当連結会計年度の事業環境は、新型コロナウイルス感染症の影響が前期から継続しており、さらに、半導体不足や物流のひっ迫、資源の高騰等が事業活動に大きな影響を与えました。また、足元では米国の金融政策の変化や急激な為替変動、ウクライナ情勢等の不安定要素が数多くあり、先行きは不透明で将来予測が困難な状況であります。
外部環境の変化だけでなく、自動車の電動化、脱炭素社会の実現等、お客様と社会のニーズは年々高度化、多様化しており、旧態依然の体制を維持したままでは、持続的な成長は実現できません。
このような先を見通せない難しい経営環境にあっても、着実に年輪成長できる企業に生まれ変わるため、当期は長期・中期経営計画を策定、公表し、その初年度を「ジェイテクトReborn元年」と位置付けて様々な活動を行ってまいりました。「経営基盤強化」「競争力強化」「将来への種まき」「人づくり、仕組みづくり」の4つのキーワードを掲げて行った活動の具体的な内容は次のとおりであります。
最初に取り組みましたのは、「経営基盤強化」に向けた収益体質改善であります。2023年度の目標として、2019年度売上収益比で損益分岐点売上比率80%、事業利益1,000億円を掲げ、各部門で徹底的な原価低減と固定費削減を進めた結果、材料費、物流費の高騰等、厳しい外部環境の中でも親会社の所有者に帰属する当期利益として206億円を確保することができました。
また、市場の変化に柔軟かつ強靭に対応するために、北米、欧州、中国等、各地域でグループ会社を再編いたしました。国内では、販売ネットワークの充実を目的に、販売会社3社を統合し、2021年10月にジェイテクトセールス株式会社を発足させました。さらに、2022年4月にも子会社を再編し、針状ころ軸受をはじめとした高精密製品でお客様に貢献する株式会社ジェイテクトファインテックと、熱処理と産業機械向け製品でお客様に貢献する株式会社ジェイテクトサープレットを発足させております。
2021年1月に「経営役員制」を導入し、役員間のヒエラルキーをなくして意思決定の迅速化を図るとともに、経営陣のコミュニケーションを活性化させ、事業本部間の壁のない連携体制構築を進めてまいりました。その成果として、自動車部品、ベアリング、工作機械それぞれで培った強みを融合させ、オンリーワンの技術を提供するギヤビジネスを立ち上げ、2021年11月には「Gear Innovation Center」を開所し、お客様のニーズに応える高精度歯車の提案を開始いたしました。ギヤサプライヤーでありながらギヤラインビルダーでもある当社の強みを、新たな市場で発揮してまいります。
また、グループ会社に対するガバナンスを強化するため、2021年4月に「海外戦略室」、2022年4月には経営企画部内に「経営管理グループ」を新設いたしました。グループ会社とのコミュニケーションを密にし、グループ間の課題の共有、ベクトル合わせを行い、全体最適目線で事業推進する体制を構築いたしました。
グループ一体営業を行うためのクロスセールス活動も加速させております。グループ各社の技術・商品・販売網を活かし、製品ごとの営業体制ではなく、お客様に最適な提案をする営業体制を構築し、お客様に頼られる営業への変革を推進しております。加えて、2021年4月には、アフターマーケット事業本部を新設し、これまでベアリング中心に行っていたアフターマーケット対応を、自動車部品やグループ会社の商品にも広げました。アフターマーケット事業は製品ライフサイクルを支え、循環型社会に貢献することも目的としております。
このような事業本部間、グループ会社間の垣根を越えた活動をさらに加速させるため、2022年4月1日に、Koyo、TOYODA、JTEKTの3つの事業ブランドを「JTEKT」に統一いたしました。
ブランド統一のスタートとして、「価格を削れ、品質は削るな。」をキャッチコピーに掲げ、信頼の高いTOYODA研削盤の技術を受け継ぎ、機能を高めながらもお求めいただきやすい価格を実現したJTEKTブランド初の円筒研削盤を販売開始しております。世界的にカーボンニュートラルが求められる時代となり、工作機械業界も大きな影響を受けるなか、電動化へ進む自動車業界をはじめ、様々な産業分野への拡販を目指してまいります。
た「会社を変えたい」という熱意を持つ従業員が、この活動自体を推進する役割を担っております。他にも従業員の「~したい、してあげたい」という情熱のこもったアイディアがいくつも生まれており、着実な変化を実感しております。
当連結会計年度の連結業績につきましては、次のとおりであります。
売上収益は1兆4,284億26百万円と前連結会計年度に比べ1,821億40百万円(14.6%)の増収となりました。事業利益につきましては423億46百万円となり、前連結会計年度に比べ264億34百万円(166.1%)の増益となりました。また、親会社の所有者に帰属する当期利益は206億82百万円と前連結会計年度に比べ198億82百万円の増益となりました。
