課題

1【経営方針、経営環境及び対処すべき課題等】

文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1)会社の経営の基本方針

経営理念

・人と社会に豊かさを提供する

・高い技術、サービスで恒久的な存続を追求する

 

PETボトルの生産(成形)機であるストレッチブロー成形機の製造・販売を手がけている当社グループは、高い先取的技術性を蓄積しながら、よりきめ細かいユーザーへのサービスを提供し、PETボトルを広く世界に、より多くの用途で普及させていく事業を営んでおります。当社グループはこの事業をより発展させ、人々が、便利で豊かな生活を営むことに資することを目指しております。

 

企業目標の達成には、業務執行体制の整備とそこに帰属する要員の高い資質が求められます。これに添い、就業者に対しては、前述の経営理念に基づく企業目標を達成する上での、業務遂行上の規範になるものとして、以下の「行動指針」を設定しております。

 

行動指針

・顧客満足の追求

・継続的改善への試み

・規律と活力ある職場

 

(2)業界構造、市場環境及び経営環境

① 業界の特徴

当社の所属するストレッチブロー成形機業界は、容器の成形方法の違いから、下記の2種類に大別されます。

 

<2ステップ方式(以下、2ステップ機)>

容器の原形となる1次成形品のプリフォーム成形と、それに高圧エアを噴射して膨らませるブロー成形工程を別々の機械で行う方式であります。容器の成形時間においてボトルネックとなるプリフォーム成形を別の機械で行い、それをストックして搬送システムでブロー成形機に投入し膨らませることで量産性を確保します。但し、機械の特性上、均一で単純形状の容器成形に適しているため、主に飲料容器の大量生産に使われております。

 

<1ステップ方式(以下、1ステップ機)>

当社の得意とする方式で、プリフォーム成形とブロー成形工程を1台の機械で行う方式であります。2ステップ機に比べて量産性では劣りますが、同一の機械で成形するため、産業設備としての省エネ・省スペース・省人化に優れ、プリフォームの保管工程を省くことで衛生面も優れております。また、機械の特性上、容器形状の制約がないため、複雑で多種多様な容器の成形に適しており、主に食品や日用品、化粧品といった非飲料容器の中小ロット生産で使われております。

 

② 当社成形機の特徴

当社は1ステップ機を主力とし、その分野において高い評価を得ておりますが、その理由は独自の「4ステーション方式」であります。具体的には、①プリフォーム成形、②温度調整、③ブロー成形、④取出し工程の4つのステーションで構成されており、中でも重要なのが第2ステーションの温度調整機能であります。プリフォームを容器形状に応じて温度調節することで、成形難度が高く、複雑な形状が求められる多種多様な容器成形を可能としております。

また、近年では、「ゼロ・クーリングシステム」と命名した新技術の開発実用化を進め、製品競争力を強化しました。これは、1ステップ機の中でも当社の4ステーション方式でしか成し得ない、容器の生産性・物性強度・外観品質・軽量化を同時にかつ飛躍的に向上させる画期的な新技術であります。とりわけ、軽量化についてはプラスチック材料の使用量削減を実現できるため、廃プラスチック問題への対策としても有効な技術であります。

 

③ 市場環境の変化及び競争優位性

現在、容器分野においては、一般消費者の価値観の変化・多様化を受け、多くの課題が生じております。

具体的には、価値観の多様化による容器寿命短期化への対応や、商品差別化のための容器の高付加価値化への対応が挙げられます。また、廃プラスチック問題に端を発する環境意識の高まりから、リサイクル材料や生分解性樹脂等を用いた環境配慮型容器が注目を集めております。更に、新型コロナウイルス感染症対策を背景に、消毒液や医薬品などの衛生用品の需要が世界的に高まっております。

このような市場環境の変化を背景に、多品種・高難易度の容器を中小ロットで効率的に生産できる当社の1ステップ機への注目度が高まっております。

また、当社は機械メーカーでありながら、「顧客が最終的に欲しいのは容器」だという考えの下、技術者が国内外の客先に出向き、機械・金型・成形技術の「三位一体の技術力」で、顧客が容器品質に満足するまで徹底した成形支援を行うことをモットーとしております。これによって当社の技術者も腕を上げ、複雑な温度調整等の高度な要素技術を蓄積し、それを技術開発に還元し、顧客ニーズを満たした成形機を開発することで、新たな容器市場を開拓して参りました。

 

④ 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

多様化するビジネス環境の中で、常に優位性を保ち続けながら、進化発展を成し遂げるためには、利益を着実に生み出す収益構造と効率経営が必須であります。

とりわけ、主たる市場を海外に求めながら、製造拠点を日本から拡充し、製品・企業体そのものの競争力を増強させてきたメーカーとして、当社グループは、売上総利益、営業利益及び経常利益について、絶対額の増加、及びこれらの対売上高比率の均衡・良化を重要な経営指標としております。

 

