課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中の将来に関する事項は、本報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1) 経営方針

当社の経営方針は、工作機械メーカーとして「独創的で、精度良く、頑丈で、故障しない機械、自動化 システム、デジタル技術を、最善のサービスとコストでお客様に供給すること」です。コネクテッド・インダストリーズ(IoT、インダストリー4.0)の高まりを背景に、工作機械(マシニングセンタ、ターニングセンタ、複合加工機、5軸加工機及びその他の製品)、ソフトウエア(ユーザーインタフェース、テクノロジーサイクル、組込ソフトウエア等)、計測装置、修理復旧サポート、アプリケーション、エンジニアリングを包括したトータルソリューションの提供を行い、全世界のお客様にとってなくてはならない企業を目指しております。

 

(2) 経営戦略及び経営環境

当社の連結受注は、期初から本格的に回復し始め、年度を通じて好調に推移しました。2021年度の連結受注は4,560億円となり、前年度比で63%増、2019年度比でも11%増となりました。また、過去ピークの2018年度比でも86%の水準まで回復しました。当社がグローバルに展開しているショールーム、工場での小規模商談会が好評を得て、工程集約、自動化・フルターンキー化、デジタル化が着実にお客様に浸透してきた成果と認識しております。年度を通じて、受注は各地域とも増加しましたが、特に、前半は欧州及び中国が、後半は日本及び米州が牽引いたしました。また、全産業から受注が回復し、中でも半導体製造装置、EV(電気自動車)、宇宙、医療関連向けの需要増が寄与いたしました。

2022年度には、前年度比5.3%増の連結受注4,800億円程度を見込んでおります。半導体製造装置、脱炭素、EV、宇宙関連、医療関連向けの旺盛な設備投資が当面継続し、当社の推進する工程集約、自動化・フルターンキー化、デジタル化の需要が高まる見込みです。地域別には、当面は、日本、米州、EMEAが牽引するものと予想しておりますが、遅くとも年央以降には、再度、ドイツ、中国などからの需要も回復に転じるものと期待しております。

当社は、高精度・高速機、5軸加工機・複合加工機などの工程集約機、自動化・フルターンキー化、デジタル化の長時間稼働を実現するソフトウエア及び周辺装置の開発、お客様の利便性を高めるためのデジタルコンテンツの充実、人材育成のための教育プログラムやテキストの作成等、企業の持続的成長を支える開発に注力しております。

自動化においては、ワークの加工精度に影響を及ぼす他、機械の故障要因にもなる等、自動化を進める上で課題となる切りくず、クーラント、ミストの「加工3悪」解決に目途を付けました。周辺装置「AIチップリムーバル」、「ゼロスラッジクーラント」、「zeroFOG」を市場に投入し、加工3悪の解決へのソリューションとして提供いたしました。これらにより、加工環境・条件を最適化し、自動化システムの長時間稼働を可能にすることで、お客様の生産性向上に貢献いたします。

デジタル化では、ポータルサイトのmy DMG MORIが順調に登録件数を伸ばし、2021年12月末には約50,000件(2020年12月末:約40,000件)となりました。新機能として、お客様から当社修理復旧センタに対して、画像、ビデオ、プログラムなどの多様なデジタルデータでお客様の保有機の状況を連絡して頂くシステム「サービスリクエスト」を開始いたしました。これにより、お客様の視点からの工作機械の状況、支援要請をデジタルプラットフォーム上で可視化することができ、正確かつ迅速な対応が可能となります。単に修理復旧依頼のみならず、お客様の加工プログラムに関する相談や、周辺装置の選択などの要望にもお応えすることが可能となり、利便性がより高まっております。

また、当社は、業界のリーディング・カンパニーとして、幅広いステークホルダーの期待に応えるべく、持続可能な社会を目指し、サステナビリティへの取り組みを強化しております。環境面においては、2021年年初にグローバルで生産する全商品の調達から出荷までの全工程において、排出権の利用を含めカーボンニュートラルを達成した他、TCFD(Task Force on Climate-related Financial Disclosure/気候関連財務情報開示タスクフォース)提言への賛同を表明し、国際的な環境団体SBTイニシアチブから「SBT(Science Based Targets)認定」を取得いたしました。今後は事業所での太陽光パネルやバイオマス熱電供給システムの設置・稼働を予定しております。

ほかにも、従業員の生活の質的向上を強化しており、「よく遊び、よく学び、よく働く」を経営理念に掲げ、「健康経営※」に取り組む企業として「DMG森精機 健康経営宣言」を行っております。コーポレート・ガバナンスにおいては、取締役会の多様性を重視しており、社外取締役、外国籍取締役、ジェンダーの構成などに注目しております。2022年3月22日の株主総会の承認により、社外取締役の構成比は40%、外国籍取締役の構成比は20%、女性の取締役構成比は10%となっております。

以上のように、顧客価値創造と社会との共生を実現し、事業規模、収益性、財務基盤において、継続的な企業価値向上に努めてまいります。

※「健康経営」は特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。

 

(3) 目標とする経営指標

需要変化の激しい工作機械業界の事業環境や市場動向に迅速に対応し、工作機械業界におけるグローバルワンの地位を維持・継続するためには、利益率の向上、財務体質の強化、資本収益性の向上が最重要課題であると考えております。

来期は、連結受注高4,800億円、売上収益4,300億円、営業利益400億円を、それぞれ計画しております。

また、2022年度には中期事業計画を策定する予定です。新中期事業計画では、社会環境の変化、気候変動への対応、人権問題・環境負荷などを見据えたサプライチェーンの見直しなど、当社が対峙すべきマテリアリティを明確にいたします。当社グループでは、顧客価値創造並びに企業価値のさらなる向上のために、たゆまぬ努力を継続してまいります。

