が起こった場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

当社は、重点領域であるがん領域において、特にエンハーツ(一般名:トラスツズマブ デルクステカン T-DXd/DS-8201)とダトポタマブ デルクステカン(Dato-DXd/DS-1062)をフラグシップアセットと位置付け、開発の拡大・加速化に取り組んでおり、それぞれ2019年3月、2020年7月にアストラゼネカ社と戦略的提携を開始いたしました。当該品目について、研究開発・承認申請・上市の遅延、期待した有効性・安全性が得られない、あるいは販売計画からの進捗遅延等が生じた場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社ではアストラゼネカ社との戦略的提携を統合的にガバナンスする仕組みとして両社共同でJoint Executive Committeeを設置しており、その傘下で専門領域を担当する複数のSub Committeeと連携して、ビジョンと戦略の策定、提携事業の損益管理、開発面及び営業面での投資判断、業績と主要マイルストーン管理、グローバルな上市準備等を推進しております。また、当局との継続的なコミュニケーションを通じた薬事リスクの管理・低減にも努めております。

 

② 医薬品の副作用や品質問題に関するリスク

・リスク

医薬品は医薬品医療機器等法を含む国内外の法規制等の下で製造されておりますが、品質問題や、予期せぬ副作用発現の問題が発生した場合は、当社グループの医薬品の売上が減少するとともに、製品回収や販売中止、健康被害に関する賠償責任等に係る多額の費用が発生する等、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社グループでは、国内外の安全管理情報(副作用情報等)を収集し、客観的に評価・検討・分析した結果を医療現場へ情報提供することで医薬品の適正使用を推進しております。さらに、全従業員を対象とした安全管理情報についての研修を毎年実施し、安全管理を徹底することで、患者さんの安全性リスクの最小化に努めております。

 

③ 海外における事業展開に関するリスク

・リスク

当社グループは、医薬品の開発、製造、販売等の分野で、海外においても積極的に事業を展開しており、このような海外事業においては、当該地域における政治不安や経済情勢の悪化等の地政学的な要因、当該地域の法規制や行政指導等に抵触するリスク、現地の労使関係等に関するリスクが存在します。これらのリスクが顕在化した場合には、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社グループでは、海外子会社に対してリスク管理に関連する窓口担当者を任命しており、定期的に情報収集・情報交換を実施しております。また、各地で問題が発生した場合には、この窓口担当者をハブとする現地子会社との連携により、迅速な課題解決を行っております。

 

 

④ 製造・仕入れに関するリスク

・リスク

地震、水害、暴風雨等の自然災害、火災、原子力発電所の事故、長時間の停電等社会インフラの障害、戦争、テロ等の発生により、当社グループの工場、研究所、事業所等の施設の損壊又は事業活動の停滞等が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、製品の一部は当社グループの工場において独自の技術により製造しており、商品及び原材料の一部は、特定の取引先にその供給を依存しております。このため、何らかの理由により製造活動や仕入れが遅延又は停止した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社グループの事業継続計画(BCP)は、事業継続へ影響を及ぼす4つの脅威(自然災害、設備事故、新型インフルエンザ・感染症、システム稼働停止)を対象とし、有事の際の速やかな業務復旧、並びに医療体制維持のための医薬品安定供給と品質確保を可能とする体制を整備しております。

当社は、東日本大震災での経験を踏まえ、2012年にBCPを刷新し、以降も行政の防災計画改定や社会的要請の変化に対応して、優先供給品目に関わる業務・組織体制を見直す等、脅威が顕在化した際により適切に対応できるよう継続的な改善を図っております。また、優先供給品目については、「多くの患者さんに使用されている薬剤」「緊急性のある薬剤」「代替品のない薬剤」等について速やかな供給を実現するべく、定期的に見直しを行っております。

特に医薬品の安定供給においては、生産・物流拠点の分散や主要原材料の複数購買の実施といったバックアップ体制を構築するとともに、自家発電装置の設置等、電力供給が停止した際の影響を最小限に抑える施策等にも取り組んでおります。また、主要システムの二重化等、IT基盤の強化も行っております。

