文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものです。
(1)経営方針
当連結グループは、「豊かな大地、豊かな街を未来へ・・・快適な生活空間づくりに貢献する」という企業ビジョンを掲げ、全従業員がグループ共通の価値基準・行動規範である Kenkijin スピリット(「Challenge(チャレンジ精神)」、「Customer(個客志向)」、「Communication(風通しの良さ)」)の下、「身近で頼りになるパートナー」として Reliable solutions を継続的に提供し、お客さまの課題解決に努めます。
これにより事業競争力とグループ経営力の強化を追求し、収益性の向上とキャッシュ・フローの創出力を高め、また、SDGsやESG等を経営課題として、持続可能な社会の構築と事業成長を実現することにより、企業価値の増大と更なる株主価値向上をめざします。
(2)経営環境及び対処すべき課題
株主構成の変更
2022年1月14日付けで、当社の親会社である株式会社日立製作所(以下、「日立」)と、日本産業パートナーズ株式会社(以下、「日本産業パートナーズ」)が管理・運営・情報提供を行うファンドがその持分の全てを保有する特別目的会社及び伊藤忠商事株式会社(以下、「伊藤忠商事」)がその持分の全てを保有する特別目的会社が共同で出資する予定のHCJIホールディングス合同会社(以下、「JIPコンソーシアムSPC」)との間で、日立が保有する当社普通株式55,290,000株(議決権所有割合26.0%(2021年9月30日現在の総株主の議決権の数2,125,317個を基準に算出))をJIPコンソーシアムSPCへ譲渡することが合意されました。
日本産業パートナーズは、企業風土を尊重しつつ、既存事業・産業を変革する意志をもった企業家・経営陣と協力し、時代の要請に合致した新たな事業・産業を構築することにより、本来その事業・産業が有していた潜在的な力を十分に引き出す支援を事業目的としています。
今回の合意以降、中長期の保有を通じ、経験・ノウハウ、幅広い専門家ネットワークを活用し、日立建機が行う事業戦略策定及び事業戦略遂行に必要な経営基盤の強化をサポートし、財務基盤の効率化に貢献することに加え、豊富なファイナンスの経験から、ファイナンスでの連携の実績のある伊藤忠商事グループと共に、日立建機のレンタル資産の管理運用等に関する最適なアドバイス等を今後提供して頂けるものと考えています。
伊藤忠商事は、建機分野において従来より輸出トレード・ファイナンス案件や合弁会社の設立による事業展開等を通じて日立建機と様々な取引関係を有しており、特にインドネシアでは製造・販売・金融の分野において30年来の共同事業を展開しています。伊藤忠商事は日米間の陸海送物流や米国内における倉庫や物流・資材センター等の物流ネットワークと、小型建機の製造・販売会社、建機のオンライン・レンタル会社を通じて全米の建機レンタル会社の顧客ネットワークを有しており、また、伊藤忠商事グループは、米国でファイナンスサービスを提供する事業会社を保有しており、北米において、販売代理店向けと、リテール向けの双方で、幅広くファイナンスでの協業の検討を進めてまいります。
このように新たなパートナーとの資本関係によって、世界最大の北米市場における事業展開をより確かなものとしていくと共に、日立建機としては南米市場をはじめとする世界各地のパートナーとの連携も継続し、グローバルでの成長戦略を加速してまいります。
4つの経営戦略の柱
日立建機グループでは、「豊かな大地、豊かな街を未来へ…快適な生活空間づくりに貢献」を企業ビジョンとし、快適な生活空間の象徴である「豊かな大地」「豊かな街」をつくることに、最大限の役割を果たし、社会に貢献していきます。
2023年3月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画「Realizing Tomorrow’s Opportunities 2022 明日の好機をつかみとれ」では、①バリューチェーン事業の強化、②お客さまとのあらゆる接点で深化したソリューションを提供、③変化に強い企業体質の形成に新たに「北中南米全域で戦略を実現」を加えた4つの経営戦略の柱で持続的な成長と企業価値の向上に取り組みます。
直近の市場環境は、新型コロナウィルスの影響により、サプライヤーや輸送業の操業鈍化による生産・調達への影響及び資材費、輸送費、資源価格の高騰、地政学リスクによる事業影響懸念等により、先行き不透明な状況にあります。このような状況下、4つの経営戦略の柱を基本とし、「Reliable solutionsの提供」を旗印として、お客さま課題を解決することを目的に、デジタルテクノロジーを駆使し、お客さまからゆるぎない信頼を勝ち取り続けて、グローバル市場の中で確固たるポジションを築くことをめざします。
