当社グループは、長期ビジョン「SWCC VISION 2030」および中期経営計画「Change & Growth SWCC 2026」を新たに策定し、Change「構造改革のさらなる積み上げ」、Growth「成長フェーズへの移行」を掲げ、ESG経営のもと持続可能な社会の実現に向けた社会課題の解決に貢献する研究開発を実行しております。
基盤事業であるエネルギー・インフラ事業、通信・産業用デバイス事業、電装・コンポーネンツ事業では、高い公共性を有するインフラや自動車や医療分野に大きく関わる「信頼」に根差した新製品やサービスの開発や、DXによるソリューションビジネスへの展開を行っております。また新規事業ではIT分野への展開をはじめ、モビリティ・インダストリーといった電線事業以外の領域への新製品・商品開発やラインナップ増強を推進しております。
当連結会計年度における、当社グループの研究開発費は総額
(エネルギー・インフラ事業)
当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱および冨士電線㈱を中心に進められております。
当社グループでは、小型・軽量・環境に配慮した戦略製品である接続部品「SICONEX®(サイコネックス)」を用いた電力高圧ケーブル接続工事に加え、さらなる効率化・省力化と人財育成システム等を兼ね備えた接続工事システムの展開を新たなブランド「SICOPLUS®(サイコプラス)」の下で始動しました。これにより、今後も拡大していく電力市場における接続工事へのソリューションビジネス展開をさらに加速してまいります。また、人財教育プログラムには仮想現実(VR)映像に実写映像を重ねるAVR®技術を導入し、これまで現場中心のOJT教育であったところを、工事現場などを再現した仮想空間内で実在の工具や安全器具を使い、より高い臨場感を持って反復的に訓練を行うことで、早期の技能習得を可能としていきます。
耐火電線分野では、近年自動火災報知設備等において、60V以下で耐火配線を行うケースが増えています。このことから、消防庁告示(耐火電線の基準)の60V以下の耐火ケーブルの性能基準が追加され、細径・軽量化した耐火電線を使用することができるようになりました。当社グループでは小勢力回路用耐火ケーブル(品名:EM-JSH®)を開発し、2022年1月に(一社)電線総合技術センターより、業界最速で消防庁告示適合品としての認証を受け、販売を開始しました。
汎用電線分野では、やわらかいタイプのCVケーブルである低反発CVケーブルを開発しました。低反発CVケーブルは、延線時の可とう性に優れ延線工事等の施工性を改善することが可能となります。2022年度4月より販売を開始しており、CVケーブルの売上増を目指します。
免震分野では、文化財保護技術として伝統木造建築物の制振構造化等を大学・設計事務所および建設会社とともに調査し、(一社)日本建築学会や海外の学会に発表しております。他に錫プラグ入り積層ゴムに関する学術研究の成果の一部を発表しております。またお客様との対話から、これまでに得られた知見を活かして、例えば積層ゴムを浮き床の拘束材に転用する等、当社製品の別用途展開を継続して提示できるようにしております。
当事業に係る研究開発費は
(通信・産業用デバイス事業)
当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱、冨士電線㈱を中心に進められております。
光通信分野では、5Gや高度化サービスの普及展開に必要な無線基地局用光ケーブルを上市すると共にラインナップ拡充に向けた開発を継続して進めております。総務省の高度無線化事業にも使われている光ローラブルケーブルは、国内では今後民需用途でも適用が進むことが想定され、さらに細径・高密度化の利点を活かした海外市場への拡販が見込まれるため、ケーブルのラインナップ拡充を進めております。
メタルLANケーブル分野では、主に商用ビルやデータセンターで用いられていた伝送方式「イーサネット」の高速化・大容量化に対応した次世代超高速伝送規格(25/40ギガビット伝送)Category 8(Cat.8)ケーブルの開発に業界最速で成功しております。また、工場等の過酷な環境で使用できる産業用LANケーブルの、高遮へい・耐屈曲に対応したCat.6A超細径仕様のラインナップ増強をしました。さらに次世代車載ネットワークとして、車載カメラやADAS(先進運転支援システム)に用いられる細径・軽量なSPE(Single Pair Ethernet)ケーブルの製品化も継続しております。また、これからの高速化・多目的用途による製品ラインナップ増強に伴い、新たにFLANTEC®(フランテック)ブランドを立上げ、開発活動・拡販活動に注力しております。