 

⑤ 環境、安全に関するリスク

・リスク

医薬品の研究、製造の過程等で使われる化学物質の中には、人の健康や生態系に悪影響を与える物質も含まれております。当社グループでは化学物質を用いた実験、製造、保管管理等に万全を期しておりますが、万一、社内外の人への暴露、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等、深刻な問題が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、気候変動に伴う気象災害や温暖化等により、医薬品のサプライチェーン寸断、製造コスト上昇等のリスクが顕在化した場合、医薬品の安定供給、財政状態等に悪影響を与える可能性があります。

・対応

当社グループでは、人体への影響、土壌汚染、大気汚染、水質汚濁等を防ぐため、化学物質の保管や取扱い方法を厳格に定め、グループの各工場・研究所において法規制より厳しい自主管理基準値を設定し、モニタリングによる適正管理を実施しております。また、関連法規制に基づく調査義務が発生した場合の的確な対応はもとより、事業所閉鎖・用途の変更等において法的な調査義務がない場合でも、法令に準拠した方法で調査を実施しております。万が一、汚染が判明した場合には、行政に報告するとともに、近隣の方々に対しても、適切に情報を開示し、汚染状況に応じた適切な対応(拡散防止、浄化対策等)を行います。既に浄化対策等を終了した事業所では、継続的にモニタリングを行い、分析結果を行政、近隣の方々に報告しております。

気候変動対策としては、持続可能な開発目標(SDGs)の「目標13:気候変動対応」を重要な経営課題の1つとして認識し、気候変動が及ぼす事業活動における「リスクと機会」に関する情報開示を企業へ促すことを目的に策定された気候関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures:「TCFD」)の提言に賛同を表明し、シナリオ分析を含む情報開示を実施しました。さらに、2021年10月に公表されたTCFD提言の実施に向けた実務的手引きである「別冊」の改訂と「指標と目標」に関する補助ガイダンスを受け、移行計画の策定に向け、Scope3(その他間接排出量)を含めた温室効果ガス排出量、物理リスク・移行リスクに著しくさらされている資産等の7つの指標と目標の開示方法の検討を開始しております。引き続き、ステークホルダーの要請に応え、TCFDの提言に沿った自主的な気候関連財務情報開示及び気候変動対策に積極的に取り組んで参ります。

また、パリ協定にも賛同し「Science Based Targets initiative」からwell below 2℃として承認を受けた温室効果ガス削減目標を設定し取り組んでおり、気候変動を含む環境パフォーマンスデータについては、投資判断にも影響する重要指標と捉え、データの信頼性を高めるために第三者保証を取得しております。

 

 

⑥ 知的財産権に関するリスク

・リスク

当社グループの事業活動が他者の特許権その他の知的財産権に抵触するとして第三者から指摘を受けた場合には、事業の断念や係争の可能性があります。一方、第三者が当社グループの知的財産権を侵害する場合には、その保護のため訴訟提起等をすることがあります。それらの動向は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼすことがあります。ADCに代表されるバイオ医薬品や新規モダリティ医薬品のパイプラインの増大や、ジェネリック医薬品市場の拡大を背景に、訴訟提起等を含め、当社グループの知的財産権に関するリスクが一層増大する可能性があります。

・対応

当社グループでは、知的財産の創造と保護によってその価値の最大化とリスクの最小化を図っております。また、知的財産係争が発生したときには、社内外の関係者と協力し、事業への影響を最小限にとどめるよう対応しております。

当社は、過去に実施したSeagen Inc.とのADCの共同研究に関して、当社ADCに関する特定の知的財産権の帰属について同社から異議の通知を受けたことから、2019年11月にデラウェア州連邦地方裁判所に同社を被告として確認訴訟を提起いたしました。一方でSeagen Inc.は、2019年11月に当該異議に関して仲裁を申立て、その後、仲裁の手続が進行しております。

