課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針及び経営戦略等

当社グループは、これまで受け継がれてきた「住友事業精神」を基盤に、2020年に次のとおり「Our Philosophy」を制定しました。「Our Philosophy」をあらゆる意思決定の拠り所、行動の起点とすることで、経済的価値のみならず社会的価値の向上に取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいります。

 

企業理念体系「Our Philosophy」

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2020年2月13日公表した2025年を目標年度とした中期計画は、従来から取り組んできた「飽くなき技術革新」への継続的な注力と、「新市場への挑戦」「新分野の創出」で構築したグローバル体制の成果最大化に加え、経営基盤強化のための組織体質の強化活動・利益創出の活動を推進し、さらに経済的・社会的価値の高い企業グループとなることを目標イメージとしております。
 

中期計画の骨子

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具体的な数値目標として、2025年までに連結売上収益1兆円以上、連結事業利益1,000億円以上、ROE10%以上、 D/Eレシオ0.5以下を掲げ、目標達成に向けて邁進してまいります。

 

中期計画の財務数値目標

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経営戦略としましては、「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」「ESG経営の推進」をバリュードライバーの核として収益の質や成長の持続性を考慮しながら、企業の経済的価値・社会的価値向上を目指します。

「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」の具体的な施策は、「(2)経営環境及び対処すべき主な課題」に記載のとおりとなります。

「ESG経営の推進」については、2021年1月に新設した「サステナビリティ推進本部」を中心に、同年6月にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)提言に賛同、また同年8月にはサステナビリティ長期方針「はずむ未来チャレンジ2050」を発表するなど全社でESG活動を推進しています。

 

[Environment(環境)]

(技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」の推進)

100年に一度と言われるモータリゼーションの変革に対応するため、技術開発コンセプト「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」の全技術(安全性能を高めるセーフティテクノロジーと環境性能を高めるエナセーブテクノロジー)を2029年までに完成させ、2030年以降に発売する全新商品がいずれかの技術を搭載したタイヤとします。

 

「SMART TYRE CONCEPT(スマート・タイヤ・コンセプト)」概念図0102010_004.png

 

(カーボンニュートラル(Scope1、2)に向けた取り組み)

グループ全工場から排出されるCO2について、2030年には2017年比50%削減、2050年にはカーボンニュートラルの達成を目指しています。この実現のため、太陽光パネルの設置やグリーン電力の購入拡大などを軸に取り組みを進めてまいります。さらにタイヤの製造工程では、次世代エネルギーとして注目されている水素を活用するべく、2021年8月から福島県の白河工場での実証実験をスタートさせました。太陽光発電と合わせて、同工場内の高性能タイヤ製造システム「NEO-T01(ネオ ティーゼロワン)」の全工程をクリーンエネルギー化することで、2023年には製造時における「CO2排出ゼロタイヤ」の完成を目指し、その後は国内外の工場へ水素利用を拡大することを検討してまいります。

 

カーボンニュートラルに向けた取り組み

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(サステナブル原材料(バイオマス及びリサイクル原材料)の活用)

タイヤ・スポーツ・産業品他の各事業で、サステナブル原材料比率の向上を進めてまいります。タイヤでは同比率を2030年に40%、2050年には100%に、スポーツのゴルフボールとテニスボールや産業品他でも、2050年での100%サステナブル原材料化を目指してまいります。

 

サステナブル原材料の活用0102010_006.jpg

 

(プラスチックの使用量削減に向けた取り組み)

プラスチックの削減が大きな社会課題となっていますが、タイヤラベルや商品の包装材などにおける当社のプラスチック使用量について、2030年には2019年比で40%削減することを目指しています。その一環として2022年1月に開催されたテニスの「全豪オープン」の大会使用球納入に際しプラスチックの蓋を廃止し、削減に取り組みました。

 

[Social(社会)]

多様な属性や価値観を持つ一人ひとりが尊重され、働きがいを持つことができる風土作りのため、メンター制度による女性向けキャリア開発や全階層向けのアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)研修の実施、多面評価による健全なリーダーシップ育成などの施策を継続的に進めてまいります。