精密デバイス関連では、プリンタ・複写機・商用印刷機に使用される定着ローラ、加圧ローラ、ベルト等の開発を継続し、省エネ・環境対応・超高画質化などに対応した製品の市場投入を継続しております。また、従来比5倍の生産効率を高めた高品質・高効率の生産革新ラインをさらに増強しました。
当事業に係る研究開発費は
(電装・コンポーネンツ事業)
当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱、昭和電線ユニマック㈱を中心に進められております。
線材では、高機能無酸素銅「MiDIP® OFC(ミディップ オーエフシー)」の安定稼働・BCM(事業継続マネジメント)対応を引き続き展開し、万一の事故に備えた炉体保守システムをアップグレードさせています。また品質(特に酸素量)の安定化・連続監視は、「流動溶融銅中の酸素濃度を連続的に測定するシステム」の実証実験・検証を重ねており、お客様・パートナーメーカーと共に最終段階の仕上げに取り組んでいるところです。
銅銀合金は高強度・高導電性・高屈曲特性の特長を備えた銅合金であり、自動車の電動化対応としてバッテリーヒータ用途への展開をしております。さらに進歩が著しいカテーテル治療などの医療関連、そして極細線製造技術を応用した半導体市場への適用等、細径化・軽量化・長寿命化へのニーズに応えるため、開発を進めております。
巻線では、高耐熱性および高効率・高信頼性が要求される車載機器関連分野においてポリイミド樹脂被覆の高電圧仕様のエナメル平角線を増産しております。現在、更なる高効率・低損失な車載機器用巻線の開発を進めており、お客様と協業しながら量産化に向け注力しております。また5G機器やPC・サーバに使用される電子部品向けとして、耐熱性および耐加工に優れた絶縁材料を開発し、当社独自の加工技術により製造した巻線を開発・上市し、採用が進んでおります。お客様の使用条件に対応した改良を行い、ICT、IoTの進展に合わせて、適用拡大を進めてまいります。
電子機器分野の巻線応用製品として、弊社独自の耐熱性および耐加工に優れた材料と線材加工技術を生かし、高強度と高導電率を合わせ持った機能材の製品開発を進めております。
当事業に係る研究開発費は
(新規事業・その他)
当事業における研究開発活動は、昭和電線ケーブルシステム㈱、㈱アクシオを中心に進められております。
自動車用電線・応用製品分野では、銅合金線技術を活かし、引張強度と伸びを調質することにより調整した銅錫合金電線を上市に向け開発しております。また、先進運転支援システム等の自動車内データを高速処理するための、車載高速伝送用の細径1対および2対のEthernetケーブルを開発するとともに小型・防水化された加工品の製品開発を進めております。
ヘルスケア分野においては、遠隔医療・医療情報システムや、手術室における高精細医用映像システムに不可欠な高速・大容量ネットワークを支える配線部材、システム構築の提供について検討しております。また、低侵襲性医療における次世代ヘルスケア用途として、ロボット医療・介護、高度医療機器に必要とされる製品、感染症対策を考慮したディスポーザブル製品の技術開発を進めております。
基礎・基盤技術については、デジタル駆動型研究開発を進めております。MI(マテリアル・インフォマティクス)等を用いた研究開発のDXを進め、プラスチック・ゴム・銅合金等の新規材料の研究開発を進めています。ここで探索・開発された材料は、様々な事業分野の製品開発に活用しています。
超電導システム製品では、BASFジャパン㈱戸塚工場に建設した三相同軸超電導ケーブルシステム(全長約200mの実証試験線路)の実証試験を2020年11月から開始し、2021年9月をもって終了しました。30MW以上の電力を使う大規模プラントで従来のケーブルを本超電導ケーブルへ置き換えることにより、従来のケーブルで発生していた送電時の損失を95%以上削減できる目処が立ちました。問合せが何件かあり、実用化に向けた次のプロジェクトを獲得する為の活動を継続しております。
ICT分野では、企業におけるクラウドサービスの利用が年々増加しており、またDXの推進やテレワークの増加、内部不正による情報漏洩に対し、ゼロトラストネットワークへの移行が始まっております。このような環境を実現する為にはIDを中心とした認証基盤の構築が必要で、㈱アクシオでは長年培ってきたノウハウを活かし容易に認証基盤の構築を可能とするパッケージ(アクシオモデル)を発表しました。また、クラウド環境におけるID管理を実現するIDaaSを提供している「Keyspider㈱」に出資するとともに、RADIUS・オープンソースに強みを持つ「かもめエンジニアリング㈱」を子会社化し、ゼロトラストネットワークでの認証基盤事業を展開させていきます。
当事業に係る研究開発費は788百万円であります。
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