当グループでは、基礎及び応用研究、そして、これらの研究により裏付けされた新製品の開発までの一連の研究開発活動を、当社の技術本部及びFAシステム本部を中心として行っております。当連結会計年度は、研究開発費として
研究開発活動の概要は、次のとおりであります。
新型コロナウイルス感染拡大による影響から、全世界的に社会生活や経済活動が大きく制限された最悪期の状況を脱し、各国・地域毎の実情を踏まえた形で、徐々に行動制限の緩和に向かう流れが加速し、2021年の日本の業界受注額は3年ぶりに1兆5,000億円を上回り、過去4番目となる1兆5,414億円となりました。そのような中、製造業界では慢性的な人手不足に加え、人との接触を極力減らした生産形態を模索する動きが加速し、自動化、省人化に対する需要、生産性向上に対する要求がますます高まっています。また、全世界でSDGs、脱炭素社会の実現に向けた取り組みが活発化しており、こうした動きを背景に市況は急速な回復状態にあります。
このような市場において、提案力を一層高めていくため業界唯一の、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合技術を持つ強みを活かし、高い生産性と安定した稼働を実現する技術開発を行っています。さらに、環境負荷やメンテナンス作業の軽減を加味して自社のスマートファクトリー(Dream Site)に展開し、ここで得られたノウハウの活用と市場動向を踏まえ、自動化・省人化、並びに効率化に貢献する自律型工作機械「スマートマシン」をはじめとした多くのオンリーワン技術・製品の開発を行っています。
その一例として、2018年に開発した工作機械とロボットを完全融合した次世代ロボットシステム『ARMROID』シリーズは、自動化の需要が高まる中、単体機と同等のスペースで容易に自動化が可能であること、機械操作と同じ操作感覚でロボット操作が可能であること、働き方に合わせて人とロボットとの業務シェアを実現する人調和型自動化セルであることなどから生産現場における有用性が浸透してきており、市場で導入が拡がっています。
グローバルに脱炭素化社会の実現に向けた動きが加速する中、再生可能エネルギー市場は継続的な成長が見込まれます。また、EVシフトが加速している自動車市場では、内燃エンジンから電動モータ化へと構成部品が大きく変化しており、まさにビジネスチェンジが起きています。そうした脱炭素に向けた動きの中で、製造業では、サプライチェーン全体で脱炭素を目指す企業の動きが国内外で拡大しており、中小規模企業にも脱炭素の取組みが必要となっています。
当グループは、独自のAI、知能化技術による電力消費量の削減や、産業廃棄物となる切削液の長寿命化など製造過程トータルで発生する環境負荷の低減に取り組んでいます。部品加工時の省エネ(CO2排出量の削減)と、高精度及び高生産性を両立するため、2001年より、工場や機械の過度な温度管理と、暖機運転や寸法修正工程を最小化する技術である「サーモフレンドリーコンセプト」を標準適用した工作機械を順次拡大し、累計56,000台以上供給しました。また、この「サーモフレンドリーコンセプト」の技術を応用することで、高精度を維持したまま工作機械の周辺機器を停止する「ECOアイドルストップ」をはじめとした省エネルギーシステム「ECO suite」を2014年に商品化し、全世界で累計35,000台以上を市場投入しました。2021年は、この「ECO suite」をさらに強化し、『ECO suite plus』として進化させました。電力使用量の大きいミストコレクタなどの機器に対して、一層きめ細やかな運転制御指示を可能とすると共に、個々の機器の電力使用量を個別に確認・記録管理できる機能の追加や、ネットワークを利用した外部出力機能などを強化、そしてCO2排出量の見える化と分析の容易化により、CO2排出量の削減活動を支援しています。
また、生産形態に最適な自動化対応と長時間の安定稼働により労働生産性を大幅に向上できる加工機のニーズが高まりに応えるため、『ECO suite plus』を搭載し、長時間連続運転が可能な高い信頼性と自動化対応力を大幅に強化した横形マシニングセンタ『MA-8000H』を開発しました。これにより、お客様が抱える生産現場の脱炭素化、労働力不足、技術伝承などの課題解決を強力に支援し、その上で大幅な生産能力の向上を実現可能としました。本製品は、「2021年度十大新製品賞 最高賞(増田賞)」(日刊工業新聞社主催)を受賞いたしました。
当グループは今後とも、お客様の利益の最大化に向けて「高精度生産性」を追求し、また、お客様が求める「ソリューション(課題解決や付加価値向上のための提案)」を機械に組込むことにより、新しい差別化・成長製品の創出を目指してまいります。機械技術、加工技術、制御・ITの技術基盤をベースに、トータルレスポンシビリティの強みをさらに拡げて「最高のものづくりサービス」を提供してまいります。
この戦略は、当グループならではの強みであり、他社が容易に真似できない差別化戦略であります。オンリーワン技術・製品を間断なく開発し、その業界、対象ワークでグローバルに競争力をもつ生産手段を提供し、お客様の利益を創出し続けることにより、世界の工作機械のエクセレントカンパニーを目指してまいります。
当グループは、1963年(昭和38年)に自社製NC装置「OSP」の開発に成功して以来、機械とNC装置を一体でサポートする「トータルレスポンシビリティ」を基本理念とし、現在では、機・電・情・知(機械・電気・情報・知識創造)の融合をコンセプトとして、お客様のものづくりを支えるソリューションを提供する先進技術と機能の開発を続けております。
近年、社会における人々の志向の多様化、脱炭素社会への移行、安全保障など地政学的リスクへの対応など、時代が大きく転換しようとしている中で、ものづくり産業における生産革新、スマート化が進展しております。こうしたスマートなものづくりを支えるのが、スマートマシンであり、スマートマニュファクチャリング(スマートなものづくりの仕組み)であります。
