研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループは、燃料油、高機能材、資源、更には新規事業創出のための研究開発に取り組んでいます。現在、図に示した研究開発体制の下、互いに密接に連携して研究開発活動を行っています。また、エネルギー・マテリアルトランジションならびに先進マテリアル領域の強化・拡大に向け、2021年7月に技術・CNX戦略部を新たに設立、全社研究開発戦略の策定、部門横断での新規事業開発に取り組んでいます。

なお、研究開発費については、各セグメントに配賦できない全社共通研究費等125億円が含まれており、当連結会計年度におけるグループ全体の研究開発費の総額は前年同期比55億円増加の260億円です。

 

 (当社グループの研究開発体制)

 

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当連結会計年度における各セグメントの研究開発内容、研究開発経費及び研究開発成果は次のとおりです。

 

(1) 燃料油セグメント

燃料油セグメントでは、環境に配慮した石油製品の開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は8億円です。

廃プラスチックからのエチレン・プロピレン製造の技術開発をはじめ、製油所・事業所の省エネルギー化及び環境調和型社会への貢献のための技術開発を推進しています。

 

 

(2) 高機能材セグメント

高機能材セグメントでは、環境に配慮した潤滑油製品の開発、機能舗装材(アスファルト)の開発、機能材料及び樹脂加工製品の競争力強化に向けた保有技術の改良や新規材料の開発、電子材料事業、アグリバイオ事業における研究開発を推進しています。当セグメントに係る研究開発費は124億円です。

 

①潤滑油事業では、省燃費・省エネルギーや環境に配慮して開発した商品をグローバルに展開し、国内及び海外市場への安定供給実現に努めています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・自動車用潤滑剤においては、車両の効率向上に寄与する低粘度EV車両用潤滑油、及び信頼性向上に寄与するEV車両用グリースを開発し、商品ラインアップを拡充しました。

・工業用潤滑油においては、消費電力削減(CO2削減)に貢献する省エネルギー型機械設備用潤滑油、低地球温暖化係数冷媒に対応する冷凍機油、作業環境改善に寄与する切削油の開発等を推進し、高機能商品ラインアップを拡充しました。

 

②機能舗装材(アスファルト)事業では、国内外において、省資源・省エネルギーに加え、カーボンニュートラルに資する道路舗装材料、建築防水材料に代表されるインフラ資材分野における研究開発を行っています。特に道路舗装材料においては、道路管理者との連携強化、共同研究を行うことで、舗装リサイクル材や橋梁舗装材の高性能化・長寿命化、次世代高耐久舗装技術の開発を行っています。これら新技術の社会実装をとおして、安心して利用できる道路舗装の実現に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・舗装リサイクル向け機能舗装材においては、NEXCO総研とリサイクル舗装の性能向上に資する研究を共同で行い、試験舗装による評価を行いました。

・高速道路や幹線道路向け機能舗装材においては、国土交通省ならびにNEXCO総研と連携を図りながら、舗装面の平坦性向上と長寿命化に効果のある材料の開発を推進しました。

・カーボンニュートラルに資する機能舗装材として、燃焼排ガス中のCO2を舗装中に固定化する技術を開発しました。

 

③機能材料分野では、エンジニアリングプラスチックであるポリカーボネート樹脂やシンジオタクチックポリスチレン樹脂の高付加価値商品の開発、新機能を有した粘接着基材である機能性軟質ポリプロピレンや水添石油樹脂の開発および機能性コート剤として特殊ポリカーボネートやポリアニリンの開発に取り組んでいます。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・ポリカーボネート樹脂(商品名:タフロンTM)では、自動車照明用途にて高透明性、高導光性及び高耐候性が要求されるDRL(Daytime Running Light)部品向けの新グレード開発に取り組みました。また特殊共重合グレードを使用したコンパウンドグレードの開発を推進しました。

・シンジオタクチックポリスチレン樹脂(商品名:ザレックTM)では、電気自動車市場の拡大を想定し、電装部品用の材料開発を推進しました。また、優れた電波透過性、電気特性を活かした高速通信分野向けの材料スペックイン推進および、押出・フィルム・繊維分野、アロイ分野のマーケティング強化により、自動車分野以外への新規用途開拓に取り組みました。

・一般の結晶性ポリプロピレン樹脂と比較して、融点が低く、軟質特性、遅延結晶性を有する機能性軟質ポリプロピレン(商品名:エルモーデュTM)や、重合および水添技術をベースに独自開発した無色透明の石油樹脂で、海外生産を開始した水添石油樹脂(商品名:アイマーブTM)では、ホットメルト接着剤や不織布向けを始めとする新規用途開拓を推進しました。

・耐摩耗性・耐熱性に優れる特殊ポリカーボネート(商品名:タフゼットTM)は、電子写真感光体ドラムの表面コーティング用樹脂として、さらなる性能向上のための開発に取り組みました。

・溶剤に可溶な導電性高分子で、電子部品に採用されているポリアニリンは、その特徴を生かした新規用途開拓を推進しました。

・プラスチック複合材料(商品名:カルプTM)では、ポリオレフィン系樹脂コンパウンドにて植物由来の原料化の検討や、主力商品である難燃グレードの環境安全性を高める非ハロゲン化の開発を推進、また、ポリフェニレンサルファイド系樹脂コンパウンドにて、光ファイバーコネクタ向けの超精密成形グレードやセラミックスに対する高い摺動性を示すグレードの開発などを推進しました。

 

