当連結会計年度における当社グループ(当社、連結子会社及び持分法適用関連会社)の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。
① 財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における当社を取り巻く市場環境は、国内においては米中貿易摩擦やウクライナ情勢などの地政学的リスクの影響があり、回復の兆しがみられるものの依然として先行きが不透明な状況が続いておりました。同様に、海外においても原材料価格や為替等の変動など、経済活動への影響に留意する必要がありました。
このような環境の下で当社グループは、2019年度を初年度とする3カ年の中期経営計画の最終年度として、「経営基盤の強化」、「成長戦略の推進」を基本方針として事業活動を展開してまいりました。なお、2022年3月末に公表したとおり、当社は2023年4月に持株会社体制へ移行する予定であり、持株会社体制を踏まえた経営計画、事業・投資戦略や計数目標を策定するための時間が必要と判断し、現中期経営計画を1年間延長しております。
水環境事業においては、上下水道設備の増設・更新需要の取り込みや、設備の維持管理業務、補修工事等の営業活動を展開してまいりました。また、省エネルギー技術の営業活動を推進するとともに、水インフラを安定的に維持・運営していくために設備の建設と長期の維持管理業務が一体となったPFI(*1)、DBO事業(*2)や、包括O&M業務(*3)、FIT(*4)を活用した発電関連分野への営業展開を進めてまいりました。これらの取り組みにより、受注高は後述のとおり過去最高となりました。
一方、産業事業においては、プラント・単体機器および廃液、固形物廃棄物処理などの環境関連設備の営業活動を展開してまいりました。また、今後成長が見込まれる二次電池製造関連設備の営業活動を推進してまいりました。
また、市川工場閉鎖後の跡地において三井不動産株式会社と共同で物流施設を開発しており、2022年3月末に竣工いたしました。本開発に伴い、当社は土地を信託受益権化しその権利の一部を売却したことから53億円を固定資産売却益として特別利益に計上しております。
その結果、当連結会計年度における当社グループの業績は、次のとおりとなりました。
受注高は1,186億12百万円(前期比24.8%増)、売上高は930億77百万円(前期比2.8%増)となりました。また、損益面につきましては、営業利益は56億92百万円(前期比0.5%増)、経常利益は65億2百万円(前期比6.2%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は上述のとおり固定資産売却益を計上したことで過去最高の81億73百万円(前期比753.1%増)となりました。
なお、「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号 2020年3月31日)等を当連結会計年度の期首から適用しております。
*1:PFI(Private Finance Initiative)
施設整備を伴う公共サービスにおいて、民間の有する資金、技術、効率的な運用ノウハウなどを活用する仕組み
*2:DBO(Design Build Operate)事業
事業会社に施設の設計(Design)、建設(Build)、運営(Operate)を一括して委ね、施設の保有と資金の調達は行政が行う方式
*3:包括O&M業務
設備の運転管理業務だけでなく、設備の補修工事や薬品等の供給も含めた包括的な維持管理業務
*4:FIT(Feed-in Tariff)
再生可能エネルギーを用いて発電された電気を、一定価格で電気事業者が買い取ることを義務付けた制度(固定価格買取制度)
当社グループは、当社と子会社29社および関連会社11社で構成され、上下水道設備を主要マーケットとする水環境事業と、化学、鉄鋼、食品等の産業用設備および廃液や固形廃棄物処理、二次電池製造関連設備等の環境・エネルギー関連設備を主要マーケットとする産業事業の2つを主たる事業と位置付けており、それら以外の事業をその他としておりますが、その主要な事業内容は以下のとおりであります。
当連結会計年度におけるセグメントの業績は、次のとおりであります。
水環境事業においては、国内の水インフラ関連投資は比較的堅調に推移しておりました。また、複数年および包括O&M業務や設備建設と長期の維持管理業務を一体化したPFI、DBO事業等の発注は増加する傾向にありました。
