本文中における将来に関する事項の記述については、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものです。
(1) 経営方針
当社は、事業環境や社会環境の変化、デジタルトランスフォーメーションやサステナビリティ経営といった時代の要請に応えるため、2021年10月1日付で経営理念を改定し、「モノを動かし、心を動かす。」としました。当社グループの競争力の源泉であり、これまで長年培ってきた「保管」「搬送」「仕分け・ピッキング」、すなわち「モノを動かす技術」(マテリアルハンドリング)でお客さまへの提供価値を変革し、健全で心豊かに生きられる社会の実現を目指します。
また、2021年4月からスタートした3カ年中期経営計画「Value Transformation 2023」(以下、中計)では、ニューノーマル(新常態)や、グローバルでの自動化ニーズの拡大といった当社グループを取り巻く環境の大きな変化を踏まえ、DX2(DXスクエア)※を推進しています。
※DX2(DXスクエア)=Digital Transformation × Daifuku Transformation
通常のデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation=DX)の推進だけでなく、ダイフク自身も変革し(Daifuku Transformation)、お客さまをはじめとするステークホルダーへの提供価値を変革していくというコンセプトです。
中計の最終年度(2024年3月期)の経営目標は以下のとおりです。連結売上高については、一般製造業・流通業向けシステムと半導体・液晶生産ライン向けシステムが好調に推移していることから見直しました。詳細につきましては、2022年5月13日に開示した『中期経営計画「value Transformation 2023」経営目標の修正に関するお知らせ』をご覧ください。なお、()内は2022年3月期の実績です。
・連結売上高6,000億円(5,122億円)
・営業利益率10.5%(9.8%)
・ROE(自己資本当期純利益率)10%以上(13.1%)
・連結配当性向:2022年3月期~2024年3月期の3カ年の平均で30%以上(31.6%)
また、当社グループでは、中計と「サステナビリティアクションプラン」を経営戦略の両輪と位置付け、事業活動を通じて持続可能な社会の実現に貢献してまいります。環境面では、中計と併せて策定した「ダイフク環境ビジョン2050」において、2050年に「マテリアルハンドリングシステムが環境負荷ゼロで動く世界を目指す」を掲げ、2030年までの重点領域と目標を設定し、取り組んでいます。
中計の詳細は、当社ウェブサイトの『新3カ年中期経営計画「Value Transformation 2023」策定 他のお知らせ』(2021年2月5日公表)を、ダイフク環境ビジョン2050は『「ダイフク環境ビジョン2050」策定について』(2021年2月5日公表)を、サステナビリティアクションプランは『「サステナビリティアクションプラン」の策定について』(2021年4月1日公表)をご覧ください。
〔図〕中期経営計画「Value Transformation 2023」の概念図
〔図〕「Value Transformation 2023」最終年度の目標
(2) 経営環境
① 事業環境
供給制約に伴うインフレと部材調達期間の長期化、欧米における金利上昇、緊迫するウクライナ情勢の影響など、産業界全般の先行きは見通し難い状況にあります。そのような中、当社グループのお客さまは、「eコマースの拡大」「デジタル化の進展」「EV車へのシフト」「空港のスマート化」をはじめとする事業環境の大きな変化や、人手不足という社会問題にも直面しています。このため、当社グループが提供する「スマート・ロジスティクス」への期待はますます高まっていくものと確信しています。
② 競争環境
マテリアルハンドリング市場の拡大に伴い、従来の欧米メーカーに加え、中国などの新興メーカーが参入・成長してきており、今後さらなる競争の激化が見込まれます。コンサルティングから、ものづくり・据付・アフターサービスまでの一貫体制、及びハードウエア・ソフトウエアの豊富なラインアップを通じて、グローバルに最適・最良のシステムを提供するという当社グループの強みに磨きをかけ、厳しい競争に打ち勝ってまいります。
(3) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題
中計の根幹となる事業ポートフォリオについては、従来どおり、①一般製造業・流通業向けシステム、②半導体・液晶生産ライン向けシステム、③自動車生産ライン向けシステム、④空港向けシステムの4つをコア事業とし、継続的な発展を目指します。
2022年3月期は、グループ競争力をさらに強化するための事業間連携に取り組みました。既に実績のある一般製造業・流通業向けシステムの生産改革手法を参考に、半導体・液晶生産ライン向けシステムのコストダウンに取り組み、順調に成果が出てきています。
また、2022年3月期を「ダイフクDX元年」(DX=デジタルトランスフォーメーション)として取り組んだ、グループ全体のデジタル化については、エンジニアリング・設計から製造、工事・サービス、さらには管理部門も含めた広範囲の改革に拡大し、ペーパーレス化・電子化が進みました。競争力の強化には生産性向上が不可欠であるという強い意識を持って、さらなるDX推進を図ってまいります。
