業績

 

3 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態及び経営成績の状況

1.経営成績

 当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)における世界経済は、各国において経済活動の再開による回復が進む一方で、コロナウイルス変異株の感染再拡大懸念や、ロシア、ウクライナ情勢の深刻化による、エネルギー・原材料価格の急騰や物流コストの更なる上昇、急速なインフレ圧力に伴う金融市場の変動など、依然として先行きの見通せない状況が継続しております。

このような環境の中、当社グループの主力事業である建機用フィルタ事業においては、各国経済の回復に向けたインフラ投資や資源需要の増加に伴い、中国市場を除く主要地域において、建機の稼働時間と新車需要は高い水準で推移しており、当連結会計年度における当社の売上高は増加いたしました。しかしながら利益面では、世界的なコンテナ船の需要急増に伴う海上輸送費の高騰やその代替輸送手段としての航空費用の増加及びアルミや鋼材等の主要原材料価格の高騰により増益幅が減少いたしました。

また、当連結会計年度において、当社グループは、引き続きロングライフのフィルタ製品やタンク内の気泡を除去するエアレーション技術、フィルタの汚染度や交換頻度を感知するセンサ技術を搭載したフィルタ製品の主要得意先への積極的な提案を進めており、各建機メーカの新機種への製品供給が開始されております。

さらに、主要市場である北米市場においては、世界最大手建機メーカに対する当社の燃料用、トランスミッション用フィルタ等の新規提案・採用が進展し、中国市場においては、排ガス規制の導入を背景に、中国系建機メーカへのリターンフィルタ製品を主軸とした当社製品の新規採用実績は増加しております。このような事業環境下で、本業である建機用フィルタ事業においては、当社の開発技術力を活かした新製品の販売拡大やシェア拡大による事業の安定化と更なる成長が見込まれます。一方、減益要因となっている物流コストや原材料価格の高騰、為替変動に対しては、サプライチェーンの見直しや生産地移管による安定した生産供給体制の構築を図るとともに、決済通貨の見直しによる為替マリーの強化を図り、収益性の改善に努めてまいります。

エアフィルタ事業においては、ビル・工場用エアフィルタの交換需要の低迷などにより減収減益となりましたが、経済活動の回復に伴いビル空調用フィルタ需要は回復傾向にあり、また、新規物件の着工件数の増加により収益の改善が見込まれます。また、新たにロングライフであり低圧損、高捕集率のナノファイバー製エアフィルタ(製品名:NanoWHELP)や溶菌・酵素エアフィルタの、オフィスビルや病院、工場、鉄道車両等への採用に向けた取り組みを加速させるとともに、欧米市場でのエアフィルタ性能の規格(米国規格ASHRAE、欧州規格EN等)を取得し、海外市場の開拓にも取り組んでまいります。

ヘルスケア事業においては、大幅な事業環境の変化に対応するため、抜本的な事業構造改革として、減損損失9億19百万円を特別損失として計上したことにより、通期では大幅な減収減益となりましたが、当第4四半期においては、商流の見直しや不採算製品のリストラを実行し、営業利益の確保を実現いたしました。

 

以上の結果、当連結会計年度の売上高は188億21百万円(前年同期比29.0%増)となり、営業利益は13億44百万円(前年同期は1億45百万円の営業損失)、経常利益は13億17百万円(前年同期は1億35百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は47百万円(前年同期比93.7%減)となりました。

なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等の適用が財政状態及び経営成績に与える影響の詳細については、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表 注記事項 (会計方針の変更)をご参照ください。

 

 

2.連結業績

当連結会計年度(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)業績について

 (単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

増減率

外部売上高

14,587

18,821

4,234

29.0%

営業利益又は営業損失(△)

(利益率)

△145

(△1.0%)

1,344

(7.1%)

1,490

経常利益又は経常損失(△)

(利益率)

△135

(△0.9%)

1,317

(7.0%)

1,452

親会社株主に帰属する四半期純利益

(利益率)

750

(5.1%)

