1.経営成績等の状況の概要
(1)業績
① 売上収益
当連結会計年度の連結売上収益は前連結会計年度比26.0%増加の1兆249億6千1百万円となりました。
② 売上原価、販売費及び一般管理費
当連結会計年度の売上原価は、前連結会計年度比20.2%増加の7,449億7千3百万円となりました。売上原価の売上収益に対する比率は前連結会計年度より3.5ポイント減少し72.7%となりました。
また、販売費及び一般管理費は前連結会計年度比16.1%増加の1,864億7千万円となりました。
③ 営業利益
営業利益は、前連結会計年度より277.5%増加し1,065億9千万円となりました。営業利益の売上収益に対する比率は前連結会計年度から6.9ポイント増加し10.4%となりました。
④ 金融収益及び金融費用
金融収益及び金融費用は、前連結会計年度の40億8千5百万円の損失(純額)から当連結会計年度19億4千5百万円の損失(純額)と、損失が21億4千万円減少しました。これは主に、その他の金融費用が、前連結会計年度13億6千5百万円から当連結会計年度1億8百万円と、12億5千7百万円減少したことによるものです。
⑤ 税引前当期利益
税引前当期利益は、前連結会計年度より333.5%増加し1,108億6千9百万円となりました。
⑥ 法人所得税費用
当連結会計年度における法人所得税費用は、前連結会計年度より183.1%増加し、310億5百万円となりました。
(2)キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度末における現金及び現金同等物は942億5千7百万円となり、当連結会計年度期首より139億2千7百万円増加しました。各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりです。
(営業活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の営業活動に関するキャッシュ・フローは、当期利益が798億6千4百万円、減価償却費481億6千4百万円をベースに、買掛金、支払手形の増加150億9千2百万円の計上等があった一方で、売掛金、受取手形及び契約資産の増加△503億1千6百万円、棚卸資産の増加△481億6千7百万円、法人所得税の支払188億4千2百万円等があったことにより当連結会計年度は393億1千7百万円の収入となり、前連結会計年度に比べて収入が520億2千2百万円減少しました。
(投資活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の投資活動に関するキャッシュ・フローは、主として、有形固定資産の取得279億2千4百万円、無形資産の取得66億1千6百万円があった一方で、当社の持分法適用関連会社であったディア日立コンストラクションマシナリーCorp.及びディア日立建機ブラジルS.A.の当社保有株式の売却等による収入225億9千2百万円があったため68億5千4百万円の支出となり、前連結会計年度と比べて254億2千7百万円支出が減少しました。
(財務活動に関するキャッシュ・フロー)
当連結会計年度の財務活動に関するキャッシュ・フローは、主として、短期借入金の増加213億1千4百万円があったものの、社債及び長期借入金の減少136億7千3百万円、配当金の支払(非支配持分株主への配当金を含む)205億5千2百万円があったこと等により、256億1千5百万円の支出となりました。この結果、前連結会計年度と比べて203億9千6百万円支出が減少しました。
(3)生産、受注及び販売の実績
① 生産実績
当連結会計年度の生産実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
生産高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
建設機械ビジネス |
993,654 |
139 |
ソリューションビジネス |
- |
- |
合計 |
993,654 |
139 |
(注)1.金額は、販売価格によっています。
2.ソリューションビジネスセグメントのビジネスは、マイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品開発、製造、販売及びサービスソリューションの提供を主たる目的としており、ビジネスの性質上、生産実績の記載に馴染まないため、記載を省略しています。
