業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在における判断に基づくものであり、その達成を保証するものではありません。

 

(1)経営成績等の状況の概要

①経営成績

当連結会計年度の業績は次のとおりです。

(単位:億円)

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前年同期比

売上高

7,012

8,554

+22.0%

+18.2%

営業利益

397

429

+8.1%

+7.1%

経常利益

365

438

+20.0%

親会社株主に帰属する当期純利益

132

44

△67.0%

EBITDA

556

690

+24.1%

US$/円(平均)

106.37

109.75

+3.2%

EUR/円(平均)

121.43

129.73

+6.8%

   EBITDA:親会社株主に帰属する当期純利益+法人税等合計+支払利息-受取利息+減価償却費+のれん償却額

 

 当連結会計年度(2021年1月~12月)における当社グループの業績は、売上高は前年同期比22.0%増の8,554億円でした。2021年7月から業績が連結対象となったC&E顔料事業(旧ドイツBASF社のColors & Effects顔料事業)を除くと、15.3%の増収となりました。新型コロナウイルスのワクチン接種の進捗とその効果により、先進国を中心に経済活動への影響が和らぐなか、国内外における活発なデジタル関連需要を背景に、高付加価値製品である半導体、電気・電子向け材料などの出荷が引き続き好調に推移しました。また、生活必需品である食品包装分野の出荷が堅調であったほか、化粧品用顔料の出荷も回復基調が続きました。自動車向け材料につきましては、依然として地域・品目によって半導体不足などによる自動車減産の影響が見られましたが、総じて出荷が堅調に推移しました。

 営業利益は、前年同期比8.1%増の429億円でした。C&E顔料事業を除くと、31.6%の増益となりました。年間を通じて、原油価格上昇などによる原料コストやサプライチェーンの停滞を背景とした物流コスト増加の影響を受けましたが、高付加価値製品を中心に各セグメントで出荷が堅調に推移したことに加え、様々な製品において、継続的に価格対応に取り組むことでコスト増加影響の低減に努めました。しかしながら、C&E顔料事業の売上高が統合後の物流体制の構築に時間を要したことなどによる出荷遅延を理由に伸び悩んだことに加え、同事業の物流問題の解消に係る営業費用が膨らんだことなどが、増益幅を押し下げました。

 経常利益は、持分法による投資利益や為替差益の増加などにより、前年同期比20.0%増の438億円でした。

 親会社株主に帰属する当期純利益は、前年同期比67.0%減の44億円でした。2022年2月7日付「2021年通期の連結通期業績予想の修正及び繰延税金資産の取崩しに関するお知らせ」の適時開示で説明のとおり、米国で繰延税金資産を取崩し法人税等調整額に計上したため、大幅な減益となりました。

 EBITDAは、前年同期比24.1%増の690億円でした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また、各セグメントの業績は次のとおりです。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:億円)

セグメント

売  上  高

営 業 利 益

前連結

会計年度

当連結

会計年度

前年

同期比

現地通貨

ベース

前年同期比

前連結

会計年度

当連結

会計年度

前年

同期比

現地通貨

ベース

前年同期比

パッケージング&

グラフィック

3,884

4,398

+13.2%

+9.8%

218

216

△0.7%

△0.2%

カラー&ディスプレイ

1,058

1,672

+58.0%

+51.7%

84

40

△53.2%

△49.3%

ファンクショナル

プロダクツ

2,360

2,833

+20.1%

+17.1%

171

262

+53.2%

+49.4%

その他、全社・消去

△290

△349

△76

△89

7,012

8,554

+22.0%

+18.2%

397

429

+8.1%

+7.1%

 

 

 

 [パッケージング&グラフィック]

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前 年 同 期 比

売 上 高

3,884

億円

4,398

億円

+13.2%

+9.8%

営 業 利 益

218

億円

216

億円

△0.7%

△0.2%

 

 売上高は、前年同期比13.2%増の4,398億円でした。食品包装分野では、パッケージ用インキは米州や欧州で引き続き出荷が堅調であったことに加え、国内では食品包装需要が回復傾向となり、増収となりました。商業印刷や新聞を主用途とする出版用インキについては、国内での商業向けがチラシやイベント関連印刷物の需要減により減収となるも、引き続き市況が好調なアジアや堅調な需要に支えられる米州や欧州で売上を伸ばしたことで、増収となりました。デジタル印刷で使用されるジェットインキは屋外広告(看板・ポスター)やバナーなどの産業用や商業印刷用が年間を通して好調に推移したことに加え、2020年6月に実施したテキスタイル用事業の買収効果もあり、大幅な増収となりました。

 営業利益は、前年同期比0.7%減の216億円でした。国内及び海外いずれも原料価格上昇による原料コストの増加の影響が一層強まり、各地域で価格対応に取り組みましたが、日本とアジアでは減益となり、セグメント全体でもほぼ前年並みとなりました。

 

 [カラー&ディスプレイ]