47

(0.3%)

△703

△93.7%

 

売上高については、建機用フィルタ事業において、42.1%の増収となった一方で、エアフィルタ事業において1.2%の減収、ヘルスケア事業においては、35.4%の減収となり、全体では29.0%の増収となりました。

営業利益については、建機用フィルタ事業において、世界的なロジスティクスの混乱による海上輸送費や航空運賃といった物流コストの継続的な高騰や、アルミや鋼材を中心とした主要原材料価格の高騰により減益となりました。一方で、売上高の大幅な増加に伴い、14億90百万円の増益となり、経常利益については、14億52百万円の増益となりました。

親会社株主に帰属する当期純利益については、ヘルスケア事業において、固定資産について、減損損失9億19百万円を特別損失として計上したこと等により93.7%の減益となりました。

 

3.事業セグメント別の売上高と営業利益

 

(建機用フィルタ事業)(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)業績について

(単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

増減率

外部売上高

10,970

15,592

4,622

42.1

営業利益

(利益率)

1,289

(11.8%)

3,115

(20.0%)

1,825

141.6%

 

売上高については、建機の新車生産台数の増加、及び公共事業投資の増加に伴う建機の稼働時間、交換需要の増加により42.1%の増収となりました。

営業利益については、世界的なロジスティクスの混乱による海上輸送費や航空運賃といった物流コストの継続的な高騰や、原材料価格の高騰により減益となる影響がある一方、売上高の大幅な増加に伴い、141.6%の増益となりました。

 

(エアフィルタ事業)(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)業績について

(単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

増減率

外部売上高

2,607

2,577

△30

△1.2%

営業利益

(利益率)

123

(4.7%)

70

(2.7%)

△53

△43.0%

 

売上高については、オフィスビルや工場等の稼働率低迷の影響により交換用フィルタ等の需要減少に伴い1.2%の減収となりました。

営業利益については、売上高の減少、セールスミックスの影響により、43.0%の減益となりました。

 

(ヘルスケア事業)(自 2021年4月1日 至 2022年3月31日)業績について

(単位:百万円)

 

2021年3月期

2022年3月期

増減額

増減率

外部売上高

1,009

651

△357

△35.4%

営業利益

(利益率)

△150

(△14.9%)

△329

(△50.6%)

△179

-

 

ヘルスケア事業については、新たな事業の開始に伴い、前連結会計年度の経営成績は2020年7月から2021年3月の9か月の業績を記載しております。

営業利益については、家庭用マスク市場における市場環境の変化に伴う、需要の大幅な減少により、営業損失となりました。

 

4.財政状態

当連結会計年度末における当社グループの財政状態については、総資産は267億12百万円(前連結会計年度末比5.2%減)となり、負債は61億40百万円(前連結会計年度末比18.2%減)となり、純資産は205億71百万円(前連結会計年度末比0.5%減)となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より34億78百万円減少し、37億18百万円となりました。

 

③ 生産、受注及び販売の実績

当社グループはフィルタ製品の製造・販売を主たる事業としており、事業品目別に記載しております。

a 生産実績

当連結会計年度における生産実績を示すと、次のとおりであります。なお、生産実績については、品目の共通原材料及び共通部品が含まれるため、品目ごとに金額を記載しておりません。

 

事業品目の名称

生産高(千円)

前年同期比(%)

建機用フィルタ事業

9,980,830

145.3

エアフィルタ事業

2,529,184

96.8

ヘルスケア事業

565,000

58.3

合計

13,075,016

125.1

 

(注) 1.金額は販売価格によっております。

2.産業用フィルタ及びプロセス用フィルタについては建機用フィルタ事業に含めております。

 

b 受注状況

当連結会計年度の受注状況を事業品目ごとに示すと、次のとおりであります。

 

事業品目の名称

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

建機用フィルタ

14,238,656

132.3

2,692,088

102.6

産業用フィルタ

594,170

128.1

164,874

176.0

プロセス用フィルタ

927,347

119.3

107,980

121.9

エアフィルタ

2,639,430

104.1

305,867

125.6

ヘルスケア

633,870

62.1

602

5.5

合計

19,033,475

122.3

3,271,413

106.9

 