また、当社は「世界人権宣言」や「経済協力開発機構(OECD)多国籍企業行動指針」、国際労働機関(ILO)の各種条約などといった人権についての国際規範を尊重しておりますが、今後事業活動における人権デューデリジェンスプロセスと人権マネジメント体制の構築にも取り組んでまいります。

健康経営の推進については、新型コロナウイルス感染症の収束に見通しが立たない環境下ではありますが、日本国内においての職域接種の積極的な実施や在宅勤務の推進、新型コロナウイルス感染症と関連する不就労に対する特別有給公休の支給など、従業員が安心して健康に働くことができる環境整備に取り組んでまいります。

 

[Governance(ガバナンス)]

「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等」に記載の体制で、グローバルな事業拡大や社会的要請の高まりなどを踏まえ、取締役会の実効性向上施策や海外も含めた子会社に対する定期監査の実施等を推進し、グループ全体のコーポレートガバナンスの充実を図ってまいります。

昨年は、従来から実施していた取締役会の実効性評価において新たに第三者機関による評価を導入した結果、社外役員への情報共有及びダイバーシティの確保が当社取締役会の強みであることが見えてきました。

今後は、これらの強みを活かすとともに、経営全般に係る重要事項についてより集中して議論を行えるよう付議事項を厳選し、重点的に議論していくべき議題については自由に意見交換する機会を設けるなど、取締役会の実効性を向上させ、更なる企業価値向上につなげてまいります。また、社外取締役が委員長を務め、委員の過半数を社外役員とする指名・報酬委員会では、中長期的な視点で当社に必要なスキルを落とし込んだスキルマトリックスを活用し、企業価値向上につながる体制について議論を行っています。今後も、取締役が中期計画達成に向けてグループ全体をさらに主導できる体制づくりを進めてまいります。
 

(2)経営環境及び対処すべき主な課題

当社グループにおいて発生した品質管理に係る不適切事案については、それぞれについて外部専門家を含む特別調査委員会を立ち上げ、事案を公表したのち、2021年11月9日に調査結果を公表しました。当社グループとしては、既に取り組み済みの品質保証本部の新設や本事案を教材としたケーススタディ研修に加え、部門間・拠点間のコミュニケーション向上やグループガバナンスの強化につながる諸施策を今後も着実に進めてまいります。また、「Our Philosophy」に掲げる「信用と確実」の遵守を徹底し、企業風土改革や品質保証体制の強化、お客様の信頼回復につなげてまいります。

 

今後の経営環境につきましては、引き続き、新型コロナウイルス感染症による影響が懸念されており、国内外において経済活動の回復に制約が見られる状況が続くと予想されます。

このような情勢のもと、当社グループは、これまで中期計画で掲げた課題を中心に市況や働き方の変化に合わせた個々のアクションプランを追加・修正しながら、着実に事業運営してまいりました。今後も、「高機能商品の開発・増販」「新たな価値の創出」「ESG経営の推進」をバリュードライバーの核として収益の質や成長の持続性を考慮しながら、企業の経済的価値・社会的価値向上を目指し、「第2 事業の状況 2.事業等のリスク」に記載したリスク要因を踏まえながら、次のような課題に取り組んでまいります。

 

(タイヤ事業)

ブランド戦略

パイオニアブランドである「ダンロップ」では、環境や安全の最先端技術を搭載した商品ラインアップで国内やアジア市場を中心に展開しています。走りを楽しむ人に向けたグローバルブランドである「ファルケン」では、高い機能と品質の商品ラインアップで欧米、国内市場を中心に展開を強化しています。

 

高機能商品の開発・増販

国内では、ウエットグリップ性能の低下を半減させる「水素添加ポリマー」と、低炭素社会の実現にも貢献する高機能バイオマス素材「セルロースナノファイバー」を世界で初めて用いた低燃費タイヤ「エナセーブNEXTⅢ(ネクストスリー)」や高い静粛性と操縦安定性で快適な車内空間を実現し、最高レベルのウエット性能が長続きする高機能タイヤ「VEURO VE304(ビューロ ブイイー サンマルヨン)」等を拡販してまいります。