なお、売上収益事業利益率は3.0%と前連結会計年度より1.7ポイント上昇しております。
セグメントの業績につきましては、次のとおりであります。
なお、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 連結財務諸表注記 5.事業セグメント (2) 報告セグメントの変更等に関する事項」に記載のとおり、当連結会計年度より報告セグメントを変更しており、前連結会計年度の数値を変更後の報告セグメントに組み替えて比較分析しております。
「自動車」におきましては、新型コロナウイルス感染症の再拡大や半導体不足による自動車メーカーの減産等の影響はあるものの、前第1四半期連結会計期間における販売の落ち込みが大きかったこともあり、全地域で販売が増加し、売上収益は前連結会計年度に比べ1,196億47百万円(14.1%)増収の9,653億63百万円、事業利益は前連結会計年度に比べ18億6百万円(13.9%)増益の147億76百万円となりました。
「産機・軸受」におきましても「自動車」と同様に全地域で販売が増加したこと等により、売上収益は前連結会計年度に比べ413億4百万円(15.3%)増収の3,115億88百万円となりました。販売増加や原価改善の効果等により、事業利益は前連結会計年度に比べ168億69百万円増益の163億91百万円となりました。
「工作機械」におきましては、北米を中心に販売が増加したこと等により、売上収益は前期に比べ211億88百万円(16.3%)増収の1,514億74百万円、事業利益は前連結会計年度に比べ77億58百万円(356.4%)増益の99億36百万円となりました。
財政状態につきましては、次のとおりであります。
当連結会計年度末における資産は、営業債権及びその他の債権の増加や棚卸資産の増加等により、1兆3,864億63百万円と前連結会計年度末に比べ951億62百万円の増加となりました。負債につきましては、営業債務及びその他の債務の増加等により、7,260億48百万円と前連結会計年度末に比べ198億35百万円の増加となりました。また、資本につきましては、当期利益の計上等により、6,604億15百万円と前連結会計年度末に比べ753億26百万円の増加となりました。
なお、1株当たり親会社所有者帰属持分は前連結会計年度の1,606円30銭から1,819円47銭に増加いたしました。
また、社債及び借入金につきましては、2,617億61百万円と前連結会計年度末に比べて244億58百万円減少しました。
当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因につきましては、「2 事業等のリスク」に記載のとおりであります。
「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」の「(3) 長期的な会社の経営戦略」や「(5) 優先的に対処すべき課題」に記載しております様々な取組みにより、経営上の目標達成につなげてまいります。
連結キャッシュ・フローにつきましては、次のとおりであります。
営業活動によるキャッシュ・フローは、税引前利益の計上や営業債務及びその他の債務の増加等により、当連結会計年度は670億39百万円の資金の増加となりました(前連結会計年度は917億57百万円の資金の増加)。
投資活動によるキャッシュ・フローは、有形固定資産の取得による支出等により、当連結会計年度は252億65百万円の資金の減少となりました(前連結会計年度は525億15百万円の資金の減少)。
財務活動によるキャッシュ・フローは、社債の償還による支出等により、当連結会計年度は435億31百万円の資金の減少となりました(前連結会計年度は579億57百万円の資金の減少)。
これらに換算差額等を加減算した結果、当連結会計年度末における現金及び現金同等物は1,242億54百万円となりました。
(注) 1 金額は平均販売価格によっております。
2 上記の金額には、外注加工費及び購入部品費が含まれております。
当社グループの販売高の大部分を占める、自動車業界向け部品については、納入先から提示される生産計画を基に、当社グループの生産能力等を勘案して生産を行っております。
なお、工作機械の受注実績は以下のとおりであります。
(注) 当連結会計年度において、受注高及び受注残高に著しい変動がありますが、新型コロナウイルス感染拡大等により減速した顧客の設備投資意欲が回復したためであります。
(注) 主要な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
(1) 重要な会計方針及び見積り
当社グループの連結財務諸表は、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第93条の規定によりIFRSに準拠して作成しております。この連結財務諸表の作成にあたって、必要と思われる見積りは、合理的な基準に基づいて実施しております。