 

 

c 販売実績

当連結会計年度の販売実績を事業品目ごとに示すと、次のとおりであります。

 

事業品目の名称

当連結会計年度

(自 2021年4月1日

 至 2022年3月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

建機用フィルタ

14,169,702

145.9

産業用フィルタ

522,959

111.2

プロセス用フィルタ

900,233

114.5

エアフィルタ

2,577,178

98.8

 ヘルスケア

651,876

64.6

合計

18,821,949

129.0

 

 

(経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容)

文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

(1) 重要な会計方針及び見積り

当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与えるような見積り及び予測を必要としております。当社グループは、過去の実績値や状況を踏まえ合理的と判断される前提に基づき、継続的に見積り、予測を行っております。そのため、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 

(2) 経営成績に重要な影響を与える要因について

当社グループへの影響としては、特定市場への依存や他社との競合など経済状況の変動を含め、様々な要因が挙げられます。詳細につきましては、「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおり、認識しております。これらのリスクについては発生の回避を図るとともに発生した場合にはその対応に努める所存であります。

 

(3) 経営成績の分析

当連結会計年度において、売上高は188億21百万円(前年同期比29.0%増)となり、営業利益は13億44百万円(前年同期は1億45百万円の営業損失)、経常利益は13億17百万円(前年同期は1億35百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は47百万円(前年同期比93.7%減)となりました。

経営成績に重要な影響を与えた要因は、次のとおりであります。

① 売上高

当連結会計年度の売上高は、建機用フィルタ事業において、42.1%の増収となった一方で、エアフィルタ事業において1.2%の減収、ヘルスケア事業においては、35.4%の減収となり、全体では29.0%の増収となりました。

② 販売費及び一般管理費

当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、62億59百万円(前年同期比5.2%増)となり、前年同期に比べ3億10百万円増加しました。これは主として、建機用フィルタ事業の売上増加に伴い販売運賃が増加したこと、新佐賀工場及び横須賀イノベーションセンタ竣工により減価償却費が増加したこと、並びにベトナム工場の立ち上げに伴い人件費が増加したことによるものであります。

 

③ 営業外損益

当連結会計年度の営業外収益は、前連結会計年度にマスク設備導入に伴う補助金収入を計上したこと等により、38百万円(前年同期比22.5%減)となりました。

営業外費用は、為替差損の増加により、65百万円(前年同期比66.4%増)となりました。

④ 特別損益

当連結会計年度の特別利益は、前連結会計年度に受取和解金及び固定資産売却益を計上したことにより、44百万円(前年同期比96.5%減)となりました。

特別損失は、減損損失、災害による損失、投資有価証券売却損を計上したこと等により、10億24百万円(前年同期比481.6%増)となりました。

 

(4) 財政状態の分析

 (流動資産)
 当連結会計年度末における流動資産の残高は、前連結会計年度末比13億58百万円減少(前連結会計年度末比8.9%減)し、139億64百万円となりました。その主な要因は、現金及び預金が34億78百万円減少(前連結会計年度末比48.1%減)、その他が43百万円減少(前連結会計年度末比5.5%減)した一方で、商品及び製品が9億24百万円増加(前連結会計年度末比50.7%増)、原材料及び貯蔵品が8億27百万円増加(前連結会計年度末比70.3%増)、受取手形及び売掛金が4億10百万円増加(前連結会計年度末比9.6%増)したことによるものであります。

 

(固定資産)
 当連結会計年度末における固定資産の残高は、前連結会計年度末比1億20百万円減少(前連結会計年度末比0.9%減))し、127億47百万円となりました。その主な要因は、建設仮勘定が17億87百万円減少(前連結会計年度末比63.9%減)、投資有価証券が9億83百万円減少(前連結会計年度末比97.3%減)、機械装置及び運搬具は6億33百万円減少(前連結会計年度末比35.8%減)した一方で、建物及び構築物が32億9百万円増加(前連結会計年度末比149.6%増)したことによるものであります。

