課題

1 【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであります。

(1) 会社の経営の基本方針 

当社グループは、成形システムビルダとして発展し、人と社会に貢献することを企業理念として掲げております。

この企業理念を基本姿勢として、金属その他各種素材に対応する独創的な成形システムの開発・製造・販売・サービスを通じて、株主、顧客、取引先、従業員、地域社会などのステークホルダーと長期的な信頼関係を構築して、企業理念に掲げる人と社会への貢献を実現していく所存です。

 

(2) 目標とする経営指標

当社グループでは2020年度より新たな中期経営計画(2020年度~2022年度)をスタートさせました。

中期経営計画の最終事業年度となる2022年度における売上高は720億円、営業利益は55億円を目指します。

 

(3) 中長期的な会社の経営戦略

当社グループの重要マーケットである自動車業界の設備投資は回復基調にありますが、競合他社との競争は激しさを増し、プレス製品の収益性は年々低下してきています。更に今般の新型コロナウイルスの影響や、2021年後半からの物流の混乱、半導体・電子部品不足並びにロシア・ウクライナ問題等の影響で企業の設備投資が停滞する可能性があります。
 一方で、自動車産業における「CASE」への取組みを背景に、「電動化」「軽量化」「自動運転化」の流れは今後ますます加速する見込みです。また、お客様の生産現場において、生産設備の自動化・デジタル化による生産性向上や、省エネ・脱COといった環境負荷低減に向けた取組みは待ったなしの状況であることに変わりはありません。先行き不透明な時代においても、当社グループはこのようなお客様の普遍的な課題に対して解決策を提供することで、お客様とともに成長していくということを経営の基本方針とし、持続的成長と企業価値拡大を実現してまいります。

 

(4) 当面の対処すべき課題の内容等

今年度は、2020年度よりスタートした中期経営計画が最終年度を迎えますが、「環境・省エネ・技術進歩を支える先進企業として社会に貢献する」という経営ビジョンのもと、E「環境」S「社会」G「ガバナンス」への取組みを事業活動の柱とした施策を引き続き展開してまいります。エネルギー価格や部材費等の物価高騰、半導体・電子部品不足、物流混乱、ロシア・ウクライナ問題等、不確実性が増し経営環境は厳しい状況にありますが、社会や顧客の普遍的な課題解決に地道に取組むことで持続的に成長していくという経営方針に基づき、自動車の「電動化」や「軽量化」といった次世代自動車のモノづくりや、顧客の生産現場における生産設備の自動化・デジタル化による生産性向上、そして、顧客の生産現場における環境負荷の低減といった施策にしっかりと取組んでまいります。

具体的には、①技術革新、②経営基盤強化、③収益力向上、という3つの「基本施策」を軸に、①プレス事業、②自動機・FA事業、③保全・近代化事業といった3つの事業ごとに「事業別重点施策」を展開しております。これらの施策への取組みは下記のとおりです。

 

(基本施策)

  技術革新 ― 商品競争力向上、成長事業育成・強化

<次世代自動車への取組み>

自動車電動化への対応として、近年需要が拡大している駆動モーター生産用の高速プレスについて、周辺装置も含めたプレスラインの最適化に向けた開発が2021年度に完了しました。2022年度は更なる改良を加えた2ライン目の販売を実現します。

車体軽量化への対応として、サーボモーターの能力向上や油圧制御強化等、ハイテン材(高張力鋼板)、アルミ材、炭素繊維といった軽量素材への成形能力向上のための開発を進めます。

<DX(デジタルトランスフォーメーション)への取組み>

DX分野では、仮想空間にプレス機械や周辺ロボット装置を再現したシミュレーション機能を提供していますが、さらに進めて、プレス機械の稼働データ(温度、電流値、圧力等)を取込むことで、仮想空間上でプレス機械の状態をリアルタイムで把握するデジタルツイン機能の開発にも取組んでおります。この機能を搭載したダイレクトサーボフォーマー「DSF-N2-4000A」は、2021年度に日刊工業新聞社より「十大新製品賞」本賞を受賞しました。今後はこのような機能の拡販によりサブスクリプション型ビジネスの展開も模索してまいります。

 

 

<顧客の環境対策を支援>

当社はプレス機械を通じEV等の「環境に優しい車」のモノづくりを支援していますが、顧客に対し「環境に優しい生産現場」を提供することでも環境対策に貢献してきております。2021年度に当社のデジタルサーボフォーマー「NS2-Dシリーズ」が日本鍛圧機械工業会主催の「MF技術大賞」の技術優秀賞を受賞しましたが、これは、当社のプレス機械を活用することで、従来の工法を変え生産性と材料歩留まりを向上させた点が評価されたものです。今後も顧客の生産現場の省エネ、省材料、脱炭素を後押しするようなプレス機械や工法の開発に取組んでまいります。