2022年3月期は過去最高の連結売上高を達成できた一方で、一部の事業で追加コストが発生し、管理面での課題を残しました。事業構造の見直しはもちろん、必要な改革に着手し、今後の収益性の改善に繋げてまいります。
当社グループの2022年3月期の海外売上高比率は約65%となりました。中計最終年度の目標である6,000億円に向けた「生産能力の増強」と「生産の現地化」については、2020年3月期に稼働を開始した北米(Wynright Corporation)の新工場の稼働率が高まっており、収益性も改善しています。2021年3月期は中国(大福(中国)自動化設備有限公司、大福自動搬送設備(蘇州)有限公司)、インド(Vega Conveyors and Automation Private Limited)の生産能力増強に着手しました。2022年3月期は、北米(Jervis B. Webb Company)での空港向けシステムの生産能力を集約・強化するため、新工場の建設に着手(2022年夏完成予定)しました。今後は国内(滋賀事業所)、韓国(Clean Factomation, Inc.)などでも、生産能力増強を含めた再開発等を進めていきます。
さらに、2023年3月期については、新たに先端技術・新規事業開発担当役員を設置し、先端技術と新規事業の開発に注力します。自社での取り組みに加え、産学連携、スタートアップ企業との連携も強化し、最先端の製品やシステムで競合との差異化を図り、新規事業を創出していく取り組みを推進していきます。
「サステナビリティ」「コンプライアンス」「ガバナンス」「安全」についても引き続き重要な課題であると捉えています。
① サステナビリティ経営
当社グループでは、中計と「サステナビリティアクションプラン」を経営戦略の両輪と位置付けています。サステナビリティ経営の推進組織としては、CEO(代表取締役社長)を委員長とする「サステナビリティ委員会」を2020年4月に設置し、その取り組み等については適宜、取締役会に報告しています。「サステナビリティアクションプラン」は、SDGsに沿って「スマート社会への貢献」「製品・サービス品質の維持向上」「経営基盤の強化」「人間尊重」「事業を通じた環境貢献」の5つのテーマを設定し、それぞれのテーマに関連する18のマテリアリティを特定するとともに、3カ年の行動計画をまとめたものです。
これに先立ち、2020年に「TCFD提言」に基づく気候変動のリスクと機会の分析結果を、2021年2月には「ダイフク環境ビジョン2050」を公表しました。
2021年10月には、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に則り、「ダイフクグループ人権方針」を策定しました。今後はサステナビリティ委員会のもと、人権デューデリジェンスの体制づくりや実務の管理を行っていきます。
人的資本への投資では、多様な人財マネジメント制度を採用し、グローバルかつダイバーシティの観点で人財の育成・登用に努めます。具体的な考え方と測定可能な自主目標の設定、方針、実施状況については、株式会社東京証券取引所に提出している「コーポレートガバナンス報告書」をご覧ください。
② コンプライアンスの徹底・グループガバナンスの強化
コンプライアンスはすべての事業活動の前提になるものです。単に法律を遵守すればいいということにとどまらず、当社グループの今と未来を支えているのは、一人ひとりの高い倫理観と責任ある行動であることを、教育・研修などを通じグローバルベースで徹底していきます。コーポレートガバナンスについては、当連結会計年度(2022年3月期)は取締役9名中4名の社外取締役を選任しており、企業経営経験者、財務・会計や法律の専門家、海外経験者、女性の登用など取締役会の多様性を確保しています。
2021年4月の「リスク・ガバナンス室」(現「ガバナンス推進室」)新設に続き、2022年4月にCEO(代表取締役社長)を委員長とする「リスクマネジメント委員会」を設置しました。これらを通じ、全社的な視点でのグループガバナンスを強化していきます。
③ 「安全専一」の徹底
一人ひとりの社員が最大のパフォーマンスを発揮できる職場環境づくりに努めていくうえで、社員やその家族、お客さま、お取引先の生命・健康・安全を確保することが何よりも優先されます。「安全は、『第一』『第二』と相対的な順位を付けるものではなく、絶対的なもの、『専一』なものである」という意識をグローバルに浸透させ、引き続き、グループ一体となって災害の撲滅に取り組んでいきます。
(4) 環境ビジョンとサステナビリティアクションプラン
① ダイフク環境ビジョン2050
当社は2021年2月に、2050年を展望した新たな環境ビジョン「ダイフク環境ビジョン2050」を策定しました。本ビジョンでは、2050年に「マテリアルハンドリングシステムが環境負荷ゼロで動く世界を目指す」を掲げ、2030年までの重点領域を「気候変動・エネルギー」「資源循環」とし、それぞれの目標を設定しています。詳細は、以下〔図〕〔表〕をご覧ください。取り組み期間は2021年から2030年までとし、CEO(代表取締役社長)を委員長とするサステナビリティ委員会を中心にグループ全体で推進していきます。