3.当連結会計年度において、生産実績に著しい変動がありました。その内容等については、「第2「事業の状 況」3「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析」(財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析)(2)当連結会計年度の経営成績の分析」をご参照願います。
② 受注実績
当連結グループの製品は、そのほとんどが見込生産のため受注実績の記載は省略しています。
③ 販売実績
当連結会計年度の販売実績は、次のとおりです。
セグメントの名称 |
販売高(百万円) |
前連結会計年度比(%) |
建設機械ビジネス |
933,857 |
126 |
ソリューションビジネス |
91,104 |
115 |
合計 |
1,024,961 |
126 |
(注)1.総販売実績に対し10%以上に該当する販売先はありません。
2.財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析
(1)重要な会計方針及び見積り
当連結グループは連結財務諸表の作成に際し、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき、財政状態及び経営成績の金額に影響を与える見積りを行っていますが、特に以下の重要な会計方針が、提出会社の連結財務諸表の作成における重要な見積りに大きな影響を及ぼすと考えています。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当該仮定は当連結会計年度末時点における最善の見積りであると判断していますが、実際の経済活動の推移が今後この仮定から乖離した場合には翌期以降の重要な会計上の見積りの判断に影響を及ぼす可能性があります。
① 棚卸資産
当連結グループは、棚卸資産は取得原価と正味実現可能価額のいずれか低い方の金額で評価しており、実際の将来需要または市場状況が悪化した場合は、評価減が必要となる可能性があります。
② 有形固定資産及び無形資産
当連結グループは、有形固定資産及び無形資産について減損の兆候の有無の判定を行い、その帳簿価額が回収不可能であるような兆候がある場合、減損テストを実施しています。将来の営業活動から生ずる損益またはキャッシュ・フローの悪化等により回収可能価額が低下した場合には追加の減損損失の計上が必要になる可能性があります。
また、耐用年数を確定できない無形資産及びのれんについては、減損の兆候の有無にかかわらず、毎年、主に第4四半期において、その資産の属する資金生成単位ごとに回収可能価額を見積もり、減損テストを実施しています。のれんが発生している連結子会社の超過収益力が低下した場合には、追加の減損損失の計上が必要になる可能性があります。
③ 営業債権及びその他の金融資産
金融資産については、減損を示す客観的な証拠が金融資産の当初認識後に発生しておりその金融資産の見積将来キャッシュ・フローが帳簿価額を下回る場合、当該金融資産について減損損失が発生する可能性があります。
また、営業債権にかかる減損損失については、事業を行う国あるいは地域の特有な商慣行を含む事業環境に関連した潜在的なリスクを評価した上で算定した将来の回収可能額の見積りに基づいて減損損失を計上しており、将来の市況悪化や取引先の業績不振により、現在の簿価に反映されていない損失または簿価の回収不能が発生した場合、減損損失の計上が必要となる可能性があります。
④ 繰延税金資産
繰延税金資産は、未使用の税務上の繰越欠損金、税額控除及び将来減算一時差異のうち、将来課税所得に対して利用できる可能性が高いものに限り認識しています。将来において業績及び課税所得が見積額より悪化した場合、繰延税金資産に対し追加の評価減の計上が必要となる可能性があります。
⑤ 退職給付に係る負債
当連結グループは、退職給付制度に基づく確定給付債務及び制度資産の測定に当たっては、数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出しています。これらの前提条件には、割引率、昇給率、退職率及び死亡率などが含まれます。将来において、実際の結果が前提条件と異なる場合、または前提条件が変更された場合、退職給付に係る負債、退職給付費用及び退職給付制度の再測定に影響を及ぼす可能性があります。
なお、会計上の見積りを行う上での新型コロナウイルス感染症(COVID-19)及びロシア・ウクライナ情勢の影響についての影響の考え方は以下のとおりです。
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響について