(3)中長期的な会社の経営戦略・優先的に対処すべき課題

今後につきましては、ロシア・ウクライナ情勢の長期化によるエネルギー価格の高騰、急激なインフレ進行による景気減速懸念など、先行きには不透明感が漂っております。

ストレッチブロー成形機業界におきましては、設備投資意欲の減退懸念など短期的な不安要素はあるものの、大規模展示会の再開など営業活動を取り巻く状況は好転しており、また、生活必需品に根差した容器需要は中長期的には着実な成長が見込まれ、当社ビジネスは堅調に推移すると思われます。

一方で、気候変動問題やESG経営などの社会課題への対応は業界のリーディングカンパニーとしての責務であると認識しており、中長期的な事業規模の拡大を図るため、下記の重要施策を実施して参ります。

 

① 製品競争力向上によるシェア拡大

高い生産性と容器品質を併せ持つ画期的な成形プロセスである「ゼロ・クーリングシステム」の更なる浸透及び金型交換時間(段取り時間)の大幅削減を可能とする「クイックモールドチェンジ」の提案等により、顧客の容器生産の向上に貢献して参ります。なお、「ゼロ・クーリングシステム」は、1ステップ機の中でも当社の4ステーション方式でしか成し得ない独自技術であり、また、1ステップ機はプリフォームの内部保有熱を無駄なく利用できるため、2ステップ機に比べ、エネルギー効率が格段に優れております。当社は、成形性能と環境性能の両方を訴求することで、シェア拡大を図って参ります。

 

② 強固な生産体制の構築

当社の企業競争力の源泉であるインド工場の更なる有効活用のため、現在進めているインド工場への追加投資を完了し、インド生産移管を拡充することで原価低減及び納期短縮を強化して参ります。更に、将来の事業拡大に備え、国内新工場の計画を見据え、グローバルな規模での生産体制を最適化して参ります。

 

③ 環境対応新型機の早期売上貢献

当社では、「3R+Renewable」の全てにおいて競争力のある機械を提供しております。その中でも、PETボトルリユースを提案する「HSB-4N」は、当社独自のダブルブロー・ヒートセット成形により、25回の再利用が可能な業界最軽量のリターナブルボトルの成形が可能です。また、「PF36シリーズ」は12Lのウォーターサーバーボトルの成形も可能で、大幅な樹脂削減に貢献します。更に、「二層成形法」はリサイクル樹脂の使用を促進します。ドイツで行われた世界最大のプラスチック展示会でも大きな反響を得ており、プラスチック環境問題の解決策としても、早期の売上貢献を図って参ります。

 

④ ESG経営への取り組み

「人と社会に豊かさを提供する」、「高い技術、サービスで恒久的な存続を追求する」という当社の経営理念は、自然豊かな長野県小諸発のグローバルメーカーとして、サステナビリティ経営を体現するものであり、持続可能な社会の実現に向け、ESG経営を積極的に推進しております。

環境面では、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同し、TCFD提言に即した枠組みでの情報開示を進めております。また、関連する取り組みとして、国内工場2拠点にCO2フリー電力を導入し、両拠点での電力使用によるCO2排出量を実質ゼロにしたほか、2022年10月に長野県が発行するグリーンボンドへの投資を行い、長野県の環境負荷を軽減する施策に貢献しております。

社会性向上に関しては、各種研修の充実を図り、次世代リーダー及び女性管理職の育成に努めております。また、健康経営の推進と福利厚生の充実を図り、従業員にとって働きやすい職場づくりの構築に努めております。更に、福祉・教育・環境をテーマとして、各種物品寄贈などの社会貢献を実施しております。インドにおいても、経済産業省認定の「日本式ものづくり学校」をインド工場に設立し、近隣学生への技術教育を行っております。

ガバナンス面では、代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会を設置し、サステナビリティ経営を強化しております。同委員会は、主な取締役と部長職で構成され、気候変動及び人的資本・多様性等に関連する重要事項を審議し、定期的にグローバル事業推進会議に報告するとともに、必要に応じて取締役会へ報告することで、サステナビリティ課題と経営戦略の統合を図っております。また、2022年12月16日付けで取締役会の任意の諮問機関として「指名・報酬委員会」を設置いたしました。取締役の指名・報酬等に係る評価・決定プロセスの透明性及び客観性を担保し、独立社外取締役の適切な関与と助言を得る仕組みを強化することで、コーポレート・ガバナンス体制の充実を図っております。なお、当社では業務執行部門からの独立性を確保するため、内部監査室を代表取締役社長直属の機関として位置付け、また、同室から取締役会及び監査役会に適切に直接報告を行う体制を採用しておりますが、今後、同室から監査役にも直接報告する体制を整備し、内部監査部門の活用を通じて監査役の更なる機能発揮につなげて参ります。

 

(4)気候変動への取り組みとTCFDへの対応

当社グループは、ストレッチブロー成形機業界のリーディングカンパニーとして、創業以来、エネルギー効率に優れた1ステップ成形機の開発に取り組むとともに、先進的な環境配慮型の技術を開発し、市場に製品を供給してきました。当社では、気候変動問題は最も優先して取り組むべき社会課題であると認識するとともに、中長期的な重要施策として、脱炭素化への取り組みや環境に配慮した新技術の開発に注力しております。2022年8月には「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同を表明するとともに、以下のとおり、TCFD提言に則った「ガバナンス」、「戦略」、「リスク管理」、「指標と目標」の4項目の情報開示を積極的に進めております。なお、詳細は、当社ホームページにおいて掲載しております。

