課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 経営方針

  当社グループは、「環境変化に強い経営基盤を構築し、多様な廃棄物を広域で再資源化できる組織をつくることで高度循環型社会の実現に貢献する。」を経営方針としております。長年にわたり培ったノウハウを活かして、事業領域の拡大を行い、事業を通じた企業の社会的責任を果たしてまいります。

 

(2) 経営環境

① 当社をめぐる経済環境

  当連結会計年度における国内経済は、新型コロナウイルス感染症の収束が見えないなか弱さが見られますが、基調としては持ち直しの動きが続いています。日銀短観・業況判断DIの2020年9月、12月、2021年3月及び6月全4回の調査において、大企業・製造業が-27(前回比+7ポイント)、-10(前回比+17ポイント)、+5(前回比+15ポイント)及び+14(前回比+9ポイント)となり、右肩上がりの回復となっています。非製造業も+1と5四半期ぶりにプラスとなりました。宿泊や飲食といった個人消費関連は大幅なマイナスとなり、その他の需要項目と二極化が鮮明となっています。

  2021年5月鉱工業生産指数(経済産業省2021年6月30日発表)は、世界的な半導体不足による自動車減産が影響し、前月比6.5%減と3ヶ月ぶりに低下しました。業種別では、輸送機械は弱含んでいますが、生産用機械・電子部品・デバイスは増加しています。

  民間設備投資の先行指標である、機械受注統計調査報告「船舶・電力を除く民需」(内閣府2021年7月12日発表)の動向については、外需のほか、半導体関連の設備投資の増加により、2021年3月は前月比3.7%増、4月は同0.6%増、5月は同7.8%増と3ヶ月連続の増加となりました。

 

② 業界の状況

  国内の業界の状況は国内鉄鋼市場は徐々に改善が見られ、粗鋼生産も2020年7月~9月は1,898万トン(前年同期比22.7%減)、10月~12月は2,199万トン(前年同期比7.0%減)、2021年1月~3月は2,371万トン(前年同期比1.7%減)、4月~6月は2,435万トン(前年同期比34.4%増)と回復傾向が鮮明となっています。鉄スクラップ相場は、当連結会計年度期首の24,000円/トン(東京製鐵(株)宇都宮工場特級価格)から、コロナ禍による経済先行き不透明感により21,500円/トンまで一時的に下落しましたが、2020年7月中旬以降は輸出価格の上昇を受け徐々に回復し、12月は43,000円/トンまで急騰しました。2021年1月に入り、電力会社の節電要請に応じた電炉メーカーの生産調整等で関東を中心に29,000円/トンまで一時的に下げましたが、当連結会計年度末には49,000円/トンまで上昇しました。旺盛な海外需要及びカーボンニュートラルを意識した国内高炉メーカーのスクラップ需要等の影響で特に上級スクラップ(HS、新断等)は、今後も高値水準での推移が予想されます。

  海外の業界の状況は、2021年5月の世界粗鋼生産は前年同月比16.5%増の1億7,440万トンと10ヶ月連続の増加となりました。このうち、中国は前年同月比6.6%増の9,945万トンと月間過去最高を更新しており、高水準の生産が続いています。一方、(一社)日本鉄鋼連盟(2021年4月発表の2020年度鉄鋼輸出実績概況)によると、2020年度(2020年4月~2021年3月)の鉄鋼輸出実績(全鉄鋼ベース)は3,116万トンで、前年比12.2%減と2年ぶりの減少、普通鉄鋼材では2,026万トンで、前年比12.8%減と2年ぶりの減少となりました。世界鉄鋼協会 World Steel Association (2021年4月15日発表の鉄鋼需要短期見通し)によると、2021年1月~12月の世界鉄鋼需要は2021年の世界の鋼材需要が前年比5.8%増の18億7,400万トンになるとの見通しを発表しました。2020年10月に公表した前回予想の4.1%増から上方修正となりました。新型コロナウイルス感染症のワクチン接種率の増加や各国の景気対策で経済が回復し、中国やインドなど主要消費国で需要が軒並み回復すると予想されます。

 

③ 目標とする経営指標

  当社は、株主の皆様への安定的な利益還元を経営の最重要政策のひとつとして位置付けるとともに、事業投資や将来に向けた投資に備える内部留保も重要と考えます。これらのバランスを取りながら収益力の強化に努め、併せて持続的成長に向け財務基盤の安定性を維持しつつ資本効率を高めてまいります。営業力強化、コスト見直し等による強固な事業体質へ取り組みを継続し、中長期的に安定した配当を可能とする利益の確保に取り組んでおります。このため、目標とする経営指標につきましても、「EBITDA」、「経常利益」、「経常利益率」、「親会社株主に帰属する当期純利益」を重視しております。これに加え、資本効率指標として「自己資本利益率(ROE)」を目標とする主要な経営指標としています。

 

(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

  2017年7月に中国は廃品輸入規制政策を取り、わが国をはじめ各国からの廃プラスチック、古紙、雑品スクラップ(金属くず等)の輸入を禁止とした影響は今後も続くことが見込まれます。新型コロナウイルス感染症の影響で日本経済が停滞し、使用済自動車・建設解体スクラップ・工場発生スクラップ等が減少していましたが、当連結会計年度の下期には回復しました。しかしながら、新規感染者数が一時2.5万人を超える感染再拡大による経済の先行き不透明感が増しています。

  一方で、当連結会計年度は資源相場が旺盛な海外需要等により好調に推移しましたが、今後もCO2削減に向けて、鉄・非鉄スクラップの需要は底堅く推移するものと見込んでおります。

  このような状況下、当社グループの事業である「資源リサイクル事業」は産業廃棄物を再資源化する重要な社会インフラと認識しております。あらゆるステークホルダー及び社会の期待に応えるため、次の3点に注力してまいります。

1. リサイクル技術の向上によるあらゆる廃棄物の再資源化

2. グループ体制の再編による収益の改善

3. 静脈産業・動脈産業・自治体との連携

 

  また、2021年3月18日に公表いたしました、当社と(株)タケエイとの共同持株会社設立(株式移転)による経営統合については、2021年6月23日開催の(株)タケエイ第45期定時株主総会及び2021年6月30日開催の当社臨時株主総会において承認されております。両社は、2021年10月1日の共同持株会社「TREホールディングス(株)」設立に向け、着実に取り組んでおります。その一環として、現在、新グループの新中期経営計画のとりまとめを行っております。 なお、新グループの新中期経営計画における統合効果は、当社連結業績予想には含まれておりません。

  当社と(株)タケエイとの経営統合により、社会、行政、一般のお客様に安心、安全な排出物・廃棄物の静脈バリューチェーン「リサイクル、中間処理、廃棄物・バイオマス発電、最終処分等の各事業の設計、構築、運営までの一貫サービス」を提供します。結果として、政府が掲げる「2050年温室効果ガス実質ゼロ」に呼応した「高度循環型社会、脱炭素排出社会」に貢献し、廃棄物リサイクル・処理業界をリードする世界に誇れる環境ビジネスモデル構築を目指してまいります。

 

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