当連結会計年度における将来業績予測に基づく重要な会計上の見積りについて、当連結グループはグローバルに事業活動を行っており、地域によって新型コロナウイルス感染症による状況は異なるものの、当連結グループの業績に対する影響は限定的であると考えており、当連結会計年度における当連結グループの会計上の見積り及び見積りを伴う判断に与える重要な影響はありません。
当該仮定は当連結会計年度末時点における最善の見積りであると判断していますが、実際の経済活動の推移が今後この仮定から乖離した場合には、次連結会計年度以降の重要な会計上の見積りの判断に影響を及ぼす可能性があります。
ロシア・ウクライナ情勢の影響について
当連結会計年度末の連結財政状態計算書には当社の連結子会社である在ロシアの日立建機ユーラシアLLC(以下、HCMR)の財政状態計算書が含まれております。
このHCMRの財政状態計算書のうち、主要な項目としては代理店に対して有する売上債権が20,087百万円、棚卸資産が10,823百万円含まれています。売上債権については全期間の予想信用損失を見積り、貸倒引当金を計上していますが、当該見積りは代理店の財政状態やその顧客の属する産業の状況、直近の回収状況等を考慮し、回収期間にわたり直近の状況が継続するとの仮定に基づいております。棚卸資産についても、受注の状況を踏まえた今後の販売計画を考慮した上で評価しておりますが、主に既存の受注残高に対応するための保有であり、当該計画に基づいて販売される仮定に基づいております。
当該仮定は当連結会計年度末時点における最善の見積りであると判断しておりますが、ロシア・ウクライナ情勢による経済活動への影響には不確実性が存在し、実際の経済活動の推移等が見積りから乖離した場合には、翌期以降の会計上の見積りに影響を及ぼし、貸倒引当金及び棚卸資産の評価に重要な変更をもたらすリスクがあります。
(2)当連結会計年度の経営成績の分析
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
当連結グループは、2017年度から注力してきたバリューチェーン事業をさらに強化するため、2020年度から進めている現中期経営計画「Realizing Tomorrow’s Opportunities 2022」でも、お客さまとのあらゆる接点において、最先端のデジタル技術を活用することで、さらに深化したソリューションを提供すると共に、変化に強い企業体質への転換に取り組んでいます。
また、ディア アンド カンパニー(以下、「ディア社」)との合弁事業解消に伴い、2022年3月から、北中南米事業の独自展開を本格的に開始しております。世界最大規模の北中南米市場全域でこれまで注力してきたバリューチェーン事業や深化したソリューションを提供し、グローバルに主体的に事業を展開する体制を整え、企業価値のさらなる向上をめざしています。
当連結会計年度(2021年4月1日~2022年3月31日)については、一部地域で新型コロナウイルス変異株の感染拡大による行動制約などの影響を受けたものの、市場環境は中国以外の主要地域において堅調に推移しました。売上収益は、コンストラクション・マイニング製品の新車販売のほか、部品サービスを中心としたバリューチェーン事業でも増加し、為替影響等も加わって、1兆249億6千1百万円(対前年同期増減率26.0%)となりました。
利益項目について、調整後営業利益は、鋼材価格を中心としたコスト増加の影響があったものの、好調な市場環境を背景とした売上収益の増加や第2四半期に計上した米州向けの販売価格決定による調整額、生産稼働率向上による損益改善、為替影響等によって935億1千8百万円(同185.9%)となりました。親会社株主に帰属する当期利益は、調整後営業利益の増加に加え、ディア社との合弁事業解消に伴う持分法適用会社(ディア日立コンストラクションマシナリーCorp.及びディア日立建機ブラジルS.A.)の株式譲渡益や海外の持分法適用会社による投資損益の増加、さらに第4四半期の常陸那珂工場隣接地の土地売却益等により758億2千6百万円(同633.3%)と大幅に増益となりました。
① 建設機械ビジネス
当連結会計年度における油圧ショベル需要は、中国市場では前年同期を大幅に下回った一方で、中国以外の主要地域で堅調に推移し、世界全体でも前年同期を上回りました。
また、マイニング需要は、新型コロナウイルスの影響を受けていた鉱山の操業がほぼ正常に戻り、堅調な資源価格を追い風とした顧客の投資意欲の回復や、鉱山再稼働に伴う休車機のオーバーホール需要などから、新車・部品サービスともに堅調に推移しました。
