業績

3【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

1.経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」)の状況は次のとおりである。

(1) 財政状態及び経営成績の状況

① 概要

 当連結会計年度の連結売上高は、2,802,323百万円(前連結会計年度比28.0%増)となった。利益については、営業利益は317,015百万円(前連結会計年度比89.5%増)となった。売上高営業利益率は前連結会計年度を3.7ポイント上回る11.3%となった。税引前当期純利益は、324,568百万円(前連結会計年度比99.4%増)、当社株主に帰属する当期純利益は224,927百万円(前連結会計年度比111.7%増)となった。

 

 

2021年度

前連結会計年度比

売上高

2,802,323

百万円

28.0%

建設機械・車両

2,564,398

百万円

29.8%

リテールファイナンス

71,862

百万円

8.2%

産業機械他

188,368

百万円

10.0%

消去

△22,305

百万円

 

-

セグメント利益

315,536

百万円

83.1%

建設機械・車両

275,768

百万円

91.8%

リテールファイナンス

17,199

百万円

62.7%

産業機械他

22,595

百万円

38.3%

消去又は全社

△26

百万円

 

-

営業利益

317,015

百万円

89.5%

税引前当期純利益

324,568

百万円

99.4%

当社株主に帰属する当期純利益

224,927

百万円

111.7%

 

② 為替レート変動の影響

 当連結会計年度は前連結会計年度に比較し、為替レートが米ドル、ユーロ、豪ドル、南アランド等に対して円安に推移した。為替レートの変動により、建設機械・車両事業のセグメント利益は前連結会計年度比で約290億円増加したと試算される。為替レート変動の影響は、各社の外貨建取引額に各為替レートの変動を乗じて算出した金額の合計として試算されている。為替レート変動に対応した販売価格変更の影響は考慮していない。

 

③ 売上高

 売上高は前連結会計年度の2,189,512百万円と比較して28.0%増加の2,802,323百万円となった。国内売上高は前連結会計年度の384,302百万円と比較して1.2%増加の389,085百万円、海外売上高は前連結会計年度の1,805,210百万円と比較して33.7%増加の2,413,238百万円となった。

 

④ 売上原価、販売費及び一般管理費

 売上原価は、売上高の増加に伴い、前連結会計年度比25.8%増加して2,022,747百万円となった。売上高に対する比率は72.2%と前連結会計年度比で1.3ポイント減少した。

 販売費及び一般管理費は、前連結会計年度比13.5%増加して464,040百万円となった。

 なお、売上原価、販売費及び一般管理費に含まれる研究開発費は、前連結会計年度比4.9%増加して774億円となった。

 

⑤ 長期性資産等の減損

 長期性資産等の減損は、前連結会計年度の2,403百万円と比較して1,031百万円減少の1,372百万円となった。当連結会計年度の長期性資産等の減損は、主として非償却無形固定資産及び有形固定資産の減損によるものである。

 

 

⑥ その他の営業収益(△費用)

 その他の営業収益(△費用)は、前連結会計年度の2,608百万円の費用に対し2,851百万円の収益となった。

 

⑦ 営業利益

 営業利益は以上の結果、前連結会計年度の167,328百万円と比較して89.5%増加の317,015百万円となった。

 

⑧ その他の収益(△費用)

 受取利息及び配当金は、前連結会計年度の5,293百万円と比較して39百万円増加の5,332百万円となった。支払利息は、前連結会計年度の13,766百万円と比較して1,544百万円減少の12,222百万円となった。

 

⑨ 税引前当期純利益

 税引前当期純利益は以上の結果、前連結会計年度の162,775百万円と比較して99.4%増加の324,568百万円となった。

 

⑩ 法人税等

 法人税等は、前連結会計年度の46,919百万円と比較して45,659百万円増加の92,578百万円となった。税引前当期純利益に対する法人税等の比率(実効税率)は、前連結会計年度の28.8%から0.3ポイント減少し、当連結会計年度は28.5%となった。法定税率31.3%と実効税率28.5%との差異は、海外子会社の適用税率の差異等によるものである。

 

⑪ 持分法投資損益

 持分法投資損益は、前連結会計年度の2,760百万円の利益と比較して2,498百万円増加の5,258百万円の利益となった。

 

⑫ 当期純利益

 当期純利益は以上の結果、前連結会計年度の118,616百万円と比較して118,632百万円増加の237,248百万円となった。

 

⑬ 非支配持分に帰属する当期純利益

 非支配持分に帰属する当期純利益は、前連結会計年度の12,379百万円と比較して58百万円減少の12,321百万円となった。

 