このような状況の下で当社グループは、国内の上下水道用汚泥処理設備の増設・更新需要を取り込むために、下水処理場向け汚泥脱水、乾燥、焼却設備、浄水場向け排水処理設備などの汚泥処理設備の営業活動を推進してまいりました。また、O&M業務においても補修工事および包括O&M業務の営業活動を展開してまいりました。その結果、汚泥処理設備では、次世代型汚泥焼却システム、浄水場向け汚泥脱水設備などの受注を果たしました。また、メンテナンスなどのアフターサービス事業をより一層強化するために、包括O&M業務や補修工事の営業活動を展開することで、受注高の確保を推進してまいりました。
その結果、当連結会計年度における水環境事業の受注高は過去最高の767億円(前期比32.7%増)、売上高は589億50百万円(前期比15.7%増)、営業利益は36億8百万円(前期比7.4%減)となりました。
産業事業においては、国内では米中貿易摩擦やウクライナ情勢などの地政学的リスクの影響があり、回復の兆しがみられるものの依然として先行きが不透明な状況が続いておりました。同様に、海外では地政学的リスクによる原材料価格や為替等の変動など、経済活動への影響に留意する必要がありました。
このような状況の下で当社グループは、化学、鉄鋼、食品分野における設備投資需要や更新需要を取り込むために、国内外における各種プラント設備および乾燥機、分離機、ろ過機、ガスホルダ、攪拌機等の単体機器の営業活動を展開してまいりました。また、環境・エネルギー関連においては、国内外向けに廃液燃焼システム、固形廃棄物焼却設備、排ガス処理設備および二次電池製造関連設備の営業活動を展開してまいりました。
その結果、当連結会計年度における産業事業の受注高は418億35百万円(前期比12.6%増)、売上高は340億50百万円(前期比13.9%減)、営業利益は20億54百万円(前期比17.4%増)となりました。
その他においては、当連結会計年度における受注高は75百万円(前期比0.2%増)、売上高は75百万円(前期比0.2%増)、営業利益は29百万円(前期比84.6%増)となりました。
当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は287億95百万円となり、前連結会計年度末に比べ、50億74百万円減少しました。当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果得られた資金は、8億12百万円となりました(前連結会計年度は100億84百万円の獲得)。これは主に、売上債権及び契約資産の増加21億3百万円等の減少要因があったものの、棚卸資産の減少33億37百万円等の増加要因があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は、53億67百万円となりました(前連結会計年度は44億46百万円の支出)。これは主に、有形固定資産の売却による収入103億16百万円等があったものの、有形固定資産の取得による支出146億27百万円等があったことによるものです。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は、6億28百万円となりました(前連結会計年度は73億24百万円の獲得)。これは主に、短期借入金の純増60億円等があったものの、長期借入金の返済による支出53億75百万円および配当金の支払額10億55百万円等があったことによるものです。
③ 生産、受注及び販売の状況
当連結グループは、生産実績の表示は困難であります。
当連結会計年度における受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。
(注) 1 セグメント間取引については、相殺消去しております。
2 収益認識会計基準等を当連結会計年度の期首から適用したことに伴い、当連結会計年度の水環境事業の受注残高は、当該会計基準等を適用した金額となっております。
当連結会計年度における販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりとなります。
(注) セグメント間取引については、相殺消去しております。
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識および分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末(2022年3月31日)現在において当社グループ(当社、連結子会社および持分法適用関連会社)が判断したものであります。
