(1) 経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
なお、当連結会計年度より、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を適用しております。
これに伴い、当連結会計年度における売上高は、前連結会計年度と比較して大きく減少しております。
そのため、当連結会計年度における経営成績に関する説明は、売上高については前連結会計年度と比較しての増減額及び前年同期比(%)を記載せずに説明しております。
詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(会計方針の変更)」に記載のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度におけるわが国経済は、新型コロナウイルス感染蔓延の影響を受けたものの、ワクチン接種が進み、経済活動が徐々に正常になりつつあります。一方、エネルギー費や原材料価格が高騰するなど、厳しい状態が続いていることに加え、ウクライナ情勢の悪化など、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
このような状況のもと、当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の当連結会計年度における業績は、売上高430億89百万円、営業利益33億20百万円(前年同期比6.5%増)、経常利益42億4百万円(前年同期比17.5%増)、親会社株主に帰属する当期純利益39億11百万円(前年同期比81.0%増)となりました。
セグメントの業績は次のとおりであります。
電子材料
電子材料では、サプライチェーンの供給制約の影響により、主力の多機能携帯端末向けフレキシブルプリント配線板材料(受注高178億67百万円6.9%減、生産高2.8%減、前連結会計年度比較、提出会社単体ベース)の販売が減少したことから、売上高は297億68百万円、セグメント利益は売上高の減少により29億7百万円(前年同期比2.5%減)となりました。
産業用構造材料
産業用構造材料では、航空機業界の低迷により航空機用材料の販売が減少したこと等により、売上高は70億53百万円、セグメント利益は売上高の減少により8億72百万円(前年同期比7.1%減)となりました。
電気絶縁材料
電気絶縁材料では、インフラ関連向けの販売が増加したことから、売上高は26億4百万円、セグメント利益は売上高の増加により3億3百万円(前年同期比58.0%増)となりました。
ディスプレイ材料
ディスプレイ材料では、3D関連材料とカラーリンク・ジャパン㈱での偏光利用機器の販売が増加したことから、売上高は32億53百万円、セグメント利益は3D関連材料の売上高の増加とカラーリンク・ジャパン㈱の収益が改善したこと等により8億15百万円(前年同期比268.4%増)となりました。
その他(その他の事業分野)
その他では、売上高は4億10百万円、セグメント利益は1億72百万円(前年同期比29.4%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度に比べ54億4百万円増加し、168億93百万円(前年同期比47.0%増)となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの主な要因は次の通りであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は59億1百万円(前年同期比866.6%増)となりました。主な資金増加の要因は、税金等調整前当期純利益49億65百万円、減価償却費21億70百万円等によるものであり、主な資金減少の要因は、棚卸資産の増加額14億86百万円等であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果得られた資金は28億69百万円(前年同期比83.1%増)となりました。主な増加の要因は、台湾の連結子会社である新揚科技股份有限公司の完全子会社化を目的とした株式追加取得のため、保有していた債券を売却したこと等による投資有価証券の売却による収入33億39百万円等によるものであり、主な資金減少の要因は、有形固定資産の取得による支出19億7百万円等であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は40億42百万円(前年同期比29.1%減)となりました。これは主に、台湾の連結子会社の新揚科技股份有限公司に対する株式追加取得による連結の範囲の変更を伴わない子会社の取得による支出24億39百万円等であります。
③生産、受注及び販売の状況
a.生産実績及び受注実績
当社グループ(当社及び連結子会社 以下同様)の生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしておりません。
このため生産、受注及び販売の実績については、「(1) 経営成績等の状況の概要 ①財政状態及び経営成績の状況」におけるセグメントの業績に関連付けて示しております。
b.販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
前年同期比(%) |
電子材料(百万円) |
29,768 |
△5.9 |
産業用構造材料(百万円) |
7,053 |
△20.2 |
電気絶縁材料(百万円) |
2,604 |
11.3 |
ディスプレイ材料(百万円) |
3,253 |
15.3 |
報告セグメント計(百万円) |
42,678 |
△6.5 |
その他(百万円) |
410 |
△47.8 |
合計(百万円) |
43,089 |
△7.2 |
(注)1.セグメント間の取引については相殺消去しております。
