当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりです。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しています。詳細は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)」に記載のとおりです。
当連結会計年度における当社グループの事業の状況につきましては、世界的に自動車の生産は不安定な状況が継続しましたが、当社グループへの影響は軽微であり、自動車関連製品及びサービスの販売は堅調に推移しました。情報通信関連製品の販売は第5世代移動通信システム(5G)向けが増加し、また、新エネルギー関連製品の販売は第3四半期連結会計期間以降、調整局面が続いています。環境・リサイクル関連サービスは廃棄物処理の受注が堅調でした。相場環境につきましては、前期と比較して平均為替レートは円安ドル高となり、銀及びPGM(白金族金属)等の貴金属、亜鉛及び銅等のベースメタルの平均価格はともに上昇しました。
このような状況の中、当社グループは「中期計画2020」の基本方針である「成長市場における事業拡大」、「既存ビジネスでの競争力強化」に基づき、企業価値向上への施策を着実に進めました。
これらの結果、当期の連結売上高は前期比41.5%増の831,794百万円、連結営業利益は同70.4%増の63,824百万円、連結経常利益は同104.5%増の76,073百万円となりました。また、法人税等が同48.6%増の20,259百万円となったこと等により、親会社株主に帰属する当期純利益は同133.7%増の51,012百万円となりました。
なお、当社グループの「中期計画2020」につきましては、2020年度が最終年度でありましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う状況の変化を鑑み、2020年8月7日に「中期計画2020」の最終年度を2021年度に変更しました。
詳細は、同日公表の「中期計画2020の期間延長に関するお知らせ」をご参照ください。
主要セグメントごとの経営成績は次のとおりです。
環境・リサイクル部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
廃棄物処理事業では焼却の処理量及び処理単価は堅調に推移しました。また、溶融・再資源化の処理量は増加しました。加えて、前連結会計年度の下期より操業を開始した不燃性廃棄物の中間処理・再資源化事業が業績に寄与しました。土壌浄化事業では土壌浄化の受注が堅調に推移しました。リサイクル事業では当社製錬所向けのリサイクル原料の集荷量は前期並みとなり、家電リサイクルの処理は高水準の稼働が継続しました。東南アジア事業ではインドネシア、タイ及びシンガポールにおいて廃棄物処理の受注が増加しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比14.8%増の135,045百万円、営業利益は同49.8%増の12,667百万円、経常利益は同57.6%増の13,663百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2021年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
製錬部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
貴金属銅事業では金、銀及び銅の生産量は減少し、すずの生産量は増加しました。PGM事業では使用済み自動車排ガス浄化触媒からの金属回収量が増加しました。亜鉛事業では亜鉛の生産量が増加しましたが、原料代や電力代等のコストは増加しました。これらに加え、製錬部門は、PGM等の貴金属、亜鉛及び銅等のベースメタルの平均価格が前期比で上昇したことが業績に寄与しました。また、営業外損益では海外亜鉛鉱山の運営会社であるMINERA PLATA REAL社並びにMINERA TIZAPA社等において持分法投資利益を計上しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比61.5%増の455,619百万円、営業利益は同77.8%増の36,166百万円、経常利益は同64.9%増の42,774百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2021年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
電子材料部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
半導体事業では第2四半期連結会計期間より新たに量産販売を開始した近赤外LED及び受光素子(PD)が業績に寄与しました。電子材料事業では太陽光パネル向け銀粉の販売は第3四半期連結会計期間以降、調整局面が続いていますが、積層セラミックコンデンサ(MLCC)向け導電性アトマイズ粉の販売は増加しました。これらに加え、半導体事業と電子材料事業では、平均為替レートが前期比で円安ドル高となったことが業績に寄与しました。機能材料事業では磁性粉の販売は減少したものの、フェライト粉やキャリア粉の販売は増加しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比15.9%増の175,331百万円、営業利益は同112.4%増の5,252百万円、経常利益は同77.7%増の6,574百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2021年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
金属加工部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
伸銅品事業では新型コロナウイルス感染症の拡大により落ち込んだ自動車向けの需要が前第2四半期連結会計期間以降に回復し、以降も堅調に推移しました。また、第5世代移動通信システム(5G)向けの販売は増加しました。めっき事業では伸銅品事業と同様、自動車向けの需要は堅調に推移しました。回路基板事業では産業機械向けの販売は増加したものの、鉄道向けの販売は減少しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比43.9%増の111,947百万円、営業利益は同45.0%増の6,365百万円、経常利益は同47.0%増の6,817百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2021年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