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前 年 同 期 比

売 上 高

1,058

億円

1,672

億円

+58.0%

+51.7%

営 業 利 益

84

億円

40

億円

△53.2%

△49.3%

 

 売上高は、前年同期比58.0%増の1,672億円でした。C&E顔料事業を除くと、13.9%の増収となりました。既存事業につきましては、色材分野では全体で増収となるなか、化粧品用顔料の出荷が引き続き回復基調となりました。ディスプレイ分野では、カラーフィルタ用顔料は堅調なパネル需要により高い出荷状況を維持し増収となりましたが、TFT液晶は中国メーカーとの競争激化により、減収となりました。スペシャリティ分野では光輝材が引き続き欧州での建材用発泡コンクリートの需要増により、増収となりました。こうした既存事業の増収に加え、C&E顔料事業の業績が連結対象となったことが全体の売上高を更に押し上げました。C&E顔料事業につきましては、世界的なコンテナ不足による海運需給の逼迫に加え、統合後の物流体制の構築に時間を要したことによる出荷遅延を理由に、売上高が伸び悩みました。

 営業利益は、前年同期比53.2%減の40億円でした。C&E顔料事業を除くと、56.8%の増益となりました。化粧品用顔料の出荷回復に加え、カラーフィルタ用顔料や光輝材など高付加価値製品の出荷が引き続き堅調であるなど、既存事業は好調を維持しましたが、C&E顔料事業の売上高の伸び悩みに加え、同事業の物流問題の解消に係る営業費用が膨らんだことや統合に伴う一時費用を計上したことなどから、大幅な減益となりました。

 

 [ファンクショナルプロダクツ]

 

前連結会計年度

当連結会計年度

前年同期比

現地通貨ベース

前 年 同 期 比

売 上 高

2,360

億円

2,833

億円

+20.1%

+17.1%

営 業 利 益

171

億円

262

億円

+53.2%

+49.4%

 

 売上高は、前年同期比20.1%増の2,833億円でした。半導体分野を主用途とするエポキシ樹脂は電子機器に使用される封止材向けを中心に出荷が好調に推移しました。また、スマートフォンなどのモバイル機器を主用途とする工業用テープの出荷も堅調に推移しました。サステナブル樹脂は、電気・電子、建材向けなど幅広い用途の出荷が好調に推移するなか、アジアにおいて自動車向け材料の出荷が一部停滞しました。自動車の軽量化や電装化に伴って用途が拡大しているPPSコンパウンドは、自動車市場への半導体不足による影響が懸念されるなか、引き続き国内を中心に安定した受注状況を維持し、全ての地域で増収となりました。

 営業利益は、前年同期比53.2%増の262億円でした。原料コストが増加傾向にあるなか、エポキシ樹脂など高付加価値製品の出荷が引き続き好調を維持していることに加え、各製品で価格対応に取り組んだことにより、大幅な増益となりました。

 

※サステナブル樹脂:環境対応と機能性を高めることを目指した樹脂戦略製品の総称で、水性、UV硬化型、ポリエステル、アクリル、ウレタン樹脂が含まれます。

 

②キャッシュ・フロー

 

 [営業活動によるキャッシュ・フロー]   448億円(前連結会計年度  545億円)

 当連結会計年度は、税金等調整前当期純利益が321億円、減価償却費が374億円となりました。また、法人税等に137億円を支払い、運転資本の増加により161億円の資金を使用しました。以上の結果、営業活動により得られた資金の総額は448億円となりました。

 

 [投資活動によるキャッシュ・フロー]   △1,476億円(前連結会計年度  △330億円)

 当連結会計年度は、設備投資に386億円、子会社株式の取得により1,241億円の資金を使用しました。一方で、関係会社株式及び出資金の売却により116億円を取得しました。以上の結果、投資活動に使用した資金の総額は1,476億円となりました。

 

 [財務活動によるキャッシュ・フロー]   995億円(前連結会計年度  63億円)

 当連結会計年度は、借入等により1,121億円の資金を調達した一方で、剰余金の配当として95億円を支払いました。以上の結果、財務活動により得られた資金の総額は995億円となりました。

 

 (キャッシュ・フロー関連指標の推移)

 

 

2019年度

2020年度

2021年度

自己資本比率

(%)

38.9

38.9

32.3

時価ベースの自己資本比率

(%)

35.8

30.1

25.6

キャッシュ・フロー対

有利子負債比率

(年)

5.0

4.9

8.6

事業収益インタレスト・

カバレッジ・レシオ

(倍)

11.9

18.6

20.5

(注)1.各指標の算式は以下のとおりです。

自己資本比率             :(純資産-非支配株主持分)/総資産

時価ベースの自己資本比率       :株式時価総額(期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後))/総資産