⑭ 当社株主に帰属する当期純利益

 当社株主に帰属する当期純利益は以上の結果、前連結会計年度の106,237百万円と比較して111.7%増加の224,927百万円となった。1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度の112.43円から237.97円となった。潜在株式調整後1株当たり当社株主に帰属する当期純利益は前連結会計年度の112.39円から237.92円となった。

 

⑮ セグメント利益の状況

 (セグメント利益は、売上高から売上原価、販売費及び一般管理費を控除して算出している。)

 建設機械・車両事業のセグメント利益は、資材価格や物流コスト上昇の影響はあるものの、各地域での販売量増加や販売価格の改善、円安の影響等により、前連結会計年度の143,788百万円と比較して131,980百万円増加の275,768百万円となった。

 リテールファイナンス事業のセグメント利益は、リースアップ車の評価額が改善したことに加え、前連結会計年度における新型コロナウイルス感染拡大時に実施した支払猶予の影響がなくなったことなどから、前連結会計年度の10,574百万円と比較して6,625百万円増加の17,199百万円となった。

 産業機械他事業のセグメント利益は、世界的に半導体需要が増加し、エキシマレーザー関連事業の売上が好調に推移したことから、前連結会計年度の16,342百万円と比較して6,253百万円増加の22,595百万円となった。

 これらに、全社及びセグメント間取引消去を差し引いたセグメント利益(連結)は、前連結会計年度の172,339百万円と比較して143,197百万円増加の315,536百万円となった。

 なお、セグメント利益(連結)は米国会計基準に則っていないが、財務諸表利用者に有益な情報を提供するために表示している。

 

(2) キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度の営業活動によるキャッシュ・フローは、売上債権や棚卸資産が増加したものの、当期純利益により、300,970百万円の収入(前連結会計年度比53,159百万円の収入減少)となった。

 投資活動によるキャッシュ・フローは、固定資産の購入等により、143,569百万円の支出(前連結会計年度比19,488百万円の支出減少)となった。

 財務活動によるキャッシュ・フローは、借入金の返済や配当金の支払い等により、93,868百万円の支出(前連結会計年度は199,667百万円の支出)となった。

 これらに為替変動の影響を加えた結果、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ73,557百万円増加し、315,360百万円となった。

 

(3) 生産、受注及び販売の実績

 当社グループの生産・販売品目は広範囲かつ多種多様であり、同種の製品であっても、その容量、構造、形式等は必ずしも一様ではなく、また受注生産形態をとらない製品も多く、事業の種類別セグメントごとに生産規模及び受注規模を金額あるいは数量で示すことはしていない。

 このため生産、受注及び販売の実績については、「2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容」における各事業の種類別セグメント業績に関連付けて示している。

 

2.経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中における将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社が判断したものである。

(1) 重要な会計方針及び見積り

 当社の連結財務諸表は、米国会計基準に準拠して作成している。作成にあたって当社のマネジメントは、知り得る限りの情報に基づいて妥当であると考えられる見積りや判断を継続して実施している。これらの見積りや判断は、連結財務諸表において、決算日の資産・負債の報告数値、報告期間における収益・費用の報告数値及び偶発資産・債務の開示情報に影響を与える。これらの見積りや判断は、当社グループの過去からの経験、既存の諸契約の内容、業界動向の分析、顧客からの情報、その他の外部からの情報に基づいているものであるが、その性質上、内在する不確実性の度合いが影響するため、実際の結果はこれらと異なる場合がある。当社の重要な会計方針は、連結財務諸表注記1に記載されている。

 新型コロナウイルス感染症及びウクライナ情勢に起因するサプライチェーンや金融・経済の混乱等が当社グループの財政状態及び経営成績に与える影響については、収束時期等が不透明であるものの、現時点で入手可能な情報や予測に基づき、今後も一定程度当該影響が継続すると仮定している。会計上の見積りの中でも比較的重要性のある貸倒見積額の算定、繰延税金資産の回収可能性の判断、長期性資産及び営業権の減損の判定については、当該仮定に基づき最善の見積りを行っているが、今後の実際の推移が当該仮定と乖離する場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性がある。

 当社は特に以下の重要な会計方針が連結財務諸表等に重要な影響を及ぼすと考えている。

 

