(1)経営成績等の状況の概要
当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当期のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症拡大により、政府による緊急事態宣言が2回にわたり発令されるなど、年間を通じて経済活動、社会生活ともに大きく制限され、厳しい状況が続きました。国内においては、経済活動再開に向けた政策が講じられたことにより、回復の兆しは見られるものの、世界的に感染症拡大の収束時期は未だ見通すことができず、先行きは不透明な状況が続いており、今後、長期化することが懸念されております。
当社グループを取り巻く事業環境につきましては、水処理及び廃棄物処理の環境関連事業に係る国内公共投資は、頻発かつ激甚化している自然災害に対する防災・減災、国土強靭化対策、地球温暖化防止や循環型社会の構築に資する関連需要により、前期に引き続き堅調に推移しました。水処理関連事業及び化学・食品機械関連事業に係る国内の民間設備投資は、一部に新型コロナウイルス感染症拡大により投資を見送る動きも見られましたが、概ね横ばいとなりました。
このような状況の中、当社グループでは、企業理念のもと、社会に貢献しつつ、これからも時代を超えて繁栄し続けることを全社で共有し、当期2020年度を最終年度とする5ヵ年の中期経営計画において、その基本方針である「①主力事業のリノベーション」、「②海外展開・新規事業での着実なビジネスの拡大」、「③神戸製鋼グループとの連携強化」に沿った諸施策を実施し、事業活動を展開してまいりました。
当期の経営成績につきましては、受注・受託高は水処理関連事業及び廃棄物処理関連事業で大型案件の受注があった前期に比べ25,431百万円減(21.0%減)の95,543百万円となり、当期末の受注・受託残高は、前期に比べ16,862百万円減(7.5%減)の209,282百万円となりました。売上高は、大型案件の工事進捗の寄与やアフターサービスの増加などにより、前期に比べ14,407百万円増(14.7%増)の112,405百万円、利益に関しては、増収や収益性改善などにより、営業利益は前期に比べ2,131百万円増の5,635百万円、経常利益は前期に比べ2,143百万円増の5,673百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は、特別損失の計上や法人税等を差引いた結果、前期に比べ888百万円増の3,617百万円となりました。
現中期経営計画の最終年度の数値目標でありました連結売上高1,100億円、連結経常利益50億円を達成いたしました。
当連結会計年度末の連結財政状態につきましては、総資産は95,993百万円となり、前連結会計年度末に比べ11,298百万円増加しました。流動資産は71,754百万円となり、前連結会計年度末に比べ10,398百万円増加しました。主な要因は、受取手形及び売掛金の増加12,814百万円によるものです。固定資産は24,238百万円となり、前連結会計年度末に比べ900百万円増加しました。
負債合計は62,542百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,213百万円増加しました。流動負債は52,805百万円となり、前連結会計年度末に比べ7,797百万円増加しました。主な要因は、短期借入金の増加3,599百万円、電子記録債務の増加1,083百万円によるものです。固定負債は9,736百万円となり、前連結会計年度末に比べ584百万円減少しました。
純資産合計は33,450百万円となり、前連結会計年度末に比べ4,085百万円増加しました。主な要因は、親会社株主に帰属する当期純利益3,617百万円の計上による増加、配当金725百万円の支払いによる減少によるものです。この結果、当連結会計年度末の自己資本比率は、34.6%となりました。
② キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における連結ベースの現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、未収入金の減少、短期借入金の増加等の収入要因はありましたが、売上債権の増加、法人税等の支払額等による支出要因により、前連結会計年度末に比べ554百万円減(10.4%減)の4,757百万円となりました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果支出した資金は、1,044百万円(前年同期は5,256百万円の収入)となりました。