スマートマシンを支えるNC装置では、高精度・高品質・高効率・安定加工を可能とする制御技術開発に加え、最新のAI技術を活用し、送り軸や主軸の状態を診断する「AI機械診断機能」、加工状況を監視し、工具の寿命・折損を診断する「AI加工診断機能」等の知能化技術を実現、また、脱炭素社会の実現に向け、CO2排出量(消費電力)の削減を支援する「ECO suite plus」を提供するなど、工作機械として、スマートな加工を実現しています。
1) スマートマシンを実現する機能開発
1-1) 新高速・高品位加工機能「Hyper-Surface」
金型加工に対する要求はより高度なものとなっており、特に機械加工後に手作業で行われる磨き作業時間を短縮するため、加工面品位の向上に対する要求が高まっています。この加工面品位向上の要求に応えるため、曲面を認識してエッジ部の形状精度を保ちながら滑らかな加工を可能とする「Hyper-Surface」を開発しました。
「Hyper-Surface」は、加工パスの揺らぎを指令レベルで抑制する「指令位置平滑化機能」「送り速度平滑化機能」と、隣り合う加工パスのズレや不揃いを抑制する「隣接パス補整機能」を備え、お客様から高い評価を頂いております。さらに、加工の進行方向に対する指令位置の間隔や左右のゆらぎを滑らかにする「粗密補整機能」「ゆらぎ補整機能」、指令位置のバラツキによる軸動作の反転を抑制する「微小反転平滑化機能」、面品位を重視した加工を実現する「プログラム指令点補整機能」などを開発し、より高い面品位の加工をお客様に提案しています。
1-2) AI機械診断機能
高い生産性を維持するためには、生産設備の安定稼動と異常発生時のダウンタイム最小化が重要となります。AI機械診断機能は、当グループで培ってきた機械基礎特性の高度な知見と、AI技術を融合し、ボールねじ、ボールねじ支持軸受、ミーリング主軸軸受の状態を見える化することにより、専門的な知見を用いなくても加工現場のオペレータにて容易に機械状態を把握でき、予防保全につながる取り組みを可能としました。今後も診断対象の拡充を図り、保全活動の支援を強化していきます。
1-3) AI加工診断機能
工具の有効活用による購入コスト削減や、工具異常による手直しコスト削減による生産性向上を支援する機能として、AI技術を活用した工具の折損診断技術により、ドリルの破損を発生直前に検出して回避することを可能としました。本機能を当社自社工場の設備機に搭載し、工具に関する情報を蓄積し、折損診断技術を向上させることで、工具の長寿命化、工具費用の削減に効果を上げています。また、工具異常時に自動的に工具を交換し、加工を継続する工具の乗り換え機能を開発し、自動化システムでの長時間連続運転の実現に取組んでいます。お客様の工場にてお使い頂くことで、部品加工のコスト削減に寄与します。
1-4) 自動化技術の強化
自動化・省人化を容易に実現する次世代ロボットシステム「ARMROID」や「STANDROID」では、工作機械のオペレータが使うことを前提に、ガイダンスに従って始点・終点を教示し、パラメータを入力するだけで、ぶつからない最適な動作経路を自動生成するなど、複雑なロボットのプログラミングを不要とした「ROID Navi」を開発しました。さらに、ロボット先端に取付ける加工物を掴むワークハンドの選択機能の拡張、動作時間の短縮などの生産性向上のための開発を進めています。
1-5) ECO suite plus
環境対応として、脱炭素社会の実現に向け、工作機械の使用によるCO2排出量(消費電力)を見える化するとともに、加工中は、必要な時に必要な分だけ周辺機器を運転するよう制御、加工完了後は、機械が自律的に不要な周辺機器をアイドルストップしたり、作業者の作業状況を自動で判別して周辺機器のアイドルストップと復帰を自動化するなど、様々な機能によりCO2排出量(消費電力)の削減を支援しています。
2) スマートファクトリー実現の取組み
ドイツの「Industrie4.0」や米国の「Industrial Internet」や中国の「中国製造2025」など、国を挙げて次世代のものづくりが推進しています。当社工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」では、オークマが目指すスマートファクトリーとして、導入した自社製スマートマシンを活用し、全体最適の見える化工場、部品加工プロセスの制御周期の高速化によるスループット向上、ロボット・自動化システムによる自動化・省人化に取組んでいます。さらには、業務・製造プロセスのデジタル化を進め、デジタルマニュファクチャリングの実現に向けて、着実な成果を上げております。
加えて、この取組みを会社全体の業務プロセスに拡張して、「ものづくりDXソリューション」として、世界のお客様の価値創造のために提供していきます。
「ものづくりDXソリューション」では、お客様のものづくりの現場でこれまで培ってきたノウハウや成功事例を、個人や個別組織の経験値として蓄積するだけでなく、デジタル化により全体に共有し、リードタイム短縮、生産性向上、品質向上に利活用し、変化する顧客や社会のニーズに迅速に適合できるように変革することをお客様とともに協創して取組み、お客様の価値創造を支援していきます。
当グループでは、半世紀に渡る自社製NC開発の基本理念を今後も継承するとともに、当社の強みである機・電・情・知融合のコンセプトを基盤として、先進のサーボ技術、先進の情報技術、オンリーワンの知能化技術、先進のAI活用技術の開発と強化を進め、スマートマシンの実現を推進するとともに、当社工場「Dream Site(DS1、DS2、DS3)」で実証されたデジタルマニュファクチャリングを、「総合一貫した“ものづくりサービス”」として提供し、世界中のお客様の価値創造に貢献できるように推進してまいります。
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