研究開発活動

5【研究開発活動】

当社グループにおいては、当社の研究開発組織・施設を核として世界各地に所在する子会社・関連会社群との密接な連携のもと、タイヤ・スポーツ・産業品他事業、幅広い領域・分野で研究開発を推進しております。

なお、当連結会計年度の研究開発費の総額は、25,447百万円であります。

セグメント別の主要な研究開発活動は、次のとおりであります。

 

(1)タイヤ事業

当社グループのタイヤ技術研究開発は、神戸本社に隣接したタイヤテクニカルセンターを中心に、欧州・米国のテクニカルセンターと連携して商品の開発に取り組んでおります。

また当社は、総合的な機能を有する岡山タイヤテストコースと冬用タイヤの開発を行う名寄及び旭川タイヤテストコースを国内に有しています。冬用タイヤ開発拠点である名寄タイヤテストコース(北海道名寄市)では冬シーズンの凍結路や圧雪路におけるタイヤ性能の試験・解析を行っており、2021年1月に名寄タイヤテストコース内に、新たな試験施設「NICE(Nayoro indoor ICE field)」を開設しました。「NICE」は、国内最大級の屋内氷上試験施設として、天候に左右されない高精度な試験を可能とします。今後、「NICE」を活用することで冬用タイヤの更なる高性能化と開発のスピードアップを図ってまいります。

 

当社は「タイヤが地球環境の為に貢献できること」をテーマに、「原材料」「低燃費性」「省資源」の3つの方向性で環境配慮商品の開発に取り組んでおります。また、自動車産業を取り巻く環境が大きく変化するなか、「さらに高い環境性能」を実現する技術である「エナセーブ・テクノロジー」に基づいて環境配慮商品の開発を推進しております。

また、当社はCASE/MaaSなどの自動車業界の変革に対応するためのタイヤ開発及び周辺サービス展開のコンセプトである「SMART TYRE CONCEPT」を掲げております。例えば、タイヤの摩耗、経年による性能低下を抑制し、新品時の性能を長く持続させる「性能持続技術」や、商品ライフサイクル全体で環境性能を高めて循環型社会の実現に寄与する「ライフサイクルアセスメント(LCA)」の考え方を採り入れた商品開発を推進するとともに、デジタルツールを用いて得られるさまざまなデータを利用した新たなソリューションサービスの展開を目指しております。

その中でもタイヤを「センサー」としたソリューションサービスの分野では、独自のタイヤセンシング技術「SENSING CORE(センシングコア)」を進化させ、タイヤの摩耗量を検知する技術を新たに確立しました。これにより、従来から検知可能であったタイヤの空気圧減圧・輪荷重・路面状態に加えて、タイヤ摩耗が検知できるようになりました。当社独自の「SENSING CORE」は、タイヤ開発で培ったタイヤの動的挙動に関する知見と、タイヤの回転により発生する車輪速信号を解析するデジタルフィルタリング技術を融合し、タイヤそのものをセンサーのように利用することで、タイヤへのセンサーの追加を必要とせず、車両にソフトウェアをインストールするだけで検知が可能となり、その機能はメンテナンスフリーであるというのが大きな特長です。さらに、車両より必要な情報をクラウドにアップすることで、クラウド上で検知することも可能です。

クラウド上のデータは独自のアルゴリズムで解析を行い、モビリティサービスや運送事業者などの安全運行やメンテナンスコストの削減などへの活用を見込んでいます。

一方、関西大学と共同で、タイヤの内側に静電気を利用した発電デバイス(エナジーハーベスト※1)を取り付け、タイヤの回転によって電力を発生させる技術開発を行っています。この開発では摩擦帯電に係る構造と材料の最適化で発電電力を向上させ、さらに充電機能の追加により、電池などのバッテリーを使用せず、タイヤ周辺に搭載するセンサーへの電源供給が可能となりました。このタイヤ内発電技術は、タイヤ内センサーデバイスの電池寿命を解決する手段でありますが、この実現により環境配慮型のセンサーデバイスの提供が可能となると考えています。

 

材料開発の分野では当社と東北大学多元物質科学研究所による、産学連携の共同研究で、当社が2015年に完成させた独自の新材料開発技術「ADVANCED 4D NANO DESIGN」にて開発した4D-CT(4次元X線CT)法の約1,000倍速での高速撮影に成功しました。この技術により、実際にタイヤが摩耗する時に近い状態で、ゴムが破壊する様子を連続的かつ様々な速度で3D観察することが可能となりました。今後この技術を活用し、耐摩耗性能に優れた環境に優しいロングライフなタイヤの新材料開発を加速させてまいります。

また、当社と東北大学が参画する、国立研究開発法人科学技術振興機構が独創的で国際的に高い水準の研究を推進する戦略的創造研究推進事業「CREST」にて、超高速撮影が可能なマルチビーム4D-CT法の開発を進めています。超高速マルチビーム4D-CT法から得られるビッグデータの解析に向けて、機械学習など高度情報処理との融合により、高性能な材料の開発を目指します。