2.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
相手先 |
前連結会計年度 (自 2020年4月1日 至 2021年3月31日) |
当連結会計年度 (自 2021年4月1日 至 2022年3月31日) |
||
金額(百万円) |
割合(%) |
金額(百万円) |
割合(%) |
|
住友商事ケミカル㈱ |
4,986 |
10.7 |
- |
- |
※当連結会計年度は、販売実績の割合が100分の10以上となる相手先がないため、記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
当連結会計年度は、主力の電子材料関連を中心に生産能力の向上及び拡大に向けた設備投資を行い、既存事業の継続的成長に取り組んでまいりました。同時に、各セグメントで市場の変化を先取りした新製品の開発を行い、市場拡大と当社グループの成長を促す挑戦を続けております。当社グループの主力製品である電子材料は、多機能携帯端末向けに子会社の新揚科技股份有限公司を含め受注を拡大し、グループ全体の支えとなりました。産業用構造材料、電気絶縁材料及びディスプレイ材料につきましては、さらなる成長を期待しており、継続して新規開発と収益力強化を行う考えであります。
一方で、当連結会計年度の途中で新型コロナウイルスの感染が世界規模で拡大し、現時点で完全な収束には至っておりません。この影響については、「第2 事業の状況」の「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。また、経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「2 事業等のリスク」に記載しておりますのでご参照ください。
当社グループの当連結会計年度の財政状態及び経営成績等の分析は、次のとおりであります。
a.財政状態の分析
(資産の部)
当連結会計年度末の総資産は686億89百万円(前連結会計年度末は672億57百万円)となり、14億31百万円2.1%の増加となりました。
主な要因は、台湾の連結子会社である新揚科技股份有限公司の完全子会社化を目的とした株式追加取得のため、保有しておりました債券を売却したことにより投資有価証券が27億90百万円減少した一方、現金及び預金が41億26百万円増加したこと等によるものであります。
(負債の部)
当連結会計年度末における負債合計は207億23百万円(前連結会計年度末は198億12百万円)となり、9億10百万円4.6%の増加となりました。
主な要因は、未払法人税等が8億10百万円増加したこと等によるものであります。
(純資産の部)
当連結会計年度末における純資産合計は479億65百万円(前連結会計年度末は474億44百万円)となり、5億20百万円1.1%の増加となりました。
主な要因は、台湾の連結子会社である新揚科技股份有限公司の株式追加取得に伴い資本剰余金が13億85百万円減少した一方、利益剰余金が15億62百万円増加したこと等によるものであります。
b.経営成績の分析
(売上高)
当連結会計年度における売上高は、430億89百万円(前連結会計年度は464億39百万円)と33億49百万円7.2%の減収となりました。また、売上原価につきましては、徹底したコスト削減に努め344億22百万円(前連結会計年度は385億1百万円)と40億79百万円の減少となり、売上原価率は79.9%と3.0ポイントの改善となりました。
これにより、売上総利益は86億67百万円(前連結会計年度は79億38百万円)となり、7億29百万円の増益となりました。売上総利益率は20.1%と3.0ポイント増加しております。
(営業損益)
当連結会計年度における販売費及び一般管理費は、売上原価と同様に徹底したコスト削減に努めましたが、53億46百万円(前連結会計年度は48億20百万円)と5億26百万円の増加となり、販売費及び一般管理費率は12.4%と2.0ポイントの悪化となりました。
これにより、営業利益は33億20百万円(前連結会計年度は31億18百万円)となり、2億2百万円の増加となりました。営業利益率は7.7%と1.0ポイント増加しております。
(経常損益)
当連結会計年度における営業外損益は8億83百万円の利益(前連結会計年度は4億59百万円の利益)と4億23百万円改善しました。主な要因は、為替差益4億45百万円の計上等であります。
これにより、経常利益は42億4百万円(前連結会計年度は35億78百万円)となり、6億26百万円の増加となりました。経常利益率は9.8%と2.1ポイント増加しております。
(税金等調整前当期純損益)
当連結会計年度における特別損益は7億61百万円の利益(前連結会計年度は61百万円の損失)と8億22百万円改善しました。主な要因は、投資有価証券売却損益の改善(前期は9百万円の利益、当期は7億77百万円の利益と7億67百万円増加)であります。
これにより、税金等調整前当期純利益は49億65百万円(前連結会計年度は35億16百万円)となり、14億49百万円の増加となりました。税金等調整前当期純利益率は11.5%と3.9ポイント増加しております。
(親会社株主に帰属する当期純損益)
当連結会計年度における法人税等は9億61百万円(前連結会計年度は9億18百万円)となり、43百万円の増加となりました。これらの結果、親会社株主に帰属する当期純利益は39億11百万円(前連結会計年度は21億60百万円)となり、17億50百万円の増加となりました。親会社株主に帰属する当期純利益率は9.1%と4.4ポイント増加しております。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載しております。
(キャッシュ・フローの指標)
|
前連結会計年度 (2021年3月期) |