当連結会計年度の受注高は、前連結会計年度に比べ24.8%増加の1,186億12百万円となりました。これは、水環境事業は、設備の更新需要を積極的に取り込み次世代型汚泥焼却システム、浄水場向け汚泥脱水設備、下水汚泥有効利用設備、下水処理場の包括委託等の大型案件を獲得するなど好調であったことから、受注高が188億99百万円増加したことによるものです。産業事業は、民間企業向けで複数の大型焼却案件を獲得したことにより受注高が46億69百万円増加したことによるものです。なお、セグメント別の受注状況につきましては、「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度の売上高は、前連結会計年度に比べ2.8%増収の930億77百万円となりました。これは、水環境事業は受注済みの案件が順調に進捗したことにより増収となったこと、産業事業は売上の原資となる受注残高の減少により減収となったことによるものです。なお、セグメント別の売上高につきましては「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会年度の営業利益は、前連結会計年度に比べ0.5%増益の56億92百万円となりました。これは、水環境事業において完工案件が少ないことおよび持株会社への移行検討などの構造改革費用を計上したこと、R&Dセンターや子会社の廃棄物処理設備更新等の設備投資により減価償却費負担が増加したこと等によるものです。なお、セグメント別の営業利益につきましては、「(1) 経営成績等の概要 ① 財政状態及び経営成績の状況」に記載のとおりであります。
当連結会計年度においては、支払利息等の営業外費用を 2億26百万円 計上した一方で、受取配当金等の営業外収益を 10億37百万円 計上し、経常利益は前連結会計年度に比べ 6.2%増益 の 65億2百万円 となりました。また、市川工場閉鎖後の跡地で物流施設を開発し、土地を信託受益権化してその権利の一部を売却したこと等による固定資産売却益 55億33百万円 等の特別利益を 57億32百万円 計上した一方、物流施設建設に伴う解体撤去費用 3億9百万円 、当社および連結子会社の支店移転や連結子会社の本社移転に伴う移転費用 41百万円 等の特別損失を 7億77百万円 計上しました。その結果、当連結会計年度の親会社株主に帰属する当期純利益は過去最高となり、前連結会計年度に比べ753.1%増益の81億73百万円となりました。
当連結会計年度末の資産合計は1,535億74百万円となり、前連結会計年度末に比べ94億58百万円増加しました。これは主に、物流施設等の建物及び構築物(純額)の増加108億50百万円や保有株式の時価評価等による投資有価証券の増加18億92百万円等があったものの、土地の減少47億82百万円等があったことによるものです。
負債合計は726億25百万円となり、前連結会計年度末に比べ2億93百万円増加しました。これは主に、前連結会計年度末の前受金と比べた当連結会計年度末の契約負債の減少12億86百万円や長期借入金の減少60億98百万円等があったものの、短期借入金の増加60億円、1年内返済予定の長期借入金の増加7億23百万円や未払法人税等の増加11億21百万円等があったことによるものです。
純資産合計は809億49百万円となり、前連結会計年度末に比べ91億64百万円増加しました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益の計上等による利益剰余金の増加73億51百万円や保有株式の時価評価によるその他有価証券評価差額金の増加8億92百万円等があったことによるものです。
以上の結果、当連結会計年度末における自己資本比率は51.8%(前期比2.9ポイント増)となりました。
(3) 経営成績に重要な影響を与える要因について
当社グループの主力製品は個別受注生産であり、様々な外部要因によって、売上高および利益が計画どおりに計上されない可能性があります。
なお、詳細は「第2 事業の状況 2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
(4) 資本の財源及び資金の流動性に係る情報について
当連結会計年度のキャッシュ・フローの概況につきましては、「(1) 経営成績等の概要 ② キャッシュ・フ ローの状況」をご参照下さい。
