課題

1【経営方針、経営環境および対処すべき課題等】

 文中における将来に関する事項は、当事業年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

 (1)会社の経営の基本方針

  当社グループは、経営理念である「信頼の輪をひろげます」のもと、信頼される製品でインフラを支え、社会の安心安全に貢献する会社であり続けることを使命としております。そして、長年積み上げてきた技術とサービスでお客様のニーズを掘り起こし、付加価値を創造する企業体として成長し続けることをビジョンとして掲げております。

  当社グループは、昭和電線グループの経営構想として「SWCC VISION 2030」を策定しており、変わりゆく時代においてもその使命を忘れることなく、「迅速」「情熱」「考動」でお客様と社会に一層貢献していくことを方針としております。

 

 (2)中長期的な会社の経営戦略

 昭和電線グループの中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」

 (ⅰ)「Change & Growth SWCC 2026」策定の背景

  当社グループは、2019年11月5日に公表した中期経営計画「Change SWCC 2022」ローリングプラン(2019)を推進し、2022年度の計画目標である、営業利益100億円、営業利益率5%以上、1株当たり配当金50円を2021年度に前倒しで達成しました。

  この結果を受け、当社グループは創立90周年を迎える2026年度(2027年3月期)を最終年度とする中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」を策定しました。

  中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」の基本方針、戦略および主要KPIは以下のとおりです。

 (ⅱ)「Change & Growth SWCC 2026」基本方針

  イ)基盤事業の収益力強化

  ロ)新規事業の創出

  ハ)海外事業の新展開

 (ⅲ)「Change & Growth SWCC 2026」戦略

  イ)Change 構造改革のさらなる積み上げ

  ・ROIC経営の浸透による収益力アップ

  ・DXによるバリューチェーン改革とビジネスモデル変換

  ・コーポレート・ガバナンス体制の強化

  ロ)Growth 成長フェーズへの移行

  ・社会課題解決型ビジネスの推進

  ・成長事業へのポートフォリオシフト

  ・拡大投資による成長フェーズへの移行

 (ⅳ)「Change & Growth SWCC 2026」主要KPI

  当社グループでは、営業利益・ROIC・配当金額を主要KPIと定め、中期経営計画を推進してまいります。

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   (注) 1.2022年度計画は、2022年5月12日に公表した通期連結業績予想を記載しております。

      2.2022年5月12日にROIC目標を見直しております。

 (3)経営環境および優先的に対処すべき事業上の課題

  今後の見通しにつきましては、脱炭素社会に向けて再生可能エネルギーをはじめとする国内電力インフラ需要や、xEV車をはじめとする環境対応製品需要の拡大等が見込まれますが、中国におけるロックダウンに起因する世界的なサプライチェーンの混乱、原材料価格の高騰や円安の進行に加えてロシア・ウクライナ情勢による地政学上のリスクの高まり等、引き続き予断を許さない状況が見込まれます。

  その中で、当社グループは中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」の初年度を迎え、さらなる構造改革の実行と成長フェーズへの移行に向けた取り組みを進めてまいります。

  前中期経営計画の中で進めてきたROIC経営については、ROICによる管理をさらに各部門の業務レベルにまで浸透させるとともに、事業ポートフォリオの最適化のための見直しや事業性評価、投資判断への活用を徹底してまいります。さらに、2023年4月に控えた持株会社から事業会社への移行による新たな経営体制の構築に向けて、その準備を進めてまいります。
 

①セグメント別の状況および課題

  各セグメントの状況および課題については以下のとおりであります。

(エネルギー・インフラ事業)

  エネルギー・インフラ事業は、国内の電力インフラ、建設関連向けの電線・ケーブル、免制震部材が主体の事業となっております。

  電力インフラでは、国土強靭化対策による底堅い需要に加えて、再生可能エネルギーへのシフト、送配電網増強に伴うさらなる需要増加も見込まれることに対して、主力製品である接続部品「SICONEX®(サイコネックス)」の増産強化を進めてまいります。また、施工作業員不足の課題に対しては、接続工事技術の効率化・省力化にサステナブルな人材育成プログラムを付加した接続工事システムの展開を新たなブランド「SICOPLUS®(サイコプラス)」の下で進めてまいります。なお、人材育成プログラムにはAVR®をはじめとするDXの導入により、教育期間の短縮を図ってまいります。

