課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)経営方針

<経営理念>

○伝統と革新スピリットを融合

「永くに亘る歴史と伝統を基盤にし、革新的スピリットの融合で、機動的かつ柔軟な経営を推進する」

○社会と業界の発展に貢献

「環境対応と経済性を両立した技術と品質向上への飽くなき挑戦で、社会、海運・造船業界の発展に

 貢献する」

○総合力を発揮し、世界へ飛躍

「社員の力を結集し、開発・設計・製造・販売・サービスの一貫体制で、世界に伍していける企業を

 目指す」

○無災害職場の確立

「危険予知の徹底と闊達なコミュニケーションで、災害ゼロを目指す」

 

<経営ビジョン>

「世界的視野に立ち、伝統と革新を融合させ、日の丸舶用エンジンをお客様とともに育て、次代を拓く」

 

(2)経営戦略等

当社グループは、2017年の事業統合後、PMI(Post Merger Integration)を推進し、経営基盤を強化することで、厳しい市況にも耐えうる企業体質へと変容を遂げました。これを原動力に攻めの経営に転じ、将来の飛躍に向けた各種施策を講じたことで、次なる新たな成長ステージを視野に捉えております。こうした当社グループの今後の目指す姿として、中期事業計画を策定しており、以下の3点について、重点的に取り組みを進めることで、ESG経営を深化するとともに、新たな価値を社会に提供する持続可能な企業として業績を発展させてまいります。

 

①環境分野での新製品開発加速

環境規制の強化に適応し、既存製品の競争力を強化するとともに、アンモニア・水素燃料エンジンの開発・市場投入という新機軸の製品開発を世界に先駆けて進めることで、業界のゲームチェンジを実現していきます。

②ライセンス事業の伸長

新規ライセンシーを開拓するとともに、ライセンシーにおけるUEエンジンの受注/製造を支援することで、事業のグローバル展開を加速させ、市場シェアの伸長でUEライセンサーとしての飛躍を具体化していきます。

③事業基盤の深耕による収益性の更なる向上

デジタルトランスフォーメーションの推進で、製品の付加価値向上や、社内オペレーションの効率化を実現するとともに、社内リソースの再配置で、事業伸長に備えて組織を最適化してきます。

 

(3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

経営指標としては、「営業利益・経常利益」を重視し、安定した収益体質の確立を目指してまいります。

 

(4)経営環境

当連結会計年度における我が国経済は、新たな変異株の感染急拡大が一時的に経済活動正常化の制約要因となったものの、新型コロナウイルス感染症の各種感染防止策を講じることで、経済活動の段階的な再開が進み、景気は一部持ち直しの動きが見られました。一方、需給バランス変調による資源、燃料価格の高騰や半導体の供給停滞、更にはウクライナ情勢の緊迫化、ゼロコロナ政策を堅持する中国経済の減速感など、内外経済に与える景気下押し圧力が次々と顕在化し、依然として先行き不透明な状況で推移いたしました。

当社グループと関連性の高い我が国海運・造船業界は、海運業界において、世界経済の再開による荷動きの急増に加え、海上輸送網の混乱に伴う運賃高騰が続いたことから市況は総じて堅調に推移しました。また、造船業界は、海運市況における船腹需給の引き締まりや船価の先高観を受け、ここ数年、発注を抑制していた船主の投資意欲が改善したことなどを背景に、停滞していた新造船商談の成約が進み、造船各社の受注量は増加することとなりました。

 

(5)優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題

2023年3月期の通期業績予想につきましては、前期と比較して、増収・増益となる、売上高140億円、営業利益1億9千万円、経常利益4億7千万円、当期純利益5億5千5百万円を見込んでおります。

売上面では、主機関で、アンモニア・水素燃料エンジンの開発を進捗させ、製造着手に向けた工場設備の新設・改修を下半期に予定しております。このため、一時的に製造キャパシティーが減少しますが、上半期への生産シフトや、生産計画最適化による同型エンジン連続生産で生産効率を高めるなどし、通期では、前期並みの生産台数を確保する予定です。また、環境規制の適用で、増加基調にあるEGR/SCRの搭載比率は、2023年3月期においても、前期から更に増加し、売上増に寄与する見込みです。

当社の42LSH型機関を始めとする最新鋭主機関は、高い技術力に加え、徹底したマーケットリサーチ結果を反映し開発することで、製品競争力の強化を実現しております。このため、市場投入後、海外ライセンシーとあわせて、国内外で短期間のうちに多数の受注を確実にしており、今後も堅調に受注を積み重ねるものと見込んでおります。こうした当社製品は、複数のエンジンをロットで受注することも多く、商談から納入までは複数年に跨るプロジェクトも含んでおります。増加している有望商談を着実に受注に繋げ連続生産していくことで、今後の中期レンジでも更なる事業拡大を見込んでおります。

修理・部品等では、アフターサービス事業では、当社製エンジン搭載船の隻数や、船舶の稼働率等を考慮し、前期に発生した適合油特需の剥落等も想定して、固めの数値を想定しております。ライセンス事業では、ライセンシーでの受注急拡大によるロイヤリティー収入増を予定しており、部品供給事業では、ライセンシー向けの部品供給の売上拡大を見込んでおります。