 

  経営基盤強化 ― 技術革新を支える基盤の整備・強化

<人的投資>

2021年度は従業員意識調査を実施する等、新たな人事制度の導入準備をしてまいりましたが、今夏よりこれを導入します。この制度では従来の評価制度や報酬体系を改善するとともに、研修制度も充実させ、専門性の高い人財、マネジメント人財、グローバル人財等、多様な人財を育成・登用し、人財の多様化を積極的に進めます。

<システムインフラの強化>

2021年度に基幹システムの改良が完了しましたが、運営面での定着化を進めます。また、新しい設計システムの導入により3Dデータと2Dデータの連動や基幹システムとの連動の整備、設計と加工のシステム連動化、IoTによる工場稼働状況監視システム導入等、生産工程の効率化とスマート化を推進します。

  収益力向上 ― 収益構造の転換

プレス事業における競争が激しくなる中、より付加価値の高い保全・近代化事業や自動機・FA事業を強化してまいります。コロナ禍や電子部品不足といった逆風の中ではありますが、下記の(事業別重点施策)の「②自動機・FA事業」と「③保全・近代化事業」の重点施策に着実に取組んでまいります。

プレス事業については、EV等の次世代自動車への需要拡大を見据え、高速プレス、精密プレス等に重点をおき、マーケットニーズに対応したプレス製品ミックスの改善を進めます。具体的な取組み状況は下記の(事業別重点施策)の「①プレス事業」をご参照ください。

収益環境は極めて厳しい状況ですが、このような収益構造の転換施策を着実に進めることで、2022年度は増益を目指します。

 

(事業別重点施策)

  プレス事業 ― 次世代自動車向けプレスを強化し、製品ミックスを改善

EV等の駆動モーター生産用高速プレスの生産能力向上は喫緊の課題ですが、今夏に津久井工場のレイアウト変更工事を完了させ生産効率アップを図るとともに、大型プレスの生産を担う相模工場のリソースを高速プレス生産にシフトさせ生産能力を拡大します。海外拠点の生産能力強化については、2021年度下期にマレーシア工場の新規設備が稼働を開始し、アジア地域向け高速プレスの供給を順次拡大させています。2022年度は欧米拠点の製造・サ―ビススタッフ向けのトレーニングを実施し、従来、日本の本社工場で対応していた高速プレスの製造・据付業務の現地化を進めます。

  自動機・FA事業 ― 制御技術の活用により付加価値を創造

当社が近年開発したプレス間搬送装置D-MATは、画像センサーを活用した搬送柔軟性の高さが評価され、近年受注した大型サーボタンデムラインにおいて相次いで採用されるとともに、搬送装置の近代化においても引合いが増えています。更なる性能向上に取組むとともに、近代化ニーズの捕捉にも注力します。

このような自動搬送装置を自社で開発・製造しプレス機械とセットでシステムとして提供している点は当社の強みですが、欧米地域では現地専業メーカーの競争力が高く、欧米顧客に対し当社製品の提供が十分にできていない状況です。当社としては欧米におけるシステム提供を拡充させるべく、海外拠点の生産能力向上に加え、現地自動機専業メーカーの買収や提携も視野に、欧米での自動機内製化を強化します。

  保全・近代化事業 ― 予防保全・設備改良の「提案営業」を強化

駆動モーター生産用の高速プレスの受注が増加していますが、新規投資の代替手段として既設機のオーバーホールや近代化工事のニーズも取込んでまいります。この近代化工事においては2021年度に開発を完了した高速プレスシステムの周辺装置を商品化し積極的に拡販します。

当社は2002年にサーボモーターを自社開発して以来、自社製サーボモーター搭載のプレス機械を国内外で拡販してまいりましたが、これらのサーボモーターがオーバーホールの時期を迎えつつあることから、全世界で顧客営業を強化し、ニーズを掘り起こします。

IoTを活用した部品交換時期の可視化を推進し顧客の予防保全対策を向上させるとともに、DXを活用したプレス機械のコンディション可視化にも取組みます。また、プレスシステムの経年とともに周辺装置の設備改良といったニーズが高まっており、システム更新、デジタル保全システム導入等、生産性向上に向けた提案を積極的に展開します。また、これらの取組みを推進する人財強化も並行して進めてまいります。

 

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