この結果、当連結会計年度における売上収益は、コンストラクション・マイニング製品の新車販売と、部品サービスを中心とするバリューチェーン事業で増加し、為替影響等も加わって、9,338億6千4百万円(同27.2%)となりました。
調整後営業利益は、売上収益の増加や第2四半期に計上した米州向けの販売価格決定による調整額、生産稼働率向上による損益改善、為替影響等により、859億4千1百万円(同233.1%)と大幅な増益となりました。
② ソリューションビジネス
当事業は、主としてマイニング設備及び機械のアフターセールスにおける部品サービス事業を行うBradken Pty Limited及びその子会社と、サービスソリューションを提供するH-E Parts International LLC及びその子会社で構成されています。
当連結会計年度の売上収益は、マイニングの市場環境が堅調に推移し、為替影響等が加わって948億2千2百万円(同15.0%)となりました。調整後営業利益は、鋼材価格を中心としたコスト増加の影響を受けたものの、売上収益の増加と為替影響等により75億7千7百万円(同9.6%)となりました。
なお、上記、①②の売上収益については、セグメント間調整前の数値です。
また、変化に強い企業体質づくりと成長戦略の刈取りを促進すべく策定した2020年度から3か年の中期経営計画の達成・進捗状況は、以下のとおりです。
指標 |
2022年度目標 |
当連結会計年度実績 |
前連結会計年度比 |
収益性 |
営業利益からその他の収益及びその他の費用を除いた利益率10%以上をめざす |
9.1% |
5.1%pt増 |
効率性 |
ROE10%以上をめざす |
13.5% |
11.4%pt増 |
ネットD/Eレシオ |
0.5以下をめざす |
0.42 |
0.06減 |
株主還元 |
連結配当性向を30%、もしくはそれ以上をめざす |
30.9% |
10.2%pt減 |
(注)2022年度目標の前提となる為替レートは、米ドル120円、ユーロ130円、人民元19円、豪ドル80円としています。
引き続き中期経営計画策定時の前提市況並びに為替水準をベースにした場合においても各数値目標が達成できるよう取り組みます。
(3)経営成績に重要な影響を与える要因
当連結グループに与える業績変動要因、並びに国内外の政治的・経済的変動及び需要変動による影響については 2[事業等のリスク]に記載のとおりです。
(4)財政状態の分析
[資産]
流動資産は、前連結会計年度末に比べて、23.8%、1,471億6千2百万円増加し、7,643億5千5百万円となりました。これは主として営業債権が550億7千7百万円、棚卸資産が705億1百万円増加したことによります。
非流動資産は、前連結会計年度末に比べて、7.1%、425億1千6百万円増加し、6,452億5百万円となりました。これは主として、有形固定資産が383億1千7百万円増加したことによります。
この結果、資産合計は、前連結会計年度末に比べて、15.5%、1,896億7千8百万円増加し、1兆4,095億6千万円となりました。
[負債]
流動負債は、前連結会計年度末に比べて、22.2%、828億5千1百万円増加し、4,553億5百万円となりました。これは主として営業債務及びその他の債務が421億6千8百万円、社債及び借入金が240億7千5百万円増加したこと等によります。
非流動負債は、前連結会計年度末に比べて2.7%、74億5千2百万円増加し2,863億2千4百万円となりました。これは主として契約負債が73億3百万円増加したことによります。
この結果、負債合計は、前連結会計年度末に比べて903億3百万円増加し、7,416億2千9百万円となりました。
[資本]
資本合計は、当期利益に加えて在外営業活動体の換算差額の好転等により前連結会計年度末に比べて、17.5%、993億7千5百万円増加し、6,679億3千1百万円となりました。
(5)キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
① キャッシュ・フロー
当連結グループのキャッシュ・フローの分析・検討内容は、1.経営成績等の状況の概要(2)キャッシュ・フローの状況に記載のとおりです。
② 資本の財源及び資金の流動性
当連結グループは、成長投資の実行と財務の健全性向上及び株主還元を最適なバランスで行うため、資本効率を高めつつ適切な水準の流動性を維持し、調達手段の多様化を図ることとしています。
資金調達にあたっては、長短、直間のバランスを考慮し金融機関からの借入や社債の発行を実施すると共に、債権の流動化等による調達手段の多様化を図っています。また、コミットメントライン契約を締結し適切な水準の流動性を確保する様にしています。
お知らせ