 

(流動負債)
 当連結会計年度末における流動負債の残高は、前連結会計年度末比9億5百万円減少(前連結会計年度末比16.3%減)し、46億34百万円となりました。その主な要因は、未払金が11億99百万円減少(前連結会計年度末比72.7%減)、短期借入金が6億円減少(前連結会計年度末比100.0%減)した一方で、その他が6億58百万円増加(前連結会計年度末比223.1%増)、支払手形及び買掛金が2億61百万円増加(前連結会計年度末比13.4%増)したことによるものであります。

 

(固定負債)
 当連結会計年度末における固定負債の残高は、前連結会計年度末比4億62百万円減少(前連結会計年度末比23.5%減)し、15億6百万円となりました。その主な要因は、長期借入金が4億3百万円減少(前連結会計年度末比26.4%減)したことによるものであります。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は、前連結会計年度末比1億11百万円減少(前連結会計年度末比0.5%減)し、205億71百万円となりました。その主な要因は、利益剰余金が3億81百万円減少(前連結会計年度末比4.8%減)した一方で、為替換算調整勘定が2億26百万円増加(前連結会計年度末比252.3%増)したことによるものであります。

 

(5) キャッシュ・フローの状況の分析

① キャッシュ・フロー

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という)は、前連結会計年度末より34億78百万円減少し、37億18百万円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は以下のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動の結果得られた資金は、2億89百万円(前年同期は得られた資金87百万円)となりました。

その主な内訳は、税金等調整前当期純利益3億37百万円、減価償却費の計上8億69百万円、減損損失9億19百万円、その他の増加1億93百万円があった一方で、棚卸資産の増加16億42百万円、法人税等の支払4億26百万円があったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は、22億77百万円(前年同期は使用した資金43億99百万円)となりました。

その主な内訳は、有形固定資産の取得による支出31億71百万円した一方で、投資有価証券の売却による収入9億68百万円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は、15億53百万円(前年同期は得られた資金32億12百万円)となりました。

その主な内訳は、短期借入金の返済6億円、配当金の支払4億28百万円、長期借入金の返済4億3百万円あったこと等によるものであります。

 

② 資金需要

資金需要の主なものは、製品製造費用、販売費及び一般管理費等の営業費用に係わる運転資金と設備投資資金であります。これらの運転資金及び設備投資資金については、主に自己資金を充当しております。

 

(6) 経営戦略の現状と見通し

当社グループの果たす社会的責任(CSR)の重要なテーマとして、企業活動から生じる環境・社会・経済に与える影響を勘案した長期的な企業戦略であるコーポレート・サステナビリティ(Corporate Sustainability)を明確にし、その具体的なSDGs推進プロジェクトとして「YSS(Yamashin Sustainable Solutions)」を立ち上げ、その推進のために取締役社長の諮問機関であるYSS委員会を設置しております。同委員会による活動を通じ、経営理念である「仕濾過事」(ろかじにつかふる)の具現化、技術力を生かした新たな価値創造と、脱炭素、TCFD、再生可能エネルギー、資源循環といった社会課題の解決を通じ社会に貢献してまいります。今後の見通しとしては、当社独自開発のナノファイバーの量産化技術を基に、建機用フィルタビジネス、エアフィルタビジネスの拡大に加え、産業資材としての活用や、M&Aや事業提携を踏まえた新規事業ポートフォリオの確立に取り組み、中期的持続的な事業成長とSDGsへの積極的な取り組みを両立させ、企業価値の向上を図ってまいります。

 

(7) 経営者の問題認識と今後の方針

当社グループは、現在の事業環境及び入手可能な情報に基づき最善の経営方針を立案し、企業価値を最大限に高め、強固な企業体質を確立すべく努めております。具体的には「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりであります。

 

(8) 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

詳細については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (2)目標とする経営指標」に記載のとおりであります。

 

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