2020年10月、Seagen Inc.は、エンハーツを含む当社ADCがSeagen Inc.の保有する米国特許を侵害するとして特許侵害訴訟をテキサス州東部地区連邦地方裁判所に提起しました。2022年4月、同裁判所で陪審審理が行われ、エンハーツが当該特許を侵害しているとの陪審評決が下されました。陪審員は、陪審審理に至るまでの期間のSeagen Inc.の損害額が約42百万米ドルであると判断し、また、当該特許の故意侵害があったと認定しました。なお、同裁判所は、まだ判決を下しておらず、今後上記陪審評決の内容や双方の更なる主張等を検討の上判決を下すことになります。

一方で、2020年12月、当社らは、Seagen Inc.の当該米国特許が無効であるとして、米国特許商標庁に当該米国特許の有効性を審査する特許付与後レビュー(PGR)の請求手続を行いましたが、当該PGRの審理を開始しない旨の決定がなされておりました。当該決定を受け、2021年7月、当社らは、米国特許商標庁への再審理請求を行うとともに、同年8月、バージニア州東部地区連邦地方裁判所に行政訴訟を提起しました。そして、2022年4月、米国特許商標庁は上記再審理請求を認め、PGRの開始を決定しました。

 

⑦ 訴訟に関するリスク

・リスク

当社グループの事業活動に関連して、医薬品の副作用、製造物責任、労務問題及び公正取引に関する問題等に関し、訴訟を提起される可能性があり、その動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社グループでは、法令、契約、紛争防止・紛争解決等の観点からリーガルリスクの最小化とビジネス機会の最大化に努めております。また、コンプライアンス違反の未然防止策制定、違反があった場合の厳正な対応を通じて、健全な企業文化の醸成を推進しております。

 

⑧ 法規制、医療費抑制策等の行政動向に関するリスク

・リスク

国内医療用医薬品は、薬事行政の下、種々の規制を受けております。薬価基準の改定をはじめとして、医療制度や健康保険に関する行政施策の動向によっては、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。また、海外においても同様に、医薬品として各種の規制を受けており、行政施策の動向による悪影響を受ける可能性があります。

・対応

当社では、薬価制度改革並びに流通改善ガイドラインを踏まえた仕切価格・割戻改定を実施しております。また、適切な販売条件を設定・実行し、新薬創出加算品、重点品を中心に売上を拡大するよう努めております。なお、薬価の毎年改定を含めた薬価制度改革の他、海外を含めた行政動向を継続的に注視しており、即時に対応策を検討する体制としております。

 

 

⑨ 法令違反等に関するリスク

・リスク

当社グループは、グループ企業行動憲章及びグループ個人行動規範のもとに、コンプライアンス行動基準等を制定しているほか、企業倫理委員会や従業員ホットラインの設置等、コンプライアンス体制を構築し、販売情報提供活動ガイドライン等、事業活動に関連する法規制が遵守されるよう徹底しておりますが、役員及び従業員の個人的な不正行為等を含め重大な法令違反が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社グループでは、事業活動のモニタリングを適切に実施し、不適切な活動を早期に発見し、対応するよう努めております。また、必要に応じて教育・啓発等の再発防止の対応を講じる体制としております。

 

⑩ 金融市況及び為替変動に関するリスク

・リスク

株式市況の低迷等により保有する株式等の売却損や評価損が生じ、金利動向により退職給付債務の増加等が生じる可能性があります。また、為替相場の変動により、不利な影響を受ける可能性があります。当社グループはグローバルに事業を展開し、生産・販売・輸出入を行っておりますので、為替相場の変動は経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社では政策保有株式の削減、年金基金資産配分の期中見直しの実行及び為替ヘッジ取引により、損失額を減少させるよう努めております。

また、退職給付に関するリスクの整理と運用状況のモニタリング及び雇用関連法制動向の把握や、不動産市場のモニタリングを実施する等により、リスク低減に向けた方針を早期から準備対応しております。

 