熱処理部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
熱処理事業では世界的な半導体不足の影響等により自動車の生産は不安定な状況が継続しましたが、当事業への影響は軽微であり、受託加工数量は前期比で大きく増加しました。工業炉事業では新型コロナウイルス感染症拡大の影響により減少していた国内外の設備販売及びメンテナンスの需要が大きく回復しました。
これらの結果、当部門の売上高は前期比25.1%増の28,994百万円、営業利益は同257.5%増の2,637百万円、経常利益は同266.9%増の3,010百万円となりました。
主要製品・主要サービスの状況
(2021年3月期第1四半期連結期間を100として指数化)
その他部門
売上高、営業利益、経常利益の状況
(単位:百万円)
その他部門では、売上高は前期比6.4%増の13,888百万円、営業利益は同30.0%減の511百万円、経常利益は同27.7%減の560百万円となりました。
a キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末より18,419百万円増加し、35,740百万円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動による資金は59,911百万円の収入(前期比62,999百万円収入増)となりました。主に、税金等調整前当期純利益77,090百万円、減価償却費22,582百万円、棚卸資産の増加22,977百万円、及び売上債権の増加15,412百万円等によるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動による資金は11,339百万円の支出(前期比11,603百万円支出減)となりました。主に、環境・リサイクル部門等を中心とした設備投資31,779百万円や貸付金の回収による収入18,142百万円等によるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動による資金は31,190百万円の支出(前期比42,775百万円支出増)となりました。主に、有利子負債の減少22,677百万円や、配当金の支払い8,149百万円等によるものです。
b 資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社の資金需要は運転資金及び成長分野を中心とした設備投資資金、研究開発投資、株主への利益配分等によるものです。当社は、これらの資金需要に対しては内部資金からの充当を主としており、グループファイナンスを通じて内部資金の効率向上に努めています。また、必要に応じて外部からの資金調達を実施しており、実施にあたっては、金融機関からの借入又は社債等の多様な手段の中から、その時々の市場環境も考慮したうえで当社にとって有利な手段を選択しています。
また、金融情勢を勘案して保有現預金残高を決定するとともに、短期流動性確保の手段として、複数の金融機関とコミットメントライン契約を締結しているほか、短期社債(電子コマーシャル・ペーパー)の発行枠450億円を設けています。長期性資金につきましては、機動的な調達手段として、社債300億円の募集に関する発行登録(発行予定期間:2021年3月30日~2023年3月29日)を行っています。
③ 生産、受注及び販売の実績
当連結会計年度におけるセグメントごとの生産実績は、次のとおりです。
(注) 1 金額は、販売価格によっています。
2 環境・リサイクル部門は、廃棄物処理、金属リサイクル、土壌浄化処理受託及び運輸事業を行っており、生産実績がないため、記載を省略しています。
3 熱処理部門は、金属熱処理加工、表面処理加工及び熱処理加工設備・その付属設備の受託生産事業を行っており、売上高が生産高であるため記載を省略しています。
4 その他の部門は、工事の請負及び不動産の賃貸を行っており、生産実績がないため、記載を省略しています。
当連結会計年度におけるセグメントごとの受注実績は、次のとおりです。
(注) 1 その他主要な製品に関しては、受注生産を行っていません。
2 その他部門(工事の請負)の受注残高の減少は、秋田工営㈱において受注高が減少したこと等に
よるものです。
当連結会計年度におけるセグメントごとの販売実績は、次のとおりです。
(注) 1 金額は販売価格によっています。
2 セグメント間の取引につきましては相殺消去しています。
3 最近2連結会計年度の主な相手先の販売実績及び総販売実績に対する割合は、次のとおりです。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
① 当連結会計年度の財政状態の分析
a 資産の部
当連結会計年度末の総資産は、前連結会計年度末と比較して58,812百万円増加し657,283百万円となりました。流動資産で56,042百万円の増加、固定資産で2,770百万円の増加となります。
流動資産の増加は、棚卸資産の増加24,782百万円、現金及び預金の増加18,570百万円、及び受取手形、売掛金及び契約資産の増加14,880百万円等によるものです。
固定資産の増加は、投資有価証券の増加14,821百万円、有形固定資産の増加7,776百万円、繰延税金資産の増加1,942百万円、無形固定資産のその他の増加1,906百万円、及び長期貸付金の減少24,301百万円等によるものです。
b 負債の部
負債につきましては、前連結会計年度末と比較して6,953百万円増加しました。これは、流動負債のその他の増加10,119百万円、社債の増加10,000百万円、支払手形及び買掛金の増加7,927百万円、及び短期借入金の減少25,197百万円等によるものです。
c 純資産の部
純資産につきましては、親会社株主に帰属する当期純利益が51,012百万円となり、配当金の支払い等を行った結果、株主資本が44,467百万円増加しました。また、為替換算調整勘定の増加等により、その他の包括利益累計額が3,283百万円増加し、純資産合計では前連結会計年度末に比較し51,859百万円増加しました。この結果、自己資本比率は47.7%となりました。
② 当連結会計年度の経営成績の分析
a 売上高
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度と比較し、銀及びPGM(白金族)等の貴金属価格が上昇したことや、銀地金代を含む取引が増加したこと等から、製錬部門及び電子材料部門等で増収となりました。この結果、前連結会計年度の588,003百万円に対し41.5%増加し831,794百万円となりました。