① 貸倒引当金

 当社グループは、それぞれの顧客の財務状態等を含む多くの要素を考慮して最終的な実現可能性を判定し、債権の回収可能性を推定している。

 当社グループは、過去の実績を含む顧客の信用情報をもとに、貸倒れが発生すると推定される金額の引当金を計上している。顧客の信用状況は継続的に内外の情報を入手して分析を行い把握している。特にリテールファイナンス事業の金融債権は回収が長期間に及ぶうえに、貸倒見積額の算定及び担保による回収可能見込額の算定には不確実性が伴うことから、顧客ごとの信用状況や期日未回収債権の状況調査及び担保となる資産の市場価格調査を行い、入手可能な情報に基づいて最善の見積りを行っている。これまで実際に発生した貸倒れは、当社グループが予測し、計上した引当金の範囲内であり、当社のマネジメントは、当社グループの見積りが妥当であると信じているが、債権の種類の構成が変化したり、予見できない大きな経済環境の変動により顧客の財務状態に変化が生じるような場合、見積りを変更する必要が生じ、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性がある。
 詳細は、連結財務諸表注記3に記載されている。

 

② 法人税等と繰延税金資産

 当社は、連結財務諸表を作成するにあたり、各構成単位で納税地の税法に基づいて法人所得税・未払法人税の見積りを行っている。また、繰越欠損金や税務上と会計上の取扱いの違いにより生じる一時差異については、税効果計算を実施し、連結貸借対照表に繰延税金資産・負債を計上している。

 

 繰延税金資産の計上にあたっては、これらが将来の課税所得や有効な税務計画により実現されることの確実性を検証する必要がある。

 当社のマネジメントは、取締役会で承認された経営計画や、期中での各社からの経営報告、将来の市場状況、実行性の高い税務戦略等に基づき、将来の課税所得を推定し繰延税金資産の回収可能性を判断しており、実現できないと考えられる部分については評価性引当金を計上している。将来の課税所得あるいは課税時期に関する当社のマネジメントの判断が変わることにより、評価性引当金が変動する可能性がある。

 また、当社グループは、税務ポジションの不確実性から生じる影響額については、税務上の技術的な解釈に基づき、税務ポジションが認められる可能性が50%超である場合、財務諸表で認識している。その税務ポジションに関連するベネフィットは、税務当局との解決により、50%超の可能性で実現が期待される最大金額で測定される。

 当社のマネジメントは、計上した繰延税金資産(評価性引当金控除後)全額が実現可能であり、認識された不確実性のあるすべての主要な税務ポジションは瑕疵なく持続していると判断しているが、経営計画が実現できず、将来の課税所得の見積りが大幅に減少する場合や、関連する税務当局との法令解釈の相違等、これらの判断が結果として現実と異なる場合には、評価性引当金や認識すべき財務諸表への影響額を見直す必要があり、追加の税金費用が発生することで当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性がある。

 詳細は、連結財務諸表注記15に記載されている。

 

③ 長期性資産及び営業権の評価

 当社グループは長期性資産に関して、経営環境の変化により、将来その資産から生み出されるキャッシュ・フローが減少するなど、帳簿価額相当額を回収することができないと判断されるような事象や状況の変化が生じた場合には、減損に関する検討を実施している。

 当社グループが保有しかつ使用している資産の回収可能性は、帳簿価額とその資産から生じる割引前将来キャッシュ・フローとの比較で判定される。この割引前将来キャッシュ・フローは、承認された経営計画に基づき算出される。この経営計画は、外部調査機関や顧客からの情報をもとにした市場予測により売上量を推定し、それを前提に販売価格の変動、製造原価、販売費及び一般管理費の変動等マネジメントの最良の判断による推定を可能な限り織り込んで策定される。もし、資産の帳簿価額が割引前将来キャッシュ・フローを上回り、回収可能性が認められずその資産が減損状態であると判定された場合、帳簿価額が公正価値を上回った額が減損額として測定され計上される。公正価値は、主に市場において想定されるキャッシュ・フローの変動リスクを考慮した加重平均資本コストを割引率として使用する割引後将来キャッシュ・フローモデル、あるいは独立した鑑定評価で測定される。処分予定の長期性資産については、帳簿価額と公正価値から処分のためのコストを差し引いた額とのいずれか低い方で評価される。

 当社グループは営業権については、少なくとも各年度に1回、又は減損の可能性を示す事象や、状況の変化が生じた時点で減損の検討を実施している。

 報告単位の公正価値の測定にあたっては、通常、割引後将来キャッシュ・フローモデルにより算定している。将来見積キャッシュ・フローは、承認された経営計画に基づき算出される。この経営計画は、外部調査機関や顧客からの情報をもとにした市場予測により売上量を推定し、それを前提に販売価格の変動、製造原価、販売費及び一般管理費の変動等マネジメントの最良の判断による推定を可能な限り織り込んで策定される。報告単位の帳簿価額が公正価値を上回る場合、その報告単位に配分された営業権の帳簿価額を限度とし、当該差額を営業権の減損損失として認識する。