①バリューチェーン事業の強化
社会課題やお客さまの事業・ニーズが変化する中、日立建機グループでは、機械のライフサイクル全体を通じて、お客さまに最適なソリューションを提供しています。新車販売を除く部品・サービス、レンタル・中古車、ファイナンス事業、ソリューションビジネス等をバリューチェーン事業と位置づけ、経営戦略の重要活動として強化を図っています。
②お客さまとのあらゆる接点で深化したソリューションを提供
日立建機では、お客さまの課題である「安全性向上」「生産性向上」「ライフサイクルコスト低減」をお客さまとともに解決する各種ソリューションを提供しています。今後も幅広い先進技術や、ビジネスパートナーとのエキスパート技術を融合したオープンイノベーションの技術を活用して、他社を凌駕するソリューションをスピード感を持って提供します。
③北中南米全域で戦略を実現
2021年8月に、ディア アンド カンパニー社(以下、「ディア社」)との間で、北中南米の合弁事業に関する業務提携を解消することに合意しました。ディア社との業務提携解消後、米州全域の地域統括会社「日立建機アメリカInc.」を通じて2022年3月より独自展開を始めています。
北中南米全域におけるコンパクト・コンストラクションの油圧ショベル、マイニング向け超大型油圧ショベル、ダンプトラック、ホイールローダの販売・サービス網の構築、部品供給体制の強化、市場特性に応じたレンタル・中古車事業の展開、再生事業を含むマイニング事業の基盤拡充、グローバルでの生産拠点の活用、北米での生産能力増強により新たな製品供給体制の構築等を通じて、真の顧客満足をめざします。また、北中南米向けの油圧ショベルにもConSite®を導入します。
④変化に強い企業体質の形成
欧州を中心としたゼロエミッション対応、デジタル技術の急速な進展への対応、マーケティング・技術・情報・デジタルのグローバル一体連携体制を推進して変化に強い企業体質を形成し、先進国での電動化・多機能化、新興国での機能を限定し価格を抑えた機械等お客さまの多様な課題に柔軟に対応できる身近で頼りになるパートナーをめざします。また、開発・生産拠点再編の継続に加えて、4月からコンパクト、コンストラクション、マイニングなどのビジネスユニット制を導入し、営業から開発・設計・製造まで迅速な一気通貫の意思決定を図っています。
ビジネスユニット制の導入
2022年4月より、日立建機の組織体制にビジネスユニット制を導入し、5ビジネスユニット(以下、BU)、1ユニットを新設しました。具体的には、一般建設工事現場向け中・大型建機の「コンストラクションBU」、鉄鉱石など資源採掘・運搬向け超大型建機の「マイニングBU」、都市土木や農林業など向け小型建機の「コンパクトBU」、バリューチェーン事業の拡大につながる「部品・サービスBU」、「レンタル・中古車BU」、新規事業を生み出し、成長させる組織として「新事業創生ユニット」の構成となります。
これまでは、機能別に部門が分かれていましたが、各ビジネスユニットが一気通貫し、事業の推進、説明責任を持つことになります。このビジネスユニット制では、縦割りを少なくし、事業計画の意思決定を速めると同時に業績責任を明確にします。 これは、①お客さま起点の事業体制の最適化(体制の整流化と経営リソースの最適化)、②中長期成長戦略の立案と責任の明確化、③収益責任の明確化を目的としています。
お客さまの課題解決、環境対応、米州事業戦略、DXなど、大きく変貌する世の中の動きに素早く対応できる形になり、ベンチャービジネスへの投資、10年先の事業目線で見たソリューション機能と製品の抽出、戦略立案などを行っていきます。また、グローバルで機能を統括する開発、品質保証や生産・調達統括部門と財務、法務、人事などのコーポレート部門が全体を支えます。 この新たな組織体制で、現中期経営計画を完遂し、2023年度から始まる次期中期経営計画の作成に着手します。
サーキュラーエコノミーへの取り組み
日立建機は事業を通じて、ESG・SDGsに貢献する活動を積極的に推進しています。
再生事業では、従来行ってきた部品の再生に加え、車体全体を再生する新たなビジネスモデルを構築しており、日本で油圧ショベルの再生を行い、販売しています。巨大なマイニング機の再生によって削減されるスクラップ及びCO2削減量は、さらに大きくなります。新車同様の原状回復だけではなく、製品のマイナーチェンジまでを反映させたメーカーならではの対応となり、お客さまにとって価値の高い製品へと貢献しています。
これからも、お客さまと社会・環境の課題解決に同時に貢献する持続可能な資源循環型ビジネスモデルを確立し、推進していきます。
バリューチェーン全体での課題解決と価値創造、SDGs(持続可能な開発目標)