これは主に税金等調整前当期純利益5,432百万円、売上債権の増加12,330百万円によるものであります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は、1,941百万円(前年同期は2,291百万円の支出)となりました。
これは主に有形固定資産の取得による支出1,346百万円、無形固定資産の取得による支出348百万円によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果取得した資金は、2,398百万円(前年同期は2,955百万円の支出)となりました。
これは主に短期借入金の増加による収入3,584百万円、配当金の支払額725百万円によるものであります。
(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものであります。
① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
当社グループの事業セグメントは水処理関連事業、廃棄物処理関連事業、化学・食品機械関連事業で構成しており、セグメント別の経営成績等は次のとおりであります。
a. 生産実績
当連結会計年度における生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前年同期比(%) |
水処理関連事業 |
42,388 |
13.1 |
廃棄物処理関連事業 |
58,717 |
13.3 |
化学・食品機械関連事業 |
10,620 |
11.2 |
小計 |
111,726 |
13.1 |
調整額 |
182 |
- |
合計 |
111,908 |
13.1 |
(注)1.上記金額には、消費税等を含んでおりません。
2.金額は販売価格で表示しております。
b. 受注・受託実績
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
受注・受託高 (百万円) |
前年同期比(%) |
受注・受託残高 (百万円) |
前年同期比(%) |
水処理関連事業 |
42,432 |
△20.7 |
64,774 |
△0.2 |
廃棄物処理関連事業 |
42,802 |
△24.8 |
138,008 |
△10.4 |
化学・食品機械関連事業 |
10,174 |
△3.6 |
6,488 |
△10.8 |
小計 |
95,409 |
△21.0 |
209,272 |
△7.5 |
調整額 |
133 |
- |
10 |
- |
合計 |
95,543 |
△21.0 |
209,282 |
△7.5 |
(注)1.上記金額には、消費税等を含んでおりません。
2.金額は販売価格で表示しております。
3.当連結会計年度の受注・受託高に含まれる海外受注高は7,681百万円であります。
4.当連結会計年度の受注・受託高及び受注・受託残高の数値は長期運転維持管理案件を含めた数値としており
ます。
5.対前期増減率は受託高を含めた実績・残高数値との増減率を算定しております。
6.当連結会計年度末の受注・受託残高に含まれる海外受注残高は11,058百万円であります。
c. 販売実績
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前年同期比(%) |
水処理関連事業 |
42,554 |
14.5 |
廃棄物処理関連事業 |
58,752 |
13.6 |
化学・食品機械関連事業 |
10,960 |
20.7 |
小計 |
112,267 |
14.7 |
調整額 |
138 |
- |
合計 |
112,405 |
14.7 |
(注)1.上記金額には、消費税等を含んでおりません。
2.金額は販売価格で表示しております。
3.当連結会計年度の販売実績に含まれる海外売上高は6,132百万円であります。
(水処理関連事業)
水処理関連事業では、「富士市西部浄化センター消化ガス発電事業」を開始しました。当社は浄化センターで発生する消化ガスを富士市から購入し、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT制度)の適用を受けた民設民営の消化ガス発電事業を行います。富士市は20年間にわたり、消化ガス収入を消化設備の改築に充当することになっております。海外においては、前年度に水道事業を開始したカンボジアで、同国の工業科学技術革新省と小規模浄水設備の普及促進に関する協力覚書を締結しました。また、ベトナムでは、KOBELCO ECO-SOLUTIONS VIETNAM CO.,LTD.が、政府系の経済文化研究所などが主催するイベントにおいて、2020年度の「Top10 Vietnam Gold Brands」を受賞しました。これは「浄水処理サービス」の分野において、同社が安全、高品質の製品とサービスを提供したことなどが評価されたものです。