  建設関連向けの電線・ケーブルでは、石化製品等の原材料価格の高騰に対して、引き続き販売価格への転嫁やDX導入を含む経営効率の改善を進めてまいります。また、グループ内の製造機能と販売機能を統合し一気通貫させることで、さらなる効率化を図ってまいります。

 

 

(通信・産業用デバイス事業)

  通信・産業用デバイス事業は、国内やアジア圏向けの通信ケーブル、家電や産業機器向けのワイヤハーネス、複写機向け精密デバイスが主体の事業となっております。

  通信ケーブルでは、通信トラフィックの増大に伴うインフラやオフィス向けの需要の取り込みに注力するとともに、2021年度に実施した国内製造拠点の再編による収益改善効果を実現してまいります。

  ワイヤハーネスは、2021年度に稼働開始した嘉興昭和機電有限公司の新工場を中心に中国・東南アジアをはじめとする旺盛な家電向け需要の取り込みに注力してまいります。

  精密デバイスは、サプライチェーンの変化に対応するため、海外向けの生産ラインをベトナム子会社のSWCC SHOWA(VIETNAM) CO., LTD.に移管しており、地産地消をさらに加速させてまいります。

 

(電装・コンポーネンツ事業)

  電装・コンポーネンツ事業は、電線導体用の線材や汎用モータ用の巻線等の一般汎用製品と、無酸素銅MiDIP®およびヒータ用銅合金線等の高品位線材や、環境対応車向け高機能巻線といった高機能製品が主体の事業となっております。

  高機能製品は、自動車減産の影響が前年度第2四半期後半より生じておりますが、増産回復やさらにその後のxEV車需要の拡大を見込み、無酸素銅MiDIP®、ヒータ用銅合金線および車載向け平角巻線の増産計画について進めてまいります。

 

(新規事業)

  新規事業では、モビリティ、インダストリ、ITを軸に新たな事業創出に向けて取り組みを推進しております。IT事業の強化としては、㈱アクシオにおいてクラウドでのID管理マネージドサービスを中心とするゼロトラスト事業の拡大を推進しております。また、当社グループでは、これまで培ってきた技能やデータと DX に関する技術やツールを掛け合わせ、新しいビジネスモデルを創出する「SWCC Smart Stream(スマートストリーム)事業」を推進してまいります。

 

②ESG経営の強化

  当社グループは、「信頼の輪をひろげます」の経営理念のもと、創業以来、社会インフラを支える企業として様々な社会課題解決型ビジネスに取り組み、持続可能な社会の発展に貢献してまいりました。

  特に、ESGの取り組みについては、経営上の重要課題であるとの認識から力を入れてまいりましたが、当事業年度からは新たにサステナビリティ推進室を設置し、サステナブル経営に向けた取り組みをさらに加速させるための体制を構築しました。なお、当社のESGに関する主な取り組みについては以下のとおりです。

 

(E/環境対策)

  当社グループでは、環境中長期計画「Green Plan 2050」において脱炭素社会への貢献目標を明確にするほか、このマイルストーンとして、2030年度には2013年度対比でCO2排出量35%削減を目指すという目標を掲げております。また「第7次環境自主行動計画」では、CO2排出量削減に加え、産業廃棄物の埋め立て処分量の削減、水資源の有効活用などの目標を定めました。さらに、2022年5月には気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に対し賛同を表明しております。

  当事業年度においては、例年に続き、環境貢献製品の開発と製品化および廃プラスチックのリサイクルを促進したほか、調達においてもサプライヤーの環境対応を勘案してグリーン調達を推進しました。また、CO2排出量削減については、製造段階におけるさらなる削減を目的として全社横断的なプロジェクトチーム「Green Energy Project」を立ち上げるとともに、7月には三重事業所でカーボンニュートラルな都市ガスを導入、9月には愛知工場にPPAモデルによる太陽光発電の導入を決定するなど、環境配慮型拠点の拡大に努めました。

 

(S/社会との関わり)

