業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当事業年度における当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

① 財政状態及び経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、政府の経済政策の効果により、企業収益及び雇用環境は、緩やかな回復傾向が見られております。一方で、国内における個人消費の弱さに加え、消費増税による景気後退懸念、周辺地域情勢の不安定化、米国通商政策の動向に対する警戒感が増大するなど、世界的な経済情勢に対する懸念は払拭されておらず、依然として先行き不透明な状況が続いております。

  わが国医薬品業界においては、医療費抑制策により医療用医薬品市場の伸びが鈍化しており、グローバル医薬品開発による世界市場での展開が一層重要になっております

  このような経営環境の中にあって、当社は、より高い有効性及び効率的な生産が可能な付加価値の高い「*次世代ロジカルワクチン」の創製を目指す「次世代バイオ医薬品自社開発事業」、ならびに安定的な収益確保実現を目指す「バイオ医薬品等受託製造事業」の2事業を中心に取り組んでまいりました。

  「次世代バイオ医薬品自社開発事業」においては、平成29年10月31日に、塩野義製薬株式会社と締結した、ヒト用感染症予防ワクチンをはじめとする創薬に関する基盤技術整備、ならびに当社が次世代バイオ医薬品自社開発事業で開発を進めている自社開発パイプラインの一部及び自社開発パイプライン以外の新規開発候補ターゲットを当初の開発候補品として選定し基礎的研究を進めることを目的とした資本業務提携に基づき、基盤技術整備及び開発候補品の基礎的研究に係る研究開発活動を積極的に推進しております。平成30年5月29日及び同年10月25日に、資本業務提携契約にてあらかじめ定められた半年毎の成果達成状況に基づき、第1回及び第2回開発マイルストーン条件を達成したことが確認されました。これに伴うマイルストーンフィーを収受した結果、当事業年度の売上計画を達成いたしました。本書開示日現在においては、第3回開発マイルストーン条件達成に向けた基盤技術整備に係る研究開発活動を推進しております。並行して進めている開発候補品の基礎的研究については、複数の開発候補品において次世代ロジカルワクチンの創製に係る重要な知見を得つつあり、開発候補品の選定に係る検討が進展しております。

 自社開発パイプラインについては、これまでの提携関係の整理等に伴い、新たに以下の開発コードを付与し、独自技術に基づき研究開発を推進しております。なお、本書開示日現在における進捗は、いずれも基礎的研究段階にあります。

・UMN-101:組換え季節性インフルエンザワクチン

・UMN-102:組換え新型インフルエンザワクチン

・UMN-103:組換えロタウイルスワクチン

・UMN-104:組換えノロウイルスワクチン

 また、平成29年6月26日及び同年12月1日に、国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所(以下、「医薬健栄研」といいます。)と締結した、医薬健栄研が保有する新規**アジュバントシーズ及び当社が保有するワクチン等製造技術を融合し、新規ワクチンをはじめ最先端バイオ医薬品を創出することを目的とする共同研究契約に基づき、「次世代ロジカルワクチン」の創製に向けた研究開発活動を推進しております。当社の複数のワクチン候補抗原と医薬健栄研の複数のアジュバントの最適な組み合わせを見出すことを目的とした動物における免疫応答の解析を実施中で、次世代ロジカルワクチンの創製につながる知見を得つつあり共同研究が進展していることから、平成30年6月22日に、共同研究期間を平成31年6月まで延長することで合意いたしました。

  一方、「バイオ医薬品等受託製造事業」においては、塩野義製薬株式会社との提携に資する案件を中心に大学及び公共研究機関からの受注に取り組んだ結果、前事業年度に受注した大学等研究機関からの案件2件を納品いたしました。

 新規開発パイプラインの導入については、これまでの大学及び公共研究機関との受託の実績から、研究段階の製造受託にとどまらず、製品化も想定した案件候補も出てきており、新規開発パイプラインの導入経路の一つとして積極的に取り組んでおります