 現状では、長期性資産及び営業権については、重要な追加の減損の発生はないと考えているが、経営戦略の変更、市場の変化があった場合には、その資産から将来得られるキャッシュ・フローの予想や公正価値の算出に影響し、長期性資産及び営業権の回収可能性の評価判断が変更となり、当社グループの財政状態及び経営成績に重要な影響を及ぼす可能性がある。

 

④ 金融商品の公正価値

 主に外国為替予約や金利スワップ契約等のデリバティブ金融商品の公正価値は、市場で観察可能なインプットに基づいた業者からの情報をもとに評価している。この公正価値の情報は、特定のある時点での適切な市場の情報と商品についての情報に基づいて推定されるものであるが、これらの推定はその性格上、市場の不確実性を含んでいるため、実際の結果と異なってくる可能性がある。

 市場性のある持分証券は、公正価値で評価されている。公正価値の変動は、当期純利益で認識している。

 市場性がなく、容易に算定可能な公正価値がない持分証券のうち、1株当たり純資産価値で評価している持分証券以外について、減損による評価下げ後の取得価額にて測定している。また、同一発行体の同一又は類似する投資に関する秩序ある取引における観察可能な価格の変動を識別した場合は、当該持分証券を観察可能な取引が発生した日の公正価値で測定している。

 関連会社に対する投資の公正価値については、公正価値の下落があった場合、それが一時的かどうかについて、下落の期間や程度、被投資会社の財政状態及び業績予想等を考慮して判断している。

 現状では、投資有価証券あるいは関連会社に対する投資については、重要な追加の減損の発生はないと考えているが、将来の経済環境の変化によっては投資先の企業の業績が悪化し、減損を認識する可能性がある。

 詳細は、連結財務諸表注記19、20、21に記載されている。

 

⑤ 退職給付債務及び費用

 当社グループの年金債務及び年金費用の額は、算出時に使用した仮定に影響される。これらの仮定は連結財務諸表注記11に記載されており、割引率、長期期待収益率、平均報酬水準増加率等を含む。当社グループは、仮定と実績が乖離した場合には、その差額を累積し従業員の平均残存勤務年数にわたって償却を実施する事で、将来の期間にわたり、費用として認識する。

 割引率は、現在かつ年金受給が満期となる間に利用可能と予想される信用度の高い固定利付き債券の利率に基づいて算出される。また、長期期待収益率は、投資対象の様々な資産カテゴリー別に将来収益に対する予測や過去の運用実績を考慮し決定される。

 当社グループは、これらの仮定は妥当なものであると信じているが、重要な実績との乖離もしくは重要な仮定の変化があった場合、年金債務と将来の費用に影響を与える可能性がある。

 当連結会計年度末の当社グループの年金制度において、割引率又は長期期待収益率が0.5%変動した場合、当連結会計年度末の年金債務及び翌連結会計年度の年金費用に及ぼす影響は、その他すべての仮定を一定とすると、それぞれ以下のとおりである。

仮定の変更

変動率

年金債務

年金費用

割引率

0.5%増 / 0.5%減

327億円減 / 357億円増

0.3億円増 / 8億円増

長期期待収益率

0.5%増 / 0.5%減

15億円減 / 15億円増

 

⑥ 今後適用となる新会計基準

 米国財務会計基準審議会は、2016年6月に会計基準アップデート2016-13「金融商品-信用損失:金融商品に関する信用損失の測定」を発行した。同アップデートは、多くの金融資産について、現行の発生損失モデルではなく予想信用損失モデルに基づいて損失を認識することを要求している。予想信用損失モデルでは、対象となる金融資産の残存期間に発生することが見込まれる予想信用損失をただちに認識することになる。当初同アップデートは、米国証券取引委員会(SEC)に登録していない企業においては、2020年12月16日以降開始する連結会計年度及びその四半期連結会計期間から適用される予定であったが、米国財務会計基準審議会は、2019年11月に適用日の変更を行い、同アップデートは、2022年12月16日以降開始する連結会計年度及びその四半期連結会計期間から適用されることとなった。なお、早期適用も認められている。同アップデートは、適用開始期間の期首の利益剰余金で累積影響額を調整する修正遡及適用アプローチにより適用される。当社グループは、2023年4月1日より開始する連結会計年度から適用する予定であり、現在、適用による財政状態及び経営成績に与える影響について検討中である。