業績につきましては、受注・受託高は前期に比べ11,077百万円減の42,432百万円、受注・受託残高は前期に比べ121百万円減の64,774百万円となりました。また、売上高は大型案件の工事進捗の寄与などにより前期に比べ5,373百万円増の42,554百万円となり、経常利益は、増収及び収益性改善などにより前期に比べ1,719百万円増の2,264百万円となりました。セグメント資産は前期に比べ4,569百万円増の27,324百万円、セグメント負債は前期に比べ104百万円減の13,820百万円となりました。
(廃棄物処理関連事業)
廃棄物処理関連事業では、栃木県壬生町から「壬生町清掃センター基幹的設備改良工事」、並びに柏・白井・鎌ケ谷環境衛生組合(千葉県)から「クリーンセンターしらさぎ基幹的設備改良工事」を受注しました。施設の延命化を図ることで廃棄物処理施設の整備に係わるトータルコストの縮減と平準化に寄与するとともに、操業に伴い発生するCO₂排出量を削減し、循環型社会の形成に貢献するものです。また、英国において建設中の廃棄物発電案件につきましては、新型コロナウイルス感染症による工程への影響を含むリスク管理を強化してプロジェクトを遂行しております。
業績につきましては、受注・受託高は前期に比べ14,094百万円減の42,802百万円、受注・受託残高は前期に比べ15,950百万円減の138,008百万円となりました。また、売上高はアフターサービスの増加や大型案件の工事進捗などにより、前期に比べ7,041百万円増の58,752百万円となり、経常利益は一部国内外大型案件の採算悪化などがあり前期と同水準の2,745百万円となりました。セグメント資産は前期に比べ8,665百万円増の41,439百万円、セグメント負債は前期に比べ3,731百万円増の21,220百万円となりました。
(化学・食品機械関連事業)
化学・食品機械関連事業では、「ものづくり力」強化として自動化の推進や、商談時の顧客満足度向上を図るための取り組みを進めております。新型コロナウイルス感染症による主力関連市場における設備投資への影響は限定的であり、国内において、高い水準の需要が継続しました。
業績につきましては、受注・受託高は前期に比べ374百万円減の10,174百万円、受注・受託残高は前期に比べ786百万円減の6,488百万円となりました。また、売上高は前期に比べ1,878百万円増の10,960百万円となり、経常利益は増収などにより前期に比べ412百万円増の1,363百万円となりました。セグメント資産は前期に比べ37百万円増の8,863百万円、セグメント負債は前期に比べ122百万円増の3,001百万円となりました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因として、個別受注生産が主体の事業形態となっており、様々な外部要因の影響をうけることにより、売上高及び利益が計画通りに達成されない可能性があります。
なお、詳細は、「2.事業等のリスク」に記載しましたとおりであります。
前連結会計年度と当連結会計年度のセグメント別の受注・受託高、売上高、経常損益及び差異分析の概要は次の通りです。
(水処理関連事業)
(廃棄物処理関連事業)
(化学・食品機械関連事業)
2016年から2020年度までの5か年現行中期経営計画で掲げた重要課題に取組み、最終年度の数値目標を達成したと評価しております。特に、アフターサービスの収益基盤は、一昨年の廃棄物処理施設関連事業の統合効果もあり、より強固なものとなっております。加えて、高シェア事業の更なる地位向上の推進や新規事業の開始により、当社グループの事業規模は拡大傾向にあります。
一方、水処理及び廃棄物処理の環境関連事業に係るプラントの設計(E)、調達(P)、建築(C)を一括で行うEPC案件市場は、引続き国内外とも厳しい状況にあると認識しております。また、工事進捗中の案件において、不測の要因からのコストアップ発生により業績に影響を与えており、収益改善への課題を解決する必要があります。
更なる企業価値向上に向け、事業運営を行う中で直面した諸課題の解決に取組み、2021年度から2023年度までの新中期経営計画に掲げた目標達成に向け、経営体質を一層強化してまいります。
(注)当社はその事業の性質上、セグメント横断的に分析・検討を行っております。そのため、セグメント毎ではなく包括的に事業の分析・検討事項を記載しております。
② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
当社グループは、神戸製鋼グループのCMS(キャッシュ・マネジメント・システム)に参加しており、管理会社であるコベルコフィナンシャルセンター株式会社より運転資金を調達し、余剰資金が生じた場合には同社へ預け入れを行っております。また、大型の設備投資資金については、金融機関からの長期借入等を利用しております。
