課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

 文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであります。

(1)会社の経営の基本方針

 当社は、「自治体を通じて人々に新たな価値を提供し、会社及び従業員の成長を追求する」ことを企業理念に掲げ、自治体の自主財源確保を支援する2つの事業を展開しております。具体的には、広告事業においては、自治体が有するホームページや広報紙等の広告枠を仕入れ、民間企業に販売するSRサービス、及び自治体が住民向けに発行する子育て情報冊子や空き家対策冊子等のデザイン・制作業務を当社が行い、自治体に寄贈するマチレットを主としたSCサービスの提供において自治体の経費削減を推進しております。また、ジチタイワークス事業(旧メディア事業)においては、自治体との取引実績・ノウハウを背景とし、自治体と民間企業を繋ぐBtoGソリューション(旧BtoGマーケティング)、及び自治体の業務改善と民間企業のマーケティングをサポートするジチタイワークスを展開してまいりました。今後も、既存サービスの逐次改善と新規サービス・事業の開発により、自治体を通じた世の中への新たな価値提供を実現し、企業価値並びに株主価値の向上を目指してまいります。

 

(2)目標とする経営指標

 当社グループは営業利益及び売上高営業利益率の中長期的な向上を重要な経営指標として定め、経営を行っております。また、生産性を計る指標として、従業員一人当たりの売上総利益についても経営指標としております。

 

(3)中期的な会社の経営戦略

 わが国経済は、長引く新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響下にあり、2021年9月末に全国の緊急事態宣言が全て解除されたことなどから、経済活動が再開され緩やかな回復が期待されているものの、依然として先行きが不透明な状況が続いております。当社においては、テレワークの導入や、社内における感染症対策を徹底し、従業員の安全確保及び事業への影響抑止に務めており、現時点において、今後の事業継続に支障は生じないものと見込んでおりますが、収束の時期については見通しが難しいことから、2023年3月期においても当該影響が一定程度あるものとして見込んでおります。

 このような状況下において、当社グループが企業理念を体現し、さらなる企業価値の向上を実現するためには、当社グループの強みである、創業以来、自治体を軸とした事業活動を通じて築き上げてきた「自治体リレーション」を中核に、法制度の制定・改正等を的確に捉えた「様々な分野における事業化再現性」と、自治体という事業ドメインに基づく「ビジネスの拡大展開における再現性」を発揮した既存事業の成長及び新規事業の創出が重要であると考えております。これらを推進することは、各自治体が「特徴を活かした自律的で持続的な社会」を築く支援につながり、ひいてはグループ企業理念の実現及び企業価値の向上につながるものと考えております。

 当社グループは2020年8月11日、2021年6月期を初年度とする3か年の中期経営計画である「HOPE NEXT 3」を策定し、その実現に向けて中期的な成長を視野に捉え事業活動を推進してまいりましたが、2020年12月中旬から2021年1月下旬にわたり、JEPXでの電力取引価格の高騰が続き、当社グループ業績の大きな割合を占めるエネルギー事業に多大なる影響を与えました。さらに、2021年10月中旬頃から続く類を見ない電力価格の高騰が継続している影響を受けたことにより、エネルギー事業を営むホープエナジーは実質的に事業継続が困難となったため、裁判所による破産手続が最も適切と判断し、2022年3月25日付で破産手続開始の申し立てを行い、同日付で破産手続開始決定がなされました。これに伴い、当社グループはエネルギー事業からの撤退を決定致しましたが、撤退に至るまでの過程については、後記「第2 事業の状況 3 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」をご覧ください。

 これら現状を踏まえ、「HOPE NEXT 3」については見直しを行う予定ですが、当社グループは当連結会計年度末時点において、56億円超の債務超過となっており、この債務超過解消を最優先課題として取り組み、その実現に合わせ、再策定していく予定であります。なお、各事業における中期的な取り組みは次のとおりであります。

 広告事業におきましては、前連結会計年度までは「利益創出事業」と位置付け、事業規模の適正化による利益率向上を図るとともに、一定規模の売上高維持、1人当たりの生産性を高めて安定的な利益創出を目指しておりました。これまでの取り組みにより、事業規模の適正化による利益率の向上について一定程度実現できたものと考えております。従いまして、2023年3月期の方針として、引き続き1人当たりの生産性を高め、利益創出事業として計画的な再拡大を目指し、安定成長を実現してまいります。

 ジチタイワークス事業(旧メディア事業)におきましては、官公需が大きく、市場の開拓余地は十分に存在することから、行政マガジン『ジチタイワークス』のブランド力を強化しつつ、BtoGソリューションの拡大による利益の追求、また多面的な展開の促進による高付加価値なサービスの拡大に繋げてまいります。

 中長期的な視点においては、これらに加え、将来的に収益の柱となる新規事業の開発を進めてまいります。

 