 

(2) 当連結会計年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

① 当社グループの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当連結会計年度の連結売上高は、2,802,323百万円(前連結会計年度比28.0%増)となった。建設機械・車両事業では、前連結会計年度における新型コロナウイルス感染症の影響が縮小し、一般建機・鉱山機械ともに中国以外の地域において需要が好調に推移した。海上輸送の逼迫や半導体不足の影響があるものの、クロスソーシングの活用等により新車需要の拡大を着実に取り込み、部品・サービス売上高も増加したことから、売上高は前連結会計年度を上回った。産業機械他事業では、鍛圧機械、板金機械、工作機械については各国で経済活動の規制が緩和され、海外での据付け工事の完了等により売上高が増加した。また、世界的に半導体需要が増加し、エキシマレーザー関連事業の売上高が好調に推移したことから、売上高は前連結会計年度を上回った。利益については、建設機械・車両事業において、資材価格や物流コスト上昇の影響はあるものの、各地域での販売量増加や販売価格の改善、円安の影響により、営業利益は317,015百万円(前連結会計年度比89.5%増)となった。

 当連結会計年度末は、米ドル等に対して為替が前連結会計年度末に比べ円安となったことに加え、棚卸資産等の増加により、総資産は前連結会計年度末比562,681百万円増加の4,347,522百万円となった。有利子負債残高は、前連結会計年度末比37,397百万円増加の947,380百万円となった。株主資本は前連結会計年度末比320,214百万円増加の2,232,511百万円となった。これらの結果、株主資本比率は前連結会計年度末比0.9ポイント増加の51.4%となった。

 

② 流動性及び資金の源泉

<資金使途の考え方>

 当社グループは、持続的な企業価値の増大を目指して、外部環境の変化や需要変動に左右されない健全な財務体質の構築と競争力強化に努めている。資金を成長のための投資、バランスシート改善(財務健全性維持)、株主還元にバランスよく配分して、総合指標であるROE(自己資本利益率)をモニタリングしている。想定される株主資本コストを上回るROE10%以上を経営目標として、ROE向上と株主資本コスト低減の両面からエクイティ・スプレッド(ROE-株主資本コスト)の拡大に取り組んでいる。

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<資金調達と流動性管理>

 当社グループは、将来の事業活動に必要な資金を確保し、適切な流動性を維持することを財務の基本方針としている。この方針に従い、当社グループは金融機関借入、社債等の発行、融資枠の設定等、様々な資金調達の源泉を確保している。設備投資資金及び運転資金については、営業活動から得られたキャッシュ・フロー及び外部より調達した資金を充当している。更に、当社グループの資金の効率性を高めるため、海外子会社を含めたグループ間のキャッシュマネジメントシステム(グローバル・キャッシュ・プーリング、以下、「GCP」)を特定の金融機関と構築しており、特定の金融機関に対する預入総額を上限にGCP参加会社は借入を行っている。当GCPにおいては、預入金及び借入金の残高を相殺できる条項が含まれており、当連結会計年度末現在の相殺金額は223,400百万円となっている。

 短期資金需要に対しては、営業活動から得られたキャッシュ・フローを主として充当し、必要に応じ銀行借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等でまかなっている。当社及び一部の連結子会社は、当連結会計年度末現在、金融機関との間に合計277,259百万円のコミットメントライン契約を締結して代替流動性を確保しており、その未使用枠は261,619百万円となっている。コマーシャル・ペーパーについては、当連結会計年度末現在、当社で200,000百万円、コマツファイナンスアメリカ㈱で1,100百万米ドルのプログラムを保有しており、未使用枠はそれぞれ119,000百万円、739百万米ドルとなっている。

 当社は、中長期資金需要に機動的に対応するため、社債発行枠とユーロ・ミディアム・ターム・ノート(以下、「EMTN」)プログラムを保有している。当社は2020年11月に2年間有効の100,000百万円の社債発行枠を登録した。当連結会計年度末現在の未使用枠は100,000百万円となっている。なお、これ以外の過去に登録した社債発行枠に基づいて発行した分も含めた当社グループの社債の当連結会計年度末現在の残高は167,820百万円である。また、当社、コマツファイナンスアメリカ㈱及び欧州コマツコーディネーションセンター㈱で合わせて2,000百万米ドルのEMTNプログラムを保有しており、このプログラムに基づいて、それぞれの発行体はディーラーとの間で合意されたすべての通貨の債券を発行できる。当連結会計年度末現在、当該EMTNプログラムにより発行された債券の残高は150,380百万円である。