さらに、2021年3月から学術・産業分野へ共用が開始されたスーパーコンピュータ「富岳」(以下、「富岳」)の令和3年度HPCIシステム利用研究課題募集における「富岳」産業課利用枠に採択されました。「富岳」を利用することで「ADVANCED 4D NANO DESIGN」を進化させ、分子運動に加えて化学変化まで表現できるゴム材料のシミュレーションを実現させる予定です。

 

デザイン技術の分野では、2021年8月にタイヤのサイドウォールの文字や模様の視認性を向上させる黒色デザイン技術「Nano Black(ナノブラック)」を確立しました。「Nano Black」で新たに採用された凹凸形状は、光が吸収面に衝突する回数が多いほど色が黒く見えることに着目し、吸収面の単位面積当たり表面積を最大化することで、どの角度から見ても黒さが損なわれずくっきり見えるように設計しています。この技術によって、サイドウォールのブランドロゴや商品名などの視認性を向上させるとともに、デザイン性を高めることで高級感を創出し、さらにお客様に選んでもらえるタイヤづくりを目指します。

当事業に係る研究開発費は21,257百万円であります。

 ※1 環境発電。身の回りの使われずに捨てられている、光、振動、熱などのわずかな環境エネルギーを拾い集めて活用する技術。

 

(2)スポーツ事業

スポーツ事業本部並びに米国のRoger Cleveland Golf Company, Inc.に研究開発部門を設置しており、コンピューターシミュレーション技術等を用いて新技術・新商品の開発並びに評価、試験に取り組んでおります。兵庫県丹波市の「ゴルフ科学センター」では、スイングマシーンによるテストに加え、トッププロからアベレージゴルファーまでの様々な方のヒューマンテストを行い、クラブやボールの特性に加え、スイングとクラブの関係など、膨大なデータを集積し、総合的に測定・解析・評価を行っております。これらの技術により、ゴルフクラブでは「ゼクシオ」12代目となる「ゼクシオ エックス」及び「ゼクシオ 12(トゥウェルブ)」を開発し、2021年12月に発売しました。ヘッドのクラウン部に搭載した凸型の「ActivWing(アクティブウイング)」が、ダウンスイング時の空力をコントロールし、ヘッドのブレを抑制し、インパクトの最適化が可能となりました。ヘッドの反発を高める「REBOUND FRAME(リバウンド フレーム)」構造との相乗効果で、ボール初速を向上させ、大きな飛距離を生み出します。

テニスラケットでは、多様なプレースタイルに対応すべく、スピン性能だけでなく、飛びの安定性にも着目して開発したダンロップ「SX」シリーズを開発し、商品化しました。新グロメット構造「スピンブースト・プラス・テクノロジー」搭載で、オフセンターにおける打点のばらつきによる弾道のブレを自動的に補正します。これにより、飛びの安定性が向上し、ネットエラーやコースアウトが減少します。

このほか、ゴルフクラブ、テニスラケットで培った技術を応用して開発を進めていたバドミントンラケット「Z-STAR(ゼットスター)」シリーズ、「AERO-STAR(エアロスター)」シリーズを、2021年7月から発売しました。当社の製造子会社ダンロップゴルフクラブ製ゴルフシャフト「MIYAZAKI」のキーテクノロジーとノウハウを生かし、通常のシャフトよりカーボン繊維を高密度化することにより高い剛性を実現しました。カーボン繊維層間に振動を抑制する粒子を付加することで、インパクト時の衝撃や不快な振動を抑え、安定性が向上しました。フレーム部分には、テニスラケットに搭載している高反発素材「ソニックコア」の技術を応用し、振動吸収性の向上や、反発力の増幅を実現しました。

当事業に係る研究開発費は2,241百万円であります。

 

(3)産業品他事業

ハイブリッド事業本部では、高減衰ゴムを用いた制振部材、医療用ゴム製品、車いす用可搬形スロープ等、安全・安心・快適をテーマとする事業活動に積極的に取り組んでおります。

スポーツ用人工芝事業においては、持続可能な社会の実現を念頭に、人工芝からのマイクロプラスチック流出を抑制するための実証実験を、施設の所有・管理者である兵庫県西宮市との協力の下で開始いたしました。公表例としては国内で初めての取り組みとなり、環境省が取りまとめた「マイクロプラスチック削減に向けたグッド・プラクティス集」にも紹介されています。今後、当社の調査や実証実験の結果を公開し、バリア資材やメンテナンスによる流出抑制効果の情報を施設管理者に提供することで、人工芝由来のマイクロプラスチック問題解決に向けた活動を推進してまいります。スポーツ用人工芝のみならず、カーボンニュートラル、プラスチックの削減等、社会問題を解決することを念頭に、人々のより安全・快適な暮らしに貢献する研究開発を行っていきます。

当事業に係る研究開発費は1,949百万円であります。

 

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