⑪ ITセキュリティ及び情報管理に関するリスク

・リスク

当社グループは、業務上、各種ITシステムを利用しており、また、個人情報を含む多くの機密情報を保有しております。ネットワークウイルスの感染、サイバー攻撃他によるコンピュータシステムの休止等、及び機密情報の漏洩事象が発生した場合、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社グループでは、情報分野におけるグローバルな専門機能の統括責任者としてデータ活用・デジタルテクノロジー活用の統括と推進、情報戦略の策定と実行を担うCIO (Chief Information Officer)、機密情報管理、情報セキュリティ対策の推進を担うCISO (Chief Information Security Officer)を任命し、新たなデジタル技術、法規制やガイドラインを取り込んだ情報管理に関するポリシー・ルールの整備を進めております。

情報管理に関する規程等を整備して従業員へ情報管理の重要性を周知徹底するとともに、ITシステムへのサイバー攻撃等への対策強化として、防御機能、侵害の検知機能と対処機能等のセキュリティシステムの整備を実施していることに加え、クラウド系サービス利用への対応や情報セキュリティ基盤の強化、運用の改善を図っております。

個人情報に関しては、定期的な管理台帳更新状況の把握・委託先の安全管理措置評価等により、保有個人データ、特定個人情報等の適正な管理状況をモニタリングするとともに、監査部門による監査結果に基づく適切な指導及び従業員研修による周知・徹底を図っております。

 

 

⑫ 繰延税金資産の回収可能性に関するリスク

・リスク

当社グループは、将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に対して、将来の課税所得を見積った上で回収可能性を判断し、繰延税金資産を計上しております。しかし、実際の課税所得が減少した場合や税制改正等により、回収可能性の見直しを行った結果、繰延税金資産の全部又は一部に回収可能性がないと判断した場合には、繰延税金資産が減額され、経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社では、将来の課税所得の見積りに関して、経営環境の変化等を踏まえ適宜見直しを行っており、回収可能性については合理的に判断しております。

 

⑬ 人材に関するリスク

・リスク

当社グループが事業活動を推進し事業目標を達成する上では、各職務に必要な高度な専門性と高い業務遂行能力を持った人材、またデジタルトランスフォーメーションを牽引するデジタル人材等を育成・採用・確保する必要がありますが、採用市場の競争激化などによりこれらの人材を十分に確保できない場合には、当社グループの経営成績、財政状態等に悪影響を及ぼす可能性があります。

・対応

当社グループでは、事業目標を達成する上で必要となる人材の要件を明確に定義し、計画的な採用活動を強化するとともに、社内教育プログラムを始めとする多様なアプローチを活用して人材の育成・確保を図っております。また、CEOのコミットメントの下、国・地域の垣根を越えた当社グループ共通の「One DS Culture」の醸成やInclusion & Diversity (I&D)を推進し、グローバル共通のエンゲージメント調査による分析・改善施策を実施しております。

 

⑭ 新型コロナウイルス感染拡大に関するリスク

・リスク

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、自社工場及び国内・海外の製造委託先での従業員の罹患等による要員不足や原材料の納入遅延、並びに製造機能や物流・卸機能の停滞が生じ、結果として生命関連産業の責務である製品安定供給に影響を及ぼす可能性があります。

また、世界各国の医療現場が混乱する中で、当社・臨床試験委託先においても影響が生じ、現在進行している臨床試験の遅延やプロトコル逸脱例の発生により、結果的に当社の製品価値が毀損される恐れがあります。

・対応

当社グループでは、2020年1月30日に対策本部を立ち上げ、中国子会社の状況確認やビジネスにおける影響等の検討を開始いたしました。その後、CEOを本部長とする緊急対策本部を設置し、継続的な状況把握と対策検討を通じて経営レベルでの議論と意思決定を行いました。具体的には、従業員の安全配慮の面から在宅勤務(テレワーク)を中心とした非常時の勤務体制へ移行し、出張・対面での会議・研修・イベント等は原則として中止・延期にするなど、感染拡大防止策を講じました。現在も緊急対策本部を中心に状況の把握、対策検討を継続し、リスクの軽減に努めております。また、生命関連事業に取り組む製薬企業としての責務を果たすべく、ワクチン及び治療薬の研究開発への貢献のほか、医薬品の在庫確保、被験者の安全を最優先した臨床試験の継続等、現在もグローバルで事業継続に向けた対策を継続しております。

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