2022年度は、CO2削減に向けた具体的な数値目標を各事業に落とし込んで、調達・製造工程、各製品への取り込みを徹底していきます。
〔図〕ダイフク環境ビジョン2050
〔表〕2030年の重点領域
〔表〕2030年の目標
※1 当社エコプロダクツ製品などを通じて、お客さまに納入したシステムで環境面から貢献したもの
※2 お客さまに納入した製品・サービスから排出されるCO2排出量を、基準年度である2011年時点の
製品・サービスによるCO2排出量から差し引いたもの
※3 生産拠点における資源循環の実態を把握した上で目標を設定し、2022年度中に開示予定
② サステナビリティアクションプラン
当社グループは、サステナビリティに関する重要課題(マテリアリティ)を特定し、5つのテーマに沿った目標設定と具体的な行動計画として「サステナビリティアクションプラン」を策定しました。すべての社員があらゆる事業活動を通じてマテリアリティに取り組むことでSDGsの達成に貢献し、持続可能な社会の実現と企業価値向上を目指します。
サステナビリティ概念図
(注)SDGsアイコンの説明
〔表 〕サステナビリティアクションプランの概要
※1 研究開発費+DX(Digital Transformation)投資額
※2 当社の製品・システムの不具合を原因とした稼働中における死亡事故及び重傷病(治療に要する期間が30日以上の負傷・疾病)事故
※3 同一の認証機関による同一基準・スケジュールでの審査を実施し、認証を取得・維持すること
※4 主に設計者を対象とした国際安全規格に基づく安全の知識、能力を有することを認証する資格
※5 自社の業務中における死亡事故(労働災害)
※6 調達先におけるCO2排出削減に向けた取り組み(目標の共有と削減対策支援など)に関する当社独自の枠組み
※7 お客さまに納入した製品・サービスから排出されるCO2排出量を、基準年度である2011年時点の製品・サービスによるCO2排出量から差し
引いたもの
※8 当社エコプロダクツ製品などを通じて、お客さまに環境配慮の面で貢献した物件(プロジェクト)
③ 改訂コーポレートガバナンス・コードへの対応
2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードでは、主なポイントして「企業の中核人材における多様性の確保」「サステナビリティを巡る課題への取組み」が新たに加わりました。当社グループは、そのほとんどに対して既にサステナビリティアクションプラン等を通して取り組んでいます。サステナビリティアクションプランの2021年度の実績・進捗状況は、2022年8月末頃に発行予定の統合報告書で開示します。サステナビリティのうち、気候変動に関するものは「2 事業等のリスク」 を参照ください。
本項では、サステナビリティアクションプランにはないKPIを含む「企業の中核人材における多様性の確保」について記載します。
1) 多様性確保についての考え方、多様性確保に向けた人材育成方針、社内環境整備方針
当社は、経営理念に基づいた多様な人材の雇用と、従業員の一人ひとりが「働きがい」と「働きやすさ」を感じいきいきと仕事ができる環境の整備を推進しています。3カ年中期経営計画「Value Transformation 2023」では、多様な人財マネジメント制度の採用やグローバルベースでの企業カルチャー醸成をテーマとして掲げ、人財育成・登用や従業員エンゲージメントの向上に取り組んでいます。
2) 多様性確保の状況
a. 女性の管理職登用の考え方と目標
当社は、女性活躍推進に積極的に取り組むため、時間的、経済的に子育てと仕事の両立を図りながら能力を十分に発揮して成長することができる、復職支援制度の整備・拡充を行っており、女性社員の比率向上に加え、実務リーダーや管理職を担う社員も増え、活躍の場を拡大しています。また、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画において、2025年3月31日までに女性管理職数を24名以上にするとしていた目標を下記のように前倒しし、将来的に経営の意思決定に関わる女性幹部職を増やしていきます。
◆女性管理職数の推移及び目標
2020年4月1日 18名
2021年4月1日 20名
2022年4月1日 26名
2023年4月1日 30名(目標)
b. 外国籍従業員の管理職登用の考え方
当社は、事業のグローバル化に伴い定期採用・キャリア採用(中途採用)ともに外国籍従業員は年々増加しており、国内大学の卒業生に加え、海外大学の卒業生向けにも定期採用を実施しています。2022年度の定期採用者のうち8.6%が外国籍従業員で、今後も積極的に外国籍従業員を採用していきます。外国籍の管理職は2022年4月1日現在で4名在籍していますが、グローバル化に応じて今後も増加していくものと見込んでいます。
c. キャリア採用者の管理職登用の考え方
当社は、積極的にキャリア採用をしており、2022年4月1日現在の正社員におけるキャリア採用者比率は44.3%です。役職への登用も同様で、2022年4月1日現在の係長職のキャリア採用者比率は45.8%、管理職のキャリア採用者比率は36.2%です。今後も職務の高度化に応じたプロフェッショナル制度(従来の報酬制度と異なる体系)の導入や、管理職適任者等に対する積極的なキャリア採用を実施していきます。
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