なお、営業外収益として、グリーンイノベーション基金事業(アンモニア・水素燃料エンジンの開発)の進捗による交付金を織込んでおります。

損益面では、主機関で、上記の生産計画最適化による生産効率改善の成果を、継続して刈り取っていきます。修理・部品等では、ライセンス事業や部品供給事業の売上拡大で、収益性の更なる向上を見込んでおります。また、全般として、資機材価格の高騰に対しては、必要な対策を講じることで次期業績への影響を最小化すべく、製品価格の改善に向けた営業活動の強化等を進めていきます。更に2023年3月期は、アンモニア・水素燃料エンジンの開発・製造に向け、研究開発および設備投資の負担が本格化しますが、これは将来の主力事業育成に向けた先端技術領域への戦略的な先行投資であり、これによる損益への影響を吸収しつつ、好調な受注やライセンス事業の急拡大などを梃子に、更なる業績伸長を実現させていきます。

 

主機関および修理・部品等の今後の取組み概要は以下の通りです。

 

①舶用内燃機関(主機関)

環境規制の強化は、高い技術力を有する当社にとってビジネスチャンスと位置付けております。既存製品となる重油燃料エンジンの製品競争力を強化するとともに、革新技術を結集してアンモニア・水素燃料エンジンを開発・市場投入することで、「社業を通じて社会的課題の解決」を図ることとし、ESG経営を深化させつつ、業界におけるゲームチェンジを実現していきます。 

1)既存製品の競争力強化

既存製品となる重油燃料エンジンについては、燃費性能を従来以上に向上させるとともに、環境規制に対応したEGR/SCRの搭載を進めることで、化石燃料の使用量を削減するとともに環境との親和性を高めていきます。また、バイオ燃料などの多様な燃料との混焼も可能とする、層状噴射技術を搭載したエンジン(MGOエンジン/LSJ型機関)のシリーズ展開も進めていきます。

競争力の強化を実現し、大型ロット受注に成功している42LSH型機関を始めとする最新鋭エンジンは、今後、複数年に亘って生産が継続していきます。当社のこれまでの取組みが結実した成果であると判断しており、今後も弛まず製品競争力を高めていくとともに、受注・内定済のエンジンについては、同型エンジンの連続生産による生産リードタイムの短縮や、戦略的な資機材のロット購買推進などにより、バリューチェーンのあらゆる領域でコスト競争力を一段と高めていき、これを次なる受注に繋げる好循環のサイクルを回していきます。

 

2)革新技術で新製品を開発

アンモニアおよび水素を燃料とするGHGゼロエミッションエンジンの開発および市場投入を、グリーンイノベーション基金事業のもとで着実に進捗させていきます。これは、カーボンニュートラル社会実現に向けた次世代燃料対応というエポックメイキングであり、世界に先駆けた製品化の実現で、業界におけるゲームチェンジャーになりえると期待しております。なお、実機の完成は、アンモニアは2025年度年央、水素は2026年度末を予定しており、将来の成長に向けた新規事業の育成・拡大に注力してまいります。

 

②修理・部品等

ライセンス事業の急拡大による波及効果で、事業全体の押し上げを見込んでおります。

 

1)アフターサービス事業

顧客密着型のきめ細かい営業活動を継続するとともに、今後の環境対応・省エネニーズに適合した新たなソリューションを、エンジンのユーザー様にご提案していきます。また、今後、ライセンシーでのエンジン製造が急拡大し、これらを搭載した船舶も次々と就航していく見込みですので、ライセンシーへの支援活動を通じ、当社アフターサービス事業の売上拡大にも繋げていきます。

 

2)ライセンス事業/部品供給事業

造船事業の発展を遂げる中国市場において、UEエンジンのグローバル展開を加速させており、営業支援の成果で、海外ライセンシーにおけるエンジンの受注は急拡大しています。今後、受注したエンジンの製造が本格化する予定であり、これらを円滑に進めるべく、設計、製造、品質管理などの主要工程を全方位でサポートすることで、海外ライセンシーの育成強化を図りつつ、ロイヤリティー収入の増加と、部品供給事業の更なる拡大を具体化していきます。

 

③全般(事業基盤の深耕)

デジタルトランスメーション(DX)の推進や、社内リソースの再配置などを通じ、収益力を強化するとともに、成長分野への投資を下支えしていきます。

DXを用いた製品の付加価値向上については、船級協会や、優良顧客等との共同研究などを通じ、UEエンジンのデジタライゼーションを推進させています。IoT、AI技術の活用で、エンジンの状態監視を高度化し、メンテナンス時期の最適化を提案する取組みや、次世代型エンジン制御システムの製品化、国土交通省/高度船舶安全管理システム導入、デジタルツインの確立、自律・自動運転実現といった取組みを発展させています。

また、社内リソース再配置については、連結子会社のシンパツサンライズ社を吸収合併することで、今後、部品の在庫管理能力を更に強化するとともに、海外ライセンシーへの部品供給事業の拡大で増加が見込まれる出荷業務への対応力を高めていきます。

 

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