(4)経営環境及び対処すべき課題

 当社の中長期的な経営戦略については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)中長期的な会社の経営戦略」に記載したとおりであり、これらを実現させるためには、以下の課題への対処が必要であると考えております。

 

(優先的に対処すべき課題)

① 資金繰りの改善及び財務体質の強化

 当社グループは、債務超過の主たる原因となったエネルギー事業における2021年1月分の不足インバランス料金(税込で約65億円)については、2021年12月に一般送配電事業者への支払いを完了したものの、2021年10月以降に高騰した電力取引価格の影響により、財務基盤が毀損しております。資金繰りの改善及び財務体質の強化を図り、財務基盤の回復に努めるべく引き続き様々な資金調達方法を検討してまいります。

 

② 上場廃止の猶予期間入り銘柄への対応

 当社グループは前連結会計年度末において債務超過を解消できず、東京証券取引所(以下「東証」)が定める有価証券上場規程第601条第1項第5号(2022年4月4日付の市場区分の変更に伴い改正された提出日現在の同規程第501条第1項第3号eを満たさないことによる第601条第1項第1号への該当)、及び福岡証券取引所が定める株券上場廃止基準第2条の2第1項第4号の債務超過に該当し、上場廃止に係る猶予期間(なお、東証においては提出日現在の「改善期間」。以下同じ)入り銘柄となりました。しかしながら、2022年3月24日開催の臨時株主総会にて、「定款一部変更の件」が承認され、決算日が6月末日から3月末日に変更になったことにより、上場廃止に係る猶予期間が従前の「2021年7月1日(木)から2022年6月30日(木)まで」から「2021年7月1日(木)から2023年3月31日(金)まで」に変更となっております。引き続き、本猶予期間内に債務超過を解消することを最優先課題として取り組んでまいります。

 

③ ジチタイワークス事業におけるサービスの付加価値の向上

 当社グループは、ジチタイワークス事業を自治体に関する「情報の最上流」と位置付け、自治体と民間との間に存在する「情報の非対称性」の解消を牽引するメディアの制作及びサービスの提供を目指しております。そのためには、ジチタイワークスのブランド価値を高め、自治体と民間を繋ぐメディアとしての地位を確立させることが課題であると認識しております。

 これを実現するための施策として、さらなるコンテンツ制作体制、サービス運営体制を充実させるとともに、官民協働を支援するweb上のプラットフォームである「ジチタイワークスHA×SH」の運営推進等多面的な展開を進めてまいります。

 

(その他対処すべき課題)

① 広告事業の収益性改善・向上

 当社グループは広告事業を「利益創出事業」と位置付け、事業規模の適正化に加えて、より収益性の改善・向上することが重要であると考えております。

 これを実現するための施策として、SRサービスにおいては、中長期的な収益性の改善を実現するために、戦略的な観点を踏まえ、適切な価格で仕入れを行うことを目的とした応札価格の妥当性の検証とより一層のノウハウの蓄積と業務実態への反映といったPDCAサイクルの運用を行っております。また、SCサービスにおけるマチレットの一件当たりの収益性を向上させるため、冊子の発行が4月~6月に集中し、販売及び制作活動が偏重する傾向を中期的に緩和することで、当該サービスだけでなく事業全体におけるコスト効率化と受注単価の向上に繋げることが課題であると考えております。

 

② 経営管理体制の強化

 事業の成長や業容の拡大に伴い、経営管理体制のさらなる充実・強化が課題であると認識しております。現状、経営の意思決定や社内手続等が適正に行われるようガバナンスの強化に努め、コンプライアンスや適時開示体制を重視した経営管理体制の構築を行っておりますが、安定したサービスを世の中に提供し、企業価値を継続的に向上させるとともに、組織が健全かつ有効、効率的に運営されるように、事業規模に応じた内部統制の整備、強化、見直しや法令遵守の徹底に努めてまいります。

 

 

③ 新規事業・サービスへの挑戦

 当社グループの行う事業は行政政策や社会的な課題の変化に直接的に影響を受け、誕生・発展してきたと言えます。その中で当社グループが継続して独自の成長を果たすためには、自治体に特化したサービスを提供するリーディングカンパニーとして、行政政策等自治体を取り巻く環境の変化への機敏な対応を軸に、自治体との取引実績、ノウハウ、営業力の有効活用、ITによる効率的な事業化への取り組み等を行い、自治体の自主財源確保に繋がる新たなサービスを開発していくことが重要であると考えております。

 

④ 優秀な人材の確保及び育成

 今後、当社グループが持続的に成長していくためには、組織において中核的な役割を担う人材の確保と育成が課題であると認識しております。この課題に対処するために、一般的なビジネスリテラシー水準の向上と、経営者候補人材の育成に繋がる教育制度や仕組みの構築に積極的に取り組んでまいります。

 

