文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において当社グループが判断したものであります。
(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度(2021年2月1日~2022年1月31日)における世界経済は、ワクチン接種の進展等による経済活動の再開に伴い徐々に正常化に向かいつつあるも、変異株の蔓延による感染再拡大等、新型コロナウイルス感染症の影響は依然続いており、先行きは不透明な状況となっております。
当連結会計年度は前連結会計年度との比較において増収となりましたが、ホワイトボックス市場や車載向けコンテンツ配信市場の立ち上がりの遅れに伴い当初計画に対して売上高は下回り、また成長分野への投資は継続したことから営業利益についても当初計画を下回りました。
以上の結果、当連結会計年度の業績は、売上高98億53百万円(前年同期比31.1%増加)、経常損失26億46百万円(前連結会計年度は経常損失23億37百万円)となり、前連結会計年度との比較においては増収減益となりました。
セグメントごとの経営成績は、次のとおりであります。
○ 国内事業
センシング技術、通信技術、クラウド技術、アプリ開発力等をワンストップで提供できる強みを活かし、企業のDX推進を加速させるソリューションや各種IoTソリューションを提供するIoT分野と、TVや車載機器等の各種デバイス向けに豊富な搭載実績を持つ高性能・高機能ウェブブラウザ「NetFront® Browser」シリーズをはじめとした組み込みソフトウェア製品を提供するWebプラットフォーム分野、ならびに高度な表現力と多彩なコンテンツに対応する汎用性を兼ね備え、ユーザー向けアプリケーションからコンテンツ配信システム、サーバーシステムまでを包括的に提供するEPUB 3対応の電子出版ソリューション「PUBLUS®」を中核とする電子出版分野を主軸に事業展開しております。また、台湾子会社を通じて、台湾ならびにシンガポール等のアジア地域に進出する日本の通販事業者向けに、業務支援システムや広告分析機能等を統合したクラウドサービス「CROS®」の提供を行っております。
当連結会計年度につきましては、IoT分野においては受託開発案件の業績が堅調に推移し、また産業用ドローン、屋内・屋外での位置情報共有とビジネスチャットを組み合わせた「Linkit®(リンクイット)」シリーズを中心に自社製品に関する引き合いは引き続き増加し、受注につながりました。Webプラットフォーム分野においては当社ブラウザを搭載したTVや車載機器の出荷台数が好調に推移し、安定的に売上を獲得しました。電子出版分野においては競争の激化や電子出版サービスに求められる機能の高度化も相俟って既存案件維持及び新規案件開拓のための投資が増加したため、収益性が低下し投資回収のリスクが高まっていたことを踏まえ、ビジネスモデルの変更による収益性の改善に取り組んでまいりました。その取り組みの一環として、当社顧客との間で「PUBLUS®」シリーズの一部製品についてソースコードの使用権を無期限に許諾するライセンス契約を2022年1月31日に締結し、当該契約に係る売上高を2022年1月期第4四半期連結会計期間(2021年11月1日~2022年1月31日)において計上したことにより、電子出版分野の売上高は増加しましたが利益としては赤字となりました。また台湾子会社においては、前連結会計年度に進出したシンガポール拠点の寄与もあり、通販事業者向けサービスの業績が堅調に推移しました。これらの結果、前期比で増収増益となりました。
○ 海外事業
ドイツ・中国・韓国に現地法人を設置し、海外市場におけるスマートデバイス及び情報家電関連分野向けにブラウザ製品等のWebプラットフォームの提供を行っております。
ドイツにおきましては、ウェブとの融合が進む車載機器やTV・セットトップボックス等の情報家電向けに、多彩かつ高付加価値なインターネットサービスの提供に適したHTML5対応のブラウザソリューションを開発・展開するとともに、新規事業として、自動運転技術の発展に伴い市場が立ち上がりつつある車載インフォテインメント向けにコンテンツ配信・サービスプラットフォームを広く提供することによって、ストック収益基盤を構築する方針です。中国・韓国における取り組みとしましては、現地の大手情報家電メーカー向けにブラウザ製品を提供するほか、本社で新規開発・事業化したソリューションの現地展開を図っております。
当連結会計年度につきましては、車載インフォテインメント向け分野の本格的な市場立ち上がりの遅れに伴い、欧州においては前期比で損失が拡大しました。他拠点においては当社ブラウザを搭載したTVの出荷台数にかかるロイヤリティ収入が増加しました。これらの結果、前期比で増収となりました。
○ ネットワーク事業