  平成30年7月31日付「特別損失の計上に関するお知らせ」にて開示したとおり、秋田工場土地に関し、時価の著しい下落が認められるため、「固定資産の減損に係る会計基準」に基づき、第2四半期会計期間において、80,605千円の減損損失を特別損失として計上いたしました。また、平成30年10月31日付「ジカウイルス感染症ワクチン開発に関する基本契約解約及び特別損失の計上に関するお知らせ」にて開示したとおり、塩野義製薬株式会社との資本業務提携契約等の状況ならびに昨今のジカウイルスの感染状況等を考慮し、当社における開発優先度が低いことから、脱退を協議しておりましたジカ感染症ワクチン開発のためのコンソーシアムについて、基本契約を解約し、コンソーシアムから脱退することで、Protein Sciences Corporation(本社所在地:米国コネチカット州 代表者ミレリ・フィノ)と合意いたしました。基本契約解約にあたり、支出した費用の当社負担分348,706米ドル(36,272千円 換算レート:米ドル=104.02円)について、第3四半期会計期間において事業整理損として特別損失に計上いたしました。これら特別損失計上に対し、研究開発費及び一般管理費に関し、コスト削減に努めたことにより、人件費、消耗品費、外注費を中心に費用が減少、また研究開発費の一部について平成31年12月期第1四半期に発生することとなったことにより、特別損失の影響を吸収いたしました。

 なお、平成29年12月期に債務超過を解消したことから、平成30年3月30日付にて、株式会社東京証券取引所において、上場廃止に係る猶予期間入り銘柄から解除されております。

 以上の結果、当事業年度の売上高は、103,610千円(前年同期比0.4%減)となりました。一方、塩野義製薬株式会社との業務提携に係る研究開発費用、横浜研究所実験環境整備費用及び秋田工場再立ち上げ費用等を計上したことにより、営業損失は606,770千円(前年同期は498,127千円の営業損失)、経常損失は609,796千円(前年同期は158,422千円の経常損失)、当期純損失は、特別損失として減損損失を80,605千円及び事業整理損を36,272千円計上したことにより728,736千円(前年同期は159,059千円の当期純損失)となりました。

 なお、為替相場の変動により、第4四半期会計期間において為替差益が発生したため、為替差益1,124千円を営業外収益に計上しております

 また、当社は、医療用医薬品の研究開発及びこれに関連する事業の単一セグメントであるため、セグメント別の業績に関する記載を省略しております。

 

*次世代ロジカルワクチン:当社が目指す次世代ロジカルワクチンとは、これまで10年以上に亘り開発してきたバイオ医薬品技術プラットフォームの各種知見・ノウハウ・技術を活用して、ヒト用感染症予防ワクチンをはじめとする次世代バイオ医薬品の原薬となる組換えタンパク抗原の製造技術、アジュバント技術及び製剤/ドラッグ・デリバリー技術を統合したワクチンの開発コンセプトです。次世代ロジカルワクチンにより、対象となる感染症に最適な高い有効性及び高生産性の実現を目指しています。すなわち、製剤/ドラッグ・デリバリー技術を活用して、対象となる感染症毎に最適な免疫を誘導することにより、高い有効性を実現することが可能となります。また、アジュバント技術を活用して、より少ない抗原量で高い有効性を実現するのみならず、組換えタンパク抗原を効率よく生産する技術により、当社の現生産体制にて市場をカバー可能な供給量を確保することが可能になるとともに、コスト低減に寄与することが可能となります。

**アジュバント:ワクチン等の有効性を高めるための免疫増強を目的とする医薬品添加物

 

② 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末における流動資産は1,077,324千円と、前事業年度末に比べ759,619千円減少いたしました。これは主に現金及び預金が715,862千円減少したことによるものであります。

 当事業年度末における固定資産は100,048千円と、前事業年度末に比べ45,748千円増加いたしました。これは主に土地が80,605千円増加したことによるものであります。

(負債)

 当事業年度末における流動負債は52,854千円と、前事業年度末に比べ6,087千円増加いたしました。これは主に未払法人税等が5,125千円増加したことによるものであります。

 当事業年度末における固定負債は742,384千円と、前事業年度末に比べ744,655千円減少いたしました。これは主に転換社債型新株予約権付社債が745,000千円減少したことによるものであります。