④シート・フィルム分野では、包装材料のグレード開発及び産業用途の加飾分野の開発を行っています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・昨今の環境問題対応への社会的要求を受け止め、バイオマスプラスチックを用いたシート・フィルム、ジッパー等の環境対応商品の開発を継続しラインアップを増やすとともに、シートにおいてはマテリアルリサイクルの更なる拡充の検討を開始しました。

・包装材料においては、易開封、イージーピール、直線カット等のユニバーサルデザインと顧客ニーズに対応した商品開発を進めました。易開封性を備え持つ成形容器(商品名:マジックトップTM)では、食品メーカーのForm Fill Seal機での成形を可能とし、今後拡大する病院食・介護食分野へ対応しました。

 

⑤電子材料事業では、有機EL材料、酸化物半導体材料に代表される電子材料分野での新素材の研究開発を行っています。特に有機EL材料においては、顧客との連携強化、大学との共同研究などを通じて商材の更なる高性能化から次世代技術の開発まで、幅広い開発活動を推進しています。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりです。

・ディスプレイ用酸化物半導体材料において、顧客で良好な評価結果が得られ、既存技術対比で大幅な低消費電力化の可能性を確認しました。

 

⑥アグリバイオ事業では、微生物培養技術や応用技術、天然物活用技術によって、農業や畜産分野の「食の安全・安心」と「増大する食糧需要」に貢献する商品のラインアップを拡充しています。開発した剤は、国内はもとより海外への展開も積極的に行っています。当連結会計年度の主な実績は以下の通りです。

・農業分野では、国内で微生物を利用した残渣分解剤1剤の販売を開始しました。

・連結子会社の㈱エス・ディー・エス バイオテックでは、農薬の3剤の新規登録を行いました。また、22剤の
拡大登録を取得しました。さらに新たに2剤の販売を開始しました。

 

(3) 資源セグメント

石炭事業では、顧客ニーズに応える技術サービスバイオマス等の混焼によるCO2排出量の削減や、CO2を化学原料として利用する技術開発を積極的に推進しています。当セグメントに係る研究開発費は3億円です。当連結会計年度の主な実績は以下のとおりで、特に2021年5月の中期経営計画の見直しを踏まえブラックペレット混焼等の環境と調和した石炭利用技術の開発や、CO2を資源として活用する炭酸塩化技術の開発を強化するとともに、アンモニア混焼技術に関する開発にも着手しました。

・石炭火力のCO2排出削減に繋がる木質バイオマスの製造・販売の事業化に向け、ベトナムでのプレマーケティングプラントの運転開始、ブラックペレットの混焼に取組む自社事業所・需要家と共に石炭ボイラでの混焼試験を実施し、より実用的な技術を確立してきました。試験結果を踏まえ、木質バイオマスの品質向上や需要家へのコンサルティングを行っています。

・郵船商事株式会社が保有するボイラ制御技術に当社が保有する石炭高効率燃焼技術を融合させて機能向上を図ったボイラ制御最適化システム「ULTY-V plus」の販売を通じ、需要家の石炭ボイラから排出されるCO2の削減に貢献しています。本事業は日本郵船グループと共同で実施しており、バイオマス混焼による、機器や発電効率への影響・経済的負担の算定等にも取り組んでいます。

・CO2を資源として活用するとともにCO2の排出削減を行うため、廃コンクリート中のカルシウムと発電所や工場から排出されるCO2を作用させ炭酸塩(炭酸カルシウム)を製造するプロセスの研究開発を国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の支援を得て進めています。

・石炭鉱山植栽とそのバイオマスを活用したGHG低減を目的に、独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)と共同で新規事業創出の研究開発を実施しました。

 

(4) 全社共通(コーポレート研究)

コーポレート研究としては、社会のニーズや技術のトレンドを掴み、適社性を加味したうえで、新規事業創出に向けた機能性素材・電子素材の開発やエネルギー・マテリアルトランジションに資する研究を行っています。また、全社研究開発を加速するため、分析・解析技術の高度化、機械学習、AIを活用した研究促進を図っています。

・電動化社会、高度情報化社会に必要とされる次世代材料として、超耐熱スーパーエンプラ・導電高分子・無機電子素材及び各種デバイスの開発に取り組んでいます。カーボンニュートラルへの取り組みとして、バイオマスやCO2を原料とする素材、燃料やCO2の固定化技術を開発しています。これらを進めるにあたっては、自社単独での開発にこだわることなくオープンイノベーションを積極的に活用しています。

・2020年4月に国立大学法人東京工業大学すずかけ台キャンパス内に開設した「出光興産次世代材料創成協働研究拠点」においては高難度な技術課題の解決に取り組んでいます。

・将来のエネルギーキャリアとして注目されているアンモニアを常温常圧で水と窒素から製造する東京大学 西林仁昭教授らが開発した触媒系の実用化の検討を行っています。本研究は早期実用化が望まれ、2050年カーボンニュートラルの実現に向けて経済産業省が立ち上げたグリーンイノベーション基金事業に採択されました。本資金を活用し、“窒素社会”を目指した実用化研究を加速します。

・リチウム電池材料部では、次世代電池として早期の商業化が望まれる全固体電池のキーマテリアルである固体電解質を中心に、次世代電池用材料及びその量産化の研究開発を行っています。市場拡大が見込まれる電動車両に必要な安全で高性能な全固体電池の実現に向け、固体電解質の開発・材料提供を通じて貢献すべく、固体電解質の量産化に向けた開発の加速を目的として、商業生産に向けた実証設備を千葉事業所内に建設し、稼動を開始しました。加えて、材料提供先の拡大に伴い、次世代技術研究所の敷地内にも設備を建設することを決定しました(完工・稼働開始は23年度第1四半期)。

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