 当連結会計年度末現在、当社グループの短期債務残高は241,746百万円となり、前連結会計年度末に比べて29,716百万円減少した。短期債務は主にコマーシャル・ペーパーであり、運転資金等に使用されている。

 当連結会計年度末現在、長期債務残高(1年以内期限到来分含む)は705,634百万円で、前連結会計年度末に比べて67,113百万円増加した。長期債務は銀行、保険会社等からの借入金等387,434百万円、無担保社債167,820百万円、EMTN150,380百万円で構成されており、主に設備投資資金及び長期運転資金に使用されている。

 当連結会計年度末現在の有利子負債残高は前連結会計年度末比37,397百万円増加の947,380百万円となり、現預金を差し引いたネット有利子負債残高は前連結会計年度末比36,146百万円減少の630,710百万円となった。これらに加え株主資本が増加した結果、当連結会計年度末現在のネット・デット・エクイティ・レシオ(ネット有利子負債と株主資本の比率)は前連結会計年度末の0.35に対して0.28となった。

 

 当連結会計年度末現在、流動資産は2,421,281百万円となり、前連結会計年度末に対し、431,989百万円増加し、また流動負債は1,324,021百万円となり、前連結会計年度末に対し331,152百万円増加した。その結果、流動比率は182.9%と前連結会計年度末に対し17.5ポイント減少となった。

 営業活動から得られるキャッシュ・フロー、様々な資金調達手段、流動比率の水準に基づき、当社グループは、流動性ニーズや将来の債務履行のための手段を十分に確保しているものと考えている。

 なお、当連結会計年度末現在の現金及び現金同等物の残高は315,360百万円であり、そのうち261,146百万円は海外子会社が保有している。

 当社グループは、スタンダード&プアーズ、ムーディーズ・インベスターズ・サービス及び㈱格付投資情報センターから信用格付を取得している。当連結会計年度末現在、当社グループの発行体格付けは、スタンダード&プアーズ:A(長期)、A-1(短期)、ムーディーズ・インベスターズ・サービス:A2(長期)、Prime-1(短期)、㈱格付投資情報センター:AA-(長期)、a-1+(短期)となっている。

 

<設備投資>

 建設機械・車両事業では、主に生産性向上のための設備投資及び循環事業強化のための設備投資等を行った。コマツマイニング㈱の子会社であるジョイ・グローバルサーフェスマイニング㈱においてミルウォーキー新工場への移転・集約に係る設備投資を実施した。リテールファイナンス事業では、主に賃貸用資産に係る設備投資等を行った。産業機械他事業では、主に老朽設備更新等のための設備投資を行った。これらの結果、当連結会計年度の設備投資額は147,762百万円と前連結会計年度比15,412百万円の減少となった。

 

<契約上の債務>

 当連結会計年度末現在の契約上の債務は次のとおりである。

 

期間別支払見込額

(百万円)

 

合計

1年以内

1-3年

3-5年

5年超

短期債務

241,746

241,746

長期債務

705,634

276,623

280,815

142,835

5,361

オペレーティングリース債務

68,250

17,753

18,511

8,577

23,409

有利子負債に関する利息

22,459

10,207

8,951

3,230

71

年金及びその他の退職給付債務

4,560

4,560

合計

1,042,649

550,889

308,277

154,642

28,841

  (注)1. 長期債務の公正価値の調整額はない。

2. 有利子負債に関する利息は、当連結会計年度末現在有効な利率に基づき計算されている。

3. 年金及びその他の退職給付債務は、2023年度以降の拠出額は未確定であるため、2022年度に生じるものだけを記載している。

 

 なお、当連結会計年度末現在の設備発注残高は、約23,800百万円である。

 

③ セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

<建設機械・車両事業セグメント>

 建設機械・車両事業の売上高は前連結会計年度を29.8%上回る2,564,398百万円となった。

 中期経営計画の成長戦略「イノベーションによる価値創造」においては、鉱山向け無人ダンプトラック運行システム(AHS)の強化に取り組み、2022年3月末時点の総稼働台数は累計510台となった。また、鉱山向け大型ブルドーザー「D375Ai-8 遠隔操作仕様車」の導入に向け、ブラジルのお客様の現場においてトライアルを進めた。電動化の取り組みでは、着脱式可搬バッテリーを活用した電動マイクロショベル「PC01E-1」をレンタル機として国内市場に導入した。また、建設現場向けソリューション「スマートコンストラクション」を着実に推進し、国内においては、累計で19,000を超える現場に導入した。「事業改革による成長戦略」では、都市土木作業に特化して仕様を最適化した油圧ショベルCEシリーズ「PC200-10M0」を活用した2ラインモデル戦略を進め、東南アジア地域内でのシェアを拡大したほか、昨年12月よりインドの現地工場において同機種の生産を開始し、インド市場への導入を進めた。また、最新技術を織り込み15年ぶりにフルモデルチェンジした大型ブルドーザー「D475A-8R」を国内及び戦略市場において発売開始した。「成長のための構造改革」では、薄板部品の技術開発やグローバルな生産調達の強化・促進のため、コマツキャブテック㈱の吸収合併を決定した。また、コマツオーストラリア㈱において最新の管理システムを織り込んだパーツセンターを新設し、物流オペレーションの最適化を図るとともに、太陽光パネルの設置・部品包装量の削減等による環境負荷の低減を進めた。

 

建設機械・車両事業セグメントの地域別売上高(外部顧客向け売上高)

 

 

 

(金額単位:百万円)

 

2020年度

2021年度

増 減

金 額

増減率 %

日本

294,890

303,628

8,738

3.0%

 

北米

444,366

590,695

146,329

32.9%

中南米

288,097

395,885

107,788

37.4%

米州

732,463

986,580

254,117

34.7%

 

欧州

183,537

239,294

55,757

30.4%

CIS

112,379

184,483

72,104

64.2%

欧州・CIS

295,916

423,777

127,861

43.2%

中国

146,225

96,416

△49,809

△34.1%

 

アジア※

138,790

295,431

156,641

112.9%

オセアニア

230,122

263,436

33,314

14.5%

アジア※・オセアニア

368,912

558,867

189,955

51.5%

 

中近東

32,338

53,874

21,536

66.6%

アフリカ

90,463

135,708

45,245

50.0%

中近東・アフリカ

122,801

189,582

66,781

54.4%

合計

1,961,207

2,558,850

597,643

30.5%

 ※ 日本及び中国を除く。

 

地域別の概況は以下のとおりである。

(日本)

 日本では、公共工事及び民間工事向けともに需要が堅調に推移したことから売上高は前連結会計年度を上回った。

(米州)

 北米では、一般建機の需要は、住宅建設、インフラ、レンタル向けが好調に推移し、エネルギー関連向けも回復基調となった。加えて、鉱山機械の販売が増加したことから、売上高は前連結会計年度を上回った。中南米では、一般建機・鉱山機械ともに需要が好調に推移した。主にチリの銅鉱山向け鉱山機械の販売が増加したことや、中南米各国において経済活動の再開に伴い一般建機需要が好調に推移したことにより、売上高は前連結会計年度を上回った。

(欧州・CIS)

 欧州では、景気下支え策の影響等により主要市場であるドイツ、英国、フランスに加えイタリアにおいてもインフラ向けの需要が堅調に推移したことにより、売上高は前連結会計年度を上回った。CISでは、インフラ及びエネルギー関連向けの一般建機の需要が好調であったことに加え、金鉱山向け等の鉱山機械及び部品販売が好調に推移したことにより、売上高は前連結会計年度を上回った。

(中国)

 中国では、前連結会計年度に発生した新型コロナウイルス感染症の影響による春節後の販売シーズンの後ろ倒しの影響がなくなったことや、インフラ投資や不動産投資の停滞等により需要が低迷した。また、中国メーカーの販売比率上昇の影響もあり、売上高は前連結会計年度を下回った。

(アジア・オセアニア)

 アジアでは、インドネシアにおける石炭向け鉱山機械の需要が好調であったことに加え、インドネシア、フィリピン、タイ等における一般建機の需要が好調であったことから、売上高は前連結会計年度を上回った。オセアニアでは、鉄鉱石や石炭向け鉱山機械及び一般建機の需要が堅調に推移し、売上高は前連結会計年度を上回った。

(中近東・アフリカ)

 中近東では、サウジアラビアやUAE等の産油国での一般建機の需要が引き続き好調に推移し、トルコでの需要も堅調であったことから、売上高は前連結会計年度を上回った。アフリカでは、南部アフリカ地域・その他地域ともに鉱山機械及び一般建機の需要が引き続き好調であったことから、売上高は前連結会計年度を上回った。

 

 当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比472,408百万円増加の3,161,835百万円となった。

 

 なお、建設機械・車両事業全体の生産規模は、前連結会計年度における新型コロナウイルス感染症の影響が縮小し、一般建機・鉱山機械ともに中国以外の地域において需要が好調に推移したことにより、前連結会計年度比43.6%増加し、約2兆7,137億円(販売価格ベース、連結ベース)であった。