  当社グループでは、持続的企業価値の向上には人的資本マネジメントが欠かせないとの観点から、次世代経営者を対象とするサクセッションプランおよび幅広い階層を対象とする人材育成プログラムを実施しております。また、年功序列を廃し能力と役割によって組織転換をすすめる新人事制度の導入や健康経営の推進など様々な施策に取り組んでおります。

  当事業年度においては、能力主義の人事制度を総合職全体に拡大したほか、シニア人材の活躍の場を拡げる人事制度を導入しました。また、ダイバーシティマネジメントの一環として、社長直轄の女性活躍推進プロジェクト「SWCCarat(カラット)」を立ち上げ、2026年度までの目標として女性管理職割合8%、女性課長職以上の割合10%という目標値を設定しました。このほか、デジタルイノベーション推進室の設置や既存事業にDXを掛け合わせ収益力を向上させるSWCC Smart Stream事業の推進などDXに関する取り組みについても力を入れております。

 

(G/ガバナンス改革)

  コーポレート・ガバナンスについては、2019年度より監査等委員会設置会社へ移行しました。2020年度からは取締役7名のうち3名を監査等委員である独立社外取締役とすることで経営に対する監督機能の強化を図っております。当事業年度においては、業績連動報酬割合の増加や譲渡制限付株式の支給対象者の増加といった役員報酬の見直しを進めたほか、品質コンプライアンス強化の取り組みとして、10月29日付公表の外部指摘により発覚した品質検査不整合に関する再発防止策として、「品質業務デジタル化プロジェクト(検査業務へのデジタルツール導入)」や「知識深耕プロジェクト(コンプライアンス教育制度の整備)」を立ち上げました。

  その他、2022年3月には、2023年4月付で実施する当社グループ経営体制の再編ならびに商号変更に伴う今後のガバナンス体制強化の取り組みについて公表しております。

 

(外部評価)

  当社グループのESGの取り組みについては、ESG投資指数「FTSE Blossom Japan Sector Relative Index」の構成銘柄に選定されたほか、Eの取り組みとして、㈱日本政策投資銀行のDBJ環境格付において「環境への配慮に対する取り組みが特に先進的」として最高ランクの格付けを3年連続で取得しました。また、Sの取り組みについては、子育てサポート企業を対象とする「くるみん」の認定や「健康経営優良法人2022(大規模法人部門)」の認定のほか、「SMBCなでしこ融資」において「女性活躍の先進企業」との評価を受けております。さらに、当社の開示姿勢に対する評価として、(一社)日本IR協議会より「IR優良企業奨励賞」をいただいております。

 

③気候変動への取り組み

  当社は、持続可能な社会づくりを目指して、2050年度環境負荷ゼロをキーワードに、長期ビジョンおよび2030年度目標を掲げておりますが、CO₂排出量については、1993年度から環境自主行動計画を策定し、これまでに50%以上を削減してまいりました。

  気候変動は、事業活動にとってリスクとなる一方、収益獲得の機会にもつながります。当社は、これら気候変動に関するリスク・機会の特定と対処が経営上の重要課題であるという認識のもと、TCFDの提言に沿って、気候変動関連リスク・機会に関する「ガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標」の4項目について情報開示を進めることにしました。

 

(ガバナンス)

  気候変動問題に関しては、環境方針など重要事項は取締役会で審議・決定し、経営上のリスクや機会となる課題については代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ委員会において対応を検討する体制を整えています。審議内容はそれぞれ年2回以上取締役会に報告し、またリスクに関しては、リスクマネジメント委員会と連携し、情報を共有します。

 

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(戦略:プロセス)

  グループの環境統括部門、対象事業のセグメント長および外部専門家からなるワーキンググループを設置し、以下の条件でシナリオ分析を行いました。

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(戦略:当社が想定する社会像)

  脱炭素社会に移行した場合の社会像(1.5℃シナリオ)としては、脱炭素の動きが急激に進み、再エネ導入やEVシフトがさらに加速することで当社の事業機会が増す一方、脱炭素化や石油需要の減少を起因とした原材料価格の高騰を想定しています。また、脱炭素化が進まない場合の社会像(4℃シナリオ)では、省エネや再エネなど、脱炭素化に向けた動きは相対的に鈍く、当社においては、特に各拠点における物理的リスクが高まると想定しています。