 

(4) 優先的に対処すべき課題

①製品開発

昨年は新型コロナウイルスの影響は残るものの、10月に日本国内においてMECTが開催されるなど、対面による提案機会が増えてきました。しかしながら、オミクロン株の流行等、いつパンデミックの影響を受けるか身構えながらの経営のかじ取りが求められております。このような課題に対し、当社では昨年より取り組んできたオンラインでの出荷前立会加工、デジタルツインショールームの充実、工作機械のテスト加工をデジタル化するデジタルツインテストカットの対応を進めてきました。特にデジタルツインテストカットにおいては、スーパーコンピュータ「富岳」を用いることで、実際には8時間かかる加工を10分以下で予測することを実現いたしました。

生産性向上や労働人口減少、働き方改革、カーボンニュートラルへの対応に伴い、お客様の工程集約や自動化への関心は更に高まりつつあります。工程集約のために、5軸加工機や複合加工機の開発やラインナップ拡充を更に推し進めるとともに、デジタルツインテストカットを用いた具体的な生産性向上ノウハウを提案いたします。自動化においては、ノウハウを蓄積したモジュラー型ロボットシステム「MATRIS」や、昨年開発したWH-AGV 5やMATRIS Light等ロボットシステムの更なる拡販を進めます。工程集約や自動化に重要である計測については、工具形状や摩耗・寸法測定を自動で行う「ツールビジュアライザー」を、既に搭載を始めている複合加工機に加え、他機種へも展開を進めてまいります。

継続的な生産や人材確保のために、製造現場における労働環境の改善も重要な課題です。特に重要な切り屑やクーラント、ミストへの対応については、昨年はミストを効率よく回収し、クリーンな空気を排出する新型ミストコレクタ「zeroFOG」を開発いたしました。今年は、そのラインナップ拡充を進めます。また、クーラントタンクの切り屑掃除削減や、クーラントの長寿命化につながる「ゼロスラッジクーラントタンク」の新機種への搭載も進めてまいります。

以上、最先端技術とその販売によって、工程集約や自動化、労働環境改善、CO₂削減を通して、お客様の生産性向上・カーボンニュートラルを始めとする持続可能社会の実現に貢献いたします。

②品質

品質本部では出荷前の製品検査、出荷後の製品の品質分析からPDCA、さらにSDCAのサイクルを回し、製品品質、製品安全の向上を実現いたします。

出荷前製品検査では製品検査の自動化・デジタル化を導入し、効率よく漏れのない検査に改善いたしました。2022年は主要測定器のデジタル化を進め、更なる精度の向上と効率化に取り組みます。また労働力の不足、需要増への対応から自動化・カスタマイズのニーズが高く、日々新しい設計の製品が生産されており、これらの安全評価と妥当性評価を実施し、お客様での素早い立上げをサポートしております。

出荷後品質では数千台の機械のアラームを分析し、繰り返し発生する問題を設計段階に戻って改善することにより、更なる品質改善につなげております。また、この分析活動においてアラーム内容の改善にも取り組んでおります。万一問題が発生したときに、すぐに原因を把握し対処できるようアラームを標準化し、2022年に展開いたします。

③安全保障貿易管理

近年、世界の安全保障環境の不安定化が益々顕著になり、大量破壊兵器の不拡散や通常兵器の過度の蓄積防止に対する国際的な関心が一段と高まっております。更には、経済安全保障という、輸出管理の国際レジームの枠組みにはない管理強化の必要性も叫ばれ、諸外国においても関連の法整備の強化・改定が行われております。

このような環境の中、当社グループにおいては、輸出関連法規の遵守に関する内部規程(コンプライアンス・プログラム)を定め、経営環境の変化も考慮したうえで、厳正に適用しております。この一つの取り組みとして、当社製品には、不正な輸出を防止する目的で、据付場所からの移設を検知すると稼働できないようにする装置を搭載し、厳格な輸出管理を実践しております。なお、2012年より中国・天津、そして2019年10月よりインド・コインバトールにて工作機械の製造を開始しております。輸出関連法規上、より厳格な管理が必要となる国での海外生産を行うにあたり、訪問を含む定期監査や輸出管理研修、販売先の顧客審査を行っております。日本のみならず海外の関連法令遵守も必要な安全保障貿易管理につきましては、重点課題として今後とも継続して取り組んでまいります。

④法令遵守

経営者自ら全従業員に対し法令及び企業倫理に基づいた企業活動の徹底を指示し、役員・従業員のコンプライアンス意識の向上と浸透を図っております。当社グループでは、グローバルな事業展開に対応したコンプライアンス体制を構築するために、日本を含む各国においてコンプライアンス担当者を選任し、これらを連携させることにより、各国の制度に適応しながら統制の取れた体制の確立に取り組んでおります。また、コンプライアンスに関する問題の予防、早期発見・対策のため、2020年より多言語対応の通報窓口を設置し、海外グループ企業も含めたグローバルでのコンプライアンス体制を強化いたしました。以上のほか、内部監査部を主管部署とした定期的な法令遵守活動のモニタリングも継続しております。

勤務間インターバル制度については、当社では2018年より導入し、2020年度からは在社時間の制限を原則10時間、勤務間インターバルを12時間として従業員の健康維持、ワークライフバランスの適正化に取り組んでおります。

 

 

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