欧州アフリカ地域では、「AZENIS FK510(アゼニス エフケー ゴーイチマル)」が、欧州最大の自動車連盟「ADAC(ドイツ自動車連盟)」の実施するタイヤテストにおいて総合1位を獲得するなど、欧州における「ファルケン」ブランドの価値は着実に向上しています。今後も欧州の自動車メーカーへの納入を着実に増やすことにより更なるプレゼンスの向上を図り、市販用タイヤの拡販にもつなげてまいります。

米州地域では、北米は「ファルケン」ブランドのSUV用タイヤ等の高機能タイヤを中心に販売が堅調に推移しており、米国工場及び輸出基地である日本とタイの工場での増産投資を進めています。南米ではブラジル工場からの供給で地産地消化を進めており、高機能タイヤの供給能力を強化するための増産投資を決定するなど、安定した利益基盤構築に努めています。

生産面では、世界各地の工場の生産能力をフル活用して地産地消化を進めながら、世界最大規模のタイヤ工場であるタイ工場で、各地域の需給を補完する体制を継続していきます。これらにより、自動車メーカーとの強固な信頼関係をグローバルで構築し、新車への装着拡大と市販用タイヤ販売への波及効果でビジネスの基盤を強化してまいります。

また、世界の主要市場でEV車両が増えつつありますが、EV車両用タイヤは既に自動車メーカーへの納入を始めております。今後も日米欧各地の自動車メーカーと連携し、EV車両の性能を最大限に引き出せるタイヤを当社独自の材料技術・設計技術により開発してまいります。

 

新たな価値の創出

現在、既に事業化している空気圧低下警報装置の技術と、路面の情報を検知できるセンシングコア技術を融合し、タイヤから得られるさまざまな情報をクラウドシステムに乗せて活用する仕組みの構築を目指しています。今後も、安全がもっと長続きし、危険を回避できる未来のタイヤとサービスを創出し、CASEやMaaSに対応したトータルソリューションを提供できるよう取り組んでまいります。

 

(スポーツ事業)

スポーツ事業を取り巻く環境は、健康で充実した生活を送るために、スポーツの魅力や果たす役割の重要性がコロナ禍により改めて認識されたこともあり、ゴルフ需要は拡大し、テニス及びウェルネス事業でも持ち直しの傾向が見られました。今後もスポーツ関連用品やサービスを通じて、お客様に「ヨロコビ」を提供し続けてまいります。

ゴルフ用品では、主力の「ゼクシオ」ゴルフクラブに12代目となる新シリーズ「ゼクシオ 12(トゥウェルブ)」を投入しました。今後も世界最大市場である北米においてマーケティング体制の強化を進めるとともに、日米2拠点での開発体制で市場ニーズに応じたダントツ商品を投入することで、一層の拡販と新たな価値創出につなげてまいります。

テニス用品では、「ダンロップ」テニスボール「Dunlop Australian Open」が2019年以降継続して、全豪オープン公式球として採用され、ATPツアーでも3年連続でボール使用率No.1となりました。こうして得た「ダンロップ」テニスボールへの高い評価を活かしながら、「ダンロップ」ブランドの価値向上と拡販につなげてまいります。

ウェルネス事業では、2021年4月にゴルフスクール・テニススクール・フィットネス関連3子会社を合併したことによるシナジー効果を定着させ、さらに加速させることで新しい価値提供に取り組んでまいります。

 

(産業品他事業)

医療の発展に貢献する医療用ゴム製品事業、地震や台風などの自然災害対策に寄与する制振事業につきましては、引き続き注力分野と位置付け、グローバルでの拡販に努めてまいります。また、持続可能な社会に寄与する付加価値創出の取組みとして、スポーツ用人工芝事業でのマイクロプラスチックの流出抑制等も進めています。

今後も全ての商材において時代のニーズに適応する付加価値の高い商品を開発・提供することにより、更なる成長を目指してまいります。

 

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