研究開発活動

5【研究開発活動】

 当社グループは、ブランドスローガン「Color & Comfort」の下、光学・色彩、有機分子設計、高分子設計、分散などの基盤技術の深耕とそれらの複合化により、持続的成長につながる次世代製品・新技術の開発に積極的に取り組んでいます。

 事業に直結した研究開発を担う技術統括本部、従来の基盤技術の深耕と新規の基盤技術の創製を担うR&D統括本部、戦略的な新事業創出と事業部門の次世代製品群の事業化を担う新事業統括本部が当社の研究開発組織として、さらにDICグラフィックス株式会社、海外ではサンケミカルグループの研究所(米国、英国及びドイツ)、青島迪愛生精細化学有限公司(中国)、主に中国、アジア・パシフィック地域における技術開発活動の拠点となる印刷インキ技術センター、ポリマ技術センター、ファインケミカル技術センター、藻類研究センター、ソリッドコンパウンド技術センター、顔料技術センターが一体となって、グローバルに製品・技術の開発を行っています。

 一方、次世代技術領域の探索・基礎研究については、産官学連携などオープンイノベーションも積極的に活用しています。

 また、2021年には、データサイエンスセンターを新設し、研究開発へのAI(MI;Materials Informatics)活用とAI分野のスペシャリスト育成の強化に取り組み、研究開発の効率化を加速しています。

 当連結会計年度における研究開発費は、13,503百万円であり、このほか、当社及びDICグラフィックス株式会社における製品の改良・カスタマイズなどに関わる技術関連費用は、14,524百万円です。主な研究開発の進捗状況は以下のとおりです。

 

(1) パッケージング&グラフィック

 印刷インキ分野では、パンなど食品包装フィルムへの印刷でバターなどの油類やアルコール除菌剤に対する高い耐性を付与した表刷りバイオマスグラビアインキと、アルコール耐性が高く耐熱・耐油性にも優れた抗菌ニスの開発を同時に進め、両製品の販売を開始しました。バイオマス原料を使用した製品では、裏刷りグラビアインキ「フィナート® BM」が国内のグラビアインキでは初めて生分解性プラスチックの国際認証「OK Compost INDUSTRIAL」及び「OK Compost HOME」を取得し、オフ輪インキやUV OP(Over Print)ニスは日本有機資源協会のバイオマスマークを取得しました。軟包装材用接着剤でも従来の石油由来製品と同等の接着性能を発揮するバイオマス系接着剤が市場での実績を拡大しています。また、大手製パンメーカーと協業し、パンの食品包装に使用されるプラスチック由来の軟包装フィルムをマテリアルリサイクルにより再資源化するための取り組みも開始しました。

 海外ではサンケミカルグループが、PVCフリーのラミネーション用インキや、紙・フィルムをコンポスト化するコーティング、バイオマス原料の含有量を高めた水性インキ及びコーティング、脱墨可能なインキなど、サステナブルなパッケージの構成に貢献する製品群の市場展開を進めています。

 

(2) カラー&ディスプレイ

 カラーマテリアルでは、ディスプレイのカラーフィルタ用顔料の新製品開発に注力しているほか、化粧品におけるサステナブル意識の高まり、天然志向に合わせた、リナブルー等の天然色素の活用検討や、グリーンバイオベンチャー企業との資本業務提携による藍藻類スイゼンジノリ由来多糖類サクランを用いたUVケア関連製品などの開発を行っています。

 液晶材料では、液晶技術を応用したスマートウィンドウ製品や液晶アンテナの開発も進めています。

 海外ではサンケミカルグループにおいて、冷却コストの削減に貢献する近赤外線反射顔料や、プラスチックリサイクルの高効率化を実現する透明顔料が、環境意識の高まりを背景に実績を伸ばしています。また、化粧品用のカラートラベルエフェクト顔料や、特殊用途向けのメタリック顔料などの新製品を市場に投入しました。

 

(3) ファンクショナルプロダクツ

 合成樹脂では、次世代通信規格5Gの本格的な普及に向けた電子回路基板用低誘電材料や、内装建材用途を狙った超高防湿タイプ反応性ホットメルト接着剤、無機フィラーを多く含有する生分解性樹脂コンパウンドの流動性を改善する高バイオマス度改質剤などを開発しました。

 PPSコンパウンドでは、自動車関連で電動化に関わる各種パーツ向けにアロイ系を、車載センサー用に非アルミナ系絶縁性放熱タイプなどを市場に投入しました。

 工業用テープでは、スマートフォン向けに薄型で易解体性と強接着を有する粘着テープや、PC向けにリワーク性に優れる粘着テープを開発しました。

 また、可視光光触媒と抗菌金属を複合化した無機系抗ウイルス剤を市場に投入し、皮脂等の特定の有機物汚れに対するセルフクリーニング性などの独自機能も見い出し用途展開に注力しています。

 

 

(4) その他

 当社の新たな基盤技術の創製への取り組みとして、無機材料の分野では、独自の無機酸化物合成技術を用いてサイズ及び結晶構造を制御したアルミナフィラー製品のラインアップを拡充、放熱性や、補強性、耐摩耗性、耐熱性等の特徴を生かした様々な用途への展開を行っています。

 サステナブル関連では、天然由来アスパラギン酸及びそれを活用した生分解性を有する高吸水性ポリマの開発に注力、再生可能資源を原料とし生分解性を兼備するポリマの低コストプロセスを開発することにより、低炭素社会の実現とプラスチック廃棄問題の解決への貢献を目指しています。

 また、資本業務提携を行っている太陽ホールディングス株式会社の子会社である太陽インキ製造株式会社とは、次世代通信規格5Gの高周波帯域で使用される高周波対応配線形成用新シードフィルムの共同開発を進めています。ほかにも、当社の再剥離性粘着テープなどを組み合わせた温度・湿度・照度のセンシングが可能なやわらかい無線センサー「ハッテトッテ®」を商標登録し、販売を開始するなど、新事業創出の柱の一つとしてエレクトロニクス分野の強化にも注力しています。

 

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