文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。なお、当社は単一セグメントです。
(1)経営方針
IT社会は多様な産業に支えられていますが、日本が最も活躍している産業は、電子デバイスに必要とされる機能
性材料を供給しているファインケミカルの分野です。当社の主要製品である貴金属めっき薬品は、その機能性材料の一種であることから、当社はケミストリ(化学)を基礎に科学的に理論武装した独創的な製品により、社会課題と向き合い、多様な視点と独自の発想力を発揮し、エレクトロニクス業界を牽引するファインケミカル企業を目指します。
(2)経営戦略等
当社は少数精鋭・ファブレス型・開発型企業として、貴金属めっきに特化して事業を発展させてきました。製造プラント等の生産設備は持っておらず、新規製品開発のためのマーケティング、それを実行するための技術開発及び営業活動に力を入れ、いち早く商品化を実現することで、市場のシェアを獲得してまいりました。設立50年を過ぎた今、コロナ禍のもとDX化等により急拡大する電子部品業界において、既存市場以外においても当社の技術で解決できる社会課題があることが、より鮮明になってきました。
そこで当社は、自身の強みを堅持しつつ、新規事業領域や既存市場でのニーズをとらえて社会課題の解決につなげるべく、新たに中長期ビジョン「RDD2030*」を策定し、2030年までの期間を3つのフェーズに分け、既存市場はもとより、新たな市場で評価される“日本高純度化学”へと進化していくことを目指します。その第1フェーズ(2022~2024年)の中期経営計画の骨子は当社HP(https://www.netjpc.com/)にて公表しており、今後詳細等につきましても同様に公表する予定です。
RDD2030= Redox-innovation through Discovery & Development toward 2030
(3)経営環境
当社が主力基盤とする半導体・電子部品市場は、グローバル規模での発展を維持しており、当社の販売先であるメーカーの多くは、この広大な市場に適応するために、新技術を生み出す開発力を競い合っています。
当社を取り巻くリスクについては、次項2〔事業等のリスク〕に記載の通りですが、パンデミックや気候変動等の「環境的リスク」、貿易制限や紛争・戦争といった「地政学的リスク」、重要原材料・重要部品の不足等の「経済的リスク」、輸送インフラ不全等の「技術的リスク」といった様々なリスクが見られる不透明・不確実な足元の経営環境の中でも、新型ウイルスによるライフスタイルの変革、脱炭素/省資源に伴うエネルギーシフト、データ通信量・容量の急激な増加等の「変わらぬメガトレンド」が存在し、当社が貢献できる社会課題は多数あると認識しており、当社の独創性、知的財産を活かした事業機会はますます広がっていると考えています。
(4)対処すべき課題と対策
①技術開発力の強化
当社の競争相手は、貴金属めっき薬品業界だけでなく卑金属めっき薬品業界も含みます。したがって、貴金属めっき技術分野ではタイムリーな改良に対応できる技術開発力及び車載向けや産業機械向け等の新用途開拓に向けた技術力向上、さらに貴金属/卑金属にこだわらず、業界として技術的に未完成なテーマを厳選して完成に向けた開発を推進していくことが重要と考えます。
さらに当社は、めっきで培った酸化還元(Redox)の技術を活かし、既存の事業領域だけでなく新しい事業領域の創出を目指しており、中長期ビジョンRDD2030のもと、中期経営計画のなかで具体的に推進してまいります。したがって、従来のめっきだけに留まらない柔軟な思考力と技術開発力が必要となります。
そのためには、当社の数倍の技術陣容を有する競合めっき薬品メーカーにも対抗できるユニークな発想を持つ技術陣の育成が必要となります。引き続き、新分野に積極的にチャレンジする人材、資質の高い人材の採用と育成により、技術陣のレベルアップを実現し、開発力の強化を図ってまいります。同時に、当社単独では困難な技術開発を効率的に実施していくため、最適な外部連携を図ってまいります。
②営業力の強化
新型コロナウイルスを起因としたライフスタイルの変化、デジタルトランスフォーメーション向けIoTデバイス/データセンター関連の需要拡大、自動車関連におけるEV化/自動運転化に向けた取り組み等の社会動向に伴い、半導体をはじめ、半導体搭載基板、プリント基板、コネクター等におけるハイエンド電子部品の需要が高まっているのと同時に、より高性能,高品質のめっき薬品が求められております。この市場におけるシェア拡大が当社の成長戦略のベースと考え、国内、海外を問わず各アプリケーションのトップメーカーに対して当社製品の技術的優位性をもとにした拡販活動をパートナー企業と連携して行い、売上・利益の向上を目指します。
加えて、新しい市場、新しい事業分野への参入に向けたマーケティングを行い、デバイスメーカーと技術交流ができるような会社間ネットワーク構築の強化を行ってまいります。
(5)目標の達成状況を判断するための経営指標
当社は、2022年3月期のROEは7.2%となり、前期比0.5ポイント改善しております。詳細につきましては、「第一部〔企業情報〕第1〔企業の概況〕〔主要な経営指標等の推移〕自己資本利益率」をご参照ください。今後とも、更なる改善に向け、資産の効率化、収益性の向上に取り組んでいく所存であります。
(6)新型コロナウイルス感染拡大の影響について
世界的な景気の減速が懸念される中、当社は半導体・電子部品業界の重要なサプライヤーとして、安定して事業を継続していくことが重要であると認識し、新型コロナウイルス感染防止を推進しております。
めっき薬品の需要及び供給については、重要な影響は出ておりませんが、新型コロナウイルスの感染拡大の影響による消費動向には引き続き注意が必要です。
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