「豊かな大地、豊かな街を未来へ…快適な生活空間づくりに貢献」という企業ビジョンのもと、日立建機グループでは、これまでも事業活動を通じて社会課題の解決に取り組み、企業価値を高めてきました。私たちは、バリューチェーン全体で新しい価値を創造することで、お客さまをはじめとする世界中のステークホルダーのみなさんと一緒にSDGs達成に向けて取り組んでいきます。
社会に必要とされる企業であり続けるために、2030年目標の達成をめざし活動してまいります。
日立建機グループが注力する10のSDGs
日立建機グループの事業活動とSDGsの17の目標との関連性を整理し、特に注力すべき10の重点目標を設定しました。
SDGs目標 |
取り組み |
期待される効果 |
|
[教育支援の活動] ・教習所での資格取得支援 ・海外インターンプログラム/自立支援 [従業員への技術・教育取得機会提供] ・サクセションプラン(後継者育成計画) |
・リーダーの育成 ・各自のレベルアップ、国内外の技術レベルの向上が、持続可能な成長に寄与する |
|
[女性の活躍推進] ・女性活躍の基盤構築、継続就労・復職支援、 キャリア形成支援 ・教習所における女性講師の育成 |
女性が高いモチベーションで就業できる雇用環境を整えることで、ジェンダー(男女の性区分)平等を促進 |
|
[排出抑制と汚染防止] ・水ストレスレベルの高い地域を特定 ・事業活動に伴う水使用量の削減 ・化学物質の管理(水リスクの低減) |
水資源の持続可能な管理を確保するとともに、水リスクの高い地域での節水活動で地域コミュニティを支援 |
|
[製造プロセスの環境負荷低減] ・電力監視システムの導入 |
自主技術を生産の現場に取り入れ、効率的なエネルギー使用を実現 |
[再生可能エネルギーの活用] ・太陽光パネルの設置 |
持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保 |
|
|
[新規事業のグローバル展開] ・部品再生事業 |
現地人財を採用することで地域雇用の創出に寄与し、経済成長へ |
[事業構造改革] ・国内開発・製造拠点の再編 |
安全かつ効率的な製造ラインを実現し、ディーセント・ワークを実現 |
|
[働き方改革] ・労働安全衛生強化/ダイバーシティ推進 |
ディーセント・ワーク推進で、持続可能な経済成長、生産的な完全雇用 |
|
[安全・安心な労働環境の促進] ・コーポレート・ガバナンス/コンプライアンス ・人権尊重 |
ガバナンスの取り組みにより、組織が強化され企業価値が向上し、経済生産性が高まる |
|
|
[ICT・IoT技術を生かした製品やソリューションの開発] ・Solution Linkage®の展開 ・無人化・ロボット化技術による省力化機械の開発 |
新たな価値を生み出す革新的な技術開発で、経済発展と人間の福祉を支援し、安全で生産的な労働環境を実現 |
[グローバルでのサービス強化] ・地域販社の設立 |
販路拡大により、地域のインフラ開発に寄与し、経済発展に貢献 |
|
[リスクマネジメント] ・BCP(事業継続計画)の策定 ・BCM(事業継続マネジメント)体制強化 |
自然災害や人的災害(テロや暴動)等、企業を取巻くリスクへの対策により、強靭なインフラを整備し、持続可能な産業化を推進 |
|
|
[建設機械の提供や支援] ・各国のインフラ整備 ・自治体へのレンタル資機材の供給 |
災害に強い持続可能な都市や居住空間を実現 |
|
[バリューチェーン事業の強化] ・レンタル事業のグローバル展開 |
製品のライフサイクル価値を向上し持続可能な消費/生産パターンを確保 |
[製品のリユース・リサイクル] ・部品再生事業の取り組み |
廃棄物の削減に貢献 |
|
[製品・サービスに関する情報提供] ・リコール情報などの迅速な開示 ・サプライチェーン上のリスク防止 |
持続可能な消費と生産のパターンを確保 |
|
[品質の向上] ・世界同一品質「Made by Hitachi」の実現 ・中古車流通の強化 ・差別化技術の開発 |
安全性・品質の確保で持続可能な消費と生産のパターンを確保し、製品のライフサイクルを通じた環境影響を最小化する |
|
|
[クリーン技術、環境配慮技術の開発] ・電動化、水素エンジンなど脱炭素技術の開発拡大による差別化 ・高効率な鉱山運行管理システム |
低炭素技術を備えた製品の開発・実用化で、気候変動リスクの低減に寄与 |
[気候変動リスクへの対応] ・太陽光発電の導入 ・インターナルカーボンプライシングの導入 |
再生可能エネルギーの使用や省エネ設備の導入などを通じて、地球環境問題の解決に貢献 |
|
|
[外部組織との協働による地域コミュニティの開発支援] ・中国のホルチン砂漠の緑化活動 ・インドの「ものづくり技能移転推進プログラム」 |
グローバル・パートナーシップによる イノベーションの活性化に貢献 |
[バリューチェーン全体でのCSR推進] ・サプライヤーに対する公正な調達の推進 ・グローバルな技術継承や移転 |
グローバル・パートナーシップの活性化 |
お知らせ