(純資産)

 当事業年度末における純資産は382,134千円と、前事業年度末に比べ24,696千円増加いたしました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前事業年度末に比べ715,862千円減少し、1,018,410千円となりました。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動により支出した資金は、578,483千円となりました。その主な内訳は税引前当期純損失726,674千円であります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動により支出した資金は、133,539千円となりました。その主な内訳は有形固定資産の取得による支出161,211千円であります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動により支出した資金は、3,838千円となりました。その主な内訳は株式の発行による支出3,239千円であります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社は、研究開発を主体としており、現時点においては生産活動を行っていないため、生産実績の記載はしておりません。

 

b.受注実績

 当社は、現時点において受注生産を行っておりませんので、受注実績の記載はしておりません。

 

c.販売実績

 当事業年度における販売実績を示すと、次のとおりであります。

当事業年度

(自 平成30年1月1日

至 平成30年12月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

103,610

△0.4

(注)1.最近2事業年度における主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は、次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 平成29年1月1日

至 平成29年12月31日)

当事業年度

(自 平成30年1月1日

至 平成30年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

塩野義製薬株式会社

100,000

96.1

100,000

96.5

2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。

3.当社は、単一事業であるため、セグメントに関連付けた記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において判断したものであります。

① 重要な会計方針及び見積り

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。その作成には、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額及び開示に影響を与える見積りを必要とします。経営者は、これらの見積りについて過去の実績、適切な仮定に基づいて合理的に判断しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.経営成績の分析

 当事業年度における売上高は103,610千円(前年同期比0.4%減)となり、売上総利益は101,933千円となりました。

 販売費及び一般管理費は708,704千円となりました。このうち、研究開発費は469,873千円、その他の販売費及び一般管理費は238,830千円であります。

 この結果、営業損失は606,770千円(前年同期は営業損失498,127千円)、経常損失は609,796千円(前年同期は経常損失158,422千円)、当期純損失は728,736千円(前年同期は当期純損失159,059千円)となりました。

 

b. キャッシュ・フローの分析

 当事業年度末におけるキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載しております

 

c. 経営成績に重要な影響を与える要因について

 当社は、国内においては、アステラス製薬株式会社と細胞培養インフルエンザワクチンの共同事業化契約を締結しておりましたが、平成29年1月10日にアステラス製薬株式会社より当該契約の解除権の行使申し入れを受け、平成29年3月10日に解約合意覚書を締結し解約しております。結果、当該契約に基づく収益が見込めなくなったことから、当社の将来収益に大きな影響が生じております。

 当該状況に鑑み、当社として米国PSCより導入した技術による再承認の可能性はないと判断するに至ったことから、平成29年12月11日に、米国PSCとの技術導入に関するライセンス契約について解約することで合意しております。また、韓国において、平成24年12月29日に締結した、日東製薬株式会社とのUMN-0502、UMN-0501及びUMN-0901に関する「Agreement For The Co-development And Commercialization Of Recombinant Influenza HA Vaccines In South Korea」、及び台湾國光生物科技股份有限公司と平成25年10月30日に締結した「台湾及び中国における組換えインフルエンザHAワクチンの優先交渉権供与に関する契約」について、当社において、東アジアにおけるUMN-0502、UMN-0501及びUMN-0901に関する開発・製造・販売権がなくなったことから、解約しライセンス関係を解消する方向で協議を進めております。

 当社といたしましては、このような経営の不確実性を解消すべく、平成29年10月31日に締結した塩野義製薬株式会社との資本業務提携契約に係るマイルストーン条件の確実な達成による収益の確保に重点的に取り組んでいくものの、当面は塩野義製薬株式会社との資本業務提携に係るマイルストーンフィーの収受による売上が主な収益となるため、当該提携に関する研究開発の進捗状況が当社の損益に影響を及ぼす可能性があります。