 

① ガバナンス

当社ではサステナビリティ推進委員会を設置しております。代表取締役社長が委員長を務め、その指揮の下、気候変動に関する企画立案・管理を行い、関係部門やグループ会社と連携の上、取り組みを推進しております。サステナビリティ推進委員会で審議された気候変動に関する重要事項は、定期的にグローバル事業推進会議に報告されます。更に、グローバル事業推進会議は、気候変動に関する重要なリスクと機会等について審議・監督を行い、必要に応じて取締役会へ報告し、全社的な経営戦略への統合を図っております。

 

② 戦略

当社では、気候変動により生じるリスクと機会の特定を行い、自社の気候変動に対するレジリエンス性の確認と考察を行っております。分析には、IPCCやIEAが公表する「4℃シナリオ」と「1.5℃シナリオ」の2つのシナリオを設定し、それぞれの世界観における2030年時点での当社への影響を想定して定性的な分析をしております。

なお、4℃シナリオとは、産業革命期頃の世界平均気温と比較して2100年までに気温が最大4℃上昇し、風水害をはじめとした物理的被害が拡大・激甚化することを想定した世界観を指します。また、1.5℃シナリオとは、気温上昇を1.5℃程度に抑制するために、カーボンニュートラルへの取り組みにより規制強化や技術革新が進むことを想定した世界観を指します。

 

分析結果

4℃シナリオでは、特に当社の生産拠点である千曲川工場やインド工場における被災は、企業経営の大きなリスクになると推測されます。また、原油を材料とするPET樹脂などの樹脂価格の高騰を招き、顧客の設備投資意欲の減退につながることも想定されます。しかし、災害時の飲料水・食品等の確保の観点においては、ペットボトルの貢献性は高く、当社ビジネスの社会貢献性も認識しております。

 

1.5℃シナリオでは、炭素税・排出権取引の導入や化石燃料由来の電力価格が高騰することが予測され、操業コストの増加が懸念されます。また、サプライチェーンではカーボンプライシングによる影響を製品やサービス価格に転嫁され、仕入コストの増加も懸念されます。一方、企業の省エネルギー需要が拡大し、当社の主力商品である1ステップ成形機の優れた環境性能やゼロ・クーリングシステムをはじめとする独自技術に対する評価が高まり、事業機会となる可能性を認識しております。

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影響度評価の軸

大:操業コストを大きく増加させる可能性のあるもの、当社事業に直接的な影響を及ぼすもの

中:影響はあるものの、現行の取り組みでも十分に対応可能なもの

小:対処が容易であるもの、影響が軽微なもの

 

 

リスク・機会に対する当社の対応

当社では、今回のシナリオ分析で特定・評価したリスクや機会に対応する現在の取り組みとして、以下の対策を実施しております。また今後は、定量的なリスクと機会の評価を通じて、影響規模の具体化を検討して、対応策の強化を図って参ります。

 

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③ リスク管理

気候関連リスクの識別及び評価はサステナビリティ推進委員会が実施し、定期的にグローバル事業推進会議へ報告しております。グローバル事業推進会議では、気候関連リスクを含む当社グループのリスク管理に関する事項を審議し、識別したリスクに対して組織的かつ適切な予防策を講じております。また、グループ各社におけるリスク管理にあたっては主管部門を設置し、リスク管理の対応方針等の決定事項の伝達や、リスクの再評価及びリスク対策の再設計、強化の指示を行っております。

 

④ 指標と目標

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当社では、まずは「2030年までに日本国内の工場から排出されるCO2排出量を50%削減する(2019年比)」との目標を掲げ、脱炭素化に取り組んでおります。なお、当社グループにおける「工場からのCO2排出量」のうち、約9割をインド工場が占めており、今後は、インド工場におけるCO2削減策の検討及び目標設定を行い、グループ全体での脱炭素化に取り組んで参ります。

また、当社の主力製品であるストレッチブロー成形機は、顧客企業におけるエネルギー消費によって稼働する設備機器であり、Scope3のカテゴリ11(=販売した製品の使用に伴う排出)も、当社事業において重要な指標の一つであると考えております。なお、当社製1ステップ成形機は、プリフォームの内部保有熱を無駄なく利用できるため、同業他社の2ステップ成形機に比べエネルギー効率が格段に優れております。1.5℃シナリオにおいては、環境性能の高さが当社技術の評価につながり、事業機会となることを認識しておりますが、今後は、Scope3のカテゴリ11も含めた評価モデルを構築し、事業活動における排出削減及び環境負荷低減製品の開発による排出削減に取り組んで参ります。

 

以上の経営施策を的確に実施することにより、変化する経営環境の中でも企業価値の向上に尽力し、持続的な成長を期して参ります。

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