キャッシュ・フロー対有利子負債比率  :有利子負債/営業キャッシュ・フロー

事業収益インタレスト・カバレッジ・レシオ:(営業利益+受取利息+受取配当金)/支払利息

2.各指標は、いずれも連結ベースの財務数値により算出しています。

3.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金、社債及びリース債務を対象にしています。

営業キャッシュ・フローは連結キャッシュ・フロー計算書の営業活動によるキャッシュ・フローを使用しています。

また、支払利息については、連結損益計算書の支払利息を使用しています。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

(イ) 生産実績

 当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメント

金額(百万円)

前年同期比(%)

パッケージング&グラフィック

441,730

125.7%

カラー&ディスプレイ

173,689

172.3%

ファンクショナルプロダクツ

288,347

124.1%

報告セグメント計

903,766

132.0%

その他

53

132.5%

903,819

132.0%

 (注)1.生産実績は期中平均販売価格により算出しています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(ロ) 受注実績

 当社グループは、主として見込生産を行っているため、該当事項はありません。

(ハ) 販売実績

 当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと次のとおりです。

セグメント

金額(百万円)

前年同期比(%)

パッケージング&グラフィック

439,807

113.2%

カラー&ディスプレイ

134,970

170.0%

ファンクショナルプロダクツ

280,161

120.3%

報告セグメント計

854,938

122.0%

その他

441

105.9%

855,379

122.0%

(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しています。

2.上記の金額には、消費税等は含まれていません。

 

(2)経営者の視点による財政状態、経営成績等の状況の分析

①経営成績の分析

 経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①経営成績」に記載しています。

 

②財政状態の分析

 当連結会計年度末の資産の部は、主にドイツBASF社が保有する顔料事業を買収したことなどにより、前連結会計年度末と比べて2,535億円増加し、1兆715億円となりました。負債の部は、主に有利子負債の増加などにより、前連結会計年度末比2,239億円増の6,905億円となりました。また、純資産の部は、為替の影響などにより前連結会計年度末比296億円増の3,810億円となりました。

 

③資本の財源及び資金の流動性

(a) キャッシュ・フローの状況については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フロー」に記載しています。

 

(b) 財務戦略

 当社グループは、長期経営計画「DIC Vision 2030」において、ネットD/Eレシオ(注2)を経営指標として設定することとし、これを1.0倍程度に維持することを目標としています。ドイツBASF社が保有する顔料事業を買収したことにより当連結会計年度末のネット有利子負債(注3)は増加しましたが、堅調な営業キャッシュ・フロー創出と利益の蓄積により、翌連結会計年度末のネットD/Eレシオは1.0倍程度を維持する見込みです。また、資本性の認められる借入を考慮した調整後ネットD/Eレシオは0.9倍程度となる見込みです。

(注)1.有利子負債は、連結貸借対照表に計上されている借入金、社債及びリース債務を対象にしています。

2.ネットD/Eレシオ=ネット有利子負債/自己資本

3.ネット有利子負債=有利子負債-現金及び預金

 

(c) 資金需要の主な内容

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、原材料等の購入のほか、製造費、販売費及び一般管理費等の営業費用です。投資を目的とした資金需要は、設備投資、子会社株式及び出資金の取得、関連会社株式及び出資金の取得等によるものです。今後の設備投資計画等については、「第3 設備の状況 3.設備の新設、除却等の計画」に記載しています。

 

(d) 資金調達

 これらの資金需要に対して当社グループは、運転資金については、自己資金のほか短期借入金及びコマーシャル・ペーパーの発行により、また設備投資等の長期資金については、長期借入金及び社債で調達を行っています。

 なお、当連結会計年度末のネット有利子負債は3,460億円ネットD/Eレシオは1.0倍となりました。また、コロナ禍における金融市場の混乱に備えて、一年を通じて手元現預金の水準を高めに維持した結果、当連結会計年度末の現金及び預金は383億円となりました。

 

④重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産・負債及び収益・費用の報告金額並びに開示に影響を与える将来に関する見積りを実施する必要があります。経営者は、これらの見積りについて、当連結会計年度末時点において過去の実績やその他の様々な要因を勘案し、合理的に判断していますが、見積り特有の不確実性があるため、実際の結果は将来においてこれらの見積りとは異なる場合があります。

 当社グループの連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりです。

 なお、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う会計上の見積りについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(追加情報)」に記載しています。

 

 

(3)経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当連結会計年度における中期経営計画「DIC111」の達成状況は次のとおりです。

(単位:億円)

 

2019年度実績

2020年度実績

2021年度実績

2021年度計画

売上高

7,686

7,012

8,554

9,500

営業利益

413

397

429

700

売上高営業利益率

5.4%

5.7%

5.0%

7.4%

親会社株主に帰属する

当期純利益

235

132

44

450

EBITDA(注)

674

556

690

1,020

売上高EBITDA率

8.8%

7.9%

8.1%

10.7%

ROE

7.7%

4.2%

1.3%

10~12%

(注)EBITDA=親会社株主に帰属する当期純利益+法人税等合計+支払利息-受取利息+減価償却費+のれん償却額

 

 

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