当社グループの資金需要は、営業活動については、生産活動に必要な運転資金(機器材・外注費及び人件費等)、受注獲得のための販売費、競争力強化・技術力向上に資するための研究開発費が主な内容であります。支払は検収の都度行われるのに対し、入金は一定期間の出来高に基づき入金時期が決定する案件が多く、工事進捗期間は支出が先行する傾向にあります。また、官公庁からの売掛金入金が第1四半期に集中することから年間を通じて運転資金の変動が大きくなる傾向にあるため、CMSを活用し、資金の流動性を維持していきます。
投資活動については、設備投資・投融資のほか、企業統合に関する投資、上記のCMSにおける余剰資金の貸付が主な内容であります。今後、成長分野に対しては必要な投資や研究開発等を継続していきます。
2021年3月31日現在の有利子負債の内訳につきましては以下の通りであります。
|
年度別要支払額(百万円) |
||||
契約債務 |
合計 |
1年以内 |
1年超3年以内 |
3年超5年以内 |
5年超 |
短期借入金 |
9,401 |
9,401 |
- |
- |
- |
長期借入金 |
2,549 |
366 |
572 |
570 |
1,039 |
リース債務 |
82 |
47 |
26 |
8 |
- |
上記の表において、連結貸借対照表の短期借入金に含まれている1年内返済予定の長期借入金は、長期借入金に含めております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この連結財務諸表の作成にあたって、見積りの変化が親会社株主に帰属する当期純利益に重要な影響を及ぼす可能性があり、特に以下の会計方針が、連結財務諸表の作成において使用される当社の重要な見積りと判断に大きな影響を及ぼすと考えております。
a.工事進行基準
成果の確実性が認められる工事契約等については、工事進行基準(工事の進捗度は、見積総原価に対する発生原価の進捗度の割合で測定)により売上高を計上しています。見積総原価の策定上にて想定していない原価の発生等により工事進捗度に影響がある場合は、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
b.工事損失引当金
工事契約等における未引渡案件において、見積総原価が工事収益総額を超過すると見込まれる額のうち、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額を工事損失引当金として計上しております。当初予想しえなかった追加原価等により、工事の進行に伴い見積りを超えた原価が発生する場合は、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
c.製品保証引当金
当社グループは、製品の販売後の保証費用の支出に備えるため保証費用の見積額について、製品保証引当金を計上しております。当該引当額は、個別案件に対する見積額及び売上高に対する過去の経験率を基準とした見積額を計上しております。想定していなかった製品の不具合による保証義務の発生等により、実際の保証費用が見積額を超える場合は、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
d.貸倒引当金
当社グループは、債権の貸倒れ時に発生する損失の見積額について、一般債権については貸倒実績率により、貸倒懸念債権等特定の債権につきましては個別に債権の回収可能性を勘案し、貸倒引当金を計上しております。顧客の財政状態の変化により、貸倒引当金の修正が必要となる場合は、当社グループの業績を変動させる可能性があります。
e.繰延税金資産
当社グループは、繰延税金資産について、将来の利益計画に基づいた課税所得が十分に確保でき、回収可能性があると判断した将来減算一時差異等について算出しております。繰延税金資産の回収可能性は将来の課税所得の見積りに依存するため、その見積額の前提条件や仮定に変更が生じた場合には、繰延税金資産が増額又は減額され、損益及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
f.退職給付費用及び債務
従業員の退職給付費用及び債務は、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。これらの前提条件には、割引率、退職率、死亡率及び年金資産の期待運用収益率等が含まれます。実際の結果が前提条件と異なる場合又は前提条件が変更された場合は、その影響は、将来期間において認識される費用及び債務に影響を及ぼす可能性があります。
お知らせ