当連結会計年度 (2022年3月期) |
自己資本比率(%) |
68.8 |
69.6 |
時価ベースの自己資本比率(%) |
49.6 |
46.4 |
キャッシュ・フロー対有利子負債比率(年) |
13.6 |
1.5 |
インタレスト・カバレッジ・レシオ(倍) |
3.7 |
43.6 |
(注)自己資本比率:自己資本/総資産
時価ベースの自己資本比率:株式時価総額/総資産
キャッシュ・フロー対有利子負債比率:有利子負債/キャッシュ・フロー
インタレスト・カバレッジ・レシオ:キャッシュ・フロー/利払い
※各指標は、いずれも連結ベースの財務諸表により計算しております。
※株式時価総額は、期末株価終値×期末発行済株式数(自己株式控除後)により算出しております。
※有利子負債は連結貸借対照表に計上されている負債のうち利子を支払っている全ての負債を対象としております。
※キャッシュ・フロー及び利払いは連結キャッシュ・フロー計算書に計上されている「営業キャッシュ・フロー」及び「利息の支払額」を使用しております。
a.資本の財源及び資金の流動性
当社グループは、事業運営上必要な資金の流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。短期運転資金は自己資金を基本としておりますが、不足時の一時的な運転資金を効率的に調達するため、主要取引銀行と当座貸越契約を締結しております。設備投資等の資本形成に係わる資金については、調達コストやリスク分散などを勘案しながら自己資金及び金融機関からの長期借入による調達を基本としております。また、資金運用の効率化と金融リスクの低減及び支払利息の削減を図るため、当社グループにおいて、グループファイナンスを進めております。
b.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等
当社グループの経営財務目標については、「第2事業の状況 1経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、経営者による会計上の見積りを必要としております。経営者はこれらの見積りについて過去の実績や現状等を総合的に勘案し合理的に判断しておりますが、実際の結果は、見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。
また、連結財務諸表の作成にあたって採用している重要な会計方針につきましては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項」の「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」に記載しておりますが、次の重要な会計方針が連結財務諸表作成における重要な判断と見積りに大きな影響を及ぼすと考えております。
a.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権については個別に回収可能性を勘案し回収不能見込額を計上しております。顧客の財政状態が悪化し支払能力が低下した場合には、引当金の追加計上が必要となる可能性があります。
b.繰延税金資産の回収可能性の評価
当社グループは、税効果会計の適用にあたり繰延税金資産については、その回収可能性を合理的に見積り、評価性引当額を控除して計上しております。繰延税金資産の回収可能性は有税項目の将来の無税処理の可能性や将来の収益力に基づく将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額が変動した場合には、繰延税金資産の取崩し又は追加計上により利益が変動する可能性があります。
c.有価証券及び投資有価証券の減損
当社グループは、有価証券及び投資有価証券を保有しており、評価方法は市場価格のない株式等以外のものについては時価法を、市場価格のない株式等については原価法を採用しております。保有する有価証券につき、市場価格のあるものは株式市場の価格変動リスクを負っていること、市場価格のないものは投資先の業績状況等が悪化する可能性があること等から、合理的な基準に基づいて減損処理を行っております。
当社グループでは有価証券及び投資有価証券について必要な減損処理をこれまでに行ってきておりますが、この基準に伴い、将来の市況悪化または投資先の業績不振等により、現状の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生し、減損処理が必要となる可能性があります。
d.固定資産の減損
当社グループは、固定資産の減損に係る会計基準を適用しており、独立してキャッシュ・フローを生み出す事業単位を基準にして固定資産をグルーピングしております。資産グループの回収可能価額が帳簿価額を下回る場合には、その差額を減損損失として認識しております。将来、新たに資産グループの回収可能額が低下した場合、追加の減損損失の計上が必要となる可能性があります。
この適用により、当連結会計年度においては提出会社の製造設備について減損損失12,928千円を特別損失として計上しました。
e.棚卸資産の評価
当社グループは、棚卸資産について正味売却価額が簿価を下回った場合に簿価の切下げを行っております。また、一定期間以上滞留が認められる棚卸資産については、販売の実現可能性が低下しつつあると仮定し、期間の経過に応じ規則的に簿価を切下げる方法で早期に償却を行っております。さらに、販売が困難と認められる場合などには、個別に簿価の切下げも実施しております。
正味売却価額は、販売実績等を基礎として見積っているため、将来の市場環境の変化や販売見込みの相違によっては、棚卸資産の評価損に重要な影響を及ぼす可能性があります。
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