米国子会社IP Infusion Inc.を中核としてインドやカナダ等に現地法人を設置し、既存ビジネスであるネットワーク機器向け基盤ソフトウェア・プラットフォーム「ZebOS®」シリーズの事業基盤維持に努めるとともに、ホワイトボックス向け統合Network OS「OcNOS®」の事業拡大に注力しております。ホワイトボックスは、5G時代を迎え更なる通信トラフィックの増加が見込まれる中、データセンター事業者、通信キャリア、IXP(インターネット相互接続ポイント)事業者等においてネットワークインフラ設備投資・運用コストを大幅に低減しつつ運用の自由度を高める有力な手段と目されており、世界的に市場が拡大しつつあります。この様な環境の中、IP Infusion Inc.では通信事業者向けのWAN/LAN向け共通プラットフォーム内のCSR(Cell Site Router)やuCPE(Universal Customer Premise Equipment、汎用顧客構内設備)、データセンター向けの商用版の「SONiC distribution」といった多岐にわたるホワイトボックスソリューションを展開しております。またKGPCoやTechData等の大手ディストリビューターやWipro LimitedといったグローバルSIerとの提携を通じ、通信事業者へのホワイトボックスソリューションやサポート等の安定的な提供につなげてまいります。
なお、第2四半期連結会計期間より、当社は、日本電信電話株式会社(以下、NTT社)との間で、同社が推進する「IOWN構想の実現」を目的とした業務提携を開始しております。今後、NTT社のUI/UX技術と当社の組み込み向けブラウザ技術を活用した研究開発を推進するとともに、当社の連結子会社であるIP Infusion Inc.のネットワークOSの技術・知見、及びサポート能力とグローバルなデリバリー・オペレーション体制を活用し、IOWN構想により生み出された画期的な技術を効率的に世界中に広げていくことを目指します。
本件において、NTT社はIOWN構想の実現に向けた研究開発・社会実装を、当社はIOWN時代のUI/UXを実現するブラウザ技術の研究開発に加え、IP Infusion Inc.を通じIOWN具現化に向けたネットワークOSのグローバルでの販売・サポートを行ってまいります。
当連結会計年度につきましては、予想数値策定時点では、新型コロナウイルス感染症の影響が当連結会計年度においても一定期間にわたり継続するも2021年には回復基調に向かうとの仮定に基づき、ネットワーク事業において前連結会計年度から継続して取り組んでおりますホワイトボックスソリューション「OcNOS®」のライセンス販売に関する大型案件を当連結会計年度に獲得し、年度後半から複数案件での商用出荷の実現による売上成長を見込んでおりました。しかしながら、各通信キャリアにおいては2020年以降のネットワーク通信量の急激な増大を受け、短期的にネットワーク設備網の拡充対応を行うことに重点が置かれ、ホワイトボックスの本格的な商用導入による設備投資・運用コストの削減や運用の自由度の実現に対する優先度の低下が見られ、結果として、案件の初期導入規模・受注額が当初の想定を下回りました。かかる状況において、販売チャネルの拡充や顧客サポート体制の強化を通じて売上拡大を図りましたが、当連結会計年度においては、その効果は限定的なものに留まりました。そのため、セグメント全体の売上高は前期実績と比べ30%超増加しましたが当初計画を20億円程度下回り、セグメント利益につきましてもソフトウェアに係る減価償却費の増加や営業・開発体制の拡充等の要因により前期実績・当初計画をともに下回りました。
なお、営業外収益として投資事業組合運用益5億2百万円、特別損失としてのれんの減損に伴う減損損失2億10百万円を計上しております。
以上の結果、当連結会計年度における連結業績は、売上高98億53百万円(前年同期比31.1%増加)、営業損失32億19百万円(前連結会計年度は営業損失26億41百万円)、経常損失26億46百万円(前連結会計年度は経常損失23億37百万円)、親会社株主に帰属する当期純損失30億49百万円(前連結会計年度は親会社株主に帰属する当期純損失25億37百万円)となり、前連結会計年度比では増収減益となりました。
当社グループの当連結会計年度末の資産は、受取手形及び売掛金が増加したものの、現金及び預金の減少、国内事業の電子出版分野に係るソフトウェア資産の一部の早期償却によるソフトウェアの減少及び減損損失の計上に伴うのれんの減少等により、前連結会計年度末に比べ13億円減少して279億62百万円となりました。
負債は、未払法人税等やその他流動負債が増加したこと等により、前連結会計年度末に比べ6億27百万円増加し25億68百万円となりました。
純資産は、親会社株主に帰属する当期純損失30億49百万円、為替換算調整勘定の変動額9億42百万円等により、19億27百万円減少し253億93百万円となりました。その結果、自己資本比率は90.6%(前連結会計年度末は93.2%)となりました。