 

<リテールファイナンス事業セグメント>

 リテールファイナンス事業では、一般建機・鉱山機械の販売増加に伴い、新規取組高が増加したことから、売上高は前連結会計年度を8.2%上回る71,862百万円となった。

 

 当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比93,785百万円増加の980,910百万円となった。

 

<産業機械他事業セグメント>

 産業機械他事業では、鍛圧機械、板金機械、工作機械については、新型コロナウイルス感染症の影響縮小に伴い、各国で経済活動の規制が緩和され、海外のお客様の現場における据付け工事の完了等により売上高が増加した。また、世界的に半導体需要が増加し、エキシマレーザー関連事業の売上高が好調に推移したことから、売上高は前連結会計年度を10.0%上回る188,368百万円となった。

 

 当連結会計年度末のセグメント資産は、前連結会計年度末比4,471百万円増加の206,281百万円となった。

 

 なお、産業機械他事業全体の生産規模は、前連結会計年度比3.0%増加し、約1,714億円(販売価格ベース、連結ベース)であった。

 

④ 目標とする経営指標の達成状況等

 2022年3月期をゴールとする3カ年の中期経営計画の経営目標の達成状況は以下のとおり。

 2019年度からの2年間は、新型コロナウイルス感染症等の影響もあり、建設・鉱山機械需要は大きく減少したが、成長戦略や構造改革を着実に進め、企業価値向上を図ってきた。中期経営計画の最終年度となる2021年度は、需要が好転する中、これらの活動の効果もあり、過去最高の売上高を記録した。その結果、3年平均の成長性、健全性は目標を達成した。収益性について、3年平均の営業利益率は9.7%に留まった。効率性については、3年平均のROEが8.4%となり、目標の10%を下回ったものの、2021年度は10.9%となった。株主還元は、連結配当性向40%以上を維持した。ESGについては、外部評価は、「ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インディシーズ(DJSI)」に選定され、また、CDPでは、気候変動、水リスクともに評価Aと認定された。CO2排出削減、再生可能エネルギー使用率の向上も、2030年の目標達成に向け、着実に活動を進めた。リテールファイナンス事業については、ROA、ネット・デット・エクイティ・レシオ、いずれも目標を達成した。

 

経営目標

経営指標

2021年度

2019-21年度*1

成長性

 ・業界水準を超える成長率

 ・売上高成長率

28.0%

2.4%

収益性

 ・業界トップレベルの営業利益率

 ・営業利益率

11.3%

9.7%

効率性

 ・ROE*2 10%以上

 ・ROE*2

10.9%

8.4%

健全性

 ・業界トップレベルの財務体質

 ・ネット・デット・

   エクイティ・

   レシオ*3

0.28

0.35

リテール

ファイナンス

事業

 ・ROA*4 1.5%-2.0%

 ・ROA*4

1.8%

1.5%

 ・ネット・デット・エクイティ・レシオ*3

  5倍以下

 ・ネット・デット・

   エクイティ・

   レシオ*3

3.51

3.67

ESG

 ・環境負荷低減

  CO2排出削減:2030年50%減(2010年比)

  再生可能エネルギー使用率:2030年50%

 ・環境負荷低減

 ・製品使用によるCO2削減

        19%減(見込値)

 ・生産によるCO2削減

        36%減(見込値)

 ・再生可能エネルギー

   使用率 14%(見込値)

同左

 ・外部評価

  DJSI*5選定(ワールド、アジアパシフィック)

  CDP*6 Aリスト選定(気候変動、水リスク)等

 ・外部評価

 ・DJSI*5選定

 ・CDP*6気候変動 評価A

 ・CDP*6水リスク 評価A

同左

株主還元

 ・成長への投資を主体としながら、株主還元

 (自社株買いを含む)とのバランスをとる。

 ・連結配当性向

40.3%

49.0%

 ・連結配当性向を40%以上とする。

*1 2019年度から2021年度の平均にて算出(ESGに係る経営目標を除く)

*2 ROE=当社株主に帰属する当期純利益/((期首株主資本+期末株主資本)/2)

*3 ネット・デット・エクイティ・レシオ(ネット負債資本比率)=(有利子負債-現預金)/株主資本

*4 ROA=セグメント利益/((期首総資産+期末総資産)/2)

*5 ダウ・ジョーンズ・サステナビリティ・インディシーズ:米国S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社が提供するESG投資指標

*6 企業や政府が温室効果ガス排出量を削減し、水資源や森林を保護することを推進する国際的な非営利団体

 

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