当社グループは、持続的な成長を目指すために2019年度を初年度とする3カ年の中期経営計画の最終年度として、「経営基盤の強化」、「成長戦略の推進」を基本方針として事業活動を展開してまいりました。なお、2022年3月末に公表したとおり、当社は2023年4月に持株会社体制へ移行する予定であり、持株会社体制を踏まえた経営計画、事業・投資戦略や計数目標を策定するための時間が必要と判断し、現中期経営計画を1年間延長しております。この基本方針を実現するため、中期経営計画期間においては、研究開発投資、M&A投資、基幹システム更新などの戦略投資を実行してまいります。
また、当連結会計年度は、市川物流施設や連結子会社サンエコサーマル株式会社の一般廃棄物、産業廃棄物中間処理設備の更新等で、総額149億21百万円の設備投資を実施いたしました。
当社グループは、中期経営計画に基づく持続的成長を支えるために、以下の「財務戦略」を掲げております。
① 調達方針
当社グループは運転資金および定常的な設備投資・研究開発につきましては、原則、営業活動によるキャッシュ・フローおよび自己資金にて賄っておりますが、キャッシュフローを超える大型の設備投資やM&Aについては外部調達にて対応します。当社グループは、資本コストを意識し外部調達を有効活用して「最適資本構成」(注1)を確立してまいります。
② 財務規律
財務基盤の安定を企図して以下の財務規律を定めております。
a.自己資本比率 50%前後
b.D/Eレシオ(注2) 0.5倍以内
c.手許現預金を月商の2か月分確保
③ 株主還元方針
当社は、財務体質と経営基盤の強化を図りつつ、毎期の業績、新規投資、連結配当性向等を総合的に勘案しながら安定配当に努めることを利益配分の基本方針としております。なお、株主還元の水準といたしましては、総還元性向30%~50%を目安として、財政状況、業績、今後の事業展開ならびに戦略投資を踏まえながら弾力的な株主還元を実施してまいります。
(注1)最適資本構成とは、株式会社の資本構成要素である他人資本(借入)と自己資本の比率が内容・内訳
がその企業にとって最適なバランスになること。資本コストが最適になること。
(注2)D/Eレシオとは、負債が自己資本の何倍にあたるかを示す指標。
(5) 経営者の問題認識と今後の方針について
今後の景況感につきましては、米中貿易摩擦の激化やウクライナ情勢などの地政学的リスクの影響による世界的な景気後退に留意する必要があります。
国内の上下水道分野においては、水インフラ関連の投資は引き続き堅調に推移していくものと推測されます。水環境事業の受注は好調でありますが、今後は一段と競争環境が厳しくなると予想されることから、さらなる事業環境の安定化のためにJFEエンジニアリング株式会社と国内水エンジニアリング事業の統合に向けた協議を行っております。民間の設備投資においては、地政学的リスクによる原材料価格の高騰、為替等の変動や半導体の供給不足など、世界経済の見通しに対する不透明感から設備投資の抑制、延期が懸念されます。
このような状況のもとで当社グループは、持続的な成長を目指すために、「経営基盤の強化」と「成長戦略の推進」を基本方針とした中期経営計画に取り組んでまいりました。当社グループは、グループ各社とのシナジー創出が重要と考えており、2022年3月末に公表したとおり、当社は2023年4月に持株会社体制へ移行する予定であり、グループ戦略および経営管理の強化を図り、事業子会社の業務執行に関する権限移譲により意思決定の迅速化を進め、事業の拡大とグループ経営の効率化を図ってまいります。また、持株会社体制への移行を踏まえた経営計画、事業・投資戦略や計数目標を策定するための時間が必要と判断し、中期経営計画を1年間延長しております。
2023年3月期の連結業績見通しは、売上高1,000億円、営業利益50億円、経常利益55億円、親会社株主に帰属する当期純利益38億円を見込んでおります。
*上記の業績予想は、現時点で入手可能な情報に基づき当社が判断したものです。実際の業績は、今後様々な要因によりこれらの業績予想とは異なる結果になる可能性があります。
当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されており、経営陣は、過去の実績や状況に応じ合理的だと考えられる様々な要因に基づき見積りや判断を行っておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。財政状態および経営成績に関する主要な点は以下のとおりであります。
なお、新型コロナウイルスの感染症拡大の影響に関する会計上の見積りに関しては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項」の(追加情報)をご参照下さい。
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