b 売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、原材料費が増加したこと等により、前連結会計年度の512,155百万円に対し、41.6%増加し725,368百万円となりました。
これらの結果、売上高に対する売上原価率は前連結会計年度の87.1%に対し、87.2%となりました。
当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、運賃諸掛の増加等により、前連結会計年度の38,393百万円に対して11.0%増加し、42,601百万円となりました。
c 営業利益
当連結会計年度の営業利益は前述の要因により、前連結会計年度の37,454百万円に対し70.4%増加し、63,824百万円となりました。
d 営業外収益(費用)
当連結会計年度は、持分法による投資利益の計上等により、前連結会計年度の254百万円の費用(純額)に対し、12,248百万円の収益(純額)となりました。
e 特別利益(損失)
当連結会計年度は、特別利益で投資有価証券売却益等3,071百万円を計上しましたが、特別損失では、固定資産除却損等2,054百万円を計上しました。
これにより、当連結会計年度の特別利益から特別損失を差引いた純額は、前連結会計年度の1,660百万円の利益に対し、1,017百万円の利益となりました。
f 税金等調整前当期純利益
当連結会計年度の税金等調整前当期純利益は、前連結会計年度の38,860百万円に対し98.4%増加し、77,090百万円となりました。
g 法人税等
当連結会計年度の法人税等は20,259百万円となりました。税効果を適用した当連結会計年度の税金等調整前当期純利益に対する法人税等の比率は、法定実効税率の31.3%より5.0ポイント低い26.3%となりました。
h 非支配株主に帰属する当期純利益
非支配株主に帰属する当期純利益は、主に㈱日本ピージーエム、DOWA IPクリエイション㈱等の非支配株主に帰属する利益からなり、当連結会計年度は、前連結会計年度の非支配株主に帰属する当期純利益3,399百万円に対し2,418百万円増加し、非支配株主に帰属する当期純利益5,818百万円となりました。
i 親会社株主に帰属する当期純利益
親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の21,824百万円に対し133.7%増加し、51,012百万円となりました。
③ 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている企業会計の基準に基づき作成されており、この連結財務諸表の作成にあたっては、決算日における財政状態、経営成績に影響を与えるような見積り・予測を必要としています。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り・予測を実施しています。
連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しています。
a 貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れによる損失に備えるため、一般債権につきましては過去の一定期間における貸倒実績から算出した貸倒実績率により計上し、貸倒懸念債権につきましては個別に債権の回収可能性を検討し回収不能見込額を計上しています。
b 繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産につきまして、将来の課税所得及び継続的な税務計画をもって検討し、全部又は一部を将来実現できないと判断した場合、当該判断を行った期間に繰延税金資産を取り崩しています。
c 退職給付に係る負債
従業員の退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されています。これらの前提条件には、割引率、将来の報酬水準及び退職率等が含まれます。当社グループは、割引率を主に日本国債の金利により決定しているほか、報酬水準の増加率及び従業員の平均勤務期間につきましては当社グループの過去の実績値に基づいて決定しています。
d 環境対策引当金
「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法」(平成13年6月22日 法律第65号)及び「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法施行令の一部を改正する政令」(平成24年 政令第298号)の規定により、ポリ塩化ビフェニル廃棄物を保有している事業者は適切な保管と届出が要求され、2027年3月31日までに処分することが義務付けられました。
当社グループは、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の処理に係るコストが、当連結会計年度以前の事象により起因して将来発生するものであること、及び金額を合理的に見積ることが可能であること等により、当連結会計年度末において、処分費用を見積計上しています。
e 固定資産の減損
当社グループは、主として事業グループ単位を資産グループとし、遊休資産は個々の資産グループとしています。
減損の兆候がある資産グループにつきましては、当該資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額がこれらの帳簿価額を下回る場合には、正味売却価額及び使用価値により減損損失を測定し、計上しています。
f その他有価証券等の減損
当社グループは、長期的な取引関係の維持のために、特定の顧客及び金融機関に対する持分を所有しています。これらの株式には価格変動性が高い市場価格のある株式と、株価の決定が困難である市場価格のない株式が含まれます。
当社グループにおいて、市場価格のある株式は期末月平均の株価が取得原価の50%を下回った場合、また市場価格のない株式は当該会社の実質価額が取得原価の50%を下回り、かつ回復する見込があると認められない場合に、減損処理を行うこととしています。
④ 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループは、コアビジネスである環境・リサイクル部門、製錬部門、電子材料部門、金属加工部門、熱処理部門を中心に事業を行っており、このうち、当連結会計年度の売上高の54.8%を占める製錬部門は、非鉄金属相場及び為替相場の変動の影響を受けやすいため、状況に応じて非鉄金属先渡取引及び為替予約取引等によりリスク軽減に努めています。
当社グループでは、今後も収益性の向上及び財務体質の改善に努めていきますが、非鉄金属相場及び為替相場の急激な変動、景気動向等の外的要因により業績に影響を受ける可能性があります。
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