なお、当社グループの連結財務諸表で採用する重要な会計方針及び、将来に関する仮定及び報告期間末における見積りの不確実性の要因となる事項は、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 連結財務諸表注記」の「2.作成の基礎 (4)重要な会計上の判断、見積り及び仮定」及び「3.重要な会計方針」に記載しております。
① 売上収益
当連結会計年度の売上収益は、前連結会計年度に比べ1,821億40百万円(14.6%)増収の1兆4,284億26百万円となりました。
セグメント別に見ると次のとおりであります。
「自動車」は前連結会計年度に比べ1,196億47百万円(14.1%)増収の9,653億63百万円となりました。地域別の主な内訳は、日本3,645億70百万円(249億93百万円、7.4%の増収)、アジア・オセアニア2,964億78百万円(571億15百万円、23.9%の増収)、北米1,656億74百万円(282億54百万円、20.6%の増収)であります。
「産機・軸受」は前連結会計年度に比べ413億4百万円(15.3%)増収の3,115億88百万円となりました。地域別の主な内訳は、日本1,457億67百万円(162億27百万円、12.5%の増収)、北米672億57百万円(107億31百万円、19.0%の増収)、アジア・オセアニア524億71百万円(64億53百万円、14.0%の増収)であります。
「工作機械」は前連結会計年度に比べ211億88百万円(16.3%)増収の1,514億74百万円となりました。地域別の主な内訳は、日本721億43百万円(35億34百万円、5.2%の増収)、北米618億14百万円(162億71百万円、35.7%の増収)、アジア・オセアニア166億84百万円(14億47百万円、9.5%の増収)であります。
② 事業利益
当連結会計年度の事業利益は、前連結会計年度に比べ264億34百万円(166.1%)増益の423億46百万円となりました。
セグメント別に見ると次のとおりであります。
「自動車」は、材料費や物流費の高騰によるマイナス要因を販売増加や原価改善の効果等によりカバーし、前連結会計年度に比べ18億6百万円(13.9%)増益の147億76百万円となりました。
「産機・軸受」は、材料費や物流費の高騰の影響はあるものの、販売増加や固定費削減、原価改善の効果が大きく、前連結会計年度に比べ168億69百万円増益の163億91百万円となりました。
「工作機械」は、販売増加の効果等により前連結会計年度に比べ77億58百万円(356.4%)増益の99億36百万円となりました。
③ その他の収益・その他の費用
その他の収益は、雇用調整助成金が減少したこと等により、前連結会計年度に比べ28億75百万円(24.3%)減少の89億39百万円となりました。
その他の費用は、事業構造改善費用や操業休止関連費用が減少しましたが、固定資産減損の増加、製品保証引当金繰入額や売却目的で保有する資産に係る評価減の計上等により、前連結会計年度並の148億85百万円となりました。
④ 金融収益・金融費用
金融収益は、円安進行に伴う為替差益やデリバティブ評価益の増加等により、前連結会計年度に比べ44億69百万円(74.5%)増加の104億66百万円となりました。
金融費用は、有利子負債削減に伴う支払利息の減少等により、前連結会計年度に比べ4億9百万円(10.7%)減少の34億19百万円となりました。
⑤ 親会社の所有者に帰属する当期利益
上記の要因等により、親会社の所有者に帰属する当期利益は、前連結会計年度に比べ198億82百万円増益の206億82百万円となりました。
当社グループは、2030年の目指す姿を達成するための第一期中計期間の目標数値を次のとおりとしております。また、2023年度に事業利益1,000億円の達成を目指し、中期経営計画を推進してまいります。
第一期中期経営計画(期間:2021~2023年度)の目標
※2019年度売上収益比
なお、これらの目標数値につきましては、達成を保証するものではありません。
当社グループの資本の財源及び資金の流動性につきましては、次のとおりであります。
当社グループの資金需要の主なものは、設備投資、投融資、研究開発費等の長期資金需要と、当社製品製造のための材料及び部品購入等の運転資金需要であります。
当社グループは、事業活動のための適切な資金確保、適切な流動性の維持及び健全な財政状態の維持を財務方針としております。
現金及び現金同等物等の流動性資産に加え、営業活動によるキャッシュ・フロー、市場あるいは金融機関からの資金調達を通じ、現行事業の推進と事業拡大に必要となる資金を確保できる状況と考えております。
また、グループ各社に偏在する余剰資金の相互融通を図る等、資金効率の向上に努めております。
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