⑤ 継続企業の前提に関する重要事象等

 当社グループは、過年度において営業キャッシュ・フローがマイナスの状況にありました。また、2020年12月中旬から2021年1月下旬にわたるJEPXの取引価格の異常高騰により、前連結会計年度において2,498,387千円の債務超過となり、さらに、2021年10月以降にJEPXの取引価格が当社グループの想定以上に高騰し、高止まりし続けたことにより、当連結会計年度において、営業損失16,651,400千円、親会社株主に帰属する当期純損失19,730,966千円を計上しております。これに伴い、後記「(1)エネルギー事業からの撤退」に記載のとおり、2022年3月25日付で、エネルギー事業を営むホープエナジーの破産手続開始の申し立て及びその開始決定がなされました。また、当連結会計期間末においても5,602,419千円の債務超過が継続していることから、継続企業の前提に関する重要な疑義を生じさせる事象又は状況が存在しているものと認識しております。

 しかしながら、以下から、当該事象または状況について重要な不確実性は認められないものと判断しております。

 

(1)エネルギー事業からの撤退

 エネルギー事業におきましては、2020年12月中旬から2021年1月下旬、また2021年10月以降にわたり、JEPXの取引価格が高騰したことを背景として、エネルギー事業における売上原価が大幅に増加したことより、当社グループの財務基盤が大きく毀損する状態が続いておりました。そこで、2021年8月以降は新規応札を停止し、リスクボリュームの抑制を図るとともに、機動的かつ柔軟な経営管理体制を実現するため、2021年8月11日の取締役会決議及び同年9月28日開催の定時株主総会の決議を経て、2021年12月1日付で当社を分割会社とし、ホープエナジーを承継会社とする会社分割を実施するなど、事業継続について慎重に検討しつつ、事業継続に向けた対応策を講じてまいりました。

 しかしながら、JEPXの取引価格の高騰が続く影響を受け、電力の確保が難しくなり、不足インバランス料金が発生いたしました。2022年3月中旬においては、ホープエナジーが支払うべき不足インバランス料金等の託送供給契約に係る料金が未払いとなり、当該債務不履行により、2022年3月22日付でホープエナジーが電力の送配電取引を行うすべての一般送配電事業者との託送供給契約が解除されたことに伴い、エネルギー事業の継続が困難になったものと判断し、2022年3月25日に東京地方裁判所に対して破産手続開始の申し立てを行い、同日付で破産手続開始決定がなされました。なお、当該開始決定に基づき、ホープエナジーは連結の範囲から除外することとなりました。

 ホープエナジーの破産手続開始決定による当社グループの業績への影響については、上述の会社分割の際に重畳的債務引受の方法によりホープエナジーに承継した債務の支払いは履行しており、その後にホープエナジーにおいて生じた債務について、当社、株式会社ジチタイアド及び株式会社ジチタイワークスは保証等の債務負担行為を行っておらず、引当金及び偶発事象は生じておりません。また、ホープエナジーの破産を理由とした当社グループの顧客離反等は現時点において、極めて限定的であることから、当該破産による当社グループの今後の業績への影響は軽微であると判断しております。

 

(2)資金繰りの安定化

 当社としてはメインバンクを中心に金融機関と密接な関係を維持し、継続的な支援が得られるものと考えております。当社は、2022年1月末時点において、一部の銀行借入(2億円)について延滞状態にありましたが、当該銀行を含むすべての取引金融機関との間で、返済期日の見直しを含めた返済計画をもとに協議を行い、2023年3月期末までの返済条件の緩和についての合意が得られております。

 また、2021年5月17日に発行した第三者割当による株式、行使価額修正条項付第9回新株予約権の行使により2021年8月末までにおいて約22億円の資金調達を行っており、さらに、2021年9月21日に発行した第三者割当による株式の発行により約1.5億円、行使価額修正条項付第11回新株予約権の行使により約7.8億円の資金調達を行うなど、エクイティ・ファイナンスによる資金調達を実施しております。2021年12月上旬以降、当社株価が第11回新株予約権の下限行使価額を下回って推移しており、当該新株予約権の行使が進んでいない状況であるものの、現存する当該第11回新株予約権について、今後株価の回復が実現した際には行使が可能になるよう、現時点で当社に取得・消却の意向はありません。

 なお、引き続き債務超過解消に必要な資金調達については、様々な調達方法を積極的に検討していく方針です。

 

⑥ 新型コロナウイルスの事業への影響

 今後のわが国の経済は、新型コロナウイルス感染症の流行拡大に伴う社会経済活動の停滞による影響で、依然として先行き不透明な状態が続くことが懸念されます。当社グループにおいては、テレワークの導入や、社内における感染症対策を徹底し、従業員の安全確保及び事業への影響抑止に務めており、現時点において、今後の事業継続に支障は生じないものと見込んでおります。

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得

お知らせ

tremolo data Excel アドインサービス Excel から直接リアルタイムに企業の決算情報データを取得