 

d.資本の財源及び資金の流動性について

 当社の事業活動において必要となる資金需要の主なものは、塩野義製薬株式会社との提携第1フェーズにおける基盤技術整備及び開発候補品の基礎的研究を推進するための各種試薬・消耗品費、一部試験に係る外部委託費、研究開発人材に係る人件費等で構成される研究開発費、及び一般管理費等があります。また、設備資金需要として、秋田工場において必要となる品質試験等に係る機器類への投資等があります。更に、長期的な資金需要として、塩野義製薬株式会社との提携に関し、開発品の本格開発を行うことを目的とする提携第2フェーズへの移行を目指しており、当該提携第2フェーズにおける開発品の本格開発に関連した研究開発費、秋田工場への商用生産に係る追加的な設備資金をはじめとする投資等があります。

 当社は、事業運営上必要となる上記資金につきましては、平成29年11月16日に塩野義製薬株式会社に対し、新株式の発行による第三者割当を行うとともに、同社を割当先とする第1回無担保転換社債型新株予約権付社債を発行することにより、安定的かつ一定の流動性を確保しております。

 当事業年度においては、平成30年10月31日に、第1回無担保転換社債型新株予約権の一部、745,000千円(2,500千株)が当社普通株式に転換された結果、未転換の残高は715,200千円(2,400千株)となっております。当社は、当該未転換残高に関し、塩野義製薬株式会社との提携に係る開発マイルストーン条件を計画通りに達成することにより、割当先である塩野義製薬株式会社における転換政策に関して協議し、着実に当社普通株式への転換を実現し、有利子負債の削減、当社財務基盤の着実な強化を図ってまいります。

 また、将来において必要となる事業活動資金については、塩野義製薬株式会社との提携に関し、早期に提携第2フェーズへの移行を実現し、長期的な研究開発資金を含む事業資金の獲得により確保していく所存であります。

 

e.経営者の問題認識と今後の方針について

 当社の経営陣は、当社が行っている事業環境について、入手可能な情報と経験に基づいた仮定により、経営判断を行っております。国内外の医療産業においては、規制当局の審査制度・審査基準の変化、医療制度改革に基づく市場環境の変化、ワクチン産業内での競争環境の変化が生じており、今後も大きく変化することが想定されます。当社が、塩野義製薬株式会社との資本業務提携の下、開発する基盤技術ならびに製品が、これらの環境変化に対応し、市場にて一定のポジションを獲得できるよう、提携先との契約に基づく研究開発活動を積極的に進め、経営基盤の安定化及び早期黒字化に取り組んでまいります。

 

f.継続企業の前提に関する重要事象を改善するための対応策について

 当社は、「2 事業等のリスク」に記載した、継続企業の前提に関する重要事象の存在する当該状況を解消するべく、以下の対策を講じ、改善に努めてまいります。

ⅰ)塩野義製薬株式会社との資本業務提携に係る第1フェーズにおける開発マイルストーン条件の着実な達成及び提携第2フェーズへの移行

 塩野義製薬株式会社との資本業務提携に係る研究開発業務に経営資源を集中し積極的に推進することにより、提携第1フェーズに係る第3回以降の開発マイルストーン条件の着実な達成を実現し、計画通りのマイルストーンフィーの収受を目指してまいります。また、提携第2フェーズへの移行を通じて、ライセンス契約その他の協業スキームの発展を目指すとともに、開発候補品の本格的な開発進展に伴う収益向上を目指してまいります。

 

ⅱ)第1回無担保転換社債型新株予約権付社債に係る新株予約権の転換の実現

 第1回無担保転換社債型新株予約権付社債に係る新株予約権の転換について、平成30年10月31日において、745,000千円(2,500千株)が当社普通株式に転換された結果、未転換の残高は715,200千円(2,400千株)となっております。当該未転換残高に関し、上記ⅰ)における開発マイルストーン条件を計画通りに達成することにより、割当先である塩野義製薬株式会社における転換政策に関して協議し、着実に当社普通株式への転換を実現、当社財務基盤の確実な強化を目指してまいります。また、提携第2フェーズ移行を通じて、平成32年12月期以降において必要となる長期的な研究開発資金を含む事業資金の獲得を目指してまいります。

 

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