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)の残高は、前連結会計年度末に比べて14億52百万円減少し、150億92百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動による資金は6億41百万円の増加(前連結会計年度は8億80百万円の増加)となりました。その主な要因は、税金等調整前当期純損失28億62百万円を計上した一方で、減価償却費38億76百万円や投資事業組合運用益5億2百万円の計上、及び売上債権が3億51百万円増加したことや長期前払費用が3億20百万円増加したことによるものであります。前連結会計年度との比較では、減価償却費の増加や投資事業組合運用益の増加があった一方、売上債権の増減額が減少から増加へ転じました。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における投資活動による資金は23億48百万円の減少(前連結会計年度は32億2百万円の減少)となりました。その主な要因は、無形固定資産の取得による支出が25億36百万円であったことであります。前連結会計年度との比較では、無形固定資産の取得による支出が減少いたしました。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における財務活動による資金は36百万円の減少(前連結会計年度は20百万円の減少)となりました。前連結会計年度との比較では、引出制限付預金の引出による収入や配当金の支払額が減少いたしました。
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.金額は販売価格によっており、ソフトウェアのうち自社開発分(資産計上分)を含んでおります。
3.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
当連結会計年度の受注状況をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
3.海外事業における受注高の増加は、前年度における車載インフォテインメント向け分野における顧客企業の事業活動の一時的な停滞が緩和されたことによるものです。
4.ネットワーク事業における受注残高の増加は、顧客数の増加によるものです。
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
(注) 1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
3.前連結会計年度の株式会社集英社については、当該割合が100分の10未満のため記載を省略しております。
4.上記の金額には、消費税等は含まれておりません。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、過去の実績や状況に応じ合理的と考えられる様々な要因に基づき見積り及び判断をおこなっておりますが、不確実性が内在しているため、将来生じる実際の結果と異なる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項) 4.会計方針に関する事項」に記載の通りであります。
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。なお、新型コロナウイルス感染症の影響については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 注記事項 (追加情報)」に記載しております。
当社グループの当連結会計年度の経営成績及び財政状態の分析については、「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要」に記載のとおりであります。
(資本の財源及び資金の流動性についての分析)
当社グループは、自社製品・サービス提供によるストック収益を中心とし、かつグローバルにスケール可能な事業構造への変革を推進しており、特にホワイトボックスソリューションを主としたネットワーク事業での事業成長に注力しております。その実現にあたっては、通常の事業活動に加え、製品開発投資やM&A等の外部成長施策を遂行することを想定しております。なお、2023年1月期における製品開発投資は「第3 設備の状況 3 設備の新設、除却等の計画」に記載のとおり、23億92百万円を計画しております。当社グループの当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は150億92百万円であることから、これらの資金需要については手元資金及び営業活動によるキャッシュ・フローによって充当することを想定しており、また、十分な流動性を確保可能と認識しております。
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