 

(戦略:リスク)

  主要3セグメントを対象に行った分析結果のうち、共通事項として特に財務影響度が大きいものについては、以下の通りです。

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  ※1(時間軸)短期 2025年度、中期 2030年度、長期 2050

  ※2(財務影響度)当社のリスク評価基準にならい、1~10の評価点で定性的に評価。1~3を小、4~6を中、7~10を大と想定。

 

(戦略:機会)

  主要3セグメントを対象に行った分析結果を、「脱炭素社会に移行する場合の影響度」と「当社事業ポートフォリオの大きさ」で分類し、上位2つの事業ポートフォリオにフォーカスしたものを以下のとおりまとめております。

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  ※1(固有の機会)[E]エネルギー・インフラ事業、[D]電装・コンポーネンツ事業、[C]通信・産業用デバイス事業

  ※2(時間軸)短期 2025年度、中期 2030年度、長期 2050年度

  ※3(財務影響度)事業ポートフォリオの売上規模をもとに想定。

 

   <上記分類の抽出要件>

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(リスク管理)

  当社は、気候変動関連リスクを含むグループ全体のリスクをリスクマネジメント室が統括しています。気候変動関連リスクについては、リスクマネジメント委員会で評価するとともに、サステナビリティ委員会と連携して深堀を行い、影響を評価します。また、気候変動に関連する影響はリスクと同時に機会も評価されるため、評価結果はサステナビリティ委員会に集約し、審議内容を定期的(年2回以上)に取締役会へ報告します。

(指標と目標)

  “2050年度環境負荷ゼロ達成”をキーワードに環境中長期計画「Green Plan 2050」を策定し、2050年の長期ビジョンを実現するために短・中期目標を掲げています。具体的には2013年度を基準年とするCO₂排出削減量(Scope1+Scope2)を、2025年度までに25%、2030年度までに35%としています。

  また、これらの目標を達成すべく、2025年度までに再生可能エネルギーの導入率30%以上を目指す取り組みを進めております。

 

④当社グループ製品の品質試験の不整合に関する調査結果および再発防止策

  2021年2月、外部から昭和電線ケーブルシステム㈱が製造および販売する製品の品質管理に関する指摘を受け、同年7月21日付で当社グループ製品の品質試験に関する不整合の判明と特別調査委員会の設置について、また同年10月29日付で当社グループ製品の品質試験の不整合に関する調査結果の報告について公表しました。

  今回の委員会による調査結果を受けて、お客様に対しては確認された不整合の内容をご報告するとともに、いずれの製品についても品質の健全性については問題がないことを、ご説明させていただきました。

  また、委員会による調査は終了しましたが、当社グループとしては、このような事態を二度と起こさないために、改ざん等を防止する試験結果の自動測定システムの早期導入ならびにコンプライアンス意識を確立する体系的な教育制度の整備および実施等の再発防止策の実施を現在進めております。

  なお、今回の調査対象製品以外の製品についても、当社グループは、品質に対する信頼性をより高めるために引き続き調査を行っております。

 

 (4)2022年度経営方針

  2022年度も引き続き新型コロナウイルス感染症や原材料価格の高騰による事業への影響を免れない状況が見込まれますが、中期経営計画達成に向けた変革を着実に実行するとともに、市場や環境の変化に応じた柔軟でスピード感のある判断と施策を実施することで、このような経営環境下にあっても、より一層、経営体質を強化し資本効率を高めてまいります。その観点から、2022年度のグループ経営方針は次の5点としております。

 

 ・「Change & Growth SWCC 2026」を達成するための仕組み作り:

  ありたい姿への挑戦、施策のスピード感ある実施

 ・ROIC経営の考え方の浸透、バランスシートの改善:

  新たなKPIとその達成を目指した事業改革の推進

 ・品質遵守、安全優先は会社の基本:

  「信頼」を取り戻すための覚悟と仕組み作り

 ・働きやすい職場作りと健康経営の推進、エンゲージメントの向上

 ・2030